「逆問題の考え方」を読む

結果から原因を探る数学

一言コメント

充満したおやじギャグと展開された数式の間には深い闇がある。

入口にて

とても読んだとはいえないけれども

私はこの本の数式部分は飛ばし読みするしかないけれども(もっとも数学の本だから論述の大部分は数式に支えられているが),活字部分を追っていくだけでも,新鮮な感動(快感)を覚えた。数式部分がわずかでも追えれば,その感覚ははるかに深まるだろうと思われるが,この本は数式に「暗い」私に,過去の不勉強の悔恨を強いる。

何が書かれているのか

逆問題とは普通「現象の原因を観測結果から,法則に基づく逆のパスを通して,定量的に決定あるいは推定する問題を総称していう」が,この本では「分割された要素(=原因)達のある規則(=法則)に基づく積み重ねで得られる包括(=結果)から要素を決定または推定する問題」と定義される。具体的には,後記の目次を見ていただければいい。

私がこの本のほとんどが分からないまま最後まで目を通したのは,取り上げられた恐竜の絶滅とか,海洋循環逆問題が面白いこと,それと逆問題の解は,観測誤差に対して鋭敏になるとの指摘があること(それは,観測データによっては解が存在しない,その点に目をつむって現実には解があるとしても,解はパラメーターの変動に対して安定にならない非適切性が原因であること),そしてこのような非適切問題について,適切問題に近似しつつ解いていく「正則化法」があるが,それは数学自身の役割への問いかけであること,等が面白かったからである。

例えば,ダーウィンの「進化論」も。逆問題かなあとか,複雑化科学でいわれるバタフライ効果も「観測誤差に対して鋭敏になる」ことと関係があるかなあと思ったりもした。

あと,「自然現象はなぜ数式で記述できるのか」という新書があって,筆者は「人間にはまったく関係がない純粋な自然現象が,自然界に存在するわけではなく,100%人間が創造した数式で完璧に記述されるわけです。不思議なことではありませんか。私には,これが身体が震えるほど不思議で仕方がないのです。」との感想を繰り返し,なにやらSomething Greatを持ち出すのだが,この本の筆者のように「もともと,数学は自然現象を理解するための学問ではない。しかし,結果的には自然現象を理解するのに決定的な役割を果たしてきた。これもまた,数学が実在として自然に組み込まれているからである。」との記述の方が,私にはよほど合点がいく。ただいずれにせよここでの私の感想は「素人の戯言」に過ぎない。

オシツオサレツ(※①)

耕作中

出口と展望

耕作中

書誌と評価

書名  逆問題の考え方
著者(編者)  上村豊
出版社  講談社ブルーバックス
AMAZON  ここをクリック
本のタイプ(※②) ①参照・②簡単・③そこそこ・④かなり・⑤ものすごく
読込度(※③) 眺め読み・点読・通読・精読・熟読  →
評価 ◎・〇・△・×・?
ISBN  9784062578936

目次

  • ■第1章 逆問題とはなにか
  • 未知なるもの/内部を探る/逆問題の規定/誤差に対する鋭敏性/演算の方向/重力探査/積分方程式と逆問題
  • ■第2章 史上最大の逆問題
  • 逆問題の哲学/衝突仮説/地上からの隕石推定/衝突の論文/恐竜絶滅のクレーター探し/チチュルブクレーターの直径/決定的証拠
  • ■第3章 振動の逆問題
    振動と順問題/バネの等時性/振り子の運動/ホイヘンスの振り子/逆問題/逆解析/追加すべき観測データ/最終回答/からくり
  • ■第4章 プランクのエネルギー量子発見
  • 壮麗な逆問題/黒体放射/1段目の滝、放射公式/新たな展望/2段目の滝、エネルギー量子の発見/逆問題:エネルギー量子の決定/プランクからアインシュタインへ
  • ■第5章 海洋循環逆問題
  • 海洋学と逆問題/コリオリの力と地衡流/地衡流の運動方程式/地衡流の力学計算/基準速度を決定する逆問題/逆解析の原理/逆のパス
  • ■第6章 逆問題としての連立1次方程式
  • 最小2乗解/過剰決定系・不足決定系/最小2乗解の方程式/長さ最小の最小2乗解/ムーア-ペンローズ逆行列/特異値分解
  • ■第7章 逆問題のジレンマ
  • 正則化法/クイズ/チホノフ正則化解/特異値分解とチホノフ正則化/積分方程式の不安定性/逆問題源流探訪/放射性物質逆問題の正則化解
  • ■第8章 量子散乱の逆問題
  • 量子力学速成コース/シュレディンガー/量子散乱/ハイゼンベルクのS行列/散乱の逆問題/逆スペクトル問題/非線形波動

参考

※① オシツオサレツは「哲学入門」(戸田山和久著)から拝借。もともとは,ドリトル先生シリーズにでてくる動物オシツオサレツ(Pushmi-pullyu)の翻訳らしい。

※② 「本のタイプ」は,佐藤優さんの「読書の技法」が紹介する,②簡単に読むことができる本,③そこそこ時間がかかる本,⑤ものすごく時間がかかる本に,①必要なときに参照する本,④かなり時間がかかる本を加えて,5分類にした。

※③ 「読込度」は,M.J.アドラーの「本を読む本」に準じ,第2レベル「点検読書」を,「点読」,「通読」に,第3レベル「分析読書」を「精読」に,第4レベル「シントピカル読書」を「熟読」にし,さらに,それ以前の段階の「眺め読み」を加えた。紹介する時点では,ほとんど「眺め読み」,「点読」,「通読」だが,将来,より詳細な読み方をする必要があると感じているときは→を付加する。

読んだ本のまとめ方-技術編-

読んだ本を頭に定着させるために

「読書法と記憶法をめぐって」に書いたように,「本を読むことの目的が(単なる楽しみでなく)もう少し実践的なものであれば,その具体的な目的に資するように,読んだ本の内容のうち,私にとっての必要な部分(重要な部分)を効率的に整理して取り出し,頭に定着させる必要があるだろう。私は,今までこのようなことは全く行ったことがないが,さてどうしたらいいのだろうか。」。ここでは「私にとっての必要な部分(重要な部分)」をどのように選択するかではなくて,これを実現するための技術的なことを検討してみる。

当面の目標は,本を読む過程でセレクトした情報を,以後,自由自在に確認したり,使用したりすることができるように電子情報として活字化することであるといえるだろう。そのための方法としてはセレクトした情報について,①手書きで筆写したものを活字化する,②読んで録音したものを活字化する,③本の印刷された活字をスキャンして活字化する,④Kindle本の電子情報を取り出すということが考えられる。

「読書法と記憶法をめぐって」で紹介した「本当に使える勉強法」は,記憶することとも絡んで,重要な本は何回も読んで重要部分を抜粋し,更にその部分を音読して記憶することを重要視している。②である。音読した部分を,活字化するために,「ICレコーダー+音声認識ソフト」が必要となる。

ICレコーダー+音声認識ソフト

ICレコーダー

私もICレコーダーはこれまで何点か購入し,思いついたことを録音したり,仕事上の打ち合わせ等を録音したりしたが,基本的に聞き直すのが面倒で煩わしいという問題がある。ただ録音の質はどんどん良くなっていることを実感していたので,音声認識ソフトがしっかりしてくれば活字化に役立つだろう。

私の持っているもので一番新しいものもだいぶ古くなったが,「SANYO ICR-PS501RM 」だ。

文字化(音声認識)ソフト

いままでドラゴンスピーチと,AmiVoiceを購入したが,これも実用レベルには今一だったので余り使わないまま,どこへ行ったか分からないので,新たにgoogleの音声認識を利用するという「Voice Rep Pro」を購入してみた。レビューを見る限り,相当使えそうだ,

スキャン+OCRソフト

本の該当部分をスキャンし(コピー機でもいいし,スキャンできるマウスもある。),OCRソフトで文字化すればいい。③だ。これは時々やっている。

Adobe Acrobatでは、スキャナーからの読み込み・テキスト認識・PDF への変換が同時に行えるらしい。この機能は使っていなかった。

手書き文字の活字化

これはだいぶ前から,ぺんてるが商品化していたが,考えてみれば極端な悪筆の私の字がそうそう活字化されるわけもなく,全く役に立たなかった。

ただ最近,スマホやevernoteを利用して,手書き文字の活字化も相当実用化してきたらしいが,悪筆の私には,所詮,無理な話だ。

Kindle本の電子情報の取り出し

本来ならこれが大本命になるはずだ。しかし,2年前にはじめてKindleを利用しはじめた頃,文中のある部分を選択して「ハイライト」すると,それが記録されて「読書メモ」ができるということだったが,多くの和書で,保存できる「ハイライト」数がわずかに限られていて,到底利用できないと思ったことを思い出した。他にページを画像として保管できるということもあったが,これは紙本のスキャンよりも扱いが面倒だ。あとSNSを利用して書き出すという方法もあるようだったが,私は未だにSNSは加入しているだけなので「公開」は考えなかった。ということで,大本命のはずが,読書記録を作るということでは全く役に立たないように思えた。今,当時目を通した「Amazon Kindle クリエイティブ読書術」という本の最後を見ると,ソーシャルマイページ「Amazon Kindle」の未公開のハイライトとEvwenoteで自分だけの「読書メモ」を作ろうという記事があった。これも含めてデジタル情報のKindle本の電子情報を利用した「読書メモ」について検討してみたい。

今少し簡単なやり方はないか

このようにしっかりと頭に定着させるために時間と手間をかけるべき本もあるが,多くの本はもう少し手軽に「記憶の片隅」にさえあればいいのではないかと思う。そのためには,ここで検討するような方法に基づいてワードプレスの投稿記事を作成するのは大げさすぎるだろう。簡単なメモだけ残すようなやり方も考えたい。

読書法と記憶法をめぐって

好きにすればいいのだけれど

数年前(がいつ頃かは定かではないが),私は年末になると「このミス」(このミステリーがすごい)を買って,今年はどのくらい売れ筋のミステリーを読んだか(目の付け所が良かったか)を確認するのが恒例であったが,最近はミステリーを買ったとしても,1年間に2,3冊だと思うので(今年は何を買ったかも思い出せないが),「このミス」には入っていないだろう。そこで今日(2014年12月23日),「このミス」だけでなく軒並みナンバーワンにランクされている「その女アレックス」を買ってきた。早速読んでみよう。アメリカのkindle本では新しいミステリーもすぐに販売されているので,今後は「見栄」で英語のミステリーを買う機会も増えるだろう。

本を読もうとする目的が,こういうことについてまとまって知りたいとか,新しい世界に踏み込みたいとか,とにかく面白そうだとかいうレベルであれば,どうであれ好きにすればいいのだけれど,それでもその目的に叶う本をセレクトするにはどうすればいいかとか,時間とお金を余り浪費するのも好ましくないいうとかいうこともあるから,読書法(読書術)の本に目を通してみたりもする。しかし大部分は,偉そうにとか,それでどうしたとか茶々を入れたくなる代物だから,結局,やっぱり好きにすればいいのだけれど,ということになる。

ただ本を読むことの目的がもう少し実践的なものであれば,その具体的な目的に資するように,読んだ本の内容のうち,私にとっての必要部分(重要部分)について,効率的に整理して取り出し,頭に定着させる必要があるだろう。私は,今までこのようなことは全く行ったことがないが,さてどうしたらいいのだろうか。

「本当に使える読書術」を読む

「本当に使える勉強法」というすでに絶版になったと思われる本があるが,私はそのプラグマティックな内容及びその毒舌ぶりを気に入っていた(でもそのまま死蔵されていた。)。改めて手に取ってみたが,その第2章は「本当に使える「読書術」はこれだ!」と題して,「④まずは「時間泥棒」対策を!」,「①「何を読むべきか?」の本当の答え」,「②「速読法」は結局,どれがベストなのか」,「③読んだ本の内容を,いかに頭の中に残すか」から構成されている。

著者らの問題意識は,読書術の要点は,①何を読むか,②どれだけ早く読むか,③読んだものをどれだけ頭に残すかだが,それ以前に④そもそも,読書時間をきちんと確保できているかが重要ということであり,上記の構成はこれに基づいている。私としては,特に②③が,「本当に使える」かに興味がある。詳細はこの本の記述に譲るとして,「本当に使える読書術」のエッセンスとして,次のようにまとめられている。

「本当に使える読書術」のエッセンス

  • ○再読は、最良の速読トレーニング法である。
  • ○少しでも多くの読書時間を確保する。
  • ○新聞、雑誌は最小限にして、どんどん読み飛ばす。これが読み飛ばす能力の養成につながる。
  • ○あらゆるところにすきま時間用の簡単な本を携帯し、目を通す。
  • ○「ツァイガルニック効果」を活用し、いつでも読書モード、勉強モードに戻れる。
  • ○得意科目は人の視線があるところでも勉強する。
  • ○入門書、マンガをフル活用する。
  • ○単行本も、新聞や雑誌やネットのように、不要な部分はどんどん読み飛ばす。
  • ○誰でもできる速読法=頭の中で早口で音読する→音読せずに読む→大切そうなところを探す感覚を身につける。
  • ○再読で、高速読みの練習をする。内容を記憶に残す。
  • ○本を通読したら、もう一度目次を読む。
  • ○読んだ本の重要そうな部分をICレコーダーに吹き込み、聞きなおす。
  • ○再読は、最良の速読トレーニング法である。

誰でもできる速読法として,「頭の中で早口で音読する」から出発しているのは好感が持てる。

ついでに「技術」としての記憶法について次のようにまとめられている。

「記憶法の正解」

  • ○覚える対象を極力減らす。
  • ○楽しそうなところから勉強してみる。
  • ○人といつしよに勉強する。
  • ○苦手なものは、図やイメージや映像で覚える。
  • ○図だけを見て、本文を思い出してみる。
  • ○覚えることは、「○○」は何か?」などと、問題形式で自分に問いかけるようにする(問題にすると、記憶に残りやすい)。
  • ○音読やICレコーダーで、耳からも記憶する。
  • ○勉強会は人材交流の場として割り切る。
  • ○大切なことは5回以上繰り返す。
  • ○読む本を半分に削り、その分を繰り返しにあてる。
  • ○勉強前にウォーミングアップ(過去のおさらい)、勉強後にクールダウン(その日のおさらい)を導入する。
  • ○無意味なものはゴロ合わせを考えてみる(ゴロ合わせを考えてみるだけでも、覚えられる効果がある)。
  • ○書いて覚えるのは最低限に。書く場合は大きな字で書く。

ICレコーダーは使えるか

これの内容を見ると「ICレコーダー」に録音しその音声情報を活用することが大きポイントになっているが,これは果たして可能なのだろうか。

録音の文字化も含めて,今後,検討してみたい。

KindleのWord Wiseーこれで洋書が読めるか?

Word Wiseとは?

2014年12月7日の夜,Kindle Paperwhiteで本を読んでいたら,いきなりアップデートが始まった。よくあることなので気にしないでいたら,今回はなぜかずいぶん時間がかかる。終了後に再起動されると,Word Wiseという新機能が使えるらしい。

たまたま読んでいた英文の本の右上のWord Wiseをオンにすると,行間が広がって,何個かの単語の上に小さな文字で英文で簡単な注釈が表示される(単語レベルがスライダーで調節して選べると書いてあるが,それがどこか今のところ分からない(その後,画面の右下のWord Wiseをクリックするとスライダーが出てくることが分かりました。)。もっとも表示されない単語についてはタップして従前の辞書機能が使えるが,こちらは表示までに少し時間がかかるのが難点だ。)。例えば「denigrate」の上に「to say critical things about」と表示され,更に「denigrate」をタップするとすぐに画面の3分のⅠ程度の大きさの別の画面が開き,その一番上に「denigrate(verb) その他の意味▶」,下の欄に,類義語として「besmirch,calumniate,defame」が,その下には「Merriam-Websterでの定義」が,4行ほどでてくる。「その他の意味」をクリックすると,別の画面が開き,「考えられる他の意味」として「to make seem less important」が出てきて,更にこれをクリックすると「Merriam-Websterでの定義」が出てくる。その画面の下には「この意味を使用」とあり,これをクリックすると,最初の小さな文字での注釈がそれに変更される。今はあるページでの一番難しそうな単語について説明したが,同じページには,「instituition」「deny」,「sppropriate」,「navigate」,「intuitive」等にも注釈がついている。

一見ややこしそうだが極めて使いやすい。念のため,AMAZONでの紹介は「Word Wiseは、対象のKindle洋書の読書中に出てきた難しい英単語に、簡単な同義語を表示するKindle電子書籍リーダーで利用できるサービスです。表示は自動で行われるため、その都度類語辞典や辞書を確認する必要はありません。その単語について詳しく知りたい場合は、そこをタップするだけでより詳細な定義や同義語が表示されます。自分の英語レベルに合わせて難易度を設定すれば、文中に表示されるヒントの数を調整することができます。」となっている。

評価

率直にいって素晴らしい機能だ。もっともこの機能が使える英文の本は限られているが(日本のAMAZONで今日現在5509という数字が出ており(2014年の12月末には9万2千を超えている。) ,その一覧も紹介されているので(こちら),これからはそれを一つの選択の基準として洋書の購入を考えるようになるだろう。

上記のWord Wiseの一覧は,最初は人気順で表示されているが,最初のページについては私はほとんど購入済みの本だ(トップは,何と「Capital in the Twenty-First Century」だ。)。

これを価格の安い順番に並べてみると10/345まで無料の本が並んでおり(百数十冊になるだろう。),その後も価格の安い本の順番で並んでいるので,英語学習者には,たまらない。

つらつらと見ていると,私は既にダウンロード済みの「On the origin of species」(種の起源)があることに気がついた。この本は読みにくいことで有名だが,これで読める(かも知れない。)。

「Capital in the Twenty-First Century」にしても「On the origin of species」にしても,このWord Wiseに加えて,辞書を「英辞郎」(Kindle本として購入出来る。)にすれば,少なくても単語レベルでの,英文を読む環境は最高だ。だんだん,言い訳が難しい時代になりつつあるなあ。

おまけ

英語の環境で思い出したので備忘のために書いておくが,私はパソコンで「WEBLIO辞書」サービスにも加入しているよ。これも使いでありそうだけど 。あとは翻訳ソフト(コリャ英和)も使えるようにしておこう。

「哲学入門」を読む 1

哲学入門 (ちくま新書)

哲学入門 (ちくま新書)

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戸田山 和久
筑摩書房
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最初のひとこと

今,私のいち押しである。諸学と実践の基礎となり得るか,要するに役に立つかどうかは,自分次第だ。熟読されたい。

入口で考える

まずは褒め称えよう

この本を何回かに分けてざっと目を通した段階だ。

AMAZONでの本の紹介には「神は死んだ(ニーチェもね)。いまや世界のありようを解明するのは科学である。万物は詰まるところ素粒子のダンスにすぎないのだ。こうした世界観のもとでは、哲学が得意げに語ってきたものたちが、そもそも本当に存在するのかさえ疑わしい。「ことばの意味とは何か」「私たちは自由意志をもつのか」「道徳は可能だろうか」、そして「人生に意味はあるのか」……すべての哲学問題は、根底から問い直される必要がある!科学が明らかにした世界像のただなかで人間とは何かを探究する、最もラディカルにして普遍的な入門書。他に類を見ない傑作です。」とある。

何の変哲もない書名である。今さらと思って,手に取る人も少ないであろう。でも偉そうである(本の中にもあの廣松渉先生も「哲学入門一歩前」しか書いていないという紹介があった。)。でも「普遍的な入門書」とか「他に類を見ない傑作」といえるかどうかは横に置くとしても,哲学畑でない人が,この本で書かれていることを気にしながら,あるいはこの基盤にうまく載るかどうかを確かめながら,自分のやっている対象について考察と実践を掘り下げていくのは,とても意味があると思う。

最初に結論をいうと,この本はこれから何度もここに戻って「諸学と実践」の基礎とすべき内容になりうる,これまでに余り見たことのない,「地平」を切り拓いているといえるだろう。だからまずは褒め称えよう。

簡単な概要

「序 これがホントの哲学だ」,「第1章 意味」,「第2章 機能」,「第3章 情報」,「第4章 表象」,「第5章 目的」,「第6章 自由」,「第7章 道徳」,「人生の意味――むすびにかえて」という構成で,序から2章が導入で(目的論的意味論),3章から4章が「言語論」,5章から結びが,人間の捉え方(「人間は目的手段推論という拡張機能をもったオシツオサレツ動物である」)を中心とした,自由と責任,道徳についての考察ということになるか。3章から5章が好きな人と,6章以降が好きな人に分かれるかも知れないが。前者が基礎論で,後者が不十分ではあるが応用論で,どちらも重要といえるだろう。なお論理がないじゃんとつっこもうと思ったが,戸田山さんは,浩瀚な「論理学をつくる」の著者だから,そこは何も言えないか。

さてと

戸田山さんの基本的なスタンスは,世界に存在するのはただ物質だけで,そこから生まれた最初の生命に端を発し,人間に意識,言語のようなあたかも物質でないような「内容物」がありそうでなさそうでやっぱりありそうなことついて科学的,発生主義的な進化論によって位置づけるということであろう。固有の哲学問題はもちろん,交換,生産という経済活動も,政治や社会,規範,制度等々の位置づけも,本当は充ち溢れんばかりの最新の科学的な知見のなかで位置づけるという作業をしたいのであろうが,まだ科学の蓄積が客観的に(プラス主観的にも)不十分で,哲学プラスαの枠組みで論じているから,書かれていることは骨皮だけだという気もしないでもない。

それに「わかりやすい」講義調の口調で書かれているが,一方でこれは先鋭な論点が曖昧になることもあるし,「生徒」である読者は講義に正解を求めてしまい何か戸田山さんがいう「正解」を得てそれだけで満足してしまう傾向も生じるような気もする。最初の頃に展開されている,チューリング・テストやサールの「中国語の部屋」は哲学マニアの人にはともかく,この例示がどうでもいい人には煩わしいだけだ。

でもこの本はそれを差し引いても余りある魅力がある。

参考文献の著者はほとんど知らないなあ

「正解」を自分で批判的に検討していくためには,参考文献が重要だ。それにしても,戸田山さんが取り上げている著者は概ねマイナーだ。

この本の中心に据えているのはルース・G・ミリカン。この人の本は「Varieties of Meaning」が「意味と目的の世界」として翻訳されているが,あとはKINDLEにもほとんど収録されていない。この本の翻訳が悪いとかみついていた人がいたが,そうではなくて,もともと前提的な知識なしではわからない本のようだ。この本を読めば分かりそうだ。

あとは,ドレツキと,デネット。二人はそれなりに知られている人で,KINDLEだけでなく,AUDIBLEもある。

それと一般的な参考書籍として,「セックス。アンド・デス」,「脳がつくる倫理」,「コウモリであるとはどのようなことか」が重要そうだ。全部,KINDLEにあるが,仮にこのような本を英文で読もうとしたらどうなるのだろう。

なお7章後半の,ペレベーmに依拠した「刑事責任論」は残念ながら素人ッポ過ぎる。私はここと,より根本的には,利他行動や信頼を支えるルールをつくることに興味がある。

これからの作業

この本について学生さんがワープロで何十枚にもなるレジュメを公開していたが,それよりもキーワードを連ねた2,3枚のレジュメをつくってみるのが良さそうだ。それとは別に各章で展開されている議論で私にひっかっかるものについては,可能な限り英文の参考文献も参考にしながら考えていきたい。

そこまではそこそこ行けるだろうが,果たして「出口」までいけるかどうか。アフォーダンスとオシツオサレツに導かれる手段目的推論でやってみよう(なんのことやら!)。

 

書誌と評価

書名 哲学入門
著者(編者) 戸田山和久
出版社 ちくま新書
AMAZON  ここをクリック
本のタイプ ①参照・②簡単・③そこそこ・④かなり・⑤ものすごく
読込度 眺め読み・点読・通読・精読・熟読  →
暫定評価 ・〇・△・×・?
ISBN 978-4480067685

参考

「本のタイプ」は,佐藤優さんの「読書の技法」が紹介する,②簡単に読むことができる本,③そこそこ時間がかかる本,⑤ものすごく時間がかかる本に,①必要なときに参照する本,④かなり時間がかかる本を加え,5分類にしました。

「読込度」は,M.J.アドラーの「本を読む本」に準じ,第2レベル「点検読書」を,「点読」,「通読」に,第3レベル「分析読書」を「精読」に,第4レベル「シントピカル読書」を「熟読」にしました。さらに,それ以前の段階の「眺め読み」を加えました。紹介する時点では,ほとんど「眺め読み」,「点読」,「通読」ですが,将来,より詳細な読み方をする必要があると感じているときは→を付加します。

オシツオサレツ

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出口と展望

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Kindle Fire HDの混乱と予想される栄光

入手

12月18日,日本で始めてKindle Fire HDが出荷され,私のところにも送られてきた。これを夜な夜な(そして昼間も)いじっているが,最近,少し忙しくて使い込みは不十分だが,現時点での報告をしておこう。

Kindle Fireとは一体何者か

Kindle Fire HDは,基本的にはKindle本(Kindle Book)を読むためのリーダーであるが,本機のためののゲーム,アプリの利用,Amazonで購入した音楽の再生,ネットやメール,FACE BOOK等の利用等ができる7インチタブレットである。独自OSというが,基本はAndroidであろう。旧型Kindle Fireはアメリカで既に2年くらい(多分)の実績があるので,ゲーム,アプリもそこそこ使えるだろう。画面や音質の綺麗さは申し分がない。基本はリーダーだが,タブレットPCとしても十分価値がある。

アカウントの結合

アメリカのAmazonでKindleを買い,Kindle Book(電子ブック)を買っていた人は,アメリカのアカウントを日本のアカウントに統合することができる。要するに日本で買ったKindle Fire HDで,アメリカで買ったKindle Bookを読むことができるということだ。ただ両方のアカウントで既に購入した実績のある人の場合,アカウントの結合はAmazonに依頼して行うことになる(メールで依頼できる。)。

混乱

現時点でアカウントの結合,その他について,相当の混乱,システムのバグがある。考えただけでもこれは相当複雑な話なので,今の時点ではやむを得ないのかも知れない。

まずよく分からないのが,アカウントを結合しても「居住国の変更」という手続を日本のアカウントですると,アメリカのAmazonの商品をドル建て買えるということなのだが,そんなことをしなくても今までどおりアメリカのAmazonのアカウントでKindle Bookを購入しても,Kindle Fire HD本体のシステムで読めるようである(これは既にアメリカのAmazonでKindleを購入していたからかも知れない。日本のAmazonでは,Kindleを購入しなくても,アップルやAndoroidの機器でKindle本が読めるが,アメリカのAmazonでは,少なくても以前はそれはできなかった。)。ただ,アメリカで購入しているKindle版の雑誌,新聞は,Kindle Fire HD本体のシステムに送信されるのだが,メニューにはその表示が出てこない。

特に訳が分からないのが,Amazonが買収したAmazonの一部となっているAudibleという朗読音(オーディオブック)の扱いである。これについてもKindle Fire HD本体のシステムに送信されていてそれを聞くことができるが,メニューには出てこない。一方,Andoroid用と思われるAudibleアプリでも聞くことができる。それぞれから日本の購入サイト?やアメリカの購入サイトにも接続できるのだが,そこで購入できない場合もあり混乱がある。アカウントの結合後,アメリカで購入したオーディオブックはKindle Fire HD本体のシステムでは聞くことができないようである。またオーディオブックとKindle Bookが連動するはずのImmersion Readingという機能も,まだ利用できないようである。

その他Kindle本の購入にも小さなバグは沢山あって,今暫く混乱は続くだろう。ただ,利用上どうしようもないという自体は今のところ経験していない。別のルートを辿れば何とかなる。ただAudibleで3ドル程度の購入をするのに,現金の選択肢が出てこず,クレジット(十数ドル相当)が使われてしまったことには憮然としてしまった。

KIndle本の世界

Kindle本はまだ数万冊だが,今後爆発的に増大するだろう。実際にもあっという間に増えている印象であり「ファスト&スロー」,「新しい市場のつくりかた」,「読書の技法」,多くの文庫本,新書がKindle本になっている。

Kindle本は,デジタルブックだからKindle Fire HDを利用して通読するのが容易であること,語句について国語辞典,英和辞典で検索できること,ページや語句にデジタルで印をつけたりメモを記入したりすることができる等の特徴がある。ただせっかくデジタル情報なのだから,目次を利用して全体の要旨を作ったり,自由に感想を記入することができるような仕様にできないものかと思う(できるのかも知れないが今のところ分からない。)。そういう意味で今日購入した講談社現代新書が画像データであったのは,いかがかと思う,写真や図表の多い書籍をそうすることはやむを得ないと思うが,画像データでは,データの利用ができないし,量も大きくなりすぎる。他のリーダー用に提供されている商品を転用し,販売する書籍を増大させる戦略かも知れないが,これでは今後の活用を削ぐ。

いずれにせよ,Kindle Fire HDとKindle本の動向からは,目が離せない。

Kindle本の世界

Kindle本の出現

私が1ヶ月ほど沈黙している間(といえば格好がいいが更新をサボっている間)に,Kindle Paperwhiteの出荷が始まった。それに先立ち日本のAmazon(co.jp)でもKindle本の販売が始まった。私が注文したKindle Fire HDは,まだ出荷が始まっていない。Kindle本の世界は,まだその入口が少し姿を見せたに過ぎない状況である。

現状では日本のAmazonの日本語の本は圧倒的に少ない。青空文庫の無料本や漫画を含んで数万冊であろう。一方,洋書はアメリカのAmazon(com)に匹敵する百数十万冊が用意されている。この現状を見て決まり切った論評,即ち,日本語の本が少ないので云々ということはできる。しかし最初は,本の分野でもよちよち歩きで始まったAmazon商法は,今やとんどの商品分野で圧倒的な力を発揮しつつある。洋書の分野と同様,4,5年立てば,少なくても数十万冊を擁し,日本で先行した電子ブックを蹴落とすのではないかと思う。いや,共存,共栄というべきか。

Kindle本体がなくても,日本のAmazonで買ったKindle本は,IpadやAnoroidでも読めることが分かったので,私はKindle Fireを入手するまでの繋ぎとして,少し古いAnoroidでKindle本読んでいる。これはそれまでアメリカのAmazonで買った本を読むのに使っていたが,設定を変えると日本のAmazonの本を読むことができるようになった(恐らく,同時に両方は読めないのではないか。)。

ただ,Anoroidでは,解像度も,本を読む上でのいろいろな処理も今一である(といっても,無料で英和辞典も,国語辞典も使える。)。

Kindle本が開く地平

しかしそれにしても,Amazon(co.jp)で検索したKindle本が,日本語の本であれ,洋書であれ,すぐに読めるという体験は圧倒的な快感である。青空文庫もパソコンでは読む気がしないが,Anoroidでは十分に読める。当然,Kindle Fireでは,普通の読書体験になるだろう。河口慧海の「チベット旅行記」の何と面白いことか。多くはない日本語の本も,今まで読まなかった類の本に目を向けてみようと思えば,新鮮な本もある。

今の時点で何を読んでどんな歓びがあるか,Kindle本での読書は,読書の有り様をどう変えるのかは,稿を改めることにしよう。

なお,Amazon(com)で買った本も,Amazon(co.jp)で買った本も,アカウントを統一すれば,日本で買ったKindle Fireで読めるようだ。そして設定を変えれば,どちらのAmazonでも洋書を買えるようである(当然安い方で)。

一言でいえば,お酒を飲むのよりずっと楽しい世界が広がりつつある。

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一口コメンント

文筆業を生業とし自らを厳しく律する佐藤さんであればこそ可能な!きわめてまっとうな読書論である。いい加減な読書家である私にもとても参考になる。ところで自然科学の本が出てこないが,佐藤さんの自然は神なのだろうか?

詳細目次

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「本を読む本」を読む

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原著:How to read a book

一口コメント

定評のある読書論である。今読んでも十分に参考になるが,「読書論」を読書するというのは,何となく滑稽だ。

本の森

「本の森」は,私が読んだor目を通したor買ったままになっている本から,現在取り組んでいることのために読み,あるいは好奇心,楽しみのために読んだ本の中から,備忘のために適当に選んで作成する,私自身のための主観的な資料集です。何かしないとその本を買ったことさえ忘れてしまうから!

一つの本を取り上げる「「・・」を読む」の外,ある分野の本んをまとめる「「・・の本」まとめ読み」も作成します。

紹介の仕方や記述について,どのようなスタイルが最も省力化できて,かつ有用かは,なお試行錯誤するしかないようです。ただAmazonとの連携は有用でしょう。

「本のタイプ」として,佐藤優さんの「読書の技法」が紹介する,②簡単に読むことができる本,③そこそこ時間がかかる本,⑤ものすごく時間がかかる本に,①必要なときに参照する本,④かなり時間がかかる本を加え,5分類にするのがよさそうです。

「読込度」は,M.J.アドラーの「本を読む本」に準じ,第2レベル「点検読書」を,「点読」と「通読」に,第3レベル「分析読書」を「精読」に,第4レベル「シントピカル読書」を「熟読」にし,さらに,それ以前の段階の「眺め読み」を加えるのが。適当だと思います。

最初は,本の紹介や評価に加えてこれも紹介しようと思ったのですが,煩雑ですね。本の紹介の仕方は,「適宜」がよさそうです。