「進化論の基礎の本」まとめ読み

一口コメント

進化論(進化理論)ということを知らない,あるいは否定する人は,少なくてもわが国にはほとんどいないが,その具体的な内容はほとんど浸透していないと,進化科学者は異口同音にいう。もっともイメージと内容の食い違いは,どの知的分野でもいえることかもしれないが,進化論(進化理論)は,すべての諸学の基礎となるから,その誤解は深刻だといえる。

自戒を込めて,「進化論の基礎の本」をまとめてみた。

ここでは,進化論からみた人の行動は取り上げなかった。これは,別途まとめる。

1は,もっとも客観的に,かつ全体を過不足なく論じていて,しかも面白い。翻訳者が,原著の内容をフォローしているので,いっそう安心できる(それだけでなく,「中立進化論」の「売り込み」や,「日本では地質学の特殊な政治的事情のために,プレート・テクニクスそのものの受容が大きく遅れた」(P177)という「感想」もあって面白い。)。

2は,わかりやすい本だが,人間の行動を分析した部分が,唐突な感じがする。

3は,ドーキンスの最近出た本で,「世界にさきがけて編集・翻訳」というものの,講演自体は,相当古く,多く掲載された写真も見にくいが,その内容は,安心して読める。4は,いうまでもなく,大きな影響を与えた名著である。5はこれを踏まえた本だが,やはり2と同じく,人間の行動部分について?という感じがする。

6は,進化論をめぐる言説の「現在」を把握するのによい。

「種の起源」も読んでみたいが,遺伝について誤った情報しかなかったなかでの記述なので,「進化論の基礎の本」を十分に理解した上で,挑戦したいが,その前振りとして7がいいだろう。

8は,「DNAが明かす生物の歴史」というサブタイトルの新しい本である。

9~11は,進化論から見た,人の医学,健康に関する本である。今後この分野はますます重要になるだろう。

紹介

1

カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第4巻 進化生物学 (ブルーバックス)
デイヴィッド・サダヴァ デイヴィッド・ヒリス クレイグ・ヘラー メアリー・プライス
講談社
売り上げランキング: 23,115

2

進化とはなんだろうか (岩波ジュニア新書 (323))
長谷川 眞理子
岩波書店
売り上げランキング: 33,900

3

進化とは何か:ドーキンス博士の特別講義 (ハヤカワ・ポピュラー・サイエンス)
リチャード ドーキンス
早川書房
売り上げランキング: 1,048

4

利己的な遺伝子 <増補新装版>
リチャード・ドーキンス
紀伊國屋書店
売り上げランキング: 2,801

5

6

理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ
吉川 浩満
朝日出版社
売り上げランキング: 410

7

ダーウィン『種の起源』を読む
北村 雄一
化学同人
売り上げランキング: 365,364

8

分子からみた生物進化 DNAが明かす生物の歴史 (ブルーバックス)
宮田 隆
講談社
売り上げランキング: 29,176

9

進化から見た病気―「ダーウィン医学」のすすめ (ブルーバックス)
栃内 新
講談社
売り上げランキング: 81,833

10

進化医学からわかる肥満・糖尿病・寿命
井村 裕夫
岩波書店
売り上げランキング: 472,085

11

GO WILD 野生の体を取り戻せ! ―科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス
ジョンJ.レイティ リチャード・マニング
NHK出版
売り上げランキング: 811