「ドラッカーと会計の話をしよう」を読む

著者:林 總

ドラッカー経営学のケーススタディ第3弾だ

「もしドラ」,「もしドラ2」が,クリエーターが作った野球の物語によるドラッカー経営学のケーススタディだとすれば,本書は公認会計士さんが作った営利組織(イタリアンレストラン)と,非営利組織(病院)の物語によるドラッカー経営学のケーススタディである。著者の職業故というべきか,「もしドラ」より本書の方が地に足の着いた説明になっているし,ドラッカー経営学の内容も,はるかに理解しやすい。それに今だけかもしれないが,Kindle本が230円なので,「買い」である。

ドラッカー経営学のポイントは,「顧客の創造」であり,それを実現するためのマーケティング(顧客の現実,欲求,価値)とイノベーションである。これは営利組織,非営利組織に共通している。要するにドラッカーはこのことを状況に応じて変形させ,繰り返して述べているだけのような気がする。

これが頭に入っていれば,本書は簡単に通読できる。

営利組織について

売上-費用=利益と,儲けは同じか。利益は便宜上の期限で区切られ,いくらでも操作できる。存在しない。儲けとは,稼いだ現金,キャッシュフローだ。

新たな価値だけが新たなキャッシュフローを生む。経営で大切なのは将来にわたり価値を創造し続けることだ。

10対90の法則,商品にはライフサイクルがある。明日の主力商品にコストをかける。

企業の内部にあるのはコストセンターである。プロフィットセンターは顧客にある。コスト,お金は儲け利益を生むように使わなければならなコストは,ビジネスプロセス全体で考える。ABC原価計算(「レレバンス・ロスト」)を考える。コストを負担するのは,顧客である。

非営利組織について

ここでは,知識労働が問題とされる。

労働生産性の向上とは,それまで人がしてきた作業を機械に置き換えることにほかならない。 機械に置き換えられるのは肉体労働の生産性だけなんだ。 知識労働の生産性は逆に悪化してしまう。より賢く働くことしか方法はない。

知識労働者の生産性を高める第一歩は,仕事の目的を考え,仕事の内容を明らかにすることだ(条件一)。これができれば,自律性が高まり,生産性の向上を目指し,専門性を磨くようになる(条件二)。さらに,イノベーションを積極的に行い(条件三),学習意欲が高まる(条件四)。そして,生産性とは質の問題であることを知り(条件五),知識労働者は組織に価値をもたらす資本財であることを理解する(条件六)。

すでに起こってしまい,もはやもとに戻ることのできない変化,しかも重大な影響力をもつことになる変化でありながら,まだ一般には認識されていない変化を知覚し,かつ分析することである(傍観者の時代)。

ドラッカーにどの程度向き合おうか

ところで,入山章栄さんという経営学者の「世界の経営学者はいま何をかんがえているのか」という本の「「第1章 経営学についての三つの勘違い」の最初に,「アメリカの経営学者はドラッカーを読まない」と書いてあることは,かなり前から知っていた。そうですかというだけのことだが,入山さんはそれに引き続いてくどくどといろいろなことを書いていて,要するにドラッカーは「科学」ではないということなんだろうけれど,そもそも「経営学」は科学なのかという問いの方がよっぽどましな気がする。科学的に構築・検証されたものでないので「真理に近くない」可能性が大いにあるそうだが,入山さんは,科学とか,真理の概念分析から始めたほうがよさそうだ。

といっても,私はドラッカーのにわか読み手に過ぎないので,このような「神々の争い」に参戦する気はないが,確かに「ドラッカー365の金言」とか「名言集…の哲学」とかがたくさん出ているところを見ると,ドラッカーの世界全体を視座に入れた切れ味鋭い文章を読んで,ドラッカーはすべて正しいとする熱烈なファンがいるのだろう。「もしドラ2」に「ハーバート・サイモンに似たところがある」と書いたが,ドラッカーが分身と名指しする翻訳者がいたり,「知の巨人」などと言われているところを見ると,日本の吉本隆明の名をあげるほうがぴったりかもしれない。吉本隆明とドラッカーでは,「政府,政治」が「企業,経営」に置き換わっているだけだと考えると納得できる。

ただとにかく「経営」という現実を切り取り整理するのに便利な言葉が多いので,これからも折に触れてドラッカーを読もうと思うが,一種の自伝であろうが「傍観者の時代」だけは,すぐに読もうと思っている。入山さんもこれは読まれた方がいいだろう。支える文化,教養の違いが歴然としている。

それからいったんコーポレートガバナンスに戻り,法やITについて検討しよう。
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イソップ寓話(童話)の魅力

イソップ寓話は英語の学習に役立つか

私は,これまでイソップ寓話(童話)に興味を持ったことはなかったが,その英訳(新訳)のKindle本とAudibleが手許にあったので,速読用にどうかなと思って試してみた。単語は基本的に簡単だが(ただし,動植物名は分からないものも多い。),修飾関係,構文はかなり複雑なので,英語の頭の体操(読解)用にいいかなと思い,勉強を始めている。

その帰趨は追ってということにして,目に入った話の中から二つほど紹介してみたい。人に言いたくて,黙っておられないほど面白い。紹介はKindle本の英訳(新訳)ではなく,「アイソーポス著作 イソップ物語寓話単位に英日対訳方式採用」を使用した。訳はそのままである。

The Man,the Horse,the Ox,and the Dog

人が馬と牛と犬を助けたら,動物たちが感謝の気持ちから,人間の寿命を3つに分けて,それぞれの時期の気質を受け持ってくれることになった。若い時期は馬で,激しく頑固で,執拗に自分の意見を主張し,中年は牛で,仕事を好み,冨を蓄え,倹約する。さあ,最後は犬だ。

The end of life was reserved for the Dog, wherefore the old man is often snappish, irritable, hard to please, and selfish, tolerant only of his own household, but averse to strangers and to all who do not administer to his comfort or to his necessities.

最後の部分はイヌが受け持った。それ故年寄りは,怒りっぽく,短気で気むずかしく,我が儘で,そして自分の家族には寛容だが,よそ者や,自分の好みでないものや, 自分に必要でないものは,全て嫌悪する。

自戒しよう。

The Man and His Two Sweethearts

これは訳がない方がいいだろう。

A MIDDLE-AGED MAN, whose hair had begun to turn gray, courted two women at the same time. One of them was young, and the other well advanced in years. The elder woman, ashamed to be courted by a man younger than herself, made a point, whenever her admirer visited her, to pull out some portion of his black hairs. The younger, on the contrary, not wishing to become the wife of an old man, was equally zealous in removing every gray hair she could find. Thus it came to pass that between them both he very soon found that he had not a hair left on his head.

Those who seek to please everybody please nobody.

要は,二股かけてつきあった女性に会うたびに,年上の女性は黒い毛を抜き,若い女性は白髪を抜くので,禿げちゃったということだ。私が,”no hair left on my head”であっても,これが原因ではない。

読者プレゼント?

動植物名の英語を頭に入れるために,イソップ寓話の表題とその訳の一覧表を作ったので,私がイソップ式英語学習法に挫折しても,どなたかに使用していただくために「読者プレゼント」?として掲載しておく。

これは,上記した「アイソーポス著作 イソップ物語 寓話単位に英日対訳方式採用」によって作成したものである。なおこの本は値段が100円ちょっとなのであまり文句は言えないが,一部編集がおかしい。最初は,英語,和文の順で対応しているが,164話あたりで対応関係がおかしくなり,和文が次の英文の訳になっている(リンクが間違っている。)。そして282話あたりから正常に戻っているので,嫌にならずに取り組もう。もちろん私は犬のように,いったんは嫌になりかけた。

英語の勉強やイソップ寓話自体の研究が進んだら,また報告しよう。

ツールとしての統計学

ピーチ(P値)

大分前のことになると思うが,「nature ダイジェスト」に,P値(ピーチ)の使用に気を付けようという趣旨の記事がでていて,「P値」に気を付けるといっても「ピーチ ツリー フィズ」を飲みすぎるなということではないよ,というギャグを書こうと思って,そのままになってしまった。

今確認すると,「nature ダイジェスト」の2016年6月号である(「nature p値」と検索すると,トップに出てくる。)。その記事は,「米国統計学会(American Statistical Association;ASA)は,科学者の間でP値の誤用が蔓延していることが,多くの研究成果を再現できないものにする一因になっていると警告した。ASAは,科学的証拠の強さを判断するために広く用いられているP値について,P値では,仮説が真であるか否か,あるいは,結果が重要であるか否かの判断はできない」というものである。このころ私は,統計学に眼を向けていて,ピンと来たらしいが,今はさて?簡単にいえば,5%以下なら正しいと即断するのは,間違いだということだろうか。

統計学を理解する

経済指標に親しみ,理解することにした私としては,その作成ツールである統計学にも目を配る必要があるが,統計学の用途はこれだけではない。今では統計学は,社会や経済を分析,理解するための基本的なツールといわれている。私が学生だった頃は,あまり統計学云々とはいわれなかった(ような気がする。)。

これから漫然と統計学に取り組むのでは,頭には入らないだろう。①社会や経済(自然科学でもいいが)の分析,理解のための具体的な使われ方を把握した後で,②統計学そのものに進むのがよいだろう。①と②の関係について見通しを与えてくれる本αがあればもっと良い。

実はαについては,最近よく売れた有名な本がある。「統計学が最強の学問である」(著者:西内啓)で,実は4冊もある(正編・実践編・ビジネス編・数学編)。これらに書いてある,統計学は「今,ITという強力なパートナーを手に入れ,すべての学問分野を横断し,世界のいたるところで,そして人生のいたる瞬間で,知りたいと望む問いに対して最善の答えを与えるようになった」や,「現状把握,将来予測,洞察(因果関係)」の3機能があり,重要なのは,洞察(因果関係)であるという指摘は重要であるし,紹介されている下の「一般化線形モデルをまとめた1枚の表」は,今後,統計学に取り組むうえで,役に立ちそうな気がする。

 

 

 

 

分析軸(説明変数)
2グループ間の比較 多グループ間の比較 連続値の多寡で比較 複数の要因で同時に比較

連続値

 

平均値の違いをt検定 平均値の違いを分散分析 回帰分析

 

重回帰分析

 

あり/なしなどの二値 集計表の記述とカイ二乗検定 ロジスティック回帰

その他「統計学が最強の学問である」には,統計学の数学的な説明にあまり入り込まずにあれこれ書かれているのだが,それだけにどうも「専門的」なことまではわかった気がしないというのは事実である。でもαとしては優れていると思う。

統計学の使われ方

さて統計学の手法が何に使われるかについて,「統計学が最強の学問である」は,次の6つをあげる。

①実態把握を行なう社会調査法

②原因究明のための疫学・生物統計学

③抽象的なものを測定する心理統計学

④機械的分類のためのデータマイニング

⑤自然言語処理のためのテキストマイニング

⑥演繹に関心をよせる計量経済学

私としては,④⑤⑥あたりが興味の対象だ。ただ最初は⑥を入口にすべきだろう。これについては,「原因と結果の経済学」(著者:中室牧子他),この本の末尾に「因果推論を勉強したい人に第一におすすめしたい本」として挙げられている「計量経済学の第一歩―実証分析のススメ」(著者:田中隆一)を読むのがよいだろう。統計学を含む広い観点から,因果関係を検討する「原因を推論する:政治分析方法論のすゝめ」(著者:久米郁男)も,お薦めだと思う。買っただけで目を通していないが「データ分析の力 因果関係に迫る思考法 」(著者:伊藤公一朗)もよさそうだ。

これらのうちの1,2冊で計量経済学の概要にあたりをつけて,「統計学は最強の学問である」を参照しつつ,統計学を勉強する運びとなる。

統計学については適当な教科書を選べばいいのだろうが,勉強しているのがどのあたりの議論かといういことを把握するため,「統計学図鑑」(著者:」栗原真一他)を参照するのがよさそうだ。なおこのあたりの本の紹介は,現在進行形,未来進行形だ?

統計学と数学

統計学は,数学的な処理を前提とするので,数学的な素養も必要だ。

そこで私は,今後,まず,「計量経済学の第一歩―実証分析のススメ」(著者:田中隆一)を頭に入れて,「改訂版 経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める」(著者:尾山大輔他),「経済学で出る数学 ワークブックでじっくり攻める」(著者:白石俊輔 )を勉強しようと思っている。それに加えて「大学初年級でマスターしたい物理と工学のベーシック数学」(著者:河辺 哲次)がほぼ理解できれば,私が通常読む本の数学的な処理については,問題がなくなるだろう。急がばまわえれだ。

法律学と統計学

ところで,法律学や律実務についても,少なくてもアメリカでは統計学的な手法が取り入れられている。翻訳されている「法統計学入門―法律家のための確率統計の初歩 」(著者:マイクル O.フィンケルスタイン)という本があるが,同じ著者のより詳細な「Statistics for Lawyers」があるが,未購入である。「数理法務nのすすめ」(著者:草野耕一)でも,確率,統計に多くの頁が割かれている。

なお「「法統計学入門」は,木鐸社の「法と経済学叢書」(11冊が刊行されている。)の一冊である。「法と経済学」において,経済学的分析や統計学に基づいた分析が行われるのは当然であるが,さて,それがどれほど立法や法解釈に生かされているかが問題である。

統計学の付録-統計局の学習頁

総務省統計局(「日本の統計の中核機関」と紹介されている。)のホームページに/,イラストがきれいな「統計学習サイト」があり,「なるほど統計学園」,「なるほど統計学園高等部」に分かれている。また「統計力向上サイト データサイエンス」もあるし,「データサイエンス・オンライン講座 社会人のためのデータサイエンス演習」も提供されている(gaccoでの受講)。統計ダッシュボード,You-Tubeの統計局動画,facebook,日本統計年鑑にもリンクしており,実にサービス満点だ。

だが,ほとんど利用されていないだろうな。例えば,多くの労力と費用をかけて作成されたであろう「動画」の視聴回数が,数百から数千だ。ネット上で需要拡大をするにはどうしたらいいか,本当に難しい。統計局は,人工知能の松尾豊さんや,上記の「統計学が最強の学問である」の西内啓さんを動員したが,だめなようだ。

でも私はこういう孤独の影がただようホームページは好きだな。これらの企画がなくならないうちに,せいぜいアクセスしよう。

「「人工超知能」 -生命と機械の間にあるもの-」を読む

著者:井上智洋

後半は混乱している?

著者は,AIに堪能な経済学者ということだが,私は「人工知能は資本主義を終焉させるか」という著者と齊藤元章氏(医師で,スパコンの開発者だが,つい最近詐欺で逮捕されたことを知り,いささか驚いた。)との対談を読んでいて,経済分析はさておき,著者のAI論が知りたくなって,急遽,この本を読んでみた。

後半の哲学論は混乱していてどうかとの書評が目立つ。確かに第4章まではお薦めである。特に「第3章 機械学習とディープラーニング」はよく整理されているし,「第4章 汎用AI」で,「強いAI」とは違うアプローチがあることがわかった(といっても東大の松尾さんが推進しているので,知らないほうが「遅れていた」のであるが。)。

哲学論はどうか

第5章から第7章の哲学論だが,「第6章 ターミネーターは現実化するか?」は,趣味の領域の議論として横に置いていいのでないか。

「第5章 AIは人間の知性を超えられるか?」は,題材はいいが,入口の議論がわかりにくいうえ,何となくもたもたした議論が続く印象で,ここで読者が引いてしまうのかも知れない。

「第7章 AIに意識は宿るか?」は,私は好きな議論ではあるが,厳密な議論というより,端緒のアイデアの羅列という感じだ。哲学者はどう思うか。こういう議論ができるのは,おそらく次で紹介する「AI社会論研究会」でのやり取りがあるからだろう。いいことだと思う。

AI社会論研究会

なお著者は,理研の高橋恒一さんらと一緒に,「AI社会論研究会」を設立,運営している。同研究会は,「「人工知能が社会に与える影響」について議論する会です。 一口に「社会」と言いましたが、哲学(Humanity)、経済学(Economics)、法学(Law)、政治学(Politics)、社会学(Sociology)といった多様な観点からのアプローチを目指しています)」とのことである。

最新の研究会は,「ロボット・AI と医事法〜医療過誤を中心に〜」,「対話システムにおける諸課題~技術・サービス・倫理の側面から~」,「理化学研究所・未来戦略室」,「How to Grasp Social Shaping of AI in East Asia」とか,楽しそうである。最後の講演者は,進化学の佐倉統さんである。紹介を見ると「専攻は進化生物学だが,最近は科学技術と社会の関係についての研究考察がおもな領域。長い長い人類進化の観点から人間の科学技術を定位するのが根本の興味である」とある。

 

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AIの最先端を知る

AIのわかりやすいとらえ方

今AIは何を目指しているのだろうか。

カーネマンのシステム1(直観的ないし無意識的思考)とシステム2(論理的思考)を持ち出すと,人間の思考は,システム1とシステム2の複雑な絡み合いで成り立っているが,生物誕生以来の進化と共にあるシステム1が圧倒的な影響力を持つと共に繁殖,生存レベルで優れているが,意識(言語)により生まれたと思われるシステム2は,科学を生み,宇宙,物質,生命を解読しつつある。

これを踏まえれば,AIは,これまでコンピュータが扱ってきた人間の論理的思考をはるかに凌駕するシステム2分野に,苦手とするシステム1分野を組み込もうとする動きだととらえることができよう。そしてコンピュータが,人間より高度のシステム1とシステム2の両者を備えれば,「汎用人工知能」の誕生といえるのだろう。ただ,それだけではどうも足りないような気がするが。

例えば,AIの動きにばかり気が取られていると,「古典を読め。歴史を知れ。」といわれると,「?」となってしまうが,少ない観察材料とほとんどない科学的知見から事柄の本質を見抜く「古典」,人のした数少ない社会実験から人間を解明する「歴史」はいずれも貴重な資産である。人はそこから学べるが,さてAIは?これは難癖に近いかもしれない。

AIの最先端を追う人々

AIの最先端を追う人々の様々な動きは,複眼的にみる必要があるだろう。

今これを開発しつつある科学者,技術者,企業は,コンピュータやインターネットが持つシステム2の能力を背景に語るので,とても大きな「存在感」があるが,よく考えれば,利用しているのは,本人自身の理科系的センスのシステム1とシステム2であるから,これまでの科学史どおり,玉石混交,試行錯誤を繰り返し,正しく未来を切り開く試みはごく僅かであろう。だがそれで十分だ。

一方,これを自身の生産活動に持ち込んで利用したいと思う人々がいる。希望と利益の両者に引っ張られるユーザーたちである。

さらにこの両者の間に介在して利益を得ようとする,販売者,ブローカー,評論家がいる。一番目立つのはこの人たちだろう。

その外枠に私のように,AIが現在何であり,近い将来的どうなるのかに,ゾクゾク,わくわくしながら随伴する人々がある。ただし私は,これを法というルールの改革に使いたいと思っているので,ゲーマーよりは,少しはいいか,どうか?

AI技術の最先端を学ぶためには

IT・AIの基礎は大事だが,玉石混交,試行錯誤を繰り返しているAI技術の最先端からも目が離せなくなる。

そのわかりやすい導入として,今私が目を通している「エンジニアのためのAI入門」はお薦めだ。おって,本の森で紹介したいと思うが,ぼやぼやしているとすぐに古くなってしまいそうだ。その場合は,この本の出版元がやっている「Think It」というWebを見ていただきたい。

AI技術の最先端を知るリンク集

AI技術の最先端ということであれば,それに取り組んでいる「人工知能学会」「NPO法人全脳アーキテクチャ・イニシアティブ(WBAI)」のWebサイトを見るのがよいだろう。

さらに個別のリンク集は,前者では「私のブックマーク」として紹介されており(更新情報はこちらにあるようです。),後者ではその前身の「汎用知能研究会」のリンク集がある。それぞれのところから辿っていけば,海外の情報も得られるであろう。

 

「働きたくないイタチと言葉がわかるロボット」を読む

~人工知能から考える「人と言葉」 著者:川添愛

イタチがAIを作る?

著者は,「こちらの言うことが何でも分かって、何でもできるロボット。そんなものができるかもしれないとか、そうなったら私たち人間の生活はどう変わる?とか,そういう話が今の世の中にはあふれて」いるが,そううまくはいかない,「言葉が分かる」という言葉の意味を考えていくことで、機械のこと,そして人間である私たち自身のことを探っていきたい,そこで中心となるのは,「言葉の意味とは何か」という問題」だとして,イタチと一緒に人工知能搭載ロボットを作る過程に旅立つ?

この本は,9章からなっているが,各章の前半は,イタチ,フクロウ,アリ,魚,タヌキオコジョ等が繰り広げる寓話で,後半は,これについての読みやすい解説でできている。寓話といっても,「詳細目次」にあるように,「言葉が聞き取れること」,「おしゃべりができること」,「質問に正しく答えること」あたりまでは,よくなされるAIといわれるものに,何ができるか,問題はどこかということをめぐってのドタバタ劇だが,「文と文との論理的な関係が分かること(1)(2)」,「単語の意味についての知識を持っていること」,「単語の意味についての知識を持っていること」,「話し手の意図を推測すること」は,自然言語を理解するということはどういうことかについて,言語学を踏まえた議論がなされており,ここがこの本の「目玉」だ。

著者の議論は賛成できる

「著者の議論は賛成できる」と書いたが,「理解できる」くらいが正しいだろうか。今後,「強いAI」がどう展開されるかは誰にもわからない。ただ,機械学習(ディープラーニング)の延長だけで,自然言語を,人間がやっているのと同じように扱えると考えるのはどうだろうか。自然言語処理がむつかしいというのは誰もがいうことだが,著者がいうように「人間ってどうなっているの」ということがおぼろげながらでもわからないと,人間には追いつけないのではないか。

これとは別に,「強いAI」論には,人間には「意識」があって,これはもちろん,物質が生み出しているのだろうけれど,どうしてそうなるんだろうという流れの議論もある。これも追いつけるかなあ,まだまだ先でしょう。

著者の議論のまとめ

著者は,最後あたりで,その議論を要約してくれている。

自然言語を扱うためには,「① 音声や文字の列を単語の列に置き換えられること ② 文の内容の真偽が問えること ③ 言葉と外の世界を結びつけられること ④ 文と文との意味の違いが分かること ⑤ 言葉を使った推論ができること ⑥ 単語の意味についての知識を持っていること ⑦ 相手の意図が推測できること」が必要である。

これを切り開くためには,「A 機械のための「例題」や「知識源」となる、大量の信頼できるデータをどう集めるか? B 機械にとっての「正解」が正しく、かつ網羅的であることをどう保証するのか? C 見える形で表しにくい情報をどうやって機械に与えるか?」という問題がある。なかなか大変そうだ,ということである。

イタチさんについて

私は最初,イタチさん,フクロウさん,アリさんらが,次々に登場しての話の展開(それもかなり趣味的に細かい話の流れを作っている。)には,なかなか頭がついていかず,どうしようかなと思っていたのだが,何回か目を通しているうちに,そんなに違和感がなくなった。AIについて,真正面から議論すると,どうも熱くなるのでこのぐらいがいいのかなとさえ思えてきた。でも,すぐには,この著者のその他の本には手が伸びない。どうも同じようなつくりのようだから。

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「シンポジウム 人工知能が法務を変える?」を聞く

人工知能が法務を変える?

2017年11月29日(水),日弁連法務研究財団と,第一東京弁護士会総合法律研究所IT法研究部会共催の,標記のシンポジウムを聞いた。

登壇して話をしたのは,マイクロソフトのエンジニア,日本カタリスト及びレクシスネクシス・ジャパンのそれぞれ外国人弁護士,日本人弁護士2名の,計5名である。

「AIと法」に関わる新しい話が聞けてそれなりに面白かったが,登壇者の誰も「人工知能が法務を変える?」ということをまともに考えている訳ではなく,ふらふらと「題名」につられて顔を出した人には拍子抜けだったかもしれない。ざっと内容を概観する。なお当日用いられた資料が法務研究財団のWebにアップされている。

マイクロソフトのエンジニアの人

現時点でのAiとは何かということを,地に足のついた議論として紹介してくれた。現にAIビジネスを魚化している人の話は,信頼できる。

ビジネス分野でAIが理解できている人は10人に1人だ。

画像や音声の分野はどんどん進むが,自然言語の意味の処理はむつかしい。ただし検索ということでいえば,先日公開されたアメリカのJFKの資料をデジタル化し,あっという間に処理,分析した。「犯人」とFBIのある人物との「関係」が浮かびあがった。人が見ていくと何年かかっても処理できない膨大な量だ。

AIというより機械学習という捉え方の方がわかりやすい。

日本カタリストの人

AIを利用したドキュメントレビューの紹介である。

アメリカの電子情報開示制度の下で,開示の対象となる電子情報(メール,チャット,LINE,FACEBOOK,電子ファイル,会計データ,Web等々)についてのドキュメントレビュー(関連あり・なし,秘匿特権あり・なし)が,AIシステムを利用して行われている。これによって大幅な弁護士費用の削減が可能だ。

まず,関連性あり・なしのレビューをする。AIシステムが,文書全体を関連する文書にグループ化し,そのサンプルを取り出し,レビューワーが,レビューすることで,グループ文書の関連性あり・なしのランク付けができる。

また関連性がある文書について,秘匿特権のレビューをし,提出する,しないを決定する。

これはアメリカでは現に利用されており,法廷におけるTAR(technology assisted review)の利用として連邦民事規則にも取り入れられている(のだと思う)。

日本の法廷でこういう形の立証が取り入れられるかどうかは疑問だが,例えば,今,証拠にするため電子メールを検討すると,返信が様々な送信メールになされているので送受信の全体の流れを把握するのがとても大変だ。それだけでも,工夫が欲しいところだ。でもそれはAIか?

レクシスネクシス・ジャパンの人

レクシスネクシス・ジャパンのトルコ人弁護士は,リーガルテックという観点から弁護士業について検討したる。その内容は,以下のとおりだが,きわめて刺激敵だ。

AI/Legal Techの現在の環境

リーガルリサーチ&情報収集

法改正及びインパクトへ対応

コンプライアンスリスク監視

 e Discovery

顧客ニーズ分析を含む業務支援

自動紛争解決(ODR)

資料/契約文書のレビュー

3分間でドラフティング

リーガルテックの成長

2012年リーガルテックに関する特許出題数:2012年99件から2016年579件に大幅増加 38% アメリカ 34% 中国 15% 韓国

法律家への影響

顧客開拓

ニッチ・専門分野へのニーズに対応

Data driven lawyerになり,best lawyerとなる

ネイティブ弁護士と競争

ビジョンを持つ信頼できるアドバイザーになる

真の付加価値を提供する

値段競争に陥らないサービス差別化

ワークライフバランス

レクシスネクシスの取り組み

検索,分析,可視化

その後,レクシスネクシスの「判例検索に加え、法令や立法、行政情報といった、リーガル情報を一元的に収録」したデータベース「Lexis Advance」のデモがあった。アメリカは,州ごとに法が違うこと,陪審があること等から,リーガルリサーチ&情報収集は徹底する必要があるから,これは有益だろう。日本ではまず情報がでてこないし,そもそもこのようなシステムを構築・提供するような市場もないというのが現実だろう。

我々は,当面。各種の判例検索,その他のデータベースを有効活用するしかない。

日本の弁護士ふたり

日本の弁護士ふたりは,これから「AIと法」に取り組みたいというところだろうか。

高橋弁護士は,「チャットボット」を作ってみたことの紹介である。すぐに「ボットの理解を超える」,人間は5回の入力で飽きることの報告は貴重だ。オタクレベルだが,AIを切り開くのはオタクである。

齋藤弁護士は,まだ見ぬAI法務の紹介である。講演に備えて十分な準備をされたのだろうが,その問題はどこにあるのと思ってしまう。この種の議論をする弁護士は多いが,私は他にすることがあるのではと思う。ただアメリカでの利用の報告は貴重である。

今後

いずれにせよこの時点で,このシンポジウムを試みたことは,高く評価されるべきだ。今後とも,このような企画があれば参加しよう。

 

アイデアをカタチにする・各論

この記事は,「アイデアをカタチにする」の各論にあたる「商品・サービスを創る」,「健康になる」,「学ぶ・学習する」,「社会制度を改革する」の最初のたたき台として作成したものを投稿したものです。内容は今後順次,充実,改定していきますので,「アイデアをカタチにする」の該当項目を参照してください。

商品・サービスを創る

これから様々な「アイデアをカタチにする」商品・サービスを創り出す仕事に関与していきたいと思う。

すべて今後の課題だが,これまでに関与した一事例を紹介したい。

国際医療搬送事業(エアー・アンビュランス・サービス)の計画に関与したとき,個人についてどうすれば当該サービスを提供できるかという課題があった(料金を採算ベースで徴収すれば,一回最低2000万円程度になる。)。

これについて,個人に有償で効果的な健康管理アプリを利用してもらい,海外滞在時に病気となった会員の共済として必要性の高い順に,当該サービスを安価ないし無償で提供することを企画したことがある。これ自体は,運営会社,代表者の不祥事で立ち消えになったが

そのラフな試案を紹介しておく。具体的な事業化には着手していない。

健康になる

健康になる方法と理論

ここでなすべきことは,「健康になりたい」という「思い」を,できるだけ容易に継続して「実現できる」スキームを創りだすことである。

そのスキームは,抽象的には「食動考休」であるが,その内容を具体化するにあたって,科学的でなければならない。

そのために,健康・医療に関わる本,資料を十分に検討する必要がある。とりあえず人間の心身が複合的なシステムであることを前提とする「ジエンド・オブ・イルネス」を,出発点にしてもよい。

各論的には,「代謝」,特にATPとミトコンドリア,「DNAとエピジェネティクス」,「腸内細菌」あたりを研究する必要がある。

これらを踏まえ,「特別問題」として,「肥満とダイエット」及び「老化」を検討する。

食動考休

食については,「多様なものを,新鮮なうちに(特に野菜・果実),腹八分で」,という以上になすべきことはないであろう。

動(運動)は,有酸素運動(エアロビクス),筋肉トレーニング,ストレッチを万遍なくこなすことだが,これではやりきれないので,簡易な運動+ウオーキング,あるいは「多動」でもいいだろう。

考は,「学ぶ・学習する」の活性化である。

休は,体の弛緩,瞑想及び睡眠である。

改めて思うが,私には知識だけあって実践していない「ヨガ」に取り組めばこのうちの多くがカバーされる。一方で,日本のヨガ指導者の多くが早死しているという事実も忘れるわけにはいかない。

学ぶ・学習する

「学ぶ・学習する」方法と理論

「学ぶ・学習する」方法と理論として,「使える脳の鍛え方」(Make it Stick),「脳が認める勉強法(How We Learn)あたりを出発点にするのがよいだろう。

この分野は,やたらと「ノウハウ」の多い分野であるから,その有効性を見極める必要性がある。

各分野の学習法

読書

数学

英語

ビジネス

学習する手段

ここでは,例えば,MOOC,Podcast,iTunes U等を検討していきたい。

社会制度を改革する

社会制度の改革

私が若いころは,「過剰」な政治が時代であり,私は一時期から「政治」と弁護士の仕事と関係する限りで関わりそれ以上にはみ出さないこととし,以後,基本的にそのようにしてきた。もちろん,投票はしている。

ただ最近は,「政治」の変質が目に余るようになったので(「啓蒙思想2.0」参照),私は改めて「政治」を含む社会制度の改革について,提言・実現する必要があるのではないかと考えるようになってきた。「遅れてきた元青年」である。とはいえ,すぐに用意できる現実的な提言があるわけでもないので,しばらく準備をしたいと思っている。

私がこれまで何らかの関与をしたのは,せいぜい次のとおりだ。

政治資金規正法の改正提言をした。「その内容は,「自由と正義」の論文を参照されたい。同時に,公職選挙法の改正提言もした。

太陽光発電設備を規制する条例策定に関与した。

ジェフリー・サックスの「貧困の終焉」を高く評価した。

「社会制度を改革する」方法と理論

これについては数理的な分析を含め,非常に有効な方法と理論が生み出されつつあると理解している。ゆっくりと整理していきたい。

アイデアをカタチにする・総論

アイデアをカタチにする仕組み造り

プラットフォーム

最近私は,アイデアをカタチにする仕組み造りに取り組もうと思っています。「アイデア」は,「思い」,「発想」,「夢」,「目標」等とも言えますし,「カタチにする」は,「実現する」,「解決する」,「創造する」とも言えるでしょう。もともと発明分野で使われていたものが,ビジネスの分野でも使われるようになったものですが,さほど一般的な表現ではないでしょう。ただビッグバン・セオリーの登場人物ハワード・ウォロウィッツが自分のエンジニアという仕事を「アイデアをカタチにするものだ。」と言っている場面をどこかで見かけたので,それなりに使われているのでしょうか。

最初は,ブランディングをしている年若のデザイナーの友人と共同で取り組めないかなと考えていたのですが,すぐには準備が整いそうにないので,まず私がWeb上で,そのプラットフォーム造りをしようと思います。

今考えていること

ところで今,私が考えていることは,クライアントが「アイデアをカタチ」にする新しい商品,サービス,システム,事業等を創造,起動することを,法務面から支援することです。

創造,起動の対象は,①Things(モノ),②IoT,③サービス,④システム,⑤事業(組織)のブランディング,⑥事業(組織)のスタートアップ,⑦表現等々に分別することができるでしょう。

共同事業者のデザイナーもいない状態では,「アイデア」はクライアントから持ち込まれるしかありませんが,態勢が整えば,自分でもアイデア造りに取り組もうと思います。

あらゆることの複雑化に伴い,ビジネスのみならず科学分野でも様々なアイデアも又,加速度的に生み出されていますが,カタチになるのはごく一部です。大部分はそれでいいのでしょうが,でも「あのアイデアがGoogleに!アーア」ということもありますよね。もっともカタチになったもののうち,ヒット,大ヒットするのはごく一部でしょうが,でもカタチにしないと消え去るだけ。今のビジネスは,数撃つしかないベンチャーキャピタルの投資と似通っています。結果はどうなるにせよ,少しでも充実したカタチを造ることが重要でしょう。

アイデアをカタチにする仕組みの方法・システム

アイデアをカタチにする仕組みの方法・システムを5W1Hの観点から検討すれば,WHEN,WHERE,WHOが,「今,ここで,私たち」であることは明らかですから,WHY,WHAT,HOWを検討することになります。

ところで,「アイデアをカタチにする」ということは,見方を変えれば,マイナスの「問題」であればその「問題を解決する」またはプラスの「価値を創造する」ということです。そこで,アイデアをカタチにするWHY,WHAT,HOWについて,従前「問題解決学」(佐藤允一さん)ないし「創造学」(中尾政之さん)として議論されてきたことを,その方法の中心として検討したいと思います。さらにその源泉には発明的な問題の解決手法である「TRIZ」があります。

ビジネスを支援する法務

アイデアをカタチにする事業について,さて弁護士は何ができるでしょうか。

調査

まず弁護士としては,持ち込まれたアイデアをよく理解する必要があります。そして特にそのアイデアがこれまでの歴史や経緯の中で,どう位置づけられるのか,新規性があるのか,関連分野でどのような研究が進展しているのか,そのアイデアと他の権利との関係はどうか,そのアイデアをカタチにするために必要となる技術や知財は何か等々を,調査する必要があります。

起案

対象事業の進展に応じて弁護士がすべきことは,ルール化,制度化でしょう。

①ルール(外部ルール(法令等)や外部との合意,内部ルール)の設定,及び当該ルールによって展開するビジネス(ゲーム)の追跡,ルール逸脱への対応等に係る実行態勢の確立と整備,運用

②内外の情報流通へ対応とコントロール

③当事者についての合理的な契約関係による規律の設定

④これらに係る法務全般

プラスαとして。

⑤資金調達のアシスト

⑥人材確保のアシスト

⑦必要となった技術・知財の獲得のアシスト

⑧多言語対応

⑨事業進展に応じた関与者の心身の健全性への留意

分業と全体の把握・統括

これらは,少し事業の規模が大きくなると,一人の弁護士ができるようなことでありませんから,適宜分業しなければなりませんが,全体は一人の弁護士が把握し統括しなければなりません。

これからの準備

まず調査方法を具体化し,「アイデアをカタチに法務」については典型的なケースをモデル化する必要があります。

アイデアをカタチにする対象

私が考えている,アイデアをカタチにする創造・起業の対象である「商品・サービス・組織」等は上述のとおりですが,でも考えてみれば,私たちの身の回りには,「アイデアをカタチ」にしたいことが,山のようにあります。

それを「健康」,「学習」,「社会制度」に分けて検討したいと思います。

アイデア倉庫

ところで,アイデアの湧出を活性化するアイデアツールを集めた本(内容によって「アイデア・デザイン編」,「IT・AI編」,「経営編」,「心身の向上技法編」,「世界の構造と論理編」,及び「冷水編」に分けています。)を整理した「アイデア倉庫」を作成しました。

重要な本については,具体的に紹介していきたいと思います。

 

「人工知能の哲学」を読む

~生命から紐解く知能の謎 著者:松田雄馬

人工知能を<生命→知能>と対比してとらえる今一押しの本だと思う

著者は,企業に在職しながら大学院で学び,今は,独立して起業家のようである。

著者の性格なのかもしれないが,この本は細部まで非常にきちんと整理された記述となっており,とても読みやすい。しかも章ごとに「本章の振り返り」があり,章の中の大項目ごとに「ここまでのまとめ」があるという丁寧すぎる本のつくりになっている。

第1章では,人工知能開発の経緯をきちんと整理し,第2章から第4章までは,人間の生命に宿る知能を解析していく。

それぞれの章は,

第2章 錯視→色→開眼手術等を検討し,知能は,不確実な世界の中に身体を通して「自己」を見出す作用である。

第3章 三位一体の脳仮説→社会性→ミラーニューロン→言語獲得→主体性→ユクスキュルの環世界→アフォーダンス→自己言及→場と自己

第4章 リズム→振動→復元力→流入したエネルギーが自己組織的に作り出すリミットサイクル振動→生物は「無限定環境」にあり,その中で生きていく手段として,環境と自己との「調和的な環境を築く」

という流れになっている(これだけではわかりにくいので,ぜひ,通読されたい。)。少し疑問なのは,第3章の「場と自己」で展開される「哲学」であるが,これもあくまで仮説なのだろう。

「人工知能」が乗り越えるべき課題

第5章は「人工知能」が乗り越えるべき課題であるが,ここでも著者は冷静である。今あるAIは,用途が限定された(用途を人間が作る)「弱いAI」であるから,大騒ぎするようなことではない。自動運転には限界があるし,ビッグデータというが「フィルターバブル問題」は深刻だという。

最後の「生物にとっての意味」は,いまだ「哲学」に思える。

とにかく,客観的で整理された冷静な「人工知能」論だ。

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