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私に相談,依頼しようと思う方は,私が所属する「カクイ法律事務所」に電話(03-5298-2031)やFAX(03-5298-2032),または下記の「お問い合わせ」フォームを利用して,ご連絡・ご相談ください(事務所の所在と地図はこちらです。)。

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Ⅲ 更に現在,将来の社会が抱える様々な問題を解決し,価値を創造するにはどうすべきなのか,その中で法やルールはどうあるべきなのか等について「問題解決と創造を学ぶ」で考察し,情報提供します(こちらでリンク)。

これらを構成,補完する記事や私の日常を綴った記事を投稿する「ブログ山ある日々」(こちらでリンク)は,「 投稿 SITE MAP」(こちらでリンク),あるいは「最近の投稿」から順次「過去の投稿」に遡るか,アーカイブ,メニュー等を利用してご覧ください。なお最新の投稿は,この記事の次(下)の記事からになります。

これらのもう少し詳しい内容は,固定ページの「ようこそ」(こちらでリンク)をご覧ください。

 

 

社会の行方を読む本

未読・半読・一読の本 3 (180607)

最近,コーポレートガバナンスについての本を読み,派生してドラッカーにいき,更にこのWebに手を入れたりで,なかなか購入済みの本を読めないが,たまたまこの2,3日で,Kindleストアを検索していて,今後の社会がどうなるかについて書かれた(のであろう)「面白そうな本」を4冊見つけた。未読の本がたまっているので全部は購入はしていないが,落ち着き次第,購入して目を通してみたい。したがって現状はほとんど未読の本なので,この投稿は備忘という趣旨でとなる。

いずれもIT化,テクノロジー,グローバリゼーションを軸に,世界経済,社会,人間のこれからを考察した本であり,サンプル部分を読み,目次を一覧するだけでも興味深い。いずれもそこそこの値段がするが,Thank You for Being LateのKindle本だけは,1000円ちょっとである。

4冊は,以下のとおりである。

遅刻してくれて、ありがとう

遅刻してくれて、ありがとう(上) (下)常識が通じない時代の生き方 

著者:トーマス・フリードマン

原書

Thank You for Being Late: An Optimist’s Guide to Thriving in the Age of Accelerations  By Thomas L. Friedman

目次

Part1 熟考

1 遅刻してくれて,ありがとう

Part2 加速

2 2007年にいったいなにが起きたのか /3 ムーアの法則 /4 スーパーノバ /5市場 /6母なる自然

Part3 イノベーティング

7 とにかく速すぎる /8 AIをIAに変える /9 制御対混沌 /10 政治のメンターとしての母なる自然 /11 サイバースペースに神はいるか? /12 いつの日もミネソタを探して /13 故郷にふたたび帰れる(それに帰るべきだ)

Part4 根をおろす

14 ミネソタから世界へ,そして帰ってくる /〈その後〉それでも楽観主義者でいられる

シャルマの未来予測

シャルマの未来予測 これから成長する国 沈む国

著者: ルチル・シャルマ

原書

The Rise and Fall of Nations: Ten Rules of Change in the Post-Crisis World By Ruchir Sharma

目次

プロローグ ジャングルの奥地へ

序章 有為転変――国家の盛衰を見抜く10の評価基準

第1章 【人口構成】 生産年齢人口が増えているか――ロボットは人口減少への救世主になる

第2章 【政治】 政治サイクル――改革者はいつ俗物に変わるのか

第3章 【格差】 良い億万長者、悪い億万長者――お金持ちを見ればその国の将来が分かる

第4章 【政府介入】 国家による災い――政府の干渉が増えているか、減っているか

第5章 【地政学】 地理的なスイートスポット――地の利を最大限に活かしているか

第6章 【産業政策】 製造業第一主義――投資の対GDP比率は増えているか、減っているか

第7章 【インフレ】 物価上昇を侮るな――住宅価格の上昇率が経済成長率を上回り続けていないか

第8章 【通貨】 通貨安は天使か、悪魔か――経常収支赤字の対GDP比が3%以上、5年連続なら要警戒

第9章 【過剰債務】 禁断の債務バブル――債務の伸び率は経済成長率より高いか、低いか

第10章 【メディア】 「過剰な報道」の裏に道あり――メディアから見放された時が絶好のチャンス

第11章 優秀、平均、そして劣等――注目国の将来展望を格付けする

拡張の世紀

拡張の世紀―テクノロジーによる破壊と創造

著者:ブレット・キング

原書

Augmented: Life in The Smart Lane By Brett King

目次

序章 スマート化された生活

第1部 ディスラプションの250年

第1章 テクノロジーによるディスラプションの歴史 /第2章 「拡張」の時代 /第3章 姿を消すコンピューター /第4章 ロボットの優位性

第2部 スマート・ワールドの進化の仕方

第5章 Human 2.0/第6章 人間の「拡張」/第7章 ライフストリーム、エージェント、アバター、アドバイザー

第3部 「拡張」の時代

第8章 鉄道、航空機、自動車、住宅 /第9章 スマートバンキング、決済およびマネー /第10章 「拡張」世界における信頼とプライバシー /第11章 「拡張」都市とスマート市民 /第12章 新時代のエンゲージメント

世界経済 大いなる収斂

世界経済 大いなる収斂 ITがもたらす新次元のグローバリゼーション

著者:リチャード・ボールドウィン

原書

The Great Convergence  By Richard Baldwin

目次

序章

第1部 グローバリゼーションの長い歴史をざっと振り返る

第1章 人類の拡散と第一のバンドリング /第2章 蒸気革命とグローバリゼーションの第一のアンバンドリング /第3章 ICTとグローバリゼーションの第二のアンバンドリング

第2部 グローバリゼーションのナラティブを拡張する

第4章 グローバリゼーションの三段階制約論 /第5章 何が本当に新しいのか

第3部 グローバリゼーションの変化を読み解く

第6章 グローバリゼーション経済学の基礎 /第7章 グローバリゼーションのインパクトその変化を解き明かす

第4部 なぜそれが重要なのか

第8章 G7のグローバリゼーション政策を見直す /第9章 開発政策を見直す

第5部 未来を見据える

第10章 グローバリゼーションの未来

 

考えるべきこと2題

 

こういう本は楽しいのだが,ともすれば彼岸の話として「へえ-」で終わってしまうか,商売ネタにしようとスケベ根性を出してしまう。しかしIT化,テクノロジー,グローバリゼーションは,今後,しかももうすぐ,間違いなく私たち一人一人の生活・仕事・文化を直撃し,この国の企業と政府,さらには環境も直撃する。漠然と,社会,経済の問題と捉えるのではなく,生活,仕事,企業,政府,環境と,多面的に捉えたい。

せっかくアメリカの俊才が4冊もよりどりみどりで書いてくれているのだから,私たち個人と私たちが属する組織の問題として,いかに問題解決と創造に結び付けるかという観点で読まないともったいない。

ところでアメリカと言えば,トランプ氏の政治論は横に置くとして,貿易論はどうなっているのか。我が国も含めて政治家の奇想天外な言動に歯止めが掛からない。貿易については,最近出た「実証から学ぶ国際経済」が良さそうだ。これも追って紹介しよう。

ドラッカー あれこれ

「ドラッカー あれこれ」の種本

ドラッカーについて,備忘のために,あれこれまとめておく。参考にするのは「P.F.ドラッカー 完全ブックガイド」(上田惇生),「ドラッカー入門 新版」(上田惇生),「究極のドラッカー」(國貞克則)等である。

ドラッカーの略歴と「傍観者の時代」

ドラッカーは,1909年ウィーンに生まれ,ドイツ,イギリスを経て,1937年にアメリカに移住し,大学,大学院で教え,多くの本,論文を書き,2005年に死去した。

69歳の時に出版された半自伝の「傍観者の時代」には,1943年のGM調査の頃までに(1946年「企業とは何か」),ドラッカーと交流,関係のあった綺羅星のごとき人物の言動が挙げられている。ドラッカーがそのような人物と知り合うことのできる家に生まれ,その機会があったということでもあるが,ソ連と共産主義の迷走,第一次大戦,ナチスの台頭,殺戮,第二次大戦等の時代,社会の流れの中で生き抜いていく「真摯」な姿勢(ドラッカーの翻訳で多用される。)があったからこそ,その交流,関係を切り開くことができたのであろう。

まず「傍観者の時代」に挙げられた人名をあげてみよう。

おばあちゃん,シュワルツワルト家のヘムとゲーニア,エルザ先生とゾフィー先生,フロイト,トラウン伯爵と舞台女優マリア・ミュラー,ポランニー一家(マイケル,カール等),クレイマーとキッシンジャー,ヘンシュとシェイファー,ブレイルズフォード,フリードバーグ商会,ヘンリー・ルース,フラーとマクルーハン,アルフレッド・スローン,ジョン・ルイス等々が,生き生きと駆け抜けている。時代の激動の中で忘れられた人も多いが,フロイト,ポランニー,フラー,マクルーハン等々,びっくりする。ドラッカーの人生の重みが伝わってくる。また後述する「影響を受けた思想家」も多様である。

これらを基盤に,ドラッカーは,多くの単行本,論文を書いている。

次にドラッカーの著作をみてみよう。

著作

ドラッカーの著作は,三十数冊と言われるが,正確な数はカウントしがたい。と言うのは,抜粋集や名言集があったり,これらについて日本語版が先行し英語版が刊行されたりと複雑だ。英語版の著作は,下記の「BOOKS BY PETER F. DRUCKER」記載のとおりである。

日本語の抜粋集として,「はじめて読むドラッカー」3部作があり,「プロフェッショナルの条件」(自己実現編),「チェンジ・リーダーの条件」(マネジメント編),「イノベーターの条件」(社会編)で構成されていた。そのうち第2作を中心として「The Essential Drucker」が,第1作,第3作を受けて「A Functioning Society」が刊行されている。なお,その後「はじめて読むドラッカー」第4作として「テクノロジストの条件」が刊行されている。

その他,抜粋集として「ドラッカー365の金言」(The Daily Drucker)。名言集として「仕事の哲学」,「経営の哲学」,「変革の哲学」,「歴史の哲学」がある。

ドラッカーの著作として「経営学書」は2冊しかないというはなしがある。経営戦略の端緒を開いた「Managing for Results」(もともとは,「Managing Strategy」だった。),経営学としてイノベーションをはじめて考察した「Innovation and Entrepreneurship」である。その他は,多かれ少なかれ,社会,政治,歴史がらみであり,ドラッカーはジャーナリストであるという見方にも根拠がある。

BOOKS BY PETER F. DRUCKER

MANAGEMENT

The Daily Drucker /The Essential Drucker /Management Challenges for the 21st Century /Peter Drucker on the Profession of Management /Managing in a Time of Great Change /Managing for the Future /Managing the Non-Profit Organization /The Frontiers of Management /Innovation and Entrepreneurship /The Changing World of the Executive /Managing in Turbulent Times /Management Cases /Management: Tasks, Responsibilities, Practices /Technology, Management and Society /The Effective Executive /Managing for Results /The Practice of Management [Concept of the Corporation

ECONOMICS, POLITICS, SOCIETY

Post-Capitalist Society /Drucker on Asia /The Ecological Revolution /The New Realities /Toward the Next Economics /The Pension Fund Revolution /Men, Ideas, and Politics /The Age of Discontinuity /Landmarks of Tomorrow /America’s Next Twenty Years /The New Society /The Future of Industrial Man /The End of Economic Man

AUTOGRAPHY

Adventures of a Bystander

FICTION

The Temptation to Do Good /The Last of all Possible Worlds

ドラッカーに影響を与えた思想家

「P.F.ドラッカー 完全ブックガイド」に「ドラッカーに影響を与えた思想家」が紹介されている。参考になるので転載する。

社会生態学のルーツ─哲学、政治思想、経済、歴史、社会,そして小説すらも

 ウォルター・バジョット(1826ー1878)

アレクシ・ド・トクヴィル(1805ー1859)

ベルトラン・ド・ジュヴネル(1903ー1987)

フェルディナンド・テンニース(1855ー1936)

ゲオルグ・ジンメル(1858ー1916)

ジョン・R・コモンズ(1862ー1945)

ソースティン・ヴェブレン(1857ー1929)

継続と変革の相克を

ヴィルヘルム・フォン・フンボルト(1767ー1835)

ヨゼフ・フォン・ラドヴィッツ(1797ー1853)

フリードリッヒ・ユリウス・シュタール(1802ー1861)

技術の見方、社会における技術の位置づけ

アルフレッド・ラッセル・ウォレス(1823ー1913)

ジョゼフ・シュンペーター(1883ー1950)

言語に対する敬意

フリッツ・マウトナー(1849ー1923)

カール・クラウス(1874ー1936)

セーレン・キルケゴール(1813ー1855)

年表

1909…0歳。11月19日,オーストリア・ハいかくンガリー帝国の首都ウィーンに生まれる。父アドルフ(1876ー1967)は貿易省次官(のち退官して銀行頭取,ウィーン大学教授,アメリカに亡命してノースカロライナ大学,カリフォルニア大学ほか教授)。母キャロライン(1885ー1954)はイギリス人銀行家を父とする。ウィーン大学医学部を卒業後,チューリッヒの神経科クリニックで1年ほど助手をつとめた。開業することなく家庭に入ったが,当時としては珍しい女性神経科医。

1914…4歳。第1次世界大戦勃発。

1917…7歳。父親に精神分析学者フロイトを紹介され,強い印象を受ける。フロイト『精神分析入門』発表。

1918…8歳。11月11日,第1次世界大戦終結。ハプスブルク家は滅び,オーストリアは分割され共和国となる。

1919…9歳。ウィーンのギムナジウムに入学。授業は退屈でうんざりしていたという。

1927…17歳。飛び級で1年早くギムナジウムを卒業しウィーンを出る。ドイツに移住し,ハンブルグで事務見習いとして商社に就職。ハンブルグ大学法学部入学。大学入学審査論文は「パナマ運河の世界貿易への影響」。

1929…19歳。フランクフルト大学法学部へ編入。当時無名だった19世紀のデンマークの思想家キルケゴールを知り,読みふける。フランクフルトで米系証券会社に就職するも,世界大恐慌(暗黒の木曜日)で倒産。

1930…20歳。地元有力紙「フランクフルト・ゲネラル・アンツァイガー(フランクフルト日報)」の経済記者となる。

1931…21歳。入社2年後,副編集長に昇格。この頃から,ナチスの政権掌握を予測し,ナチス幹部に何度も直接インタビューする。国際法で博士号を取得。博士論文は「准政府の国際法上の地位」。この頃,後に生涯の伴侶となる下級生ドリス・シュミットと出会う。

1933…23歳。ヒトラーが政権掌握。初の著作『フリードリッヒ・ユリウス・シュタールー保守主義とその歴史的展開』を名門出版社モーア社より法律行政叢書第100号記念号として出版後,禁書とされて焚書処分。一度ウィーンに戻ってからロンドンに逃れる。地下鉄のエスカレーターでドリスとすれ違い再会を果たす。

1934…24歳。ロンドンのシティで,マーチャントバンクのフリードバーグ商会にアナリスト兼パートナー補佐として就職。ケンブリッジ大学で経済学名ケインズの講義を聴くも,肌に合わず。自分は経済学徒ではないことを確信する。雨宿りに入った画廊で日本画に遭遇。

1937…27歳。ドリスと結婚して,アメリカへ移住。『フィナンシャルータイムズ』他に寄稿。フリートバーク商会などにアメリカ経済短信を送付。

1938…28歳。『ワシントン・ポスト』他に欧州事情を寄稿。

1939…29歳。処女作『「経済人」の終わり』出版。『タイムズ』紙書評欄で,後のイギリス宰相チャーチルの激賞を受ける。ニューヨーク州のサラ・ローレンス大学で非常勤講師として経済と統計を教える。

1940…30歳。短期間,経済誌『フォーチュン』の編集に携わる。

1941…31歳。日米開戦直後(誕生日を迎え32歳)のワシントンで働く。フリーア美術館で日本美術に傾倒。

1942…32歳。バーモント州のベニントン大学で,教授として政治,経済,哲学を教える。アメリカ政府の特別顧問を務める。第2作『産業人の未来』出版。

1943…33歳。『産業人の未来』を読んだGM幹部に招かれ,世界最大のメーカーだったGMの組織とマネジメントを1年半調査する。アルフレッド・スローンから大きな影響を受ける。アメリカ国籍を取得。

1945…35歳。第2次世界大戦終結。

1946…36歳。GM調査をもとに,第3作『企業とは何か』を出版。「分権制」を提唱する。フォードが再建の教科書とし,GEが組織改革の手本とする。ここから世界中の大企業で組織改革ブームが始まる。

1947…37歳。欧州でのマーシャループラン実施を指導。

1949…39歳。ニューヨーク大学大学院経営学部教授に就任。大学院にマネジメント研究科を創設。

1953…43歳。ソニー,トヨタと関わりをもつ。

1954…44歳。『現代の経営』出版。マネジメントの発明者,父といわれるようになる。

1947…47歳。モダンからポストモダンへの移行を説いた『変貌する産業社会』出版。

1959…49歳。初来日。立石電機(現オムロン)などを訪問。日本画の収集を始める。

1964…54歳。世界初の経営戦略書『創造する経営者』出版

1966…56歳。日本の産業界への貢献により,勲三等瑞宝章を授与される。万人のための帝王学とされる『経営者の条件』出版。

1969…59歳。今日まで続く転換期を予告した『断絶の時代』出版。後年,サッチャー首相が本書をヒントに民営化政策を推進。世界の民営化ブームはここからはじまる。

1971…61歳。カリフォルニア州クレアモント大学院大学にマネジメント研究科を創設。同大学院教授に就任。

1973…63歳。マネジメントを集大成して『マネジメント』出版

1975…65歳。『ウォールーストリートージャーナル』紙への寄稿開始。以降20年にわたり執筆。

1976…66歳。高齢化社会の到来を予告して『見えざる革命』出版。

1979…69歳。半自伝『傍観名の時代』出版。クレアモントのポモナーカレツジで非常勤講師として5年間東洋美術を教える。

1980…70歳。いち早くバブル経済に警鐘を鳴らした『乱気流時代の経営』出版。

1981…71歳。GEのCEOに就任したシャッターウェルチと一位二位戦略を開発。『日本成功の代償』出版。

1982:72歳。初の小説『最後の四重奏』出版。『変貌する経営名の世界』出版。

1984…74歳。小説『善への誘惑』出版。

1985…75歳。イノベーションの体系化に取り組んだ『イノベーションと企業家精神』出版。

1986…76歳。雑誌への寄稿論文を集めた『マネジメントーフロンティア』出版。

1989…79歳。ソ連の崩壊やテロの脅威を予見した『新しい現実』出版。

1990…80歳。NPO関係者のバイブルとされる『非営利組織の経営』出版。東西冷戦終結。

1992…82歳。大転換期の指針を示す『未来企業』出版。

1993…83歳。知識社会の到来を指摘した『ポスト資本主義社会』,自らを「社会生態学者」と定義した『すでに起こった未来』出版。

1995:85歳。『未来への決断』出版。

1996…86歳。『挑戦の時』『創生の時』(英語版『ドラッカー・オンーアジア』)出版。

1998…88歳。『ハーバードービジネスーレビュー』誌の論文を集めた『P.F.ドラッカー経営論集』出版。

1999…89歳。ビジネスの前提が変わったことを示す『明日を支配するもの』出版。

2000…90歳。ドラッカーの世界を鳥瞰するための入門編として,日本発の企画「はじめて読むドラッカー・シリーズ」3部作『プロフェッショナルの条件』『チェンジーリーダーの条件』『イノペーターの条件』出版。

2002…92歳。雇用やマネジメントの変化を論じた『ネクストーソサエティ』出版。アメリカ大統領より最高の民間人勲章「自由のメダル」を授与される。

2003…93歳。「ドラッカー名言集」四部作,『仕事の哲学』『経営の哲学』『変革の哲学』『歴史の哲学』出版。

2004…94歳。『実践する経営名』出版。日めくリカレンダー風名言集『ドラッカー365の金言』出版。

2005…95歳。「日本経済新聞」にて「私の履歴書」連載,書籍化。「はじめて読むドラッカー・シリーズ」第4作『テクノロジストの条件』出版。11月11日,クレアモントの自宅で死去。96歳の誕生日になるはずだった1月19日,わが国にドラッカー学会が設立される。

2006…100歳の誕生日を祝う予定で生前に本人とともに企画した「ドラッカー名著集」12作品15冊,『経営名の条件』『現代の経営』より刊行開始。上田惇生著『ドラッカー入門』出版。

2007…名著集『非営利組織の経営』『イノベーションと企業家精神』『創造する経営者』『断絶の時代』『ポスト資本主義社会』『「経済人」の終わり』出版。生前ドラッカー本人より依頼を受けて取材執筆したエリザベス・ハース・イーダスハイム著『P・F・ドラッカー理想企業を求めて』出版。

2008…名著集『産業人の未来』『企業とは何か』『傍観名の時代』『マネジメント《上・中・下》』出版完了。『プロフェッショナルの原点』出版。

2009…『経営者に贈る5つの質問』『ドラッカー時代を超える言葉』山版。岩崎夏海著『もし高校野球の女子マアネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(もしドラ)発行。

2010…『【英和対訳】決定版ドラッカー名言集』『ドラッカー・ディフアレンズ』出版。上田惇生監修,佐藤等編著『実践するドラッカー【思考編】』出版。【行動編】

2011…ブルースーローゼンスティン著『ドラッカーに学ぶ自分の可能性を最大限に引き出す方法』出版,上田惇生著『100分de名著ドラッカーマネジメント』出版。上田惇生監修,佐藤等編著『実践するドラッカー【チーム編】』出版。「もしドラ」ブームを受け『マネジメント【エッセンシャル版】』100万部突破。

2012…上田惇生監修,佐藤等編著『実践するドラッカー【事業編】』山版。『マネジメント』(リバイスドエディション)出版予定。

 

 

「ドラッカーと会計の話をしよう」を読む

著者:林 總

ドラッカー経営学のケーススタディ第3弾だ

「もしドラ」,「もしドラ2」が,クリエーターが作った野球の物語によるドラッカー経営学のケーススタディだとすれば,本書は公認会計士さんが作った営利組織(イタリアンレストラン)と,非営利組織(病院)の物語によるドラッカー経営学のケーススタディである。著者の職業故というべきか,「もしドラ」より本書の方が地に足の着いた説明になっているし,ドラッカー経営学の内容も,はるかに理解しやすい。それに今だけかもしれないが,Kindle本が230円なので,「買い」である。

ドラッカー経営学のポイントは,「顧客の創造」であり,それを実現するためのマーケティング(顧客の現実,欲求,価値)とイノベーションである。これは営利組織,非営利組織に共通している。要するにドラッカーはこのことを状況に応じて変形させ,繰り返して述べているだけのような気がする。

これが頭に入っていれば,本書は簡単に通読できる。

営利組織について

売上-費用=利益と,儲けは同じか。利益は便宜上の期限で区切られ,いくらでも操作できる。存在しない。儲けとは,稼いだ現金,キャッシュフローだ。

新たな価値だけが新たなキャッシュフローを生む。経営で大切なのは将来にわたり価値を創造し続けることだ。

10対90の法則,商品にはライフサイクルがある。明日の主力商品にコストをかける。

企業の内部にあるのはコストセンターである。プロフィットセンターは顧客にある。コスト,お金は儲け利益を生むように使わなければならなコストは,ビジネスプロセス全体で考える。ABC原価計算(「レレバンス・ロスト」)を考える。コストを負担するのは,顧客である。

非営利組織について

ここでは,知識労働が問題とされる。

労働生産性の向上とは,それまで人がしてきた作業を機械に置き換えることにほかならない。 機械に置き換えられるのは肉体労働の生産性だけなんだ。 知識労働の生産性は逆に悪化してしまう。より賢く働くことしか方法はない。

知識労働者の生産性を高める第一歩は,仕事の目的を考え,仕事の内容を明らかにすることだ(条件一)。これができれば,自律性が高まり,生産性の向上を目指し,専門性を磨くようになる(条件二)。さらに,イノベーションを積極的に行い(条件三),学習意欲が高まる(条件四)。そして,生産性とは質の問題であることを知り(条件五),知識労働者は組織に価値をもたらす資本財であることを理解する(条件六)。

すでに起こってしまい,もはやもとに戻ることのできない変化,しかも重大な影響力をもつことになる変化でありながら,まだ一般には認識されていない変化を知覚し,かつ分析することである(傍観者の時代)。

ドラッカーにどの程度向き合おうか

ところで,入山章栄さんという経営学者の「世界の経営学者はいま何をかんがえているのか」という本の「「第1章 経営学についての三つの勘違い」の最初に,「アメリカの経営学者はドラッカーを読まない」と書いてあることは,かなり前から知っていた。そうですかというだけのことだが,入山さんはそれに引き続いてくどくどといろいろなことを書いていて,要するにドラッカーは「科学」ではないということなんだろうけれど,そもそも「経営学」は科学なのかという問いの方がよっぽどましな気がする。科学的に構築・検証されたものでないので「真理に近くない」可能性が大いにあるそうだが,入山さんは,科学とか,真理の概念分析から始めたほうがよさそうだ。

といっても,私はドラッカーのにわか読み手に過ぎないので,このような「神々の争い」に参戦する気はないが,確かに「ドラッカー365の金言」とか「名言集…の哲学」とかがたくさん出ているところを見ると,ドラッカーの世界全体を視座に入れた切れ味鋭い文章を読んで,ドラッカーはすべて正しいとする熱烈なファンがいるのだろう。「もしドラ2」に「ハーバート・サイモンに似たところがある」と書いたが,ドラッカーが分身と名指しする翻訳者がいたり,「知の巨人」などと言われているところを見ると,日本の吉本隆明の名をあげるほうがぴったりかもしれない。吉本隆明とドラッカーでは,「政府,政治」が「企業,経営」に置き換わっているだけだと考えると納得できる。

ただとにかく「経営」という現実を切り取り整理するのに便利な言葉が多いので,これからも折に触れてドラッカーを読もうと思うが,一種の自伝であろうが「傍観者の時代」だけは,すぐに読もうと思っている。入山さんもこれは読まれた方がいいだろう。支える文化,教養の違いが歴然としている。

それからいったんコーポレートガバナンスに戻り,法やITについて検討しよう。
詳細目次

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「もしドラ2」を読んで,笑う

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら」(著者:岩崎 夏海)を読む

「もしドラ2」を,案の定「もしドラ」に続けて読んでしまった。しかもあっという間に。でも「もしドラ2」には涙せず,笑ってしまった。

「もしドラ2」も「もしドラ」と同じように,「イノベーションと企業家精神」は頭に入りにくいが,「もしドラ」よりも,もう少しそちらに目が行く,というのは,ストーリーの流れがかなり荒唐無稽なので,個々の場面での説明を読む気になる。怪我の功名か?

ところで本書の帯によると,「もしドラ」は,「280万部のベストセラー」だそうだ。しかしこれでドラッカーの理解が広まったという話はあまり聞かないから,ほとんどの人は,高速でストーリーを追ったのだろう。

「もしドラ2」でどんなことが扱われているかを,若干紹介しよう。ただ体系的に頭に入れるには,「イノベーションと企業家精神」を読んだ方がいいだろう。

マネジメントの機能は,マーケッティングと,イノベーションであるが,これからはイノベーションの重要性が高まる。イノベーションとは,競争をしないことである(そこで,イノベーションボール1号という魔球が出てくる。)。イノベーションとは,意識的かつ組織的に変化を探すことである。企業家精神とは,全く新しいことを行なうことに価値を見出すことである。

変化の7つの機会とは,第一 予期せぬことの生起 /第二 ギャップの存在 /第三 ニーズの存在 /第四 産業構造の変化 /第五 人口構造の変化 /第六 認識の 変化 /第七 新しい知識の出現。本書は,それぞれの例を作り上げて説明していく。

イノベーションの要点として,1 イノベーションを行うには,機会を分析することから始めなければならない/2 イノベーションとは,理論的な分析であるとともに知覚的な認識である/3 イノベーションに成功するには,焦点を絞り単純なものにしなければならない/4 イノベーションに成功するには,小さくスタートしなければならない/5 イノベーションに成功するには,最初からトップの座をねらわなければならない。

「トム・ソーヤーのペンキ塗り」も紹介されている。誰かを説得する上での「魔法のテクニック」といわれている。「説得」のポイントは二つ,─それは,トムがペンキ塗りを「楽しそうにしてみせた」ことと,それを「禁止した」ことにあった。人は,誰かからそれを勧められたり説得されたりしても,なかなかしたいとは思わない。しかし,誰かがそれを楽しそうにしているのを見たり,あるいはそれを禁止されたりすると,どうしてもしたくなってしまう。

事業がうまくいくときは,「マネジメント」だけでなく,人の成長がある。マネジメントというのは,弱みに着目せず,これを組織の中で中和する。けど,教育というのは弱みに注目して,これを克服させようとする。

人間についてのウエットな話も出てくるが,それは省略しよう。

しかし,ドラッカーという人は,新しいことを含めて何でも吸収し,それを整理してよく考え表現することができる人だ。ハーバート・サイモンに似たところがある(ような気がする。)。

目次

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コーポレートガバナンスの基礎2…「これならわかる コーポレートガバナンスの教科書」を読む

著者:松田千惠子

はじめに

問題の所在

「コーポレートガバナンスの基礎1」で,コーポレートガバナンスの問題は,経営者,使用人の業務執行について,取締役会の監督,監査役の監査が実効的な機能を果たしているのかということであることに行き着いた。会社法では,この問題に対応する特別の仕組みとして,(指名)委員会等設置会社,遅れて監査等委員会設置会社が設けられているが,それでうまくいくのだろうか(それにしても,なんと覚えにくく,言いにくい,独りよがりの命名だろう。)。

そこで,コーポレートガバナンス全般について論じている「これならわかる コーポレートガバナンスの教科書」(以下「本書」)に目を通してみた。

本書でも紹介されているように,現時点でのコーポレートガバナンスをめぐる議論は,平成26年8月の伊藤レポート「「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト最終報告書」,平成26年9月(平成29年5月改定)の「スチュワードシップ・コード」,平成27年6月の「コーポレートガバナンス・コード」を踏まえたものとなっている。

もっとも関係が深く重視されているのは「コーポレートガバナンス・コード」であり,これは東京証券取引所が制定したものである。これならば,上場企業の規律の問題であることがはっきりする。

大きなお世話

コーポレートガバナンスをめぐる議論を聞いていると,「大きなお世話」ではないかと思う議論が頻出する(因みに本書では「大きな世話」とするところが2か所登場する。)。会社制度は,委託者,受託者の私的な関係なのに,どうして国や有識者が出てきて,もっともらしいお説教をするのか。あなたの所属する組織のガバナンスはどうなのと,突っ込みの一つも入れたくなる。

この点,東京証券取引所であれば,自分が取り扱う商品(株式)の品質,価格を向上させたいので,上場してお金を集めたい会社は「コーポレートガバナンス・コード」に従ってねということで,とても分かりやすい。ただ東京証券取引所は,他にあおられて歩調を合わせてしまい,美辞麗句を並べたててルールを複雑化させ,企業に無意味な負担をさせない英知が必要である。本当に実効性のある核心を突く仕組みを確立し,運用しなければ,「コード」の中にコーポレートガバナンスは埋もれてしまうだろう。

私にとって不可解なのが,機関投資家に対する「スチュワードシップ・コード」である。金融庁のWebで「スチュワードシップ・コードの受入れを表明した機関投資家のリストの公表」もされているが「踏み絵」?(今は「絵踏み」が普通らしい。)。この問題の「公共政策」としての検討は後日を期そう。

また本書によれば,伊藤レポートは,ROE(株主資本利益率)について8%を上回ることを最低ラインとし,より高くを目指すとしたことが,衝撃を与えたそうである。しかし,これは,誰が誰に対して,どのような資格に基づいて,どのようなツールが使用できるので,ここに書かれたことが実行できると「提言・推奨」をするのか,私には分からない(なお,平成29年に伊藤レポート2.0「持続的成長 に向けた長期投資(ESG・無形資産投資) 研究会報告書」,平成30年に伊藤レポート2.0「バイオメディカル産業版」「バイオベンチャーと投資家の対話促進研究会報告書」というものもある。)。

本書に戻って

なるほど

本書の著者は,豊富な実務経験があるらしく,地に足に着いた議論が随所に見られる。最初にHD(持株会社)と子会社の問題は,ガバナンスの問題であるという,「コロンブスの卵」を紹介しよう。

要は,あなたの会社は,株主をどう見ていますか(うるさい?て適当にあしらえ?口を出すな?),(買収した)子会社も,あなたの会社を,同じような株主として見ています。これを頭にたたき込まないと「グループ会社の経営」はできません。なるほど。

本書の構成

本書の構成は,次のように後記の「コーポレートガバナンスコードの基本原則」に対応した内容になっているとされる。

「第1章 企業をめぐる環境変化とコーポレートガバナンス」は,一般的な,「基本・概要」である。

「第2章 身も蓋もないガバナンスの話」(株主に関する論点…基本原則1【株主の権利・平等性の確保】,2【株主以外のステークホルダーとの適切な協働】),「第3章 「マネジメントへの規律づけ」は機能するのか」(経営者と取締役会に関する論点…基本原則4【取締役会等の責務】),「第4章 「カイシャとあなた」は何をしなければならないか」(情報開示に関する論点…基本原則3【適切な情報開示と透明性の確保】,5【株主との対話】)が,コードに対応している。

最後の「第5章 「ガバナンスの担い手」になったらどうするか グループ経営とガバナンス」は「応用・グループ経営と子会社ガバナンス」である。

しかし本書のような内容の本の「章名」を「身も蓋もないガバナンスの話」などとすると,かえって何が書かれているのかわからなくなるし,また記述内容にもねじれや飛躍もあり,そこで何の議論をしているのかわかりにくいところもある。

本書の,実務経験に基づく具体的な記述は高く評価するが,全体の体系や構成,章名,見出しの命名は,工夫の余地がある。

ここは頭に入れたい

本書から,特に頭に入れたいところを,何点か取り上げて考えてみよう。

取締役と監査役の関係再考

もともとわが国の株式会社制度は,取締役は,取締役会(ボード)のメンバーとして,業務執行の監督をする,重要な業務執行の決定をする,業務執行は代表取締役と業務執行取締役がするという制度であった。そして監査役は,取締役の業務執行を監査するとされていた。この仕組みは,上場企業から中小会社まで同じで,それなりに定着していただろう。

ただ海外の投資家は,監査役に取締役会での議決権がないので,監査の実効性がないとみていることが指摘されていた。しかし,監査役が重要な業務執行の決定に参加した場合,それについて監査できるのだろうか。本当は,こういうことを言う海外の投資家は,業務執行をする取締役という概念を受け入れがたかったのだろう。

これに対応するために(指名)委員会等設置会社ができたわけだ。これなら海外の投資家も理解できるが,あまり使われていない。

しかも同時に会社法の立案者たちは「取締役は,定款に別段の定めがある場合を除き,株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する」としてしまい,我々の頭には,取締役=業務執行というスキームまでインプットされてしまった。これではいくら制度をいじっても彼我の認識の距離が縮まるはずがない。

業務執行取締役を含む取締役会の監督と監査役(会)の監査という制度の中で,どのようにコーポレートガバナンスの実効性を確保するかを考える方がはるかに大事だろう。しかもこれは上場企業に限られない問題だ。本書も,考え方の道筋はともかく,同意見だろう。

取締役会の監督と監査役(会)の監査の関係,上場企業における社外取締役と社外監査役は何をすべきなのか,これは別の稿で改めて考えよう。

マネジメントの監視(監督・監査)

会社のマネジメント(経営)は,大きく,経営戦略・マーケッティング,人事・組織,会計・財務に分けることができる。監査役というと会計・財務に目が行くが,それでは,マネジメント(経営)の重要な部分が欠落してしまう。

取締役と監査役は,取締役会に上程されるこれらに関する議事について,その問題の所在を理解して問題点を把握し,いろいろな言い方があり得るが,例えば企業価値向上につながるかという観点から,あるいは合理性・適性性の観点から,意見を言い,議決権を行使し,あるいは他に経営上の問題があれば,取締役会の外でも監視する義務がある。要は,株主に代わって監視するのだ。

一方,マネジメントとオペレーションは違うという観点も重要だろう。本書に,「オペレーションは優秀だがマネジメントのない日本企業」という記述がある。そこを引用してみよう。「日本の企業の多くは,「課長」級という意味でのマネジャーを生み出すことには大変長けていますが,「経営者」という真の意味でのマネジャーを生み出す仕組みを持っていません。」。「内部昇格の人々は,いったいいつ「経営者」になるのでしょうか。いつマネジメントとしてのスキルや資質を身につけるのでしょうか。平社員から課長になった時? 部長になった時? 確かに,部下が付いたことによって学ぶことは多いでしょう。チームを率いていかなければならず,リーダーシップも養われるかもしれません。業務知識も身につくし,管理のノウハウもだんだんわかってくるでしょう。しかし,それだけで経営者になれるでしょうか。残念ながらなれません。課長であっても部長であっても,しょせんは決められた業務の範囲内で,与えられた資源配分の範疇で,既存の業務をより良くすることが仕事の中心です。経営者は違います。決められた業務をやっているのではなく,次の一手を新しく考えなければなりません。資源配分は自分で考えなければなりません。その際には様々な利害の衝突や相反が出てきます。あちらを立てればこちらが立たず,といった場面も多いでしょう。ここで投資をすれば儲かりそうだが,おカネはないし,やる人もいない,などといった状況も考えられます。それらのバランスを取るためには,財務や人事などの知識も身につけておかなければなりません(これは,細かい業務知識ではありません。全体的なおカネの動きや人の心のマネジメントの話です。)。もちろん,業務知識があれば役に立つこともありますが,細かい知識よりも必要なのは戦略的な思考や大局を見る力です。そして何と言ってもリスクを取る意思決定をしなければなりません。そもそもリスクが何であるかを理解し,それを引き受けることを決定し,その責任を持たなければなりません。また,外部に対する発信力も必要です。」。そして「マネジメントが不在ならばガバナンスも不要です。」。

取締役と監査役は,当該企業にとって大切なことを見抜き,それについて的確に意見を言うことが肝要である。マネジメントには積極的に口を出すべきだが,オペレーションをあれこれ言うべきではない。ポジション取りはなかなかむつかしい。本書に,「暴走老人」と「逃走老人」を止めろとある。もちろんこれは経営者のことであるが,自分が「暴走老人」と「逃走老人」になってしまわないことも考えよう。。

マネジメントの情報開示

取締役と監査役がなすべき監視は,株主が何を知りたいかという情報公開の観点から見るのも分かりやすい。

株主が知りたいのは,「これまではちゃんとやってきていたのか」(過去の実績)です。満足のいく企業業績を出せていたのか? 将来を占ううえでもこの情報は重要です。これが「会計情報」です。次に,「きちんとやるような仕組みを持っているのか」(企業の仕組み)です。おカネを預けたとして,それがきちんと管理され,目的の投資が行われて成果があげられるような仕組みができているのか,怪しいことをやっている会社ではないのか,といったことです。内部統制報告書,ガバナンス報告書などもこれにあたるでしょう。最後に,これが一番重要ですが,「これから何をしようとしているのか」(将来の仮説)です。投資家が投資をするのは将来についてですから,企業がどのような将来像を描き,そのためにどのようにおカネを使って実際の成果をあげようとしているのか(そして株主に還元しようとしているのか)をはっきりさせてほしいのは当然です。この点は,これまで各企業の自発的開示に任されてきましたが,コーポレートガバナンス・コードの導入により,開示に圧力がかかることになりました。」。

本書のさわり

本書のさわりは「第5章 「ガバナンスの担い手」になったらどうするか グループ経営とガバナンス」である。

もっとも典型的なのは海外子会社のガバナンスである(経営ではない。経営するのは,現地にいる業務執行者である。)。この問題は,ガバナンスから理解し,実行すべきことである。

なおこの問題は同著者の「グループ経営入門」で,より整理された形で展開されているので「「グループ経営入門」を読む・持株会社と子会社 …コーポレートガバナンスの実践2」で紹介したい。

以上,雑駁な紹介になってしまったが,本丸はまだ先なので,本書の紹介は,一応これで終わりとする。気が付いたことがあれば,加除,訂正していく。

詳細目次とコーポレートガバナンスコードの基本原則

 

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コーポレートガバナンスの基礎1…簿記と会計・監査に支えられた会社制度の行方

簿記と会社について

簿記と会社が,現代資本主義の発展を支えたと言われる。どういうことだろうか。コーポレートガバナンスについて考える前に,簿記と会社について概観しよう。

簿記について

簿記についてはほとんど門外漢の私も,ストックである,資産=負債+純資産(資本)と,フローである,費用と収益の記帳から,BS,PLが作成され,利益が算定されるという過程をたどるのは心地よい。

ただ簿記には謎が多い。なぜ,借方,貸方というのか(内容とは関係ないが,かり,かしの,り・しの字の曲がり方から(丿・し),かりが左,かしが右と記憶するのだそうだ。),上記の過程は社会に埋め込まれたものが発見されたものか,人間が発明したものか,それとも「数学」と違ってこのような問題を問うこと自体がナンセンスなのか。「ルカ・パチョーリ」が「複式簿記の祖」といわれるが,彼がイタリア語で書いて印刷・頒布された数学書「スムマ」の一部に,当時既に用いられていた簿記を紹介したことから,簿記が広く伝播したのであって(そのポイントは,俗語であるイタリア語,印刷),「複式簿記」は彼の独創ではないようだ(「会計の時代だ」(著者:友岡賛))。

簿記は現代社会の「カネ勘定」を理解するための必須のツールなので,頭が柔軟な時期の中学,高校の数学あるいは社会科のどこかに組み込めばいいと思う(なお簿記のごく初歩的な入門書は,Kindle本の「ふくしままさゆき」さんの本が安くていい。あるいは会計も兼ねて「図解 簿記からはじめる企業財務入門」(著者:津森信也)も良さそうである。これらの本の紹介で,簿記の概観に代えよう。)。

会社-会計について

会社制度の基本を理解するためには,会社法の本を読むより,まず会計の本の最初の部分を読んだ方がよい(前掲の「会計の時代だ」(著者:友岡賛)が手頃だ。)。

会計とは「委託者(資本の持主=株主)が,その財産の管理(保守・運用)を受託者(経営者)に委託した場合に,委託者が自分の行なった財産の管理の顚末を,委託者に対して説明すること(accounting)」である。この財産管理の委託,受託。報告の仕組みを制度として定着させたのが会社である。

会社は,16世紀末~17世紀のイギリス,オランダの東インド会社が海外との貿易(香辛料,綿・絹織物,陶磁器等々の持ち帰り)のために必要となる多額の資金を,多くの人から分割して集めて一定期間継続して保有し,資金提供者は最終的な利益配分とは別に資金(株式)を譲渡することでこれを回収できる仕組みから生まれたとされる。ただこのあたりの歴史の説明は資料によって錯綜しており,世界最初の株式会社は,1602年にオランダで設立された東インド会社で,証券市場もその頃生まれたという説明をうのみにしていいかどうかわからない(この辺りの経緯は面白そうなので私,は「東インド会社とアジアの海」(著者:羽田 正)歴史書を読み始めたが,東インド会社に先行する100年間のヴァスコ・ダ・ガマに始まるポルトガル人のインド,アジアへの銃,大砲による暴力的侵攻を読んでいるうちに気持ちが悪くなり,またこの本のターゲットも制度の説明にはないようなので,いったん読むのをやめてしまった。)。

ところで,今の会社法では,株式会社の基本的特質として,①法人格,②有限責任,③株式の譲渡性,④取締役会の授権のもとでの経営,⑤出資者による共同の所有,⑥出資払戻請求の制限が挙げられるが(「会社法入門」(著者:栗原脩),東インド会社はこれらはほぼ充たしているが,②が少し遅れたという説明がされる。

会社による財産管理の基本は,⑤④であって,会社制度の進展によってその他の部分も整備されたことにより,会社が次第に財産管理の主要なツールとして用いられるようになったと考えられよう。ただ東インド会社の時点で取締役(会)の性格が何であったかは,今ひとつはっきりしない(「世界史の窓」「オランダ東インド会社」には「大口出資者76名が重役となり,その中から選ばれた17人が取締役会を構成し,連合会社全体の経営方針を決定した。十七人会に東インドにおける条約締結,戦争の遂行,要塞の構築,貨幣の鋳造などの権限が与えられた」とあり,東インド会社は,今では行政(国家)しか行えないと考えられている権能も,行政(国家)から与えられていたようである。)。

要は,委託者(株主)が財産(お金)を出し,受託者(経営者)がその管理をする仕組みが会社であり,財産管理の結果がどうなっているのかをお金を用いて説明するのが会計であり,この説明には,複式簿記による記帳に基づくのが適しているのである。

会社-監査について

会計報告は,経営者が株主にするものであるが,経営者が株主に,ちゃんとやっていますと言うだけでは,信用されるかどうか。そこで経営者以外の者が,経営者が株主にする会計報告について,それがちゃんとしたものかどうかを検査し,ちゃんとした報告が行われるように監督することが必要となる。それが監査である。

さらに監査が,経営者から独立した専門的な知識があるプロフェッションによって行われれば,株主は納得,安心できる。その役割を果たすのが日本では,公認会計士である。

コーポレートガバナンスへの道筋

株主は会計-監査だけでいいのか

さてこれまでの記述は一本道であった。しかし株主の手許に来た前年度の財産管理の報告(会計報告)が手続,内容においてちゃんとしたものであったとして,それが大赤字であった場合,とてもよかったとは言えない。株主としては経営者の選任を考え直さなければならないし,そのような結果になる前に,経営者の行為(業務執行)をコントロールできなかったのかという問題もある。あるいは,黒字であっても,その利益を上げる方法が極悪非道であって(あるいは単に「損失隠し」をしていただけでも),早晩,会社が解体に追い込まれるようでは,元も子もないし,経営者が,ちゃんとした会計報告に記載された現金を横領しているかもしれない。よくできる有能な経営者なら,プロフェッションの監査をかいくぐって,いろいろなでたらめをしているかもしれない。会計監査だけでは,すべてはうまくはいかない。

経営者の行為(業務執行)を監督する仕組み

そこで株主に代わって経営者のする行為(業務執行)自体を監督する仕組みが必要となる。その仕組みが取締役会であり,監査役である。さらにはこれを変形した委員会型(指名委員会等設置会社,監査等委員会設置会社)の会社もある。これがコーポレートガバナンス(企業統治)の大きな内容になっている。コーポレートガバナンスはどのような形態,規模の会社でも問題になるが,以下では,主に資本市場で人のカネを集める上場企業を念頭に置く。

以上のように見てくると,会社の経営者は悪人だらけなのかと言いたくなるが,ことほど左様に,人には,監視なしに他人のお金を扱えると,自由自在に振る舞いたくなる強い性癖があるようだ。自由自在というのは,横領だけではない。経営者の思慮を欠く,作為,不作為によって,会社のお金はどんどんなくなるということだ。

業務執行の仕組みは複雑だ

会社の業務執行とは何か

会社の業務執行(広義)は,①業務執行の決定+②その具体的な業務執行(狭義)からなり,その中には,ⅰ対外的な業務執行とⅱ体内的な業務執行がある。ⅰは,代表,代理の問題である。

②を行なうのは,ア代表取締役,イ業務執行取締役,ウ使用人である。

①を行なうのは,エ取締役会と,ア代表取締役,イ業務執行取締役である。エ取締役会は①業務執行の決定を行ない,重要な業務執行の決定(法定決議事)以外は,ア代表取締役,イ業務執行取締役に委任できる。代表取締役は,明示の委任がなくても,日常的な業務の決定ができる。

代表取締役は,以上の業務執行を他の業務執行取締役や使用人に,業務執行取締役は使用人に委任できる。

取締役会・監査役の職務

取締役会は,業務執行の決定,取締役の職務執行の監督(使用人の指揮監督を含むから,結局,会社の業務全般),及び代表取締役の選定,解職を行う(会社法362条2項)。

監査役は,取締役(会計参与設置会社にあっては,取締役及び会計参与)の職務の執行を監査し,監査報告を作成しなければならない(会社法第381条1項)。

さて,ここで経営者,使用人の業務執行について,取締役会の監督,監査役の監査が出てくるが,これが実効的な機能を果たしているのかという疑問が,近時のコーポレートガバナンスをめぐる大騒動の問題意識である。私としては,制度の問題か,人の問題かと問われれば,後者が大きいというのが率直な意見である。制度を改めれば問題はなくなるということではなく,人をどう変えれば問題がなくなるのかということではないかと考えている。

この続きは「 「これならわかる コーポレートガバナンスの教科書」を読む…コーポレートガバナンスの基礎2」に書く(予定である。)。

更に日和が良く,飽きが来なければ,次の投稿も準備しよう。

企業の財務3表と経営を理解する…コーポレートガバナンスの基礎3

上場企業の企業価値と経営を理解する…コーポレートガバナンスの基礎4

監査役と社外取締役の職務…コーポレートガバナンスの実践1

「グループ経営入門」を読む・持株会社と子会社 …コーポレートガバナンスの実践2

「コーポレートガバナンスコード」を理解する…コーポレートガバナンスの実践3

 

 

 

「あなたの生産性を上げる8つのアイディア」を読む

著者:チャールズ・デュヒッグ

興味深い「物語」で構成された生産性を上げるために役立つ(かもしれない)優れた本だ

原書は,「SMARTER FASTER BETTER」であるが,著者も,「本書は,生産性を高めるのに最も重要な8つのアイディアを提案し,探求する」といっているので,題名はこれでいいのだろう。

著者は,生産性を高めるのに必要なのは,もっと働もっと汗を流すことや,長時間デスクにしがみつき,仕事以外を犠牲にすることではなく,「いくつかの方法を用いて正しい選択をすることである」と述べ,その方法が8つの章にまとめられているわけだ。著者は「生活のすべての面において,より賢く,より早く,より良くなるためにはどうしたらいいのか,その答えを提供する」という。

8つの章は,「やる気を引き出す」「チームワークを築く」「集中力を上げる」「目標を設定する」「人を動かす」「決断力を磨く」「イノベーションを加速させる」「データを使えるようにする」と,一見すると代わり映えのしない通俗ビジネス書のごときタイトルだが,本書が優れているのは,平凡な章名の元に,非常に優れた「物語」が,序破急の構成で紹介されていること,そして,著者がこれらの「物語」から読み取った,生活,仕事の生産性を高める「教訓」を,「付録 本書で述べたアイディアを実践するためのガイド」にまとめていることである。そしてこのガイドは,抽象的とはいえ,十分に実用的で魅力的なガイドとなっている。


各章の「物語」

ガイドを紹介する前に,各章の「物語」に一言しよう。

各章の「物語」はとても興味深い。著者は多岐にわたる「物語」を収集し,そこに道筋をつける優れた才能を持っているようだ(著者は,これも評判高い「習慣の力」の著書もある。同書では「習慣がどのように働いているかがわかれば(きっかけ,ルーチン,報酬を特定できれば),習慣を支配する力を手に入れることができる」とする。)。

各章の「物語」は,詳細目次各省の副題を見てもらってもある程度わかる。

ブートキャンプ改革,老人ホームの反乱,グーグル社の心理的安全と「サタデー・ナイト・ライブ」,墜落したエールフランス機,と第4次中東戦争,リーン-アジャイル思考,GMを変えた「トヨタ生産方式」,ベイズの定理で未来を予測(して,ポーカーに勝つ方法),「アナと霊の女王」を救った創造的絶望,ウェスト・サイド物語,情報失明,エンジニアリンング・デザイン・プロセス等々,そのほかにもたくさんの「物語」が含まれている。

「本書で述べたアイディアを実践するためのガイド」の紹介

やる気

(やる気を引き出す方法)  
・自分は自分の意志で行動しているのだと思えるような選択をすること。メールの返事を書くときは,自分の意見あるいは決断を表明するような最初の一文を書くこと。厄介な問題について話し合わなくてはならないときは,それをいつにするかを決める。やる気を引き出すには,何を選択するか,よりも,選択することそれ自体のほうが重要だ。
・その課題が,自分が大事にしていることといかに深く結びついているかを理解すること。どうしてこの下らない仕事をすることで,意味ある目標に近づけるのか,自分に対して説明すること。どうしてこれが大事なのか,それを自分に説明できれば,仕事を始めるのがずっと容易になる。

目標設定

やる気だけではだめで,大きな野心に火をつけるようなストレッチゴールと,具体的な計画を立てるのに役立つようなスマートゴールが必要である。
両方を区別して含む,TO DO LISTが必要だ。なおスマートゴールのSMARTとは,Specific(具体的に),Measurable(測定可能な),Achievable(達成可能な),Related(経営目標に関連した),Time-bound(Time-Line)(時間制約がある)である。

(目標を設定するには)
・ストレッチゴール,すなわちあなたの大きな野心を反映しているような目標を設定する。
・次いでそれをサブゴールに分割し,スマートゴールを発展させる。

焦点

(主旨を見失わないために)
・自分が何を見たいのかについて,繰り返し自分に物語を聞かせることで,メンタルモデルを構築する。
・これから何が起きるかを思い描く。最初に何が起きるか。どんな邪魔が入る可能性があるか。いかにしてそれを阻止するか。何が起きてほしいかについての物語を自分に聞かせることで,計画が現実と衝突したときにどこに重きを置けばいいかという判断が,はるかに容易になる。

決断

ストレッチゴールもスマートゴールもちゃんと設定し,焦点を見失わないためのメンタルモデルも構築し,やる気を引き出す方法も見つけたが,それでも頻繁に邪魔が入り,入念に築き上げた私のモデルをぶちこわそうとする。

(よりよい決断をするためには)
・(確率論的アイディアを参照し)複数の未来を思い描き,どの未来が最も実現性が高いか,それはなぜかを考える。
・複数の未来を思い描く。無理してでもさまざまな可能性を想像することによって(そのいくつかはたがいに矛盾しているかもしれない),より賢い選択ができるようになる。
・さまざまな経験や視点や他の人びとの意見を集めることで,ベイズ理論的直感を研ぎ澄ますことができる。情報を集め,じっくりその情報を分析することで,選択はより明確になる。

ビッグ・アイディア

最後に,著者自身の日常生活において重要な意味をもついくつかのキー概念をざっと概観する。

(チームワークをより効果的にするには)
・誰がチームに加わるかではなく,どのようにチームを運営するかのほうが重要だ。全員がほとんど平等に話ができ,チーム全員が「私は他のメンバーがどう感じているかを気にしていますよ」と表明することができるときにはじめて,心理的な安心感が生まれる。
・もしあなたがチームのリーダーだとしたら,自分の選択がどのようなメッセージを発しているかを考えるべきだ。みんなが均等に話すことを推奨しているのか,それとも声の大きな人を優遇しているのか。誰かの発言を繰り返し,質問に答えることで,「私は聞いていますよ」ということを伝えているか。誰かが動揺していたり不満を抱いていたりするときに,すぐに反応することで,自分の感受性を証明しているか。他のメンバーたちが見習えるようなお手本を示しているか。

(まわりの人の生産性を高めるには)
・柔軟で機敏なマネジメント技術によれば,社員たちは,自分にはより大きな決定権が与えられているのだと感じ,かつ,同僚たちは自分の成功を支援してくれていると信じることができたとき,より効率よく,より速く,働く。
・問題のいちばん近くにいる人に決定を委ねることによって,経営側は,各社員の専門知識を活用することができ,改革を促進することができる。
・自分で自分をコントロールしているという意識がやる気を引き出す。だがその意識が洞察や解決策を生み出すためには,自分の提案が無視されないことや,失敗しても罰が与えられないことを知っている必要がある。

(改革を促進するためには)
・しばしば創造性は,古いアイディアを新しい形で組み合わせることから生まれる。そのとき,「イノベーション・ブローカー」の存在が重要になる。自分自身がブローカーになり,組織内の流動性を高めることだ。
・自分の経験に対して敏感になること。自分はどうしてこんなふうに考えるのか,感じるのかに対して敏感になると,月並みなアイディアと真の洞察とのちがいが見えてくる。自分の感情的反応を詳しく分析することだ。
・創造プロセスで生じるストレスは,すべてが悪い方向に向かっている兆候ではない。むしろ想像上の絶望的な状況は,驚くような結果を生むことがある。不安のせいで,古いアイディアに新しい光をあてられるようになることもある。
・最後に,創造的突破に伴う安堵感はたしかに快いが,他の可能性を見えなくすることもある。自分たちがすでに成し遂げたことを批判的に振り返り,別の視点から見て,まったく新しい人に新たな権限を与えることで,眼の曇りを防ぐことができる。

(データをより良く吸収するためには)
・新しい情報に出合ったら,無理にでもそれを使って何かをやってみることだ。自分が学んだことを説明するノートを作るとか,そのアイディアを検証する方法を考え出すとか,データを紙の上に図示してみるとか,友人にそのアイディアを説明してみるとか。私たちが人生においておこなうすべての選択は実験である。大事なのは,その決断の中に含まれているデータが何であるかを見極めることだ。それができれば,そこから何かを学ぶことができる。

これらすべてのうちで最も重要なのは,これらの教訓に共通している根本的な理念だ。それは「生産性が上がるかどうかは,他の人びとがしばしば見落としている選択を見抜けるかどうかによる」という発想である。アイディアに全身全霊を捧げることが世界を変えるという教訓は,私が説明したかった別の考え方に比べると,それほど普遍的でも重要でもない。

長い目で見てより賢く,より速く,より良くなるためには,他の人には見えないような選択を見抜くことである。

 

詳細目次

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人の知能・思考がとらえる世界とは何か-方法論の基礎

「知ってるつもり」と「武器化する嘘」

人の知能は,世界を(実験によって)観察し,論理的に思考・分析して,表現・評価し,「問題解決と創造」につなげることができるが,その過程に様々な誤りが紛れ込む。

最近入手した二つの本(「知ってるつもり 無知の科学」(著者:スティーブン スローマン, フィリップ ファーンバック)と「武器化する嘘 情報に仕掛けられた罠」(著者:ダニエル・J・レヴィティン)は,人の知能・思考が世界をどのようにとらえるのか,世界をとらえる正しい方法論は何かについて,類似した視点と方法にたつ「総論」と「各論」ともいうべき本である。

両書とも非常に優れた内容を持つが,翻訳英書に共通する饒舌さや捩じれと翻訳の分かりにくさがあって,両書の構造,内容を正確にとらえるのが少しむつかしいようだ。

私としては両書を,「問題解決と創造の頁」の「方法論の基礎」の最初に位置づけたいと思っているので,その詳細な紹介をしたいと思っているが,今少し時間がとりにくい状態にあるので,ここでは備忘のために書名とさわりだけ紹介したい。

「知ってるつもり 無知の科学」(著者:スティーブン スローマン, フィリップ ファーンバック)を読む

ポイントは,「The Knowledge Illusion」であるが,これを「知能の錯覚」と訳されても,あまりピンとこない。

人の知能は,複雑な世界から行動(繁殖と生存だろう。)するために必要なもの,重要なものだけを取り出すように進化した。その知能のあり方が,「The Knowledge Illusion」である。そして行動するために重要なのは,原因と結果の因果的推論である。これには2種類(システム1とシステム2,あるいは直観と熟慮)ある。しかし人は,因果システムを自分が思っているほど理解していない(説明深度の錯覚)。直観は個人の頭にあり,熟慮は知識のコミュニティの力を借りている。後者がコミュニティの問題であるというのは,重要である。すなわち人は,体と世界,他者,テクノロジーを使って考える。

そして賢い人を育て,賢い判断をするための方法(ナッジ)がある。

後半は,行動経済学と重なっている。

この本の構成は英文の方がわかりやすそうなので,英書の目次を掲記しておく。

The Knowledge Illusion: Why We Never Think Alone

 

INTRODUCTION:Ignorance and the Community of Knowledge

 

ONE What We Know/TWO Why We Think /THREE How We Think /FOUR Why We Think What Isn’t So /

 

FIVE Thinking with Our Bodies and the World /SIX Thinking with Other People /SEVEN Thinking with Technology /

 

EIGHT Thinking About Science /NINE Thinking About Politics /

 

TEN The New Definition of Smart /ELEVEN Making People Smart /TWELVE Making Smarter Decisions

 

CONCLUSION:Appraising Ignorance and Illusions

 

「武器化する嘘 情報に仕掛けられた罠」(著者:ダニエル・J・レヴィティン)を読む

「知ってるつもり」で分かるように,人の知能・思考は「The Knowledge Illusion」にあるから,これを悪意を持って利用しようとする人も多い。

それをどのように批判的に吟味するかという観点からまとめたのが「武器化する嘘」である。「数字を吟味する」,「言葉を吟味する」,「世の中を評価する」から構成されている。認知科学,論理学,自然科学等を踏まえている。ベイズ確率が重視されている,

ただ体系的にまとめたというより,事例集という面があるので,記述相互の関係が分かりにくい。これを参考にしながら,どのように正しく考えるのかを,まとめていく必要があるだろう。

これも内容は,英書の目次の方が分かりやすそうなので掲記しておく。

A field guide to lies and statistics: A Neuroscientist on How to Make Sense of a Complex World

 

Introduction: Thinking, Critically

 

PART ONE: EVALUATING NUMBERS

Plausibility /Fun with Averages /Axis Shenanigans /Hijinks with How Numbers Are Reported /How Numbers Are Collected /Probabilities

 

PART TWO: EVALUATING WORDS

How Do We Know? /Identifying Expertise /Overlooked, Undervalued Alternative Explanations /Counterknowledge

 

PART THREE: EVALUATING THE WORLD

How Science Works /Logical Fallacies /Knowing What You Don’t Know /Bayesian Thinking in Science and in Court /Four Case Studies

 

Conclusion: Discovering

これらの本の利用法

これらの本では,対象として検討している問題が政府の政策であったり,社会問題だったりすることが多い(科学の問題も多い。)。しかしそれらは,所詮,投票を通じてしか実現しない問題であるから,当面,悪意ある人たちに騙されないように,軽率に扇動されないようにという観点から,弁えれば十分だろう。

重要なのは,自分の生活,仕事にこれらを生かすことである。私としては,当面,自分の生活,仕事を充実させること,楽しむこと,社会との関係でいえば,あらゆる人の仕事の生産性を向上させるIT,AIの実際的な使用や企業統治の問題等の分析にこれらを生かしていきたいと考えている。

 

政府:力と公共政策

「問題解決と創造の頁」の「政府:力と公共政策」の「固定ページ」を作ったので,投稿しておきます。この分野は,弁護士業務と密接な関係があります。法を制定し(立法),適用する(行政,司法)ことも政府の役割ですから。

「政治」が注目される理由

 私は,現代社会が抱える様々な「問題解決と創造の頁」,これを生活・仕事,政府・企業,環境の5つ要素から考えたいと思っている。

ところで,私たちは,普段,5要素の何が大切だと考えているだろうか。普通に考えれば,生活であり,それを支える仕事,更にはこれらの活動の場となる環境であろう。

しかし,私たちが一番興味を持つのは(あるいは持たされるというべきか),政府の支配者の選定,行動に係わる「政治問題」であろう。そうなるのは,ひとつは,政府を国家と同視することによるのだと思う(国家という用語は多義的であるが,5要素を含む構造である社会に比して,国家は5要素を含む歴史,地理的概念として使用されることがあり,その場合,すべての問題が,政府=国家に含まれることになる。)。

もう一つは,民主制を支える国民として,支配者の選定,行動についての正当な関心に基づくものであるが,支配者側の専門性,秘密性,権威性を盾にした権力の壁は厚く,国民はほとんどすべての面で情報操作されているという方が実態に近いだろう。更に,政府は,国民全体の代表として,外交の延長上に戦争を企て,実行する。戦争は,生活領域に近接ないし生活領域内で行なわれれば,生活,仕事,環境のすべてを破壊しかねない行為である。そんなことは分かっているはずだが,戦争が実行された後に,それに気が付くというのがお決まりの「歴史」である。政府の財政,社会福祉制度が破たんしようと,円が大暴落してハイパーインフレになろうと,立ち直る方法はあるが,戦争は立ち直り至難な問題である。だから私は,戦争だけには入り込まない「政府」を選定するのが,最低限の国民の「良識」だと思う。こんなことを考えなければならないこと自体,「政府」にはいい加減にしてもらいたいと思うが,どこの国の「政府」もレベルはあまり変わらない。

力と公共政策

政府の問題は,力と公共政策が基本的な問題である。これを,国内の支配・公共政策と,国際・戦争問題に分けて考察することができる。

支配の問題は,「行政学講義」(「行政学講義」を読む)を出発点にしたい。公共政策の問題は「入門 公共政策学」(「公共政策」という「窓」を通して社会の構造を理解する)で検討に着手した。

検討すべき本

今後検討すべき本を,紹介しておく。

支配・公共政策

行政学講義
入門 公共政策学
自治体行政学
自治体政策法務講義
自治体
啓蒙思想2.0
シンプルな政府
哲学と政治講義
公共政策を学ぶための行政法入門

国際・戦争

国際法
国際法(大沼)
国家興亡の方程式
避けられたかもしれない戦争
入門 国境学
「教養」として身につけておきたい戦争と経済の本質 
戦略原論 軍事地平和のグランド・ストラテジー