社会の行方を読む本

未読・半読・一読の本 3 (180607)

最近,コーポレートガバナンスについての本を読み,派生してドラッカーにいき,更にこのWebに手を入れたりで,なかなか購入済みの本を読めないが,たまたまこの2,3日で,Kindleストアを検索していて,今後の社会がどうなるかについて書かれた(のであろう)「面白そうな本」を4冊見つけた。未読の本がたまっているので全部は購入はしていないが,落ち着き次第,購入して目を通してみたい。したがって現状はほとんど未読の本なので,この投稿は備忘という趣旨でとなる。

いずれもIT化,テクノロジー,グローバリゼーションを軸に,世界経済,社会,人間のこれからを考察した本であり,サンプル部分を読み,目次を一覧するだけでも興味深い。いずれもそこそこの値段がするが,Thank You for Being LateのKindle本だけは,1000円ちょっとである。

4冊は,以下のとおりである。

遅刻してくれて、ありがとう

遅刻してくれて、ありがとう(上) (下)常識が通じない時代の生き方 

著者:トーマス・フリードマン

原書

Thank You for Being Late: An Optimist’s Guide to Thriving in the Age of Accelerations  By Thomas L. Friedman

目次

Part1 熟考

1 遅刻してくれて,ありがとう

Part2 加速

2 2007年にいったいなにが起きたのか /3 ムーアの法則 /4 スーパーノバ /5市場 /6母なる自然

Part3 イノベーティング

7 とにかく速すぎる /8 AIをIAに変える /9 制御対混沌 /10 政治のメンターとしての母なる自然 /11 サイバースペースに神はいるか? /12 いつの日もミネソタを探して /13 故郷にふたたび帰れる(それに帰るべきだ)

Part4 根をおろす

14 ミネソタから世界へ,そして帰ってくる /〈その後〉それでも楽観主義者でいられる

シャルマの未来予測

シャルマの未来予測 これから成長する国 沈む国

著者: ルチル・シャルマ

原書

The Rise and Fall of Nations: Ten Rules of Change in the Post-Crisis World By Ruchir Sharma

目次

プロローグ ジャングルの奥地へ

序章 有為転変――国家の盛衰を見抜く10の評価基準

第1章 【人口構成】 生産年齢人口が増えているか――ロボットは人口減少への救世主になる

第2章 【政治】 政治サイクル――改革者はいつ俗物に変わるのか

第3章 【格差】 良い億万長者、悪い億万長者――お金持ちを見ればその国の将来が分かる

第4章 【政府介入】 国家による災い――政府の干渉が増えているか、減っているか

第5章 【地政学】 地理的なスイートスポット――地の利を最大限に活かしているか

第6章 【産業政策】 製造業第一主義――投資の対GDP比率は増えているか、減っているか

第7章 【インフレ】 物価上昇を侮るな――住宅価格の上昇率が経済成長率を上回り続けていないか

第8章 【通貨】 通貨安は天使か、悪魔か――経常収支赤字の対GDP比が3%以上、5年連続なら要警戒

第9章 【過剰債務】 禁断の債務バブル――債務の伸び率は経済成長率より高いか、低いか

第10章 【メディア】 「過剰な報道」の裏に道あり――メディアから見放された時が絶好のチャンス

第11章 優秀、平均、そして劣等――注目国の将来展望を格付けする

拡張の世紀

拡張の世紀―テクノロジーによる破壊と創造

著者:ブレット・キング

原書

Augmented: Life in The Smart Lane By Brett King

目次

序章 スマート化された生活

第1部 ディスラプションの250年

第1章 テクノロジーによるディスラプションの歴史 /第2章 「拡張」の時代 /第3章 姿を消すコンピューター /第4章 ロボットの優位性

第2部 スマート・ワールドの進化の仕方

第5章 Human 2.0/第6章 人間の「拡張」/第7章 ライフストリーム、エージェント、アバター、アドバイザー

第3部 「拡張」の時代

第8章 鉄道、航空機、自動車、住宅 /第9章 スマートバンキング、決済およびマネー /第10章 「拡張」世界における信頼とプライバシー /第11章 「拡張」都市とスマート市民 /第12章 新時代のエンゲージメント

世界経済 大いなる収斂

世界経済 大いなる収斂 ITがもたらす新次元のグローバリゼーション

著者:リチャード・ボールドウィン

原書

The Great Convergence  By Richard Baldwin

目次

序章

第1部 グローバリゼーションの長い歴史をざっと振り返る

第1章 人類の拡散と第一のバンドリング /第2章 蒸気革命とグローバリゼーションの第一のアンバンドリング /第3章 ICTとグローバリゼーションの第二のアンバンドリング

第2部 グローバリゼーションのナラティブを拡張する

第4章 グローバリゼーションの三段階制約論 /第5章 何が本当に新しいのか

第3部 グローバリゼーションの変化を読み解く

第6章 グローバリゼーション経済学の基礎 /第7章 グローバリゼーションのインパクトその変化を解き明かす

第4部 なぜそれが重要なのか

第8章 G7のグローバリゼーション政策を見直す /第9章 開発政策を見直す

第5部 未来を見据える

第10章 グローバリゼーションの未来

 

考えるべきこと2題

 

こういう本は楽しいのだが,ともすれば彼岸の話として「へえ-」で終わってしまうか,商売ネタにしようとスケベ根性を出してしまう。しかしIT化,テクノロジー,グローバリゼーションは,今後,しかももうすぐ,間違いなく私たち一人一人の生活・仕事・文化を直撃し,この国の企業と政府,さらには環境も直撃する。漠然と,社会,経済の問題と捉えるのではなく,生活,仕事,企業,政府,環境と,多面的に捉えたい。

せっかくアメリカの俊才が4冊もよりどりみどりで書いてくれているのだから,私たち個人と私たちが属する組織の問題として,いかに問題解決と創造に結び付けるかという観点で読まないともったいない。

ところでアメリカと言えば,トランプ氏の政治論は横に置くとして,貿易論はどうなっているのか。我が国も含めて政治家の奇想天外な言動に歯止めが掛からない。貿易については,最近出た「実証から学ぶ国際経済」が良さそうだ。これも追って紹介しよう。

人の知能・思考がとらえる世界とは何か-方法論の基礎

「知ってるつもり」と「武器化する嘘」

人の知能は,世界を(実験によって)観察し,論理的に思考・分析して,表現・評価し,「問題解決と創造」につなげることができるが,その過程に様々な誤りが紛れ込む。

最近入手した二つの本(「知ってるつもり 無知の科学」(著者:スティーブン スローマン, フィリップ ファーンバック)と「武器化する嘘 情報に仕掛けられた罠」(著者:ダニエル・J・レヴィティン)は,人の知能・思考が世界をどのようにとらえるのか,世界をとらえる正しい方法論は何かについて,類似した視点と方法にたつ「総論」と「各論」ともいうべき本である。

両書とも非常に優れた内容を持つが,翻訳英書に共通する饒舌さや捩じれと翻訳の分かりにくさがあって,両書の構造,内容を正確にとらえるのが少しむつかしいようだ。

私としては両書を,「問題解決と創造の頁」の「方法論の基礎」の最初に位置づけたいと思っているので,その詳細な紹介をしたいと思っているが,今少し時間がとりにくい状態にあるので,ここでは備忘のために書名とさわりだけ紹介したい。

「知ってるつもり 無知の科学」を読む

「知ってるつもり 無知の科学」(著者:スティーブン スローマン, フィリップ ファーンバック)(Amazonにリンク)

この本のポイントは,「The Knowledge Illusion」であるが,これを「知能の錯覚」と訳されても,あまりピンとこない。

人の知能は,複雑な世界から行動(繁殖と生存だろう。)するために必要なもの,重要なものだけを取り出すように進化した。その知能のあり方が,「The Knowledge Illusion」である。そして行動するために重要なのは,原因と結果の因果的推論である。これには2種類(システム1とシステム2,あるいは直観と熟慮)ある。しかし人は,因果システムを自分が思っているほど理解していない(説明深度の錯覚)。直観は個人の頭にあり,熟慮は知識のコミュニティの力を借りている。後者がコミュニティの問題であるというのは,重要である。すなわち人は,体と世界,他者,テクノロジーを使って考える。

そして賢い人を育て,賢い判断をするための方法(ナッジ)がある。

後半は,行動経済学と重なっている。

この本の構成は英文の方がわかりやすそうなので,英書の目次を掲記しておく。

The Knowledge Illusion: Why We Never Think Alone

 

INTRODUCTION:Ignorance and the Community of Knowledge

 

ONE What We Know/TWO Why We Think /THREE How We Think /FOUR Why We Think What Isn’t So /

 

FIVE Thinking with Our Bodies and the World /SIX Thinking with Other People /SEVEN Thinking with Technology /

 

EIGHT Thinking About Science /NINE Thinking About Politics /

 

TEN The New Definition of Smart /ELEVEN Making People Smart /TWELVE Making Smarter Decisions

 

CONCLUSION:Appraising Ignorance and Illusions

 

「武器化する嘘 情報に仕掛けられた罠」を読む

「武器化する嘘 情報に仕掛けられた罠」(著者:ダニエル・J・レヴィティン)(Amazonにリンク)

「知ってるつもり」で分かるように,人の知能・思考は「The Knowledge Illusion」にあるから,これを悪意を持って利用しようとする人も多い。

それをどのように批判的に吟味するかという観点からまとめたのが「武器化する嘘」である。「数字を吟味する」,「言葉を吟味する」,「世の中を評価する」から構成されている。認知科学,論理学,自然科学等を踏まえている。ベイズ確率が重視されている,

ただ体系的にまとめたというより,事例集という面があるので,記述相互の関係が分かりにくい。これを参考にしながら,どのように正しく考えるのかを,まとめていく必要があるだろう。

これも内容は,英書の目次の方が分かりやすそうなので掲記しておく。

A field guide to lies and statistics: A Neuroscientist on How to Make Sense of a Complex World

 

Introduction: Thinking, Critically

 

PART ONE: EVALUATING NUMBERS

Plausibility /Fun with Averages /Axis Shenanigans /Hijinks with How Numbers Are Reported /How Numbers Are Collected /Probabilities

 

PART TWO: EVALUATING WORDS

How Do We Know? /Identifying Expertise /Overlooked, Undervalued Alternative Explanations /Counterknowledge

 

PART THREE: EVALUATING THE WORLD

How Science Works /Logical Fallacies /Knowing What You Don’t Know /Bayesian Thinking in Science and in Court /Four Case Studies

 

Conclusion: Discovering

これらの本の利用法

これらの本では,対象として検討している問題が政府の政策であったり,社会問題だったりすることが多い(科学の問題も多い。)。しかしそれらは,所詮,投票を通じてしか実現しない問題であるから,当面,悪意ある人たちに騙されないように,軽率に扇動されないようにという観点から,弁えれば十分だろう。

重要なのは,自分の生活,仕事にこれらを生かすことである。私としては,当面,自分の生活,仕事を充実させること,楽しむこと,社会との関係でいえば,あらゆる人の仕事の生産性を向上させるIT,AIの実際的な使用や企業統治の問題等の分析にこれらを生かしていきたいと考えている。

 

企業:経営と統治

「問題解決と創造の頁」の「企業:経営と統治」の「固定ページ」を作ったので,投稿しておきます。ここらあたりこそ,私がいちばん力を入れなければならないところだと思っています。

株式会社と会計(複式簿記)

市場は,株式会社制度と複式簿記制度を見出したことから,現代企業への発展に結びついた。株式会社は,資本提供者(委託者)が,その財産の管理を,経営者(受託者)に委託する制度であり,その報告・説明が会計であり,その記録方法が複式簿記である。

更に企業会計が,国民経済計算に結びついている。

会計(複式簿記),更には,監査制度も,とても興味深い。これらは, コーポレートガバナンスの重要な要素である。

経営

経営者として一番大事なことは何か。お金になる匂いを嗅ぎ分ける能力と,人のお金を自分のお金と分別する自制心である。経営は,前者の問題である。

経営学

経営学については,「冬休みだから経営書を読もう」という記事を書いたことがある。更に「アイデア倉庫」の「経営編」にその時点で手元にあった本をまとめておいた。

我が国の企業が抱える経営問題

経営学の本を読むことは有意義だが,これを振り回したところで大して役に立つわけではない。

まず我が国の企業が抱える問題を,世界経済の中に位置づけて正確に理解する必要がある。また経営学は所詮,仮説の体系であって,現実の中でその妥当性を検証する必要がある。

その意味で,産業再生機構,経営共創基盤を率いてきた,冨山和彦さんが精力的に書いている本は参考になる。

「選択と捨象 「会社の寿命10年」時代の企業進化論」,「なぜローカル経済から日本は甦るのか」,「「決定版 これがガバナンス経営だ!―ストーリーで学ぶ企業統治のリアル」,「AI経営で会社は甦る」という流れで読み進むのがよいだろう。

更に,PHP新書に,「IGPI流 経営分析のリアル・ノウハウ 」,「IGPI流 ビジネスプランニングのリアル・ノウハウ」,「IGPI流 ローカル企業復活のリアル・ノウハウ」,「IGPI流 セルフマネジメントのリアル・ノウハウ」 がある。

現時点では,論評は差し控えるが,産業再生機構の経験は大きいだろう。

企業統治(コーポレートガバナンス)

これは,急遽,アベノミクスで言い出された,ルール化されたもので,出自はよろしくないが,その必要性はよくわかる。自身のビジネス体験を踏まえて記載されている「これならわかる コーポレートガバナンスの教科書」(著者:松田 千恵子)は,非常にピントの合った優れた本である。追って紹介したい。上記の冨山さんの「決定版 これがガバナンス経営だ!―ストーリーで学ぶ企業統治のリアル」もある。

 

問題解決と創造の頁

今まで「新しい社会とビジネスを創る」としていた項目を,「問題解決と創造の頁」に改めることにしました。それを説明した「固定ページ」を投稿しておきます。これに応じて,あちこち見直す必要があるので面倒くさそうです。

「問題」を生活・仕事,政府・企業,環境という観点から考える

このメニューはこれまで「新しい社会とビジネスを創る」としていたが,考えてみれば私が注力したいと思っていることは,このWebのキャッチフレーズとしている「法を問題解決と創造に活かす」ことなのであるから,その準備作業を志す本メニューのネーミングも,「問題解決と創造の頁」の方がより適切であることに気がついたので,変えることにした(いったん,「生活・仕事と組織」にしたが落ち着きが悪い。)。

私は何かに依拠して「新しい社会とビジネス」を創ろうと思っているのではない。私にとって最も重要な問題は,私の日々のあり方(生活・仕事)を充実させることであり,人から独立した存在として迷走する組織(政府や企業等)を適切に制御する企てに参加することである。更に生活・仕事,政府・企業の活動の環境,場となる「自然とテクノロジー」を理解し,利用,制御することである。

このように,現在,私あるいは現代社会が直面している多くの問題について,生活・仕事,政府・企業,環境の5つ要素から(更には,その複合する場合も含めて),分析,考察を巡らせ,当該問題を順次解決していくことができれば,「新しい社会とビジネスを創る」という価値創造に結実するであろうと考えているのである。

生活・仕事,政府・企業,環境について考える

現代社会は,人の基本的な活動である生活と仕事,及び人の集団である組織(支配し公共サービスを提供する「政府」及び,商品・サービスを提供する「企業」)の活動から構成されている。現代社会が抱える問題を,生活・仕事,政府・企業という観点からとらえ,解決策を考えることは,ひとつの仮説であるが,かなり有効だと思う。

農業革命以前,人の生活・仕事・組織は,分化していなかったと考えていいだろう。

しかし農業革命により人の生活・仕事・文化が分化し,その余剰生産物を収奪する「権力集団」(政府)が生じた(もっとも現在のほぼすべての政府は,民主制に基づく(支配者と被支配者が同一)と主張している。)。そして,分業の進展によって,更に「産業革命」によって決定的に,人の仕事の領域から分化した「企業」が大きな勢力となり,現在に至っているとまとめることができよう。

生活・仕事

人の生活・仕事は,いずれも進化論(繁殖,生存に有利な形質が自然選択される)を踏まえて考えるべきである。繁殖,生存の根底に性的な衝動があるとしても,ソフィストケートされたレベルでは,生活は,健康な活動を支える「食動考休」,仕事は,知識・能力の獲得と生産性の向上を目指す「アイデアをカタチに」であるとまとめていいだろう。

政府・企業

一方,組織のうち政府は,民主制のもとでは,政治参加(投票)による公共政策の実行,制御の問題である。ただし,政府を主導する政治家,官僚は,公共政策に失敗することのみならず(悲惨な被害が生じるのは戦争であろう。),その権力を冒用し私的利益を図ろうとする強いインセンティブがある。

利潤追求を目標とする企業の活動により,たとえ「見えざる手」によって資源の最適配分が図られるとしても,様々な立場の人々(消費者,取引先,株主,経営者,従業員,政府等々)に,様々な利害を与えるから,その活動が適切に制御されなければならない。

そして組織の行動については,複雑系の観点が欠かせない。

環境

人の生活・仕事や政府・企業の活動は,環境の中で(自然,及びテクノロジーを利用して)展開される。生活・仕事,政府・企業の問題解決のためには,自然とテクノロジーを理解し,利用,制御することが必須である。

まとめ

個人が,自らの意思で可能な(はずの)生活と仕事の改革・充実の問題と,独立した存在として独自のメカニズムで行動する「企業」,「政府」等(家族・地域共同体,宗教団体,学校等)の改革・制御の問題。更には自然とテクノロジーの開発・統御,保全は,それぞれ別の視角・方法によって,検討されなければならない。

このようにとらえて,現代社会(個人+組織)の「問題解決と創造にむけて」の準備作業をしよう。

メニューの構成

「問題解決と創造の頁」の暫定的なメニューは,次のとおりとする。ただし,順次手を入れていくので,当面,古い記事がそのままになっている項目も多い。

社会とビジネスの基礎

政府:力と公共政策

企業:経営と統治

問題解決と創造の方法と技術

生活:食動考休

環境:自然とテクノロジー

方法論の基礎

ITとAI

各メニューの説明

「社会と経済の基礎」には,全体の総論にあたる記事と「社会と経済の基礎となる8冊-試論」を掲載する。

これを踏まえ,「政府」について「力と公共政策」,「企業」について「経営と統治」,「仕事」について「アイデアをカタチに」,これらを支える個人の生活について「食動考休」にまとめる。更に,これらの活動の場となる「環境」について「自然とテクノロジー」にまとめる。

これに付加する「方法論の基礎」が異質だが,ここには私の基本的なスタンスである,人間と社会を,進化論,ファスト思考とスロー思考,複雑系ネットワークと分業等からとらえる基本的な考察と,数学,統計学,論理学,哲学等の方法のメモ(備忘録)を集めたいと思っている。現代の,多様な広がりのある経済学は,こちらで検討しよう。

さらに今後,「政府」,「企業」,「個人」を通じて生産性上昇をはじめ,あらゆる場面で活用されるであろう「ITとAI」についてこれまで細々と作成してきた記事を拡大して,いろいろなことを考察したい。

最後に

私が今,最もやりたいことは,弁護士として「法を問題解決と創造に活かす」活動であり,「問題解決と創造の頁」は,そのための,事実と論理を踏まえた準備作業となることを志している。このWebサイトも,やっとそういう情報発信ができるような準備が整いつつある気がする。ただITやAI,科学についての新しい知見・動向を知るには,英語文献の読解が必須なので,その意味での準備に今しばらく時間がかかりそうだ。

 

 

世界史の中の経済史

歴史と経済

経済史」(著者:小野塚知二)は,必ずしも経済活動だけに焦点が当てられているわけではないが,文明,文化,思想,宗教等についての扱いが二次的になるのはやむを得ない。

ところで,つい最近まで,私たちの関心や知的エネルギーの多くは,文化とか思想や政治とかに割かれていたと思うのだが,今はそのほとんどが経済に割かれている。何か,情けない思いもするが,ただ経済といっても,誰もがお金儲けのことだけを考えているということではなく,文明,文化,政治,思想等を,人間の存続基盤である経済活動を通して整理して考えているというのが,実情に近いのかもしれない。

経済史はもちろん世界史の一部であるのだが,多様に変化する世界史の枠組みから経済史を見ると,問題が立体的にみえてくる。

経済と世界史

教養としての「世界史」の読み方」(著者:本村 凌二)は,ローマ史を専門とする本村さんが,世界史を,横断的に眺めた「歴史総論」とでもいうべきもので,とても面白い。特に「文明はなぜ大河の畔から発祥したのか」,「ローマはなぜ興隆し,そして滅びたのか」,「なぜ人は大移動するのか」,「宗教を抜きに歴史は語れない」を,特にお勧めしたい。

さわりを紹介すると,「文明はなぜ大河の畔から発祥したのか」の大きな要素は,大規模な乾燥化だそうだ。「アフリカや中東の乾燥化が進んでいったことで,そこに住んでいた人々が水を求め,大きな川や水の 畔 に集まっていきました。それがアフリカの場合はナイル川の畔であり,中東の場合はティグリス・ユーフラテス川の畔であり,インドの場合はインダス川の畔であり,中国では黄河や揚子江といった大きな川の畔だったのです。」「少ない水資源をどのようにして活用するかと,ということに知恵を絞る」(文字の使用等)ことが文明につながる。「日本は水に恵まれていたがゆえに,なかなか「文明」に至りませんでした」ということになる。

さらに著者は,「文明発展」の大きな要素の一つに馬の使用があるという。武力,馬力,情報の迅速な移動のいずれにおいても,馬は大きな意味を有している。馬がいなければ,人間はいまだ「古代世界」にとどまっていたかもしれないという。著者の競馬好きを差し引いても,なるほどと思わせる。

あと面白いのは,ローマ人と日本人の類似性の指摘だ(もちろんこういう指摘は,任意の2民族でいかようにも可能ともいえるが,しばし著者の言を聞こう。)。

「文明は,一度発達し始めると,なかなか一定段階にとどまっていられない性質があります。今あるものを工夫して,どんどん新しいものが生み出されていくわけですが,そのときより創意工夫をして,いいものを作り出した者が最終的に勝利することになります。このソフィスティケートしていくことが得意なのが,実はローマ人と日本人です」,「ここでとても大切なことは,ソフィスティケートする能力の真髄は,「ごまかさない」能力,つまり,正直さとか誠実さに根ざした能力だということです…日本がこの「ごまかさない」という一番大切なことを忘れた」結果,今の日本があるというロジックだ。このあたりになると「文明批評」だが,数ある「文明批評」のなかでは,本質をついているような気がする。これがイノベーションを支える基本的な資質だとすれば,我が国もまだ間に合う。

その他,この本は「アイデアをカタチに」する「創意工夫」が満載なので,そういう意味でも,お薦めしたい。

経済と日本史

日本史における市場を中心とする「経済史」を丹念にたどっているのが,「マーケット進化論 経済が解き明かす日本の歴史」(著者:横山 和輝)である。そのような日本史を世界史の中で捉えようとするのが,「世界史とつなげて学べ 超日本史 日本人を覚醒させる教科書が教えない歴史」(著者:茂木 誠)である。いささかスケールが小さくなるが,今の私たちを理解するためには,いずれも必要な視点である。ただまだ十分に消化できていないので,とにかく書名と詳細目次をあげておきたい。

3冊の詳細目次を掲載しておく。

 

続きを読む “世界史の中の経済史”

イノベーションを志す人が社会を理解するための基本書8選-試論

※2018年3月14日に表題を変え,内容を一部修正した。

私たちがいる,今,ここにある世界を理解したい

私は昔から抽象的な思考が好きだったのか,面倒くさがりだったのか,一冊の本で,今,ここにある世界全体を理解したいという強い嗜好を持っていた。「これですべてがわかる」という売り込みに弱かったのだ。ただ読んだ直後は「この一冊」と思っても話はそこで止まってしまい,「この一冊」を活用して生きていくことにはなかなか結び付かなかった。というより,思い返してみて,本当にそんな一冊があったろうか?

今,社会は,複雑怪奇な問題に満ちあふれている。価値創造を目指してイノベーションを志す人が,足元が定まらないまま,つまらないことで足元をすくわれ,転倒してしまうことは日常茶飯事だ。私は若い頃から様々な「この一冊」に飛びつき,乗り換え,やがてそのような作業から離れ,また最近戻ってきたという,歴戦の失敗の雄だ。そのような観点から,最近,新たな「この一冊」を探してきた。

今までは,文科系オタクであった私の「この一冊」は,物語,宗教,思想,哲学等のジャンルの本にならざるを得なかったが,これからは,社会科学,自然科学の本になるだろう。「宇宙の究極理論」であれば誰でも知りたいだろう(ローレンス・クラウスの令名高い「偉大なる宇宙の物語―なぜ私たちはここにいるのか」及び「宇宙が始まる前には何があったのか?」は,その助走ともいえるだろ。)。ただ,私たちがいる,今,ここにある世界は,当然,自然(宇宙)の一部であるが,私たちがすぐにでも立ち向かわなければならないのは,人の集団から構成される社会だ。本当は自然あっての社会だろうが,私たちには,社会あっての自然と,倒錯して見えてしまう。だから「この一冊」の当面のターゲットは,社会科学であるが,社会は極めて複雑で,これを科学的に把握し,論理的に記述することは,自然に比して格段にむつかしい(上記の「宇宙の究極理論」は,自然とはいえ,さらにむつかしい。)。社会科学は最近やっと自然科学の足元ぐらいには追いついたといえるだろう。だからイノベーションを志す人が社会を理解するためには「この一冊」では済まないだろう。

私は,ここ半年ぐらい社会を理解したいなあという思いを中心に本を集め,そのような目的で年末年始までに目を通した本を「社会を理解する方法・ツールを探す-年末・年始の頭の旅-」にまとめたが,まだまだ道半ばだといわざるを得なかった。特に出発点の定め方がむつかしい。

しかし今回,試論(暫定版)ではあるがイノベーションを志す人が社会を理解するための基本書8選」を作成し,紹介してみることにした。

8冊は,経済を中心とした歴史や制度・ツールを理解するための「経済史」,経済を分析するツールである「マクロ経済学」と「ミクロ経済学」,これらに対する「複雑系ネットワーク」という観点からの捉え直し,経済を創造する人の活動を理解する「経営」と経済活動のフレームを作る「政治・行政」,人の経済活動を支える物質的な環境を形作る「自然科学」,最後に「人間の科学 社会の科学」という流れだ。それぞれについて「この一冊」のさわりだけ紹介することとし,詳細な紹介は後日を期すことにする,「今のところ,<No.1 経済史>と<No.8 決断科学のすすめ>には,Kindle本はない。

<No.1 経済史> 評価:◎

暫定的ではあれ,8冊にまとめてみようと思ったのは,「経済史」(著者:小野塚 知二)の存在を知ったからである。発売は18/2/1とあり,私は2/28に入手している。

この本は,農耕が開始されて以降の人間の経済活動を,そのような活動を支えた政治・社会や人のあり方,思想との関連で追っていく「経済史」であると共に,至る所で人と経済,社会,自然の全体的な関係をどう整理すればいいのかを執拗に問いかけ,回答,記述していこうとしており,読者の頭の中はどんどん整理されていく(はずだ)。ただそのような記述が,各所に散在しているので,その限りでは「わかりにくい」ところもあるが,あまり気にならない。

たとえば,財・サービスを生産する4つの関係として,投入された労働力が商品か,非商品か,産出された財・サービスが商品か,非商品かをあげ,商品―商品以外の領域(象限)については,市場で調整されていない,その規模は小さくないという指摘は,なるほどと思える(172~174頁,ただし元となるの整理は大沢真理とある。)。

あるいは,人の経済活動の外に,人間=社会の活動として,思想・宗教,知恵,技芸,力の4領域があるが,「むろん、複数の領域にまたがる活動はあります。たとえば、力の行使(戦や乱闘)にも思想や知恵や技の作用は不可欠ですし、また統治者の政策、経営者の戦略、市民運動や労働運動の活動方針など(いずれも現実に何らかの働きかけをして、課題を解き、よりよい状態をもたらそうとする行為の束)は、思想・宗教によって与えられる価値判断で方向性が定まり、知恵で過去と現状を正確に理解し、またありうべき将来を予測し、技芸を用いて現実の人間=社会や自然に働きかけ、そして力で人びとの振る舞いや立場を律することによってなされる総合的な行為群です。何らかの価値判断(何かを選び取り、何かを捨てること)を含まない「自然体の」政治や経営などありません…つまり、科学だけでは政策は立案できません。政策の方向性を決定するのは思想・宗教であり、実際に政策を実施するには技芸と力が必要です。また、技だけがあっでも、それを用いる向きが定まらなければ無意味ですし、現実を相手に技を行う力がなければ無効でしょう。むろん、思想にも科学にも技芸にも基礎付けられない力は、文字通り剥き出しの暴力であって、何ら望ましい結果をもたらさないことは明らかです。思想・宗教、知恵、技芸、力という行為の四領域を知っておくと、誰かが何か言い、また行うことが、どの領域に属しているのか、どの領域に基礎付けられているのかがわかるようになります。」(93,94頁)という記述も役に立つ。

そのほかにも目白押しだが,私はまだ十分に咀嚼して紹介できるほどには本書を読み込んでいないので,下手に紹介すると読者の意欲をそぐ可能性もあるのでやめておく(なお発売直後にも関わらずAmazonで高評価されている。今後,チャチャが入るだろうが。)。

たぶん今後一番議論を呼ぶのは,著者が「経済はなぜ成長するのかという問いに対して,本書は,まず,人とは際限のない欲望を備えた動物であるから,その欲望を充足し続ける-この欲望に際限はないので,充足してもまた新たな欲望が湧き起こり,それを充足する-ことが,経済成長の原動力だったのだという仮説を提示しました。そのうえで,前近代,近世,近代,現代の各時代について,際限のない欲望がどのようにして成長の原動力たりえたのかを考察しました」(512頁)と「際限のない欲望」という表現を出発点にしたことだろう。著者が,バナナの例を挙げているから困るのだが,著者自身は,「さまざまに際限のない欲望」と表現し,多様な対象,形態,程度での「際限のない欲望」を意識しているのに(29,30頁。ただしこの箇所は珍しく整理が不十分だ。),おそらく,「際限のない欲望」批判が横行するのではないかと思う。

いずれにせよ,この本は,経済論,社会論,政治・行政論,思想論,人間論全体の中で道を見失わないためのよくできたコメント付き「地図」として利用できる。この本を,十分に活用したい。ただし,パソコン,インターネット,AIで劇的に変わりつつある<いま>の経済の見立ては全く不十分であるし,例えば交換,分業による人の進化を追う「繁栄」(著者:マット・リドレー)と読み比べれば,人の経済史が,もっとメリハリをつけて理解できよう。

<No.2 中高の教科書でわかる経済学 マクロ編> 評価:〇

「経済史」で使用される様々な概念のうち,GDP,生産性,貿易,日本の経済成長,財政,経済・金融政策等々を理解するために「中高の教科書でわかる経済学 マクロ編」(著者:菅原晃)を紹介する。マクロ経済学の本は,ともすれば現在の世の中で横行している「謬見」を相手にせず,さらには現実とも遊離した「数学遊戯」になっている感があるが,この本はかなり戦闘的に「謬見」と戦おうとし,その根拠を「数学」ではなく,きちんとした学者の「監修」を経ているであろう中高の教科書(資料集)の記述を引用することで,説得材料にしているので,わかりやすい。内容に多少の疑問はあるが,8割ぐらいの記述はあっているのではないか。これで足りなければ,これをもとにさらにきちんとしたマクロ経済学の本に進めばいいだろう。この本は,日本の現実を意識しているが,足りない部分は「日本経済入門」というたぐいの本で補えばいいであろう。

<No.3 ミクロ経済学の力> 評価:◎

消費者行動,企業行動,市場均衡等の市場メカニズム,及びゲーム理論,情報経済学については,「ミクロ経済学の力」(著者:神取道宏)を紹介したい。

この本は,ミクロ経済学の中級テキストということだが,数学は分かり安い範囲に抑えられており,内容を一度で理解するのはつらいが,何度も反芻すれば理解し,応用できそうだ。

この本が素晴らしいのは,著者が問題を自分の頭で整理して考え,説明しようという誠実さに満ちていることだ。世評も高いし,私も高く評価する。早く何回も読んで,飲み込みたい。

<No.4   経済は「予想外のつながり」で動く>  評価:〇

No.2やNo.3の「経済学」については,その前提や,方法論に強い批判がある。ここでは「経済は「予想外のつながり」で動く」(著者:ポール・オームロッド)を挙げておく。この本の基本は,経済現象は複雑系であり,ネットワーク,特に急速に広がったインターネットを通じた中での「私たちの行動モデルは人びとに次のようなやり方で意思決定をさせる。人は他人の選択を見て,それを真似する。いろいろな選択肢がどんな割合で選ばれるかは、それぞれの相対的な人気の高さで決まる。これが基本原理だ。それに加えて、小さな確率で,人はランダムに選択を行うことがある。具体的には、人はそれまで誰も選ばなかったまったく新しい選択を行うことがある。」ということから,これまでの経済学では処理できないということが基本だろうか。

更にこのような視点から,No.5の経営戦略や,No.6の公共政策が多くの場合失敗することを分析しており,十分な有用性がある。ただし,繰り返しが多く,「複雑系ネットワーク」として基本的に押さえておくべきことの記述を端折っているので(英米の「教養書」らしいが),評価は一段落下げた。

複雑系の科学は,ネットワーク理論を含めて,まだ十分に理解されていないし,No.1~No.3とNo.4以下の経済学,経営学等々と十分に融合しているとは,いえない状況であろうが,マンデブロを紹介したナシーム・ニコラス・タブレの「ブラック・スワン」や「反脆弱性」,マーク・ブキャナンの一連の著作,ダンカン・ワッツの「偶然の科学」等が参考になるだろう。IT,AIを使いこなすためにも,必須の観点である。

<No.5 パーソナル MBA> 評価◎

「経済史」の現実を,マクロ経済学,ミクロ経済学によって,より科学的,論理的に理解すれば,次は,企業はどうやって儲けるんだろう,そもそも価値をどうやって創造すればいいんだろうという「ビジネス・経営」領域の問題になる。「ビジネス・経営書」はそれこそ世の中に満ち満ちているが,「この一冊」として,「Personal MBA」(著者:ジョシュカウフマン)を紹介したい。

著者は,みずから「勉強フリーク」と称するように,勉強する方法に極めて意識的であり(「たいていのことは20時間で習得できる」という著書もある。),アメリカで「Personal MBA」というサイトを開設し,99冊のビズネス書を公開して人気を博している。この本は,価値創造,マーケッティング,ファイナンス,販売,価値提供に分けて,ビジネス手法を要約,紹介すると共に,人間の心,システム思考に各3章を割り当てて詳細に検討している。学者の本ではないが,極めて水準の高い本であり,特に,「価値創造」は参考になる。

この本がいささか抽象的だと感じれば,わが国で現実に生きていく方法について論じた「幸福の「資本」論― あなたの未来を決める「3つの資本」と「8つの人生パターン」」(著者:橘玲)を紹介しておく。クセはあるが,実践的だと思う。

<No.6 行政学講義> 評価:△

「行政学講義~日本官僚制を解剖する」(著者:金井利之)については,すでに紹介した。私としては,政府の活動や制度(立法,行政行為)を,主として人の経済活動との関係で分かりやすく網羅的に検討した本を紹介したいのだが(基本的な検討は「経済史」でなされている。),現時点では,非常に癖はあるが,行政の諸相を網羅的に検討しようとしているこの本を紹介しておく。

<No.7 この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた> 評価:◎

「この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた」(著者:著者ルイス・ダートネル)(原書は,「The Knowledge: How to Rebuild our World from Scratch」)は,何らかの原因で「文明」が崩壊したとき,人はどう方法で生きていくことができるのかを,「思考実験」した本である。

内容は,崩壊時に残された材料を利用する猶予期間,この時期を経て,農業/食糧と衣服/物質/材料/医薬品/人びとに動力を──パワー・トゥ・ザ・ピープル /輸送機関/コミュニケーション/応用化学/時間と場所をどうやって活用できるのかという自然科学的実践論である。

農業といったって,種,土壌,道具等々,あなたは何も知らないのではないの?とまさにそのとおりである。動力,工業,通信等々,私にはすべて「ブラックボックス」である。そういう人は当然生き残れない。

この本は,自然科学実践論といってもいいかもしてない。ちゃんと私たちが向き合っている現実の自然環境,物質を知るためにも,必読書である。

<No.8 決断科学のすすめ> 評価:◎

「決断科学のすすめ」(著者:矢原哲一)」については,一度「私たちの不安」で簡単に紹介したことがある。この本は「持続可能な未来に向けて、どうすれば社会を変えられるか?」という問題意識にたち,そのためのリーダーを養成しようというプロジェクトのためにまとめられたお薦めできる優れた内容の本である」が,「個人が持続的に生活していくためにはどういう活動を営めばいいかという「身過ぎ世過ぎ」の観点が抜け落ちている」と指摘した。これについては,上記で紹介したNo.1~No.7の本によって,欠落部分はなくなる。

そうすると,この本で指摘され,論じられていることが,きわめて現実的,実践的になる。内容も多岐にわたり,非常に面白い。十分に活用できるだろう。

 

社会を理解する方法・ツールを探す-年末・年始の頭の旅-

遅ればせながら社会と向き合う

私はある時期から政治や社会の問題に積極的には関わることをやめ,弁護士として,法によって縛られるのはもっぱら国家(立法,行政,司法)だという限りで,政治や社会の問題と関わればよいと考えてきた。政治や社会の方向付けについては,自信満々の多くの政治家,官僚,企業家,実務家,学者等々が,世界中にいたから。

そのときからずいぶん時間がたったが,どうも社会主義国の崩壊,生産性の向上,科学技術の進歩等々に関わらず,世界中の政治,経済,社会は,至る所でアップアップしており,暴力的衝突は絶えないし,貧富の格差も解消されない。これについて,誰かをつかまえて,「お前のせいだ」だけでは済まないようだ。

そういう中で私も「法とAI」の世界からもう一歩外に出て,遅ればせながら社会に向き合い,その問題解決と価値創造の一端を担いたいと思うようになった。そこでさびついた私の政治・経済・社会観を更新すべく,社会に向き合う最新の方法・ツールを探すことにした。

年末,年始に集めた本,読んだ本

このように考えて,年末,年始に,社会に向き合う方法・ツール足り得ると思われる本を集め,読み始めてみた。Kindle本を中心に,集めやすい本を集めただけで,網羅的ではない。過去集めた本について本棚をひっくり返すことはしなかったが,Kindle本で重要だとして触れられているような本は,引っ張り出した(事務所移転時に何千冊も処分(寄付)したので,見当たらないものも多い。読み始めたと言っても,あっちにフラフラ,こっちにフラフラの,ランダムウオークでの一瞥という方が正しい。

私の目的は,自分の何らかの動きにより社会がより良い方向に動くことは可能なのか,可能とすればその方法・ツールは何かを探すことだ。

社会を理解する方法・ツールのポイント

まず,人間や社会を考える上で,生命の誕生と進化,進化の結果として人間が進化論的には合理的なシステム1(ファスト思考)と,論理的・合理的なシステム2(スロー思考)せ獲得,使用していること,かかる人間が相互に複雑なネットワークを形成しその総体として社会を形成していること,が基本である。

そしてその社会において世界には数多くの統治組織が分立し,権力を背景にルールと貨幣を用いて,生産される価値を交換,分配,消費するというメカニズムが行なわれているが,可能であればそのシステムと複雑系ネットワークの関係を理解したい。

進化論,複雑系科学が出発点となること,人間相互の関係は,行動ゲーム理論で解明できそうなこと,人間相互の関係は自己組織化される複雑系ネットワークであることまではいいとして,そこから,後段のシステムの理解につながるだろうか。アベノミクスやヘリコプターマネーというマクロの経済政策が導き出せるだろうか。たぶんできないだろう。

ではどう考えたらいいのか。

ダンカン・ワッツの「偶然の科学」における指摘

スモールワールド理論の端緒を開いたダンカン・ワッツは,人間のありようがスモールワールドの複雑系ネットワークであることに関して「偶然の科学」で次のように指摘している。

「思慮深い人物なら、われわれがみな家族や友人の意見から影響を受けていることや、状況が重要であることや、万事が関係していることは内省するだけで理解できる。そういう人物なら、社会科学の助けを借りずとも、認識が重要であることや、人々が金ばかりを気にかけるのではないことも知っている。同じように、少し内省すれば、成功が少なくとも部分的には運の産物であることや、予言が自己成就予言になりがちなことや、よく練られた計画も意図せざる成り行きという法則に苦しめられやすいことも見当がつく。思慮深い人物なら、未来が予測不能で、過去の実績は未来の利益を保証しないことももちろん知っている。人開か偏見を持っていてときには理性を失うことや、政治システムが非効率や矛盾に満ちていることや、情報操作がときとして実態を葬ることや、単純な物語が複雑な真実を覆い隠しがちであることも知っている。すべての人開かほかの人間とわずか「六次の隔たり」でつながっていることも知っているかもしれない。少なくとも何度も聞いているうちにそう信じているかもしれない。つまり、こと人間の行動に関するかぎり、思慮深い人間にとっては自明に思えるもの以外で、社会科学煮が発見できそうなものというのは、たとえそれが見つけがたいものであっても、現実には想像しにくい。しかしながら、自明でないのは、こうした「自明の」事柄がどう組み合わさっているかである。」

私は,できるだけ「思慮深い人物」として,ここに掲げられていることが自明に思える地点に立ちたい。そして,それらがどう組み合わさって社会のメカニズムにつながっているかは,結局,わからないというのが正しく,そういう場面(要するにマクロの政治,経済政策だ。)に口角泡を飛ばす暇があれば,少しでも現場で「組み合わせ」の実践を重ね,中距離での,問題解決や,価値創造につなげたい(ワッツが同書で力説しているのも「多分」そういうことだろう。)。そういう場面では,ゲーム理論,ミクロ経済学,行動経済学,行動ゲーム理論がとても役に立つだろう。そしてそれを支えるのは,コンピューターサイエンス,AI,データ処理(因果推論)であろう。大分頭がすっきりした。

ところで,私はある日Kindleで,「現実に役立つかどうかは、経済学を評価する重要な基準ではない。超一流のゲーム理論が教える、ほんものの洞察力。優れたモデルは、感性を豊かにする。社会を見る眼を深く鍛える本。著者の人生にひきつけながら、ゲーム理論、交渉、合理性、ナッシュ均衡、解概念、経済実験、学際研究、経済政策、富、協調の原理などの基礎概念が語られる」という触れ込みの,「ルービンシュタイン ゲーム理論の力」を,うっかりクリクしてしまった。内容が触れ込みにふさわしいかどうかはわからないが,今思えば,大事な観点のような気がする。

私が年末,年始に集めた本をまとめておこう。このぐらいあると,本当に読みでがあるし,使いでがある,というより,一巡するだけで大変だ。

社会を理解する方法・ツールとなると思う本

進化・遺伝

ゲノムが語る人類全史 アダム・ラザフォード

進化は万能である マッド・リドレー

ファスト&スロー ダニエル・カーネマン

複雑系科学総論

歴史は「べき乗則」で動く――種の絶滅から戦争までを読み解く複雑系科学  マーク・ブキャナン

人は原子、世界は物理法則で動く―社会物理学で読み解く人間行動 マーク・ブキャナン

市場は物理法則で動く―経済学は物理学によってどう生まれ変わるのか? マーク・ブキャナン

偶然の科学 ダンカン・ワッツ

COMPLEXITY: A Guided Tour  Melanie Mitchell

スモールワールド・ネットワーク

複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線 マーク・ブキャナン

スモールワールド・ネットワーク ダンカン・ワッツ

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力 ニコラス・A・クリスタキス

経済は「予想外のつながり」で動く ポール・オームロッド

マンガでわかる複雑ネットワーク 今野紀雄

ゲームの理論

ゲーム理論の思考法 川西 諭

戦略的思考とは何か  エール大学式「ゲーム理論」の発想法 アビナッシュ・ディキシット

戦略的思考をどう実践するか エール大学式「ゲーム理論」の活用法 アビナッシュ・ディキシット

はじめてのゲーム理論 川越 敏司

行動ゲーム理論入門 川越 敏司

ゲーム理論による社会科学の統合 ハーバート・ギンタス

ミクロ経済学

ミクロ経済学入門の入門 坂井 豊貴

ミクロ経済学 戦略的アプローチ 梶井厚志

ミクロ経済学の力 神取 道宏

実験ミクロ経済学 川越 敏司

マクロ経済学

マクロ経済学の核心 飯田 泰之

ヘリコプターマネー 井上智洋

MONEY チャールズ・ウィーラン

ゼロから学ぶ経済政策 日本を幸福にする経済政策のつくり方 飯田 泰之

実験マクロ経済学 川越 敏司

行動経済学

実践 行動経済学 リチャード・セイラー

愛と怒りの行動経済学 エヤル・ヴィンター

ずる 嘘とごまかしの行動経済学 ダン・アエリー

社会・政治・法

モラルの起源―実験社会科学からの問い 亀田 達也

大人のための社会科–未来を語るために 井手 英策

21世紀の貨幣論 フェリックス・マーティン

経済史から考える 発展と停滞の論理 岡崎 哲二

負債論 デヴィッド・グレーバー

ソーシャル物理学 アレックス・ペントランド

スティグリッツのラーニング・ソサイエティ スティグリッツ

政治学の第一歩 砂原庸介

シンプルな政府:“規制”をいかにデザインするか キャス・サンスティーン

避けられたかもしれない戦争―21世紀の紛争と平和 ジャン=マリー・ゲーノ

ビジネスパーソンのための法律を変える教科書 別所直哉

法と経済学 スティーブン・シャベル

方法論

創造の方法学 高根 正昭

「原因と結果」の経済学―データから真実を見抜く思考法 中室 牧子

原因を推論する:政治分析方法論のすゝめ 久米郁男

データ分析の力 因果関係に迫る思考法 伊藤 公一朗

計量経済学の第一歩 実証分析のススメ 田中隆一

法と社会科学をつなぐ 飯田 高

社会科学の考え方―認識論、リサーチ・デザイン、手法―野村康

 

謹んで新春のおよろこびを申し上げます。

 皆様方にとってこの一年が希望に満ちた年でありますように心よりお祈り申し上げます。

 中高年もだいぶ上の方になると,体の調子がどうもねえということが多くなります。私もこれまでは,飲み過ぎさえやめれば何とかなったのですが,どうもそれだけではだめなようです。

 今年読んだ本のなかで一番気に入ったフレーズを紹介します。

 「ジエンド・オブ・イルネス」(日経BP社)という本ですが,「進化は,人間が日焼けしようと,皮膚がんになろうと,おかまいなしだ。なぜなら,日焼けも皮膚がんも,生殖能力に影響しないからだ…がんになるのが,たいてい子どもを持つ年齢を過ぎてからなのは,偶然ではない。進化は,子どもを持つ可能性が低い40歳代,50歳代の人間を守ることには,あまり関心がないのだ。」,「自然は善良かもしれないが,愚かでもなければ,情け深くもない。年寄りにエネルギーを注ぐような無駄はしないのである。したがって,体が新しい生命を世の中に送り出せなくなった後は,私たちは自分で自分を守るしかない。」。

 誰でも知っていますが,自分で自分を守る方法は,適切な食動考休の実行です。これがなかなか…

   平成30年 元旦 

「「人工超知能」 -生命と機械の間にあるもの-」を読む

著者:井上智洋

後半は混乱している?

著者は,AIに堪能な経済学者ということだが,私は「人工知能は資本主義を終焉させるか」という著者と齊藤元章氏(医師で,スパコンの開発者だが,つい最近詐欺で逮捕されたことを知り,いささか驚いた。)との対談を読んでいて,経済分析はさておき,著者のAI論が知りたくなって,急遽,この本を読んでみた。

後半の哲学論は混乱していてどうかとの書評が目立つ。確かに第4章まではお薦めである。特に「第3章 機械学習とディープラーニング」はよく整理されているし,「第4章 汎用AI」で,「強いAI」とは違うアプローチがあることがわかった(といっても東大の松尾さんが推進しているので,知らないほうが「遅れていた」のであるが。)。

哲学論はどうか

第5章から第7章の哲学論だが,「第6章 ターミネーターは現実化するか?」は,趣味の領域の議論として横に置いていいのでないか。

「第5章 AIは人間の知性を超えられるか?」は,題材はいいが,入口の議論がわかりにくいうえ,何となくもたもたした議論が続く印象で,ここで読者が引いてしまうのかも知れない。

「第7章 AIに意識は宿るか?」は,私は好きな議論ではあるが,厳密な議論というより,端緒のアイデアの羅列という感じだ。哲学者はどう思うか。こういう議論ができるのは,おそらく次で紹介する「AI社会論研究会」でのやり取りがあるからだろう。いいことだと思う。

AI社会論研究会

なお著者は,理研の高橋恒一さんらと一緒に,「AI社会論研究会」を設立,運営している。同研究会は,「「人工知能が社会に与える影響」について議論する会です。 一口に「社会」と言いましたが、哲学(Humanity)、経済学(Economics)、法学(Law)、政治学(Politics)、社会学(Sociology)といった多様な観点からのアプローチを目指しています)」とのことである。

最新の研究会は,「ロボット・AI と医事法〜医療過誤を中心に〜」,「対話システムにおける諸課題~技術・サービス・倫理の側面から~」,「理化学研究所・未来戦略室」,「How to Grasp Social Shaping of AI in East Asia」とか,楽しそうである。最後の講演者は,進化学の佐倉統さんである。紹介を見ると「専攻は進化生物学だが,最近は科学技術と社会の関係についての研究考察がおもな領域。長い長い人類進化の観点から人間の科学技術を定位するのが根本の興味である」とある。

 

詳細目次

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AIの最先端を知る

AIのわかりやすいとらえ方

今AIは何を目指しているのだろうか。

カーネマンのシステム1(直観的ないし無意識的思考)とシステム2(論理的思考)を持ち出すと,人間の思考は,システム1とシステム2の複雑な絡み合いで成り立っているが,生物誕生以来の進化と共にあるシステム1が圧倒的な影響力を持つと共に繁殖,生存レベルで優れているが,意識(言語)により生まれたと思われるシステム2は,科学を生み,宇宙,物質,生命を解読しつつある。

これを踏まえれば,AIは,これまでコンピュータが扱ってきた人間の論理的思考をはるかに凌駕するシステム2分野に,苦手とするシステム1分野を組み込もうとする動きだととらえることができよう。そしてコンピュータが,人間より高度のシステム1とシステム2の両者を備えれば,「汎用人工知能」の誕生といえるのだろう。ただ,それだけではどうも足りないような気がするが。

例えば,AIの動きにばかり気が取られていると,「古典を読め。歴史を知れ。」といわれると,「?」となってしまうが,少ない観察材料とほとんどない科学的知見から事柄の本質を見抜く「古典」,人のした数少ない社会実験から人間を解明する「歴史」はいずれも貴重な資産である。人はそこから学べるが,さてAIは?これは難癖に近いかもしれない。

AIの最先端を追う人々

AIの最先端を追う人々の様々な動きは,複眼的にみる必要があるだろう。

今これを開発しつつある科学者,技術者,企業は,コンピュータやインターネットが持つシステム2の能力を背景に語るので,とても大きな「存在感」があるが,よく考えれば,利用しているのは,本人自身の理科系的センスのシステム1とシステム2であるから,これまでの科学史どおり,玉石混交,試行錯誤を繰り返し,正しく未来を切り開く試みはごく僅かであろう。だがそれで十分だ。

一方,これを自身の生産活動に持ち込んで利用したいと思う人々がいる。希望と利益の両者に引っ張られるユーザーたちである。

さらにこの両者の間に介在して利益を得ようとする,販売者,ブローカー,評論家がいる。一番目立つのはこの人たちだろう。

その外枠に私のように,AIが現在何であり,近い将来的どうなるのかに,ゾクゾク,わくわくしながら随伴する人々がある。ただし私は,これを法というルールの改革に使いたいと思っているので,ゲーマーよりは,少しはいいか,どうか?

AI技術の最先端を学ぶためには

IT・AIの基礎は大事だが,玉石混交,試行錯誤を繰り返しているAI技術の最先端からも目が離せなくなる。

そのわかりやすい導入として,今私が目を通している「エンジニアのためのAI入門」はお薦めだ。おって,本の森で紹介したいと思うが,ぼやぼやしているとすぐに古くなってしまいそうだ。その場合は,この本の出版元がやっている「Think It」というWebを見ていただきたい。

AI技術の最先端を知るリンク集

AI技術の最先端ということであれば,それに取り組んでいる「人工知能学会」「NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)」のWebサイトを見るのがよいだろう。

さらに個別のリンク集は,前者では「私のブックマーク」として紹介されており(更新情報はこちらにあるようです。),後者ではその前身の「汎用知能研究会」のリンク集がある。それぞれのところから辿っていけば,海外の情報も得られるであろう。