IT・AIの法律書を使う

IT・AIの法律書

IT・AI関係の法律書のうち,法律相談形式のもの,及び関係する事項について体系的に触れているもののうち,私の手許にあるものについて,その詳細目次を掲載しておきます。皆さんが直面している問題が,どういう位置づけになるのかを理解する参考にしていただければと思います。当該書を入手して更に理解を深めるか,理解,解決が難しそうなら私に相談していただくこともお勧めします。

「インターネット新時代の法律実務Q&A<第3版>」,「IoT・AIの法律と戦略」,「法律家・法務担当者のためのIT技術用語辞典」(作成中),「裁判例から考えるシステム開発紛争の法律実務」(作成中)を紹介します。

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「SIMPLE RULES」を読む

著者:ドナルド・サル他

切り口に違和感の多い本である

少し前になるが「SIMPLE RULES:How to Thrive in a Complex World」というKindle本を見つけ,ルールの一種としての法を考える際に参考になるのではと思い買っておいた。最近,翻訳のKindle本が出てのを見つけ,目を通してみた。

著者2人(サルの他は,キャスリーン・アイゼンハート)の経歴を見ると実務経験もあるとても優秀な「研究者」のようであるが,私にはこの本の切り口には違和感が多い。

ただ大事なのは,著者らが挙げる6つの「シンプルなルール」の有効性であって,これが機能するのであれば,私の違和感などどうでもいい。

といいながら,違和感を簡単に書いておこう。

ひとつは,著者らも「複雑なルール」が妥当する場面があることを認めているが,それが単なる例示に終わっていて,どこが違うからそのような事態が生じるかの考察がない。これは読む人を不安に陥れる。

ふたつめは,様々な事例を挙げ,「シンプルなルール」でうまくいったというのだが,うまくいった原因が「シンプルなルール」にあるのか,その他の原因は考えられないのかについて,まったく検討がない。これは非科学的な態度である。イエズス会はそうかなあ。

6つの「シンプルなルール」の紹介

最初の3つは「決断する」ためのルール,あとの3つは「物事をうまく進める」ためのルール設定と説明されている。

「境界線ルール」…「考慮する」か,「排除するか」の二者択一

「優先順位ルール」…少ない資源を最大化する

「停止ルール」…引き際を決めておく

「ハウツー・ルール」…どのように,あるいは,どうしたら

「コーディネーション・ルール」…協調

「タイミング・ルール」…いつ

こう書けばうまくいくに決まっているといいたくなるが,そうでもないだろう。

詳細目次

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「経済学のすすめ-人文知と批判精神の復権」(佐和隆光著) を読む

おじいさんのため息

私がまだ大学生だった頃,この本の著者の,当時は最先端だった計量経済学に関する本を購入し,その「数学を利用し科学となった経済学」にため息をついた記憶がある。

時は移り,著者は,「数学の僕」と化した経済学を批判し,内外を問わず経済学者の知のあり方を批判し,経済政策や大学制度に関する,政治家,日銀,役人,経済人,更には審議会入りしているコンサルタントや経済学者,その他諸々の言動を批判する。

この本に書かれていることは,世代的にも実によく分かるし,批判の内容はほとんど賛成できる。でも私は,批判の対象とする事象にほとんど興味がわかない。「モラル・サイエンスとしての経済学のリバイバル」もどうだろう。なんだか,おじいさんの「ため息」を聞いているようだ。

「大学人の経済学者」が見る世界

大学の先生は,給与をもらって,「研究」と教育にいそしむ立場にある。その置かれた「下部構造」が「上部構造」である「意見」を規定する(ことが多い。)。

著者が,数学に堪能で,豊富な在米研究の経験を有し,経済学のみならず科学哲学,歴史等を研究し,「人文知と批判精神」を評価していても,どうも著者の批判は,「給与をもらって「研究」と教育にいそしむ」という固有の安全な立場,器から出ていないので,余り面白くないし,核心をそれているような気がする。「研究」の有り様は自ら打ち壊していけばいいし,有効な経済政策があると思うのなら,そのような立場に飛び込めばいいと思うのである。

今,大部分の人が住む世界は,もう少し,ビビッドで危ういと思う。

またこの本は,大学制度や入試制度の話題が多くを占めているが,私は大学にはほとんど行っていないので(卒業証書は,1年遅れてもらいに行きましたが…),大学制度や入試制度は勝手にすればといいたくなる。もちろん大学で「制度化された専門的な分野」について「集中」的な訓練を受け,ある種の技能を身につけることはとても大切である。自学自習で何かを身につけるのはとても難しい。自分の息子や娘が大学で何かを学び身につけた形跡があるのはとてもうらやましい。私も大学に行きたかった!

だから結局,そのような場が確保できればいいだけだ。「学ぶ」ことはそんなに変わりようがないので,生半可な理解で現状や外国の制度に飛びつき,制度をいじればいじるほど事態は悪くなるだろう。歴史的な経験(寺小屋は,大学ではないなあ。藩校?)に学んだ方がいいだろうな。

結論

著者は思考力・判断力・表現力を身につけるには,「言語リテラシー」,「数学リテラシー」,「データリテラシー」が不可欠だという。「データリテラシー」は,IT+統計学であろう。実に正しい。でもそのためには「経済学」がいいというのは本当かな。

とにかく,高校卒業程度の(できれば大学の専門課程で使用するに足りる)数学(含統計学)と英語は何が何でも身に付けよう(何十年もいい続けているような気がするが。)。それができれば,「大学コンプレックス」は払拭されるし,「数学バカ」,「英語バカ」に盲従し,騙されることもなくなる。

さらには,著者の勧める「人文知と批判精神」に,進化論と自然科学,更にはIT・AIを身につけ,自由奔放にアイデアを組み立ってて行ければどんなに楽しいだろう。「そういうものにわたしはなりたい」。間に合うかなあ。

著者が紹介する「米国の大学の授業でよく使われている文献トップ100」にリンクさせておく。

 

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「法のデザイン」を読む

著者:水野祐

若い世代の意欲的な試み

この本は,少し前に,若い弁護士が書いた法のあり方について論じた珍しい本だと思い,紙本を買ったが,なんせ,文字が小さくてとても読む気にならず,放置していた(私の老眼というより「本のデザイン」の問題である?)。

それとは別に,「ネット時代では、商業活動と各種の共有活動が並置・相補関係にあるハイブリッド経済/文化こそが主流となるため、それを発展させる制度改革」を主張する「REMIX ハイブリッド経済で栄える文化と商業のあり方」(ローレンス・レッシグ著)を読み始め,遡って同じ著者の「コード2.0」「コモンズ」「FREE CULTURE」も読んでみなくちゃと思っていた矢先,関連するKindle本としてこの本があるのを見つけ,早速買ってみた。

この本はレッシグの「思想」を十分に消化し(「早わかりレッシグ」としても使える。),我が国の現状にぶつけ,更に実践的な解決策を探ろうという意欲的な本であり,いたく感心した。さらに現代の世界の文化を幅広く捉えていて,私は一体何をしていたのだろうという痛切な思いを誘う。

これまで日本の弁護士はどうしても「裁判所」「実務書」の世界に圧倒され,思想として法を考えることが苦手であった。しかし,著者は,レッシグを足場に,軽やかにネットと法の世界を裁断する。その手際は見事である。こういうふうに世界が見えている限り,先頭を走れるだろう。だが…。

「直観」と「理性」の相克する人間が構成する複雑性社会

問題は,レッシグと同じくその出発点となる「人間像」である。どういう一般的な特質を持つ人間が社会を構成し,そのような社会はどのように動くのか。その中で,人間の理性に基づく有用な「法のデザイン」が,どのように国家とそれを誤導する政治家,行政組織を「規制」すれば,図れるのかといういう観点が,希薄,ないし存在しない。だからどうしても平板な議論に終わってしまうような気がする。

だから,今あらゆる研究分野で進展しているように,出発点をもう少し前にして(キャッチフレーズふうにいえば,「「直観」と「理性」の相克する人間が構成する複雑性社会」)議論と仕組みを組み立てたら,どんなに素敵だろうと思う。

著者に難癖をつける前に自分でやれ,そのとおりだ。でもその際,この本がとても役立つのは間違いない(特に第2部は,圧巻だ。)。

詳細目次

 

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「海外で仕事をする本」まとめ読み

一口コメント

私自身は,海外で仕事をしたことがないので,ピントが合っているかどうかわからないが,あくまで私の手許にある中での参考になる本のリストである。ここでは,まずどのよう段取りで海外に出かけ,心と体の健康を保つかという本,及び一般的なデータとアジアを対象とするビジネスの本に限った。追って充実させていきたい。

紹介

1

海外赴任2014リロケーションガイド
キョーハンブックス
売り上げランキング: 12,142

2

海外勤務を命じられたら読む本 (中経出版)
KADOKAWA / 中経出版 (2012-11-16)
売り上げランキング: 4,839

3

海外赴任のために必要なこと 駐在員家族のメンタルヘルス (角川フォレスタ)
KADOKAWA / 角川学芸出版 (2013-10-17)
売り上げランキング: 33,252

4

5

6

海外進出支援 実務必携
海外進出支援 実務必携

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きんざい
売り上げランキング: 306,343

7

アジア法ガイドブック
アジア法ガイドブック

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名古屋大学出版会
売り上げランキング: 595,903

私のチャレンジ

弁護士とビジネス

「法とビジネスの諸相」で述べたように,もともと弁護士は「ビジネス」と無縁であった。もちろん弁護士がしていることは「民(みん)の仕事」であるからビジネスであることは当然であったが,「事件」が来るのをまってその枠組みで仕事をするという受動的なスタンスに慣れ親しんでいて,なかなか弁護士としての発想やスキルをビジネスそのものに参加して生かそうとはしなかった。国内,国外の様々な公的機関への参加も低調であったし,ボランティアやプロボノへの参加も,災害時の救援活動を別にすれば「政治思想」が後押ししているケースが多かった。

今の時代の中で

今の時代は暗いイメージに彩られているが(でも私は「繁栄」派だ。)自分が何をすべきかは,おおむね自分で決定し実行できる,あるいはしなければ朽ち果ててしまう「時代」であって,これを制約するような要因はほとんど存在しない。私が弁護士としてこれからも「法律事務」を受任し実行していくことは当然であるとしても,そのような予定調和的で,受動的な枠組みからは飛び出さなければ。考えてみれば,若い頃の私はそれをもっとも尊んでいた。

私のチャレンジ

私が弁護士としての発想やスキルを生かしたいビジネスの対象は,国際的な価値創造,交換と,生命の充実・健康システムの開発である。現時点で当面具体的に取り組むべきことは,

  1. 羽田空港におけるビジネスジェットの整備,格納ビジネス
  2. 中型ビジネスジェット機を利用する国際医療搬送(エアアンビュランス)
  3. ダイエットに様々な要素(小食,多動,睡眠,旅行,文化活動等)を盛り込んだ双方向性の健康アプリの開発
  4. 教育支援

である。

今後,それへの道筋を開けるような,読書,研究,実務体験を積み重ねていきたい。

「”Law & Legal”に関するKindle本」まとめ読み

一口コメント

Kindle本が多くなると,検索しない限り何があるのかわからなくなるので,Law & Legalに関する英文のKindle本を購入順にまとめておく(2015/1/16現在。購入時が古いものから番号を振った。最初は,アメリカでKindleを買ったから,2009年である。)。

25,24,19はAudibleがある。

内容は,法についての概説書(25,23,20,15,11,10,9,8,7,5,4,2),弁護士論も含む実務書(24,22,17,16,14,13,12,6,3,1),小説等(21,19,18)に分けることができる。

14は「米国人弁護士が教える英文契約書作成の作法」の原書であり,10は,国際開発,9は,法と経済学関連の本である。8は私のは,少し版が古い。

現時点では「死蔵」に近いが,何とか新しいビジネスに結び付けよう。

紹介

25

Law 101: Everything You Need to Know About American Law
Oxford University Press, USA (2010-05-13)

2015/1/15

24

The Steps to the Supreme Court: A Guided Tour of the American Legal System
Peter Irons
Wiley
売り上げランキング: 305,110

2015/1/14

23

International Law (English Edition)
WAGmob (2013-09-01)

2014/11/26

22

Law Firm Business Plan Template (English Edition)
Liraz Publishing (2014-04-20)

2014/10/7

21

The Good Lawyer: A Novel (English Edition)
Landview Books (2012-03-14)

2013/12/1

20

2013/8/13

19

2013/5/25

18

2012/12/31

17

2012/11/9

16

Legal Analysis
Legal Analysis

posted with amazlet at 15.01.16
(2009-07-01)

2012/11/9

15

THE COMMON LAW (The John Harvard Library)
Harvard University Press (2009-04-15)

2012/11/1

14

Working With Contracts: What Law School Doesn't Teach You (PLI's Corporate and Securities Law Library)
Charles M. Fox
Practising Law Inst
売り上げランキング: 12,243

2012/8/28

13

2011/7/17

12

The End of Lawyers?: Rethinking the Nature of Legal Services
Richard Susskind
Oxford Univ Pr (Txt)
売り上げランキング: 102,491

2011/7/13

11

2011/6/16

10

Law and Economics in Developing Countries
Edgardo Buscaglia William Ratliff
Hoover Inst Pr
売り上げランキング: 1,372,194

2011/6/16

9

2011/6/9

8

Essentials of Business Law
Essentials of Business Law

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Anthony Liuzzo
McGraw-Hill/Irwin

2011/2/7

7

2010/10/17

6

The Lawyer's Guide to Writing Well
University of California Press (1989-11-30)

2009/12/11

5

A History of American Law: Third Edition
Touchstone (2005-03-15)

2009/12/6

4

The Law (English Edition)
The Law (English Edition)

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Misbach Enterprises (2008-06-01)

2009/10/24

3

The Legal Analyst: A Toolkit for Thinking About the Law
Ward Farnsworth
Univ of Chicago Pr (Tx)
売り上げランキング: 114,929

2009/10/24

2

Law in the United States
Law in the United States

posted with amazlet at 15.01.16
Arthur T. von Mehren Peter L. Murray
Cambridge University Press
売り上げランキング: 255,525

2009/10/24

1

2009/10/24

「法とルールの基礎理論の本」まとめ読み

一口コメント

「法とルールの基礎理論」に関する本をまとめてみた。本棚にあって目についた本をまとめただけなので,決してこれが最良というわけではないし,網羅的でもないが,悪くない本が集まった。

1,2は,人類史の進化論的論点を踏まえた上で利他行為やルールの存在について解明しているので,視野を広げ,適切な出発点を設定するのに適している。2は,読むのに疲れるが。

3は,最近出たものだが,国家に関する幅広い論点を取り上げた上,わかりやすく説明しているので,とても参考になる。国家が適切に果たすべき役割がたくさんにあるということを冷静に理解させてくれる。国家と聞くと頭に血が上って感情的な議論をするだけではだめだと反省。

ただ,3の出発点はヨーロッパの近代国家なので,それ以前,それ以外の地域について,「法人類学」も研究しているという4が,多少古めかしい分析だが参考になる。

法のあり方を考察するためには,5ないし10が,それぞれ特色ある良書だと思う。特に6は,どうして,法哲学,法思想というマイナーな分野に,こんなにわかりやすく説明しようとした,受験のためのトピック集のような本があるのかびっくりだ。10は,ちょっと手に入らないかもしれない。

11は,ここで紹介するのが適切かどうかわからないが,5ないし10で法学者がご大層に語る日本の法律実務のレベルがどうなの(行政分野だが)という,日本文化論としても読めるお笑い「実務書」だ。12は,広い観点から日本の司法の現状を分析している。13,14は,元裁判官が日本の裁判所を痛烈に批判している。

15,16は,外国にも目を向けましょうということだが,どちらもとても面白い。

17から19は,日本で研究,教育をしている外国人の研究者,実務家の,裁判所,日本の法文化,弁護士論。いずれもとても面白い。

紹介

1

モラルの起源―道徳、良心、利他行動はどのように進化したのか
クリストファー ボーム 長谷川 眞理子
白揚社
売り上げランキング: 5,495
Moral Origins: The Evolution of Virtue, Altruism, and Shame
Basic Books (2012-05-01)

2

ルールに従う―社会科学の規範理論序説 (叢書《制度を考える》)
ジョセフ・ヒース
エヌティティ出版
売り上げランキング: 267,039

3

国家の社会学

国家の社会学

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佐藤 成基
青弓社
売り上げランキング: 24,331

4

世界の法思想入門 講談社学術文庫
講談社 (2014-11-28)
売り上げランキング: 33,050

5

法学入門

法学入門

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星野 英一
有斐閣
売り上げランキング: 536,218

6

よくわかる法哲学・法思想 (やわらかアカデミズム・わかるシリーズ)
深田 三徳 濱 真一郎
ミネルヴァ書房
売り上げランキング: 121,543

7

現代法哲学講義

現代法哲学講義

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高橋 文彦 桜井 徹 横濱 竜也 郭 舜 山田 八千子 浅野 有紀 鳥澤 円 藤岡 大助 石山 文彦
信山社
売り上げランキング: 618,899

8

法理学講義

法理学講義

posted with amazlet at 15.01.15
田中 成明
有斐閣
売り上げランキング: 508,222

9

法社会学 (NJ叢書)

法社会学 (NJ叢書)

posted with amazlet at 15.01.15
法律文化社
売り上げランキング: 882,976

10

法政策学―法制度設計の理論と技法
平井 宜雄
有斐閣
売り上げランキング: 272,601

11

行政法解釈学〈1〉実質的法治国家を創造する変革の法理論
阿部 泰隆
有斐閣
売り上げランキング: 683,595
行政法解釈学〈2〉実効的な行政救済の法システム創造の法理論
阿部 泰隆
有斐閣
売り上げランキング: 561,577

12

テキストブック 現代司法
木佐 茂男 佐藤 鉄男 川嶋 四郎 水谷 規男 宮澤 節生
日本評論社
売り上げランキング: 305,941

13

絶望の裁判所 (講談社現代新書)
瀬木 比呂志
講談社
売り上げランキング: 402

14

ニッポンの裁判 (講談社現代新書)
瀬木 比呂志
講談社
売り上げランキング: 152

15

はじめてのアメリカ法 補訂版
樋口 範雄
有斐閣
売り上げランキング: 69,212

16

開発法学の基礎理論―良い統治のための法律学
松尾 弘
勁草書房
売り上げランキング: 105,631

17

名もない顔もない司法―日本の裁判は変わるのか (NTT出版ライブラリーレゾナント)
ダニエル・H. フット
NTT出版
売り上げランキング: 310,296

18

裁判と社会―司法の「常識」再考 (日本の“現代”)
ダニエル・H. フット
NTT出版
売り上げランキング: 116,535

19

手ごわい頭脳―アメリカン弁護士の思考法 (新潮新書)
コリン・P.A. ジョーンズ
新潮社
売り上げランキング: 259,969

弁護士は法律の本は余り読まないのですか?

グサリとくる問い

「弁護士は法律の本は余り読まないのですか?」と聞かれたとしよう。多分,答えは,YESに近い。

弁護士の仕事を大きく分ければ,裁判所における主張と立証(裁判)と,その他の場面での法律に関わる問題についての「意見」表明になるだろう。

これらの前提として,問題となっている法律に関する情報を調べるのは当然で,法律の本にも目を通す。でもそれは「本を読む」作業とは少し違う。もう少し,断片的だ。

「でも司法試験に受かるためにはたくさんの本を読まなければならないと聞いていますよ?」。それは民法や刑事訴訟法等々という各法分野の教科書や参考書を熟読してその法律の仕組みや機能を理解し頭に定着させるためで,その法律の概要や問題の所在,解釈に必要な思考法が頭に入って無事実務家になれば,あとは「調べる」ことがあるぐらいというのが実際であろう。

ただ,「各法分野の教科書や参考書を熟読してその法律の仕組みや機能を理解する」というのが相当に苦痛でしんどい作業なので,本ばかり読んでいるというイメージを持たれてしまうのだろう。もっとも最近は,実際問題として法律の抜本的な改正(会社法や金融商品取引法がそうなるだろうか。民法債権法の改正も行われた。)や,新しい法律の制定(個人情報保護法等々)があるので(ここに挙げたのは,後述する観点からは,「悪法」の最たるものである。),弁護士もこれらの法律を頭に入れるのが苦痛になっているという面もある。でもそれができないとその法分野については素人と同じだ。

ところで法律実務家でない「行政」畑の人は,法律を扱っていても(立法していても),何かピントが合っていないことがあるのは,このような過程を経ていない人が多いからだろうと思う。もっとも,弁護士は行政の細かい仕組みを知らないまま大風呂敷を広げる傾向があるから優劣はつけがたいかも知れないが(これは冗談だといっておこう。)。

では藤沢周平を読んでいればいいのか

それは違うだろうというのが私の今の考えである。

まず,法律は,国家組織を構成する政治家や役人が「立法者」という立場で,「国民」を言語でコントロールしようとする手段だから,何よりも「国民」がこれを理解してその行動を規律出来るだけのわかりやすさと実質的な合理性を備えていなければならない(いるべきである。)。現時のわが国の法律の大半は,根本的にかかる資質に欠けている。したがって法律実務家は,この点を意識して,わが国の法律の解読とその改革を目指さなければならないだろう。

さらに遡れば,人と人,集団と集団(含む「国家」)の間の,行動(取引,交換)を円滑に進める手段の一つとして「法」というルールがあるとして,現時のグローバル社会の展開の中でアメリカ法(英語文書)を基本とする「法の支配」が世界の規律としてふさわしいのかという根本的な問題がある。実際に「法」がある種の役割を果たしている分野において,世界標準=アメリカ法という現実に対する批判を進めるために読むべき本は多いねという実践的な問題と,そもそも「法」の果たすべき役割を進化生物学に基づいて検討すべきであるという「哲学的」な問題と二つの問題がある。

2,3の予定

このような観点から,「<日本の立法>批判序説と」を書いてから2年が経ってしまったが,とりあえず,「哲学的」な問題を除いて次のような本が読むべき視野に入っている。

  • 「開発法学の基礎理論 よい統治のための法律学」(松尾弘:勁草書房)。これはやはり重要だ。
  • 「法理学講義」(田中成明:有斐閣)。従前の法哲学も頭に入れる必要がある。
  • 「はじめてのアメリカ法」(樋口範雄:有斐閣)。この人はまともなことを考えているなという安心感がある。

ここのリストはおって充実させていこう。なおこれについては「法を問題解決と創造に活かす」で検討を始めている(18/07/12)。

会社設立,定款,登記

会社設立と定款作成

弁護士が会社設立の手続をするときは,当然,定款も作成することになる。会社設立時の定款作成,会社設立登記,その他若干の問題についてまとめておく。

会社定款モデル案

会社定款を作成するとき,基本とするのは,日本公証人連合会のWebサイトに掲載されている「定款記載例」だ。

①「小規模会社(非公開,取締役1名,監査役・会計参与非設置)」

②「小規模会社(非公開,取締役1名以上,取締役会非設置,監査役非設置会社」

③「中規模会社(非公開,取締役3名以上,取締役会設置会社,監査役設置会社)」

④「大会社(公開会社,取締役会設置,会計監査人設置,委員会設置会社)」

の4例が出ている。最初から④を設立することは余りないだろうが,設立する会社を①~③のどのタイプにするかは,その会社がどの程度の仕事をし,どのように運営されるかを,よく考えてから決めた方がいい。③より②を選択すべき場合も多い。

会社の設立

会社の設立手続の種類

発起設立と募集設立。通常は,発起設立の方法による。

事前準備

  • 定款案の作成(発起人の実印押印)+発起人の印鑑証明書+委任状(発起人の実印押印)
  • 代理人が公証役場へ出頭(代理人は,「発起人本人がその記名押印を自認している旨,陳述」する。)
  • 会社代表者印等の作成
  • 出資金振込のための発起人の個人口座の準備
  • 出資金の振り込みが先行しても,フォロー可

会社設立の際の費用について

  • 公証役場の費用は9万円強(定款の認証費用…5万円,印紙…4万円,定款謄本作成費用…約2千円)
  • 法務局に納付する登録免許税は,出資金の1000分の7(最低15万円以上)
  • 会社代表者印等の作成費用
  • 代理人の手続費用

会社設立登記の若干の問題

  • 法人登記については,法務省に書集式がある。
  • 登記の事由は,「発起設立の終了」,登記すべき事項は「別添CD-R」のとおりとする。
  • 定款で取締役,監査役を定めたときは,就任承諾書。代表取締役を選任するときは選任決議書と就任承諾書。定款に定めがない場合は,発起人による取締役,監査役の選任決議書。
  • 取締役がひとりの場合でも,登記にあたっては「取締役」,「代表取締役」両方を記載し,登記申請も代表取締役で行う(会社法349条1項)。
  • 添付書類は,定款,代表取締役の印鑑証明書,払込みがあったことを証する書面+発起人決定書,就任承諾書である。
  • 資本金の額が会社法及び会社法計算規則の規定にしたがって計上されたことを証する書面(資本金の額の計上に関する証明書)を作成する。

定款作成で注意すべきこと

  • 英文表記は,Co.,ltd.が普通だろうが,Co.Ltd.でいいのではないか。最後のピリオドの不要節もある(Limitedの最後のdで終わっているので)。
  • 会社の目的は登記官の審査の対象にならないが,営利性,明確性,適法性が必要とされる。完全子会社を有するときは子会社の目的も含まれなくてはならないとされる。
  • 発行可能株式総数につき,公開会社では,設立時発行株式総数の4倍を超えてはならない。公開会社でなければOK.
  • 株券は原則不発行であるが(会社法214条),しっかりしたビジネスをするのであれば,発行しておいた方がいいのではないか。
  • 株主総会の招集の通知について,会社法299条参照。
  • 取締役会の招集の通知について,会社法368条。短縮を考える。
  • 取締役会の決議の省略については,会社法37条参照。
  • 監査役会を設置するのは相当大規模な会社である。

参考文献

私が主として参照するのは,「会社法実務解説」,「商業登記書式精義」,「会社設立の登記マニュアル (新商業登記シリーズ)」,「新会社法の定款モデル―定款作成・変更の記載実務」,「「会社設立」書式ハンドブック―一人でできる会社設立!」,「ダンゼン得する 個人事業者のための会社のつくり方がよくわかる本」である。