行政書士がする仕事の分野のお勧め本

行政書士の仕事

行政書士の業務は,行政書士法第1条の2,3に規定されているが,私は運転免許も持っていないので,これまで接触したことはなかった。ただ,業法の免許について細かい処理をしているのだろうということは想像していた。

行政書士のための法律実務書2冊を読む

最近,「要件事実」について若干調べていると,Kindle本に日本行政書士会連合会中央研修所編の「行政書士のための要件事実の基礎」という本があることを見つけた。「民事訴訟編」と「行政訴訟編」に分かれていて,「行政訴訟」についての要件事実を検討しているという内容なので購入してみた。目を通すと「民事訴訟編」はやけに分かりやすい。「行政訴訟編」はこれで要件事実の検討として充分なのかは今後検討したい。

さらに同じ編者の「行政書士のための行政法」というKindle本もあり,「総論」で行政法総論,行政手続,行政不服審査,行政事件訴訟等を取り上げているほか,「各論」で「道路運送法」,「道路運送車両法」,「土地利用関係法」,「廃棄物処理法」,「建設業法」,「出入国管理及び難民認定法」,「農地関係法」,「風営法」を取り上げている。各論は,司法書士が現に行っている許認可手続の分野の法令について,その概要,判例等で問題となった紛争事例を取り上げて説明しており,その分野の全体像の把握に最適だ。

両書ともお勧めしたい。

「行政書士のための要件事実の基礎」(日本行政書士会連合会中央研修所) (Amazon・本の森)

「行政書士のための行政法 第2版」(日本行政書士会連合会中央研修所) (Amazon・本の森)

 

 

「裁判と事実認定を考える」を作成しました

裁判と事実認定を考える

「裁判と事実認定を考える」の固定頁の第1稿を作りました。大項目の「裁判」の「裁判制度について」(以下に,引用します。)に続いて「日本の民事裁判制度」,「弁護士業務から見た民事裁判制度」を検討し,大項目で「事実認定」を取り上げています。「法を問題解決と創造に活かす」ために,立法のあり方(「立法と法解釈を考える」)と並び,私が最も力を入れて考察したいところです。固定頁の「裁判と事実認定を考える」は適宜改定されますので,そちらをご覧下さい。

立法と法解釈を考える」「法制史・外国法」にも手を入れました。

裁判を考える

裁判制度について

裁判は,古来からかなり普遍的に見られる制度であるが,その具体的な内容は,地域,時代によって相当に異なる。これらは法制史として検討されている,ただし,現在,その差異は,相当程度,縮まっていることは間違いないが,それでも他国の裁判制度を,そこで適用される法令も含めて理解することはそう簡単ではない。

ただ裁判制度のように,関係者に対して具体的な影響があることを理解しつつ,その方法を意識して事実を認定し,判断する機会(制度)は多くはないから,それなりに優れた制度として検討の対象となることが多いのは,理解できる。ただ裁判制度を論じる人はどうしても「焦点効果」にとらわれ,たかだか政府の1部門である司法機関が,持ち込まれた案件についての対応の問題であることを見失い,過大評価することが多い。確かにしっかりした法制度,裁判制度が機能していることが秩序維持や経済発展のために重要であることが指摘されているが,裁判所が世の中をよくしたり,経済発展させたりするわけではない。

裁判制度を考察する視点で重要なのは,その論理性と科学性である。参考本として次の2冊を挙げておこう。

「法廷に立つ科学 「法と科学」入門」(著者:シーラ・ジャサノフ) (Amazon・本の森)

「武器化する嘘 情報に仕掛けられた罠」(著者:ダニエル・J・レヴィティン) (Amazon本の森

一般に刑事裁判の方がなじみがあるが,これには複雑な要素・考慮が含まれるので,まず民事裁判を取り上げよう。

(以下,省略)

 

 

 

新しい法令の成立を調べる

この投稿は,固定ページ「新しい法令の成立を調べる」の記事の一部を投稿したものです。固定ページの方はその内容を,適宜,改定していきますので,この投稿に対応する最新の内容は,固定ページ新しい法令の成立を調べる」をご覧ください。

最新の法令の成立状況を知る方法

新しい法律問題を検討する場合,それに関連する最新の法令の成立状況を検討することが必須である。今は,ネットで,ほぼ最新の状況を知ることができて本当に便利だ。その方法の概要をまとめておく(成立後は,「e-Gov法令検索」で検索可能である。)。

重要な法律は内閣提出法案が多いから,「内閣法制局の資料(Web)」を検討するのが,成立の有無の記載(少しずれるが)や主管官庁の作成資料へのリンクもあり,便利だ。下記に最近の4会期の資料を掲載する(第193~196回国会。投稿では省略)。

これでカバーできない情報は,衆議院のWeb,及び参議院のWebを検討してみる。衆議院議員提出法案(衆法),参議院議員提出法案(参法)の状況や,内閣法制局資料で成立になっていなくても,その後の成立の有無や,審議状況が確認できる。以下,衆議院の「立法情報」,参議院の「議会情報」を掲記しておく。

衆議院の立法情報

参議院の議会情報

内閣法制局資料

第196回国会

内閣法制局の各国会会期の法令情報の冒頭は,次のようなものだ。

第196回国会での内閣提出法律案(件名)(平成30年6月22日現在)

法律案名をクリックすると、提出理由が表示されます。

内閣提出法律案の具体的内容をお知りになりたい場合は、主管省庁のホームページに掲載されているものがありますので当該主管省庁のホームページをご覧ください。

  • 【成立】欄に★印が記載された法律案は、第196回国会で成立したもの
  • 【主管省庁】欄からのリンクは各主管省庁のホームページにリンクされています。

以下省略。

 

秘密情報をめぐる法律問題の検討

はじめに

最近,通訳,翻訳を業とする会社から,業務上取り扱う秘密情報に関する法律問題について相談を受け,その前提となる「秘密情報をめぐる律問題」を概観するペーパーを作成した。簡単なものではあるが,他の業種,業態の会社にとっても参考になると思われるので,掲載する。

なお,参考までに,通常,用いることのできる「秘密保持契約書」のモデル案を,顧客企業にとって受け入れやすいと思われる経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック ~企業価値向上にむけて」に掲載されている「参考資料2 各種契約書等の参考例」「第6 業務委託契約書(抄)」を基に作成し,後記した

1 前提

近時,NDA(秘密保持契約書)の締結は普通に行われ,秘密とされるべき情報についての法律関係も複雑化している。本書では「秘密情報」を次項のⅠないしⅤの5つのレベルに整理して考察する。一般の通訳,翻訳については,法律上,守秘義務の定めはないが,通訳,翻訳は文字どおり他人の秘密を取り扱うことも多く,職業倫理上,秘密保持が強く要請される。そのようなケースは他にもあると思われる。守秘義務が及ばない社は,そこは省いて理解されたい。なお業務従事者は外注を想定しているが,自社従業員の場合は,御社に含めて考えればよいであろう。。

2 秘密情報をめぐる法律問題

 Ⅰ 守秘義務の対象となる「秘密」

特定の職業,職務につき,刑法,その他の法律によって,「業務上取り扱った(職務上知り得た)人(企業も含む)の秘密を漏らしてはならない」とされていることがある。「守秘義務」である。これに違反したときは刑罰が科されることがあるし,不法行為として損害賠償の対象にもなる。

「守秘義務」は,当該職業や職務の遂行に公的な資格(弁護士)や立場(公務員等)を必要とする場合に規定されているが,御社もその職務の内容からすれば「守秘義務」の対象となってもおかしくないものの,業務遂行に特段の資格を要せず,また職務も様々な形態で行われるので,その対象にはなっていないと解される。ただし法的義務はなくても,後述するように「職業倫理」が問題になると考えられる。

Ⅱ 不正競争防止法により保護される「営業秘密」

不正競争防止法により「窃取,詐欺,強迫その他の不正の手段により取得した,あるいは営業秘密を保有する事業者からその営業秘密を示された場合において不正の利益を得る目的で又はその保有者に損害を加える目的で,当該営業秘密を使用し,若しくは開示する行為」等(法2条)が禁止され,処罰,あるいは損害賠償の対象となる。このような仕組みで保護されているのが,「営業秘密」である。「営業秘密」は,「①秘密として管理されている,②生産方法,販売方法その他事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,③公然と知られていないもの」をいうが,このように「営業秘密」について法律上の絞りがある上,対象となる行為が通常人でも違法性があることが分かりやすいものなので,御社においてはこれが問題になることは考えにくいであろう。ただし,業種,業態によっては,「営業秘密」を厳密に管理することが必要なのに,それを怠っている場合も多い。

 Ⅲ 個人情報ないし秘密情報

個人情報保護法は,「個人情報」の取得や「個人データ」の第三者提供を規律しているが,御社や業務従事者は,業務遂行の過程で顧客企業から提供された「個人情報」を取得するので,原則として取得について法律上の問題は生ぜず,また,その「個人情報」を「個人データ」として保管し第三者提供する場合もほとんどないであろう(仮にあれば,同意が必要である。)。なお個人情報保護法の基本については,本webの「基本から考える個人情報保護法(その1)」を参照されたい。

また企業は,上記の「営業秘密」,それ以外の営業情報や技術情報,個人情報も含めて「秘密情報(機密情報)」と定義して,その漏洩,流出を防止しようとし,これをNDAの対象にすることが一般的に行われている。御社が,顧客企業からNDAによって定義された「秘密情報」(機密情報)の漏えい,流出をしないように求められることも多いであろう。

 Ⅳ インサイダー取引

金融商品取引法166条1項は,「会社関係者」であって,上場会社に係る業務等に関する「重要事実」を知った者は,その事実が公表された後でなければその会社の有価証券等の売買等をしてはならない旨を規定し,秘密である「重要事実」が濫りに利用されないように規制している。御社もこれに該当することがあり得る(なお相談を受けたケースは,これを含む相談であったので,より詳しい内容を後記する。)。

 Ⅴ 契約による規制

ⅠないしⅣの法律関係について,法律上の要件を加重,減少し,あるいは新しい規定を設ける契約(特にNDA)が締結されることが多い。

通常,顧客企業との間で「業務契約」及び「機密保持契約」を締結し,業務従事者との間で「業務委託契約」及び「秘密保持契約」を締結する。

 3 基本的な考え方

(1)業務従事者が順守すべき秘密保持についての基本

上記のⅠないしⅤに関し,本件で重要なのは,御社の業務従事者は,法律上はⅠの「守秘義務」は課せられていないもの,「職業倫理」に基づきこれと同等の「業務上取り扱ったことについて知り得た人や企業の秘密を漏らしてはならない」という秘密保持義務を負って行動するのが妥当と考えられるということである。

この場合,保持すべき秘密の中には,Ⅱの「営業秘密」やⅢの「個人情報等ないし秘密情報」も含まれるし,それに止まらず,刑法の秘密漏示罪(134条)の解釈に準じ,本人の秘密にする意思が想定される情報であれば,すべて秘密に含まれるといえよう。

実際,例えば,業務に従事したその内容のみならず,その日時,その当事者,業務に従事したこと自体についても秘密とさるべきことが妥当なことが十分に考えられる。

そしてこの秘密保持義務は,顧客企業に対してのみならず,業務に関連,登場する全関係者に及ぶと解すべき場合もある(法律上の「守秘義務」も依頼者に対してのみ,負うものではない。)。

このように考えると,顧客企業やその他の関係者(以下「顧客等」という。)の利益を守るために,業務従事者は,その関与した業務に関する一切の情報について,公知となった場合,あるいは,正当な事由がある場合以外は,これを何人に対しても開示せず,利用しないという原則に従って行動することが望ましいと思われる。

(2)顧客企業,御社,業務従事者の間の契約関係の検討

ア 概説

ところで,御社の秘密情報に関する契約関係は,通常,顧客企業と御社,御社と業務従事者の間に存在している。顧客企業が,業務従事者に,直接NDAの締結を求めることはまれであると思われる。

この場合,業務従事者は,御社に対して負った契約上の義務を,顧客等に対して直接負うわけではない。御社が顧客企業に対して負う義務の一内容として業務従事者が御社に対して負う義務が組み込まれるだけである。

ただし,業務従事者の行為が,直接第2項に挙げた法令等に該当,違反することがあるし,そうでなくても,「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」ときの故意・過失の内容として,業務従事者が御社に対して負った契約上の義務が考慮されることはあり得る。

イ 顧客企業と御社間の契約関係

顧客企業が御社(例外的に業務従事者)に締結を求めるNDAの対象は,Ⅱの「営業秘密」か,これを拡大したⅢの「個人情報等ないし秘密情報(機密情報)」であることが普通で,「守秘義務」や「職業倫理」の「秘密」より範囲が狭い。また契約当時者双方が,相手方に対してほぼ同等の義務を負うとされることが通常である。

これについて,顧客企業がその企業固有のルールに基づいて用意したNDAを使用することが,顧客企業にとって安心・安全であり顧客企業と御社の円滑な業務関係の形成に役立つこと,顧客企業と御社との間で万が一紛争になったときは,秘密が「営業秘密」か「個人情報等ないし秘密情報(機密情報)」に限られていた方が御社としても対応しやすいことから,顧客企業と御社の間のNDAについては原則として顧客企業が用意したものを使用すべきであり,またこれが不適切な場合は,後記の「秘密保持契約書」を使用すればよい(顧客企業が用意するNDAの中には,損害賠償義務等について非常識な規定を設けているものもあるので,契約締結にあたって御社として精査する必要がある。)。顧客企業の要求がない限りわざわざ業務従事者の「守秘義務」を盛り込むことは適当ではないであろう(顧客企業の要求がある場合も,「一切の情報」とすることは適切ではない。)。

ウ 御社と業務従事者間の契約関係-「秘密保持条項」

業務従事者の秘密保持については,次の条項を規定するのが,適切である。

「①受託者は,本契約及び個別契約履行上知り得た,または受領した弊社の顧客等に関する一切の情報(以下この項において「本件情報」という。)について,本契約及び個別契約履行以外の目的に使用,利用してはならず,また第三者へ提供,漏洩等してはならない。②ただし,弊社の書面による承諾を得た場合,本件情報が公知となった場合,又は正当な理由がある場合はこの限りではない。

③本件情報の不測の漏洩を防ぐため,受託者は善良な管理者の注意義務をもってこれを保持,保管,管理する責任を負う。本契約及び個別契約終了後,弊社から要求があれば,受託者は本件情報すべてを弊社に返還し,又はこれを廃棄しなければならない。

④受託者がこれらの約定に違反したことによって顧客等に損害が生じ,弊社が顧客等に損害賠償義務を負うときは,受託者は弊社に対し,当該賠償額を補填する義務を負う。

⑤本条の定めは本契約及び個別契約終了後も効力を失わない。」

①は,情報の目的外使用,利用,及び第三者へ提供,漏洩等の禁止を規定した。②顧客等の情報を利用,開示していい場合として,御社の書面による承諾がある場合,公知となった場合,又は正当な理由がある場合とした。

③業務従事者が善良な管理者の注意義務をもって情報を保持,保管,管理する責任を負うを明示した。また御社の要求がある場合の,返還,廃棄義務を規定した。

④そして,故意や,③の過失による漏洩の場合で,弊社が顧客に損害賠償義務を負うときの補填義務を規定した。

なお,①について顧客等の承諾がある場合について検討したが,これについては御社と業務従事者の関係として御社がコントロールできた方が望ましいと考えた。

(3)業務従事者と顧客企業の秘密情報の使用,利用についての検討

業務従事者は顧客企業に対し,「業務上取り扱ったことについて知り得た人や企業の秘密を漏らしてはならない」義務を負うことに加え,当該顧客企業の秘密情報の使用,利用についても,差し控えるべき義務があると解すべきであろう。

これについて上述した条項は,秘密情報について,目的外の使用,利用を禁止している。

その内容については,顧客企業の製品・サービスや株式の購入や,顧客企業に対する雇用等の働き掛けが考えられよう(ただし,雇用等については,「直接交渉の禁止」の延長とも考えられ,ここでは検討しない。)。

製品・サービスの購入については,通常の消費者としての購入には特段の問題はないであろうが,製品・サービスに希少性がある場合や,利益を得ることを目的とする大量売買等は,秘密情報の使用,利用した場合はもちろん,そうでなくても,当該企業からそのように解される可能性がある場合は,差し控えるのが適当である。

これは株式の売買も同様である。上述したように,インサイダー取引は,「重要事実」を知った上での売買であるが,業務従事者は,定型的ではない「重要事実」に関わる機会が多いから,「重要事実」を知っているか否かに関わらず,当該企業の翻訳・通訳業務が開始してからこれが完全に終了して1年後までは(「重要事実」を知った者は,その事実が公表された後まで),株式売買は差し控えるべきであろう。

以上

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「ビジネスツールとしての知的財産」を読む

~ストーリー漫画でわかる 作者:大樹七海,監修:杉光一成

知的財産についての入門の入門として

理系の大学を経て,国立研究機関に在籍したあと弁理士資格を得て人生で初めて漫画を描いたという,非常に勉強家であることがうかがわれる作者の作品である。

ストーリー漫画で描かれた「ビジネスツールとしての知的財産」という触れ込みであり,碁のソフトをめぐる様々な紛争,日米対決等が描かれている。漫画は中の中程度の面白さか。

知的財産について入門の入門として読む分にはいいだろうが,今後も知的財産分野を漫画で描くのであれば,もう少し突っ込んだ内容が望まれるだろう。漫画を描く苦労は分かるが,このような作品を読む読者はそこをあまり評価しない。

重要な用語

各章の漫画の後に,簡単な知的財産についての説明記事が載っている。その中で重要と思われる用語だけピックアップして掲載しておく。

パテントロール

「コストセンター」「プロヒフィットセンター」から「ビジネスツール」へ

SWOT分析(プラス/マイナス,内部/外部環境),ファイブフォース分析

特許権…技術的アイデア,意匠法…工業的に量産できる物品のデザイン,商品名やサービス名称等…商標法,(実用新案権…物品の形状,構造の考案),著作権法…アイデアや感情の表現,不正競争防止法

国際特許…PCT

ブランド…商標の中でも品質保障機能を持ち,」顧客吸引力を化体資産としての価値を得たもの

特許出願しないという選択肢

弁理士と知的財産管理技能士

IT企業のスタートアップに必要な人材

経営 ハスラー,開発 ハッカー,デザイン ヒップスター
製品の「外観」という意味での製品デザインは,意匠法

デザインドリブンイノベーション(手段)とブルーオーシャン戦略(目的)

知的財産法でデザインはどこまで保護されるか

ビジネスモデル/操作性/素材/外観/アイコン/音/店舗

特許法,商標法,意匠法,不正競争防止法

IPランドスケ-プ

市場参入抑制機能,市場排除機能

オープン&クローズ戦略

詳細目次

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一般廃棄物処理業の許可,許可の取消要件のまとめ

廃棄物処理法について

廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)は,ご多分に漏れず,増改築を繰り返した結果,きわめて理解しづらい法律となっている。御者に対する許可が取り消されるのはどのような場合か,まとめてみたので,参考になると思い,掲載する。なお基本は,一般廃棄物処理業のうちの,収集,運搬業の申請の許可である。取消し,あるいはその他の態様の廃棄物処理業は,その応用とし,読み解くのはさほど困難ではない。

要点

 
一般廃棄物処理業のうち,収集,運搬業の申請の許可は,廃棄物処理法7条5項(該当すると許可されない場合は4号),処分業の許可は,法7条10項(該当すると許可されない場合は4号。収集,運搬業の法7条5項の規定を準用),許可の取消は,法7条の4に定められている。
  法7条の4の許可の取消も,法7条5項4号を中心に規定されているので,法7条5項4号をしっかり読み込むことが重要である。

◇収集・運搬(法7条5項4号(イ~ヌ)),処分(法7条10項4号)の許可要件

イ.成年被後見人若しくは被保佐人または破産者で復権を得ない者
ロ.禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ハ.次の法律の違反により罰金に処せられ,その執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
 <廃棄物処理法,浄化槽法,大気汚染防止法,騒音規制法,海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律,水質汚濁防止法,悪臭防止法,振動規制法,特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律,ダイオキシン類対策特別措置法,ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法,暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律,暴力行為等処罰ニ関スル法律,刑法第204条(傷害),第206条(傷害助勢),第208条(暴行),第208条の3(凶器準備集合),第222条(脅迫),第247条(背任)>
ニ.廃棄物処理法第7条の4第1項,第2項,若しくは第14条の3の2第1項,第2項(これらの規定を第14条の6において読み替えて準用する場合を含む。),又は浄化槽法第41条第2項の規定により許可を取り消され,その取消しの日から5年を経過しない者
  許可を取り消された者が法人である場合においては,当該取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があつた日前60日以内に当該法人の役員(業務を執行する社員,取締役,執行役又はこれらに準ずる者をいい,相談役,顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず,法人に対し業務を執行する社員,取締役,執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。)をいう。
ホ.許可の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があつた日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に,一般廃棄物若しくは産業廃棄物の収集若しくは運搬若しくは処分の事業のいずれかの事業の全部の廃止の届出又は浄化槽法の規定による届出をした者で,届出の日から5年を経過しないもの
ヘ.ホに規定する期間内に一般廃棄物若しくは産業廃棄物の収集若しくは運搬若しくは処分の事業のいずれかの事業の全部の廃止の届出又は浄化槽法の規定による届出があつた場合において,ホの通知の日前60日以内に当該届出に係る法人の役員若しく重要使用人であつた者又は個人の重要使用人であつた者で,届出の日から5年を経過しないもの
ト.その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
チ.営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人がイからトまでのいずれかに該当するもの
リ 法人でその役員又は重要な使用人のうちにイからトまでのいずれかに該当する者のあるもの
ヌ 個人で重要な使用人のうちにイからトまでのいずれかに該当する者のあるもの
※ 重要な使用人とは,次の代表者である。
一 本店又は支店
二 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で,廃棄物の収集若しくは運搬又は処分若しくは再生の業に係る契約を締結する権限を有する者を置くもの

◇ 許可の取消要件(法7条の4)

 市町村長は,一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者が次の各号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消さなければならない。
一 第七条第五項第四号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条まで若しくは第三十二条第一項(第二十五条から第二十七条までの規定に係る部分に限る。)の規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに該当するに至つたとき。
二 第七条第五項第四号チからヌまで(同号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条までの規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)のいずれかに該当するに至つたとき。
三 第七条第五項第四号チからヌまで(同号ニに係るものに限る。)のいずれかに該当するに至つたとき。
四 第七条第五項第四号イからヘまで又はチからヌまでのいずれかに該当するに至つたとき(前三号に該当する場合を除く。)。
五 前条第一号(注:この法律若しくはこの法律に基づく処分に違反する行為(以下「違反行為」という。)をしたとき、又は他人に対して違反行為をすることを要求し、依頼し、若しくは唆し、若しくは他人が違反行為をすることを助けたとき)に該当し情状が特に重いとき,又は同条の規定による処分に違反したとき。
六 不正の手段により第七条第一項若しくは第六項の許可(同条第二項又は第七項の許可の更新を含む。)又は第七条の二第一項の変更の許可を受けたとき。
2 市町村長は,一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者が前条第二号(注:その者の事業の用に供する施設又はその者の能力が第七条第五項第三号又は第十項第三号に規定する基準に適合しなくなつたとき)又は第三号(注:第七条第十一項の規定により当該許可に付した条件に違反したとき)のいずれかに該当するときは,その許可を取り消すことができる。

◇産業廃棄物処理業

 <第七条の四 市町村長は,一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者が次の各号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消さなければならない。
 一 第七条第五項第四号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条まで若しくは第三十二条第一項(第二十五条から第二十七条までの規定に係る部分に限る。)の規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに該当するに至つたとき。
 二 第七条第五項第四号チからヌまで(同号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条までの規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)のいずれかに該当するに至つたとき。
 三 第七条第五項第四号チからヌまで(同号ニに係るものに限る。)のいずれかに該当するに至つたとき。
 四 第七条第五項第四号イからヘまで又はチからヌまでのいずれかに該当するに至つたとき(前三号に該当する場合を除く。)。
 五 前条第一号に該当し情状が特に重いとき,又は同条の規定による処分に違反したとき。
 六 不正の手段により第七条第一項若しくは第六項の許可(同条第二項又は第七項の許可の更新を含む。)又は第七条の二第一項の変更の許可を受けたとき。
 2 市町村長は,一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者が前条第二号又は第三号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消すことができる。>
 <第十四条の三の二 都道府県知事は,産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者が次の各号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消さなければならない。
 一 第十四条第五項第二号イ(第七条第五項第四号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条まで若しくは第三十二条第一項(第二十五条から第二十七条までの規定に係る部分に限る。)の規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)又は第十四条第五項第二号ロ若しくはヘに該当するに至つたとき。
 二 第十四条第五項第二号ハからホまで(同号イ(第七条第五項第四号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条までの規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)又は第十四条第五項第二号ロに係るものに限る。)に該当するに至つたとき。
 三 第十四条第五項第二号ハからホまで(同号イ(第七条第五項第四号ニに係るものに限る。)に係るものに限る。)に該当するに至つたとき。
 四 第十四条第五項第二号イ又はハからホまでのいずれかに該当するに至つたとき(前三号に該当する場合を除く。)。
 五 前条第一号に該当し情状が特に重いとき,又は同条の規定による処分に違反したとき。
 六 不正の手段により第十四条第一項若しくは第六項の許可(同条第二項又は第七項の許可の更新を含む。)又は第十四条の二第一項の変更の許可を受けたとき。
 2 都道府県知事は,産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者が前条第二号又は第三号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消すことができる。>

コーポレートガバナンスの基礎2…「これならわかる コーポレートガバナンスの教科書」を読む

著者:松田千惠子

はじめに

問題の所在

「コーポレートガバナンスの基礎1」で,コーポレートガバナンスの問題は,経営者,使用人の業務執行について,取締役会の監督,監査役の監査が実効的な機能を果たしているのかということであることに行き着いた。会社法では,この問題に対応する特別の仕組みとして,(指名)委員会等設置会社,遅れて監査等委員会設置会社が設けられているが,それでうまくいくのだろうか(それにしても,なんと覚えにくく,言いにくい,独りよがりの命名だろう。)。

そこで,コーポレートガバナンス全般について論じている「これならわかる コーポレートガバナンスの教科書」(以下「本書」)に目を通してみた。

本書でも紹介されているように,現時点でのコーポレートガバナンスをめぐる議論は,平成26年8月の伊藤レポート「「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト最終報告書」,平成26年9月(平成29年5月改定)の「スチュワードシップ・コード」,平成27年6月の「コーポレートガバナンス・コード」を踏まえたものとなっている。

もっとも関係が深く重視されているのは「コーポレートガバナンス・コード」であり,これは東京証券取引所が制定したものである。これならば,上場企業の規律の問題であることがはっきりする。

大きなお世話

コーポレートガバナンスをめぐる議論を聞いていると,「大きなお世話」ではないかと思う議論が頻出する(因みに本書では「大きな世話」とするところが2か所登場する。)。会社制度は,委託者,受託者の私的な関係なのに,どうして国や有識者が出てきて,もっともらしいお説教をするのか。あなたの所属する組織のガバナンスはどうなのと,突っ込みの一つも入れたくなる。

この点,東京証券取引所であれば,自分が取り扱う商品(株式)の品質,価格を向上させたいので,上場してお金を集めたい会社は「コーポレートガバナンス・コード」に従ってねということで,とても分かりやすい。ただ東京証券取引所は,他にあおられて歩調を合わせてしまい,美辞麗句を並べたててルールを複雑化させ,企業に無意味な負担をさせない英知が必要である。本当に実効性のある核心を突く仕組みを確立し,運用しなければ,「コード」の中にコーポレートガバナンスは埋もれてしまうだろう。

私にとって不可解なのが,機関投資家に対する「スチュワードシップ・コード」である。金融庁のWebで「スチュワードシップ・コードの受入れを表明した機関投資家のリストの公表」もされているが「踏み絵」?(今は「絵踏み」が普通らしい。)。この問題の「公共政策」としての検討は後日を期そう。

また本書によれば,伊藤レポートは,ROE(株主資本利益率)について8%を上回ることを最低ラインとし,より高くを目指すとしたことが,衝撃を与えたそうである。しかし,これは,誰が誰に対して,どのような資格に基づいて,どのようなツールが使用できるので,ここに書かれたことが実行できると「提言・推奨」をするのか,私には分からない(なお,平成29年に伊藤レポート2.0「持続的成長 に向けた長期投資(ESG・無形資産投資) 研究会報告書」,平成30年に伊藤レポート2.0「バイオメディカル産業版」「バイオベンチャーと投資家の対話促進研究会報告書」というものもある。)。

本書に戻って

なるほど

本書の著者は,豊富な実務経験があるらしく,地に足に着いた議論が随所に見られる。最初にHD(持株会社)と子会社の問題は,ガバナンスの問題であるという,「コロンブスの卵」を紹介しよう。

要は,あなたの会社は,株主をどう見ていますか(うるさい?て適当にあしらえ?口を出すな?),(買収した)子会社も,あなたの会社を,同じような株主として見ています。これを頭にたたき込まないと「グループ会社の経営」はできません。なるほど。

本書の構成

本書の構成は,次のように後記の「コーポレートガバナンスコードの基本原則」に対応した内容になっているとされる。

「第1章 企業をめぐる環境変化とコーポレートガバナンス」は,一般的な,「基本・概要」である。

「第2章 身も蓋もないガバナンスの話」(株主に関する論点…基本原則1【株主の権利・平等性の確保】,2【株主以外のステークホルダーとの適切な協働】),「第3章 「マネジメントへの規律づけ」は機能するのか」(経営者と取締役会に関する論点…基本原則4【取締役会等の責務】),「第4章 「カイシャとあなた」は何をしなければならないか」(情報開示に関する論点…基本原則3【適切な情報開示と透明性の確保】,5【株主との対話】)が,コードに対応している。

最後の「第5章 「ガバナンスの担い手」になったらどうするか グループ経営とガバナンス」は「応用・グループ経営と子会社ガバナンス」である。

しかし本書のような内容の本の「章名」を「身も蓋もないガバナンスの話」などとすると,かえって何が書かれているのかわからなくなるし,また記述内容にもねじれや飛躍もあり,そこで何の議論をしているのかわかりにくいところもある。

本書の,実務経験に基づく具体的な記述は高く評価するが,全体の体系や構成,章名,見出しの命名は,工夫の余地がある。

ここは頭に入れたい

本書から,特に頭に入れたいところを,何点か取り上げて考えてみよう。

取締役と監査役の関係再考

もともとわが国の株式会社制度は,取締役は,取締役会(ボード)のメンバーとして,業務執行の監督をする,重要な業務執行の決定をする,業務執行は代表取締役と業務執行取締役がするという制度であった。そして監査役は,取締役の業務執行を監査するとされていた。この仕組みは,上場企業から中小会社まで同じで,それなりに定着していただろう。

ただ海外の投資家は,監査役に取締役会での議決権がないので,監査の実効性がないとみていることが指摘されていた。しかし,監査役が重要な業務執行の決定に参加した場合,それについて監査できるのだろうか。本当は,こういうことを言う海外の投資家は,業務執行をする取締役という概念を受け入れがたかったのだろう。

これに対応するために(指名)委員会等設置会社ができたわけだ。これなら海外の投資家も理解できるが,あまり使われていない。

しかも同時に会社法の立案者たちは「取締役は,定款に別段の定めがある場合を除き,株式会社(取締役会設置会社を除く。以下この条において同じ。)の業務を執行する」としてしまい,我々の頭には,取締役=業務執行というスキームまでインプットされてしまった。これではいくら制度をいじっても彼我の認識の距離が縮まるはずがない。

業務執行取締役を含む取締役会の監督と監査役(会)の監査という制度の中で,どのようにコーポレートガバナンスの実効性を確保するかを考える方がはるかに大事だろう。しかもこれは上場企業に限られない問題だ。本書も,考え方の道筋はともかく,同意見だろう。

取締役会の監督と監査役(会)の監査の関係,上場企業における社外取締役と社外監査役は何をすべきなのか,これは別の稿で改めて考えよう。

マネジメントの監視(監督・監査)

会社のマネジメント(経営)は,大きく,経営戦略・マーケッティング,人事・組織,会計・財務に分けることができる。監査役というと会計・財務に目が行くが,それでは,マネジメント(経営)の重要な部分が欠落してしまう。

取締役と監査役は,取締役会に上程されるこれらに関する議事について,その問題の所在を理解して問題点を把握し,いろいろな言い方があり得るが,例えば企業価値向上につながるかという観点から,あるいは合理性・適性性の観点から,意見を言い,議決権を行使し,あるいは他に経営上の問題があれば,取締役会の外でも監視する義務がある。要は,株主に代わって監視するのだ。

一方,マネジメントとオペレーションは違うという観点も重要だろう。本書に,「オペレーションは優秀だがマネジメントのない日本企業」という記述がある。そこを引用してみよう。「日本の企業の多くは,「課長」級という意味でのマネジャーを生み出すことには大変長けていますが,「経営者」という真の意味でのマネジャーを生み出す仕組みを持っていません。」。「内部昇格の人々は,いったいいつ「経営者」になるのでしょうか。いつマネジメントとしてのスキルや資質を身につけるのでしょうか。平社員から課長になった時? 部長になった時? 確かに,部下が付いたことによって学ぶことは多いでしょう。チームを率いていかなければならず,リーダーシップも養われるかもしれません。業務知識も身につくし,管理のノウハウもだんだんわかってくるでしょう。しかし,それだけで経営者になれるでしょうか。残念ながらなれません。課長であっても部長であっても,しょせんは決められた業務の範囲内で,与えられた資源配分の範疇で,既存の業務をより良くすることが仕事の中心です。経営者は違います。決められた業務をやっているのではなく,次の一手を新しく考えなければなりません。資源配分は自分で考えなければなりません。その際には様々な利害の衝突や相反が出てきます。あちらを立てればこちらが立たず,といった場面も多いでしょう。ここで投資をすれば儲かりそうだが,おカネはないし,やる人もいない,などといった状況も考えられます。それらのバランスを取るためには,財務や人事などの知識も身につけておかなければなりません(これは,細かい業務知識ではありません。全体的なおカネの動きや人の心のマネジメントの話です。)。もちろん,業務知識があれば役に立つこともありますが,細かい知識よりも必要なのは戦略的な思考や大局を見る力です。そして何と言ってもリスクを取る意思決定をしなければなりません。そもそもリスクが何であるかを理解し,それを引き受けることを決定し,その責任を持たなければなりません。また,外部に対する発信力も必要です。」。そして「マネジメントが不在ならばガバナンスも不要です。」。

取締役と監査役は,当該企業にとって大切なことを見抜き,それについて的確に意見を言うことが肝要である。マネジメントには積極的に口を出すべきだが,オペレーションをあれこれ言うべきではない。ポジション取りはなかなかむつかしい。本書に,「暴走老人」と「逃走老人」を止めろとある。もちろんこれは経営者のことであるが,自分が「暴走老人」と「逃走老人」になってしまわないことも考えよう。。

マネジメントの情報開示

取締役と監査役がなすべき監視は,株主が何を知りたいかという情報公開の観点から見るのも分かりやすい。

株主が知りたいのは,「これまではちゃんとやってきていたのか」(過去の実績)です。満足のいく企業業績を出せていたのか? 将来を占ううえでもこの情報は重要です。これが「会計情報」です。次に,「きちんとやるような仕組みを持っているのか」(企業の仕組み)です。おカネを預けたとして,それがきちんと管理され,目的の投資が行われて成果があげられるような仕組みができているのか,怪しいことをやっている会社ではないのか,といったことです。内部統制報告書,ガバナンス報告書などもこれにあたるでしょう。最後に,これが一番重要ですが,「これから何をしようとしているのか」(将来の仮説)です。投資家が投資をするのは将来についてですから,企業がどのような将来像を描き,そのためにどのようにおカネを使って実際の成果をあげようとしているのか(そして株主に還元しようとしているのか)をはっきりさせてほしいのは当然です。この点は,これまで各企業の自発的開示に任されてきましたが,コーポレートガバナンス・コードの導入により,開示に圧力がかかることになりました。」。

本書のさわり

本書のさわりは「第5章 「ガバナンスの担い手」になったらどうするか グループ経営とガバナンス」である。

もっとも典型的なのは海外子会社のガバナンスである(経営ではない。経営するのは,現地にいる業務執行者である。)。この問題は,ガバナンスから理解し,実行すべきことである。

なおこの問題は同著者の「グループ経営入門」で,より整理された形で展開されているので「「グループ経営入門」を読む・持株会社と子会社 …コーポレートガバナンスの実践2」で紹介したい。

以上,雑駁な紹介になってしまったが,本丸はまだ先なので,本書の紹介は,一応これで終わりとする。気が付いたことがあれば,加除,訂正していく。

詳細目次とコーポレートガバナンスコードの基本原則

 

続きを読む “コーポレートガバナンスの基礎2…「これならわかる コーポレートガバナンスの教科書」を読む”

コーポレートガバナンスの基礎1…簿記と会計・監査に支えられた会社制度の行方

簿記と会社について

簿記と会社が,現代資本主義の発展を支えたと言われる。どういうことだろうか。コーポレートガバナンスについて考える前に,簿記と会社について概観しよう。

簿記について

簿記についてはほとんど門外漢の私も,ストックである,資産=負債+純資産(資本)と,フローである,費用と収益の記帳から,BS,PLが作成され,利益が算定されるという過程をたどるのは心地よい。

ただ簿記には謎が多い。なぜ,借方,貸方というのか(内容とは関係ないが,かり,かしの,り・しの字の曲がり方から(丿・し),かりが左,かしが右と記憶するのだそうだ。),上記の過程は社会に埋め込まれたものが発見されたものか,人間が発明したものか,それとも「数学」と違ってこのような問題を問うこと自体がナンセンスなのか。「ルカ・パチョーリ」が「複式簿記の祖」といわれるが,彼がイタリア語で書いて印刷・頒布された数学書「スムマ」の一部に,当時既に用いられていた簿記を紹介したことから,簿記が広く伝播したのであって(そのポイントは,俗語であるイタリア語,印刷),「複式簿記」は彼の独創ではないようだ(「会計の時代だ」(著者:友岡賛))。

簿記は現代社会の「カネ勘定」を理解するための必須のツールなので,頭が柔軟な時期の中学,高校の数学あるいは社会科のどこかに組み込めばいいと思う(なお簿記のごく初歩的な入門書は,Kindle本の「ふくしままさゆき」さんの本が安くていい。あるいは会計も兼ねて「図解 簿記からはじめる企業財務入門」(著者:津森信也)も良さそうである。これらの本の紹介で,簿記の概観に代えよう。)。

会社-会計について

会社制度の基本を理解するためには,会社法の本を読むより,まず会計の本の最初の部分を読んだ方がよい(前掲の「会計の時代だ」(著者:友岡賛)が手頃だ。)。

会計とは「委託者(資本の持主=株主)が,その財産の管理(保守・運用)を受託者(経営者)に委託した場合に,委託者が自分の行なった財産の管理の顚末を,委託者に対して説明すること(accounting)」である。この財産管理の委託,受託。報告の仕組みを制度として定着させたのが会社である。

会社は,16世紀末~17世紀のイギリス,オランダの東インド会社が海外との貿易(香辛料,綿・絹織物,陶磁器等々の持ち帰り)のために必要となる多額の資金を,多くの人から分割して集めて一定期間継続して保有し,資金提供者は最終的な利益配分とは別に資金(株式)を譲渡することでこれを回収できる仕組みから生まれたとされる。ただこのあたりの歴史の説明は資料によって錯綜しており,世界最初の株式会社は,1602年にオランダで設立された東インド会社で,証券市場もその頃生まれたという説明をうのみにしていいかどうかわからない(この辺りの経緯は面白そうなので私,は「東インド会社とアジアの海」(著者:羽田 正)歴史書を読み始めたが,東インド会社に先行する100年間のヴァスコ・ダ・ガマに始まるポルトガル人のインド,アジアへの銃,大砲による暴力的侵攻を読んでいるうちに気持ちが悪くなり,またこの本のターゲットも制度の説明にはないようなので,いったん読むのをやめてしまった。)。

ところで,今の会社法では,株式会社の基本的特質として,①法人格,②有限責任,③株式の譲渡性,④取締役会の授権のもとでの経営,⑤出資者による共同の所有,⑥出資払戻請求の制限が挙げられるが(「会社法入門」(著者:栗原脩),東インド会社はこれらはほぼ充たしているが,②が少し遅れたという説明がされる。

会社による財産管理の基本は,⑤④であって,会社制度の進展によってその他の部分も整備されたことにより,会社が次第に財産管理の主要なツールとして用いられるようになったと考えられよう。ただ東インド会社の時点で取締役(会)の性格が何であったかは,今ひとつはっきりしない(「世界史の窓」「オランダ東インド会社」には「大口出資者76名が重役となり,その中から選ばれた17人が取締役会を構成し,連合会社全体の経営方針を決定した。十七人会に東インドにおける条約締結,戦争の遂行,要塞の構築,貨幣の鋳造などの権限が与えられた」とあり,東インド会社は,今では行政(国家)しか行えないと考えられている権能も,行政(国家)から与えられていたようである。)。

要は,委託者(株主)が財産(お金)を出し,受託者(経営者)がその管理をする仕組みが会社であり,財産管理の結果がどうなっているのかをお金を用いて説明するのが会計であり,この説明には,複式簿記による記帳に基づくのが適しているのである。

会社-監査について

会計報告は,経営者が株主にするものであるが,経営者が株主に,ちゃんとやっていますと言うだけでは,信用されるかどうか。そこで経営者以外の者が,経営者が株主にする会計報告について,それがちゃんとしたものかどうかを検査し,ちゃんとした報告が行われるように監督することが必要となる。それが監査である。

さらに監査が,経営者から独立した専門的な知識があるプロフェッションによって行われれば,株主は納得,安心できる。その役割を果たすのが日本では,公認会計士である。

コーポレートガバナンスへの道筋

株主は会計-監査だけでいいのか

さてこれまでの記述は一本道であった。しかし株主の手許に来た前年度の財産管理の報告(会計報告)が手続,内容においてちゃんとしたものであったとして,それが大赤字であった場合,とてもよかったとは言えない。株主としては経営者の選任を考え直さなければならないし,そのような結果になる前に,経営者の行為(業務執行)をコントロールできなかったのかという問題もある。あるいは,黒字であっても,その利益を上げる方法が極悪非道であって(あるいは単に「損失隠し」をしていただけでも),早晩,会社が解体に追い込まれるようでは,元も子もないし,経営者が,ちゃんとした会計報告に記載された現金を横領しているかもしれない。よくできる有能な経営者なら,プロフェッションの監査をかいくぐって,いろいろなでたらめをしているかもしれない。会計監査だけでは,すべてはうまくはいかない。

経営者の行為(業務執行)を監督する仕組み

そこで株主に代わって経営者のする行為(業務執行)自体を監督する仕組みが必要となる。その仕組みが取締役会であり,監査役である。さらにはこれを変形した委員会型(指名委員会等設置会社,監査等委員会設置会社)の会社もある。これがコーポレートガバナンス(企業統治)の大きな内容になっている。コーポレートガバナンスはどのような形態,規模の会社でも問題になるが,以下では,主に資本市場で人のカネを集める上場企業を念頭に置く。

以上のように見てくると,会社の経営者は悪人だらけなのかと言いたくなるが,ことほど左様に,人には,監視なしに他人のお金を扱えると,自由自在に振る舞いたくなる強い性癖があるようだ。自由自在というのは,横領だけではない。経営者の思慮を欠く,作為,不作為によって,会社のお金はどんどんなくなるということだ。

業務執行の仕組みは複雑だ

会社の業務執行とは何か

会社の業務執行(広義)は,①業務執行の決定+②その具体的な業務執行(狭義)からなり,その中には,ⅰ対外的な業務執行とⅱ体内的な業務執行がある。ⅰは,代表,代理の問題である。

②を行なうのは,ア代表取締役,イ業務執行取締役,ウ使用人である。

①を行なうのは,エ取締役会と,ア代表取締役,イ業務執行取締役である。エ取締役会は①業務執行の決定を行ない,重要な業務執行の決定(法定決議事)以外は,ア代表取締役,イ業務執行取締役に委任できる。代表取締役は,明示の委任がなくても,日常的な業務の決定ができる。

代表取締役は,以上の業務執行を他の業務執行取締役や使用人に,業務執行取締役は使用人に委任できる。

取締役会・監査役の職務

取締役会は,業務執行の決定,取締役の職務執行の監督(使用人の指揮監督を含むから,結局,会社の業務全般),及び代表取締役の選定,解職を行う(会社法362条2項)。

監査役は,取締役(会計参与設置会社にあっては,取締役及び会計参与)の職務の執行を監査し,監査報告を作成しなければならない(会社法第381条1項)。

さて,ここで経営者,使用人の業務執行について,取締役会の監督,監査役の監査が出てくるが,これが実効的な機能を果たしているのかという疑問が,近時のコーポレートガバナンスをめぐる大騒動の問題意識である。私としては,制度の問題か,人の問題かと問われれば,後者が大きいというのが率直な意見である。制度を改めれば問題はなくなるということではなく,人をどう変えれば問題がなくなるのかということではないかと考えている。

この続きは「 「これならわかる コーポレートガバナンスの教科書」を読む…コーポレートガバナンスの基礎2」に書く(予定である。)。

更に日和が良く,飽きが来なければ,次の投稿も準備しよう。

企業の財務3表と経営を理解する…コーポレートガバナンスの基礎3

上場企業の企業価値と経営を理解する…コーポレートガバナンスの基礎4

監査役と社外取締役の職務…コーポレートガバナンスの実践1

「グループ経営入門」を読む・持株会社と子会社 …コーポレートガバナンスの実践2

「コーポレートガバナンスコード」を理解する…コーポレートガバナンスの実践3

 

 

 

海外との仕事をする準備(備忘)

依頼者が海外との仕事をする際,その仕事に弁護士として参加,支援するために必要となる準備事項・前提事項をまとめておく。なおこの項目については,日弁連が実務研修をしている事項が多いので,適宜それを引用する(日弁連「…」とする。)。内容について疑問があれば問い合わせていただきたい。

国際法と異文化理解

海外との仕事をするということは,日本国に属する私たちと,X国に属するY企業が向き合う関係だから,国と国との慣習,マナーである最低限の国際法を踏まえる必要がある。そうでないと思わぬ対立を招く。手頃な入門書として「国際法第3版」を紹介しておく。

また,人間対人間だからわかるだろうという前に,「異文化を理解する」姿勢を持つことが重要だ。これについては,まず「異文化理解 相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教養」という本を読んでみることだ。個別事案への対応はそれからだろう

国際貿易

日本企業が輸出入に関与することはそれこそ日常茶飯時だから,弁護士がその実務に関与することは少ないが,対象商品に問題が生じた場合に,その対応を依頼されることが多い。多いのは輸入商品であるが,交渉レベルで解決すればともかく,裁判,執行の問題になることも多いが,海外で回収できる場合は少ない。日弁連「中小企業の海外展開業務に関わる実務上の諸問題 第1回 海外取引に関する法的留意点」及び「貿易実務~中小企業の海外展開を支援するために必要な知識を中心に~」が参考になる。

国際私法と国際裁判管轄,及び国際租税

国際私法と国際裁判管轄は,海外との取引に紛争が生じた場合に,どこの裁判所に管轄があり,どこの法律が適用になるかという問題である。法律学の一分野であり,論理適用の問題であるが,その実効性が問題である。日弁連「中小企業の海外展開業務に関わる実務上の諸問題 第2回 海外進出に関する法的留意点」及び「国際取引分野における国際私法の基本体系と動向」が参考になる。

海外との取引に関する税務問題も重要である。日弁連「税務面を考慮した中小企業海外取引の法的構造」は得難い情報である。

国際契約

海外との仕事の出発点は契約だ。さすがにすべて口頭でというケースはないが,重要なことの検討が不十分な契約書が多い。国際契約については,英文契約書がモデルになるメースが圧倒的に多い。日本での契約書にもその影響がある。

英文契約書を学ぶには,まず「はじめての英文契約書の読み方」(著者:寺村淳)をじっくり読みこむのがいい。そのうえで,「米国人弁護士が教える英文契約書作成の作法」(著者:チャールズ・M・フォックス(原書:Working with Contracts: What Law School Doesn’t Teach You by Charles M. Fox)がよさそうだ。

日弁連の研修には,「中小企業の海外展開業務に関わる実務上の諸問題 第3回 英文契約の基礎知識(総論)及び国際取引契約の基礎(各論)」,及び「英文契約書作成の実務」の「第1回 英文ライセンス契約書作成の留意点」「第2回 英文製造委託契約書作成の留意点」「第3回 国際販売店契約の基礎」がある。復習用にいい。

海外進出実務

アメリカ,EU,中国,韓国についてはすでに十分な蓄積があるし,割と身近に実例も多くて,見当もつけやすいだろう(EUは,分かりにくいところもあるが,まずJETROで情報収集すべきであろう。)。アジアについては,「海外進出支援実務必携」に網羅的な情報が記載されている。

ここではASEANを考える。

ASEANに企業進出する際の基本的な問題点は,日弁連「海外子会社管理の実務~ケーススタディに基づくポイント整理~」,及び「中小企業の海外展開サポートにおける法律実務~失敗事例から学ぶ成功ノウハウ~」に貴重な情報がある。

そのうえで各国別の情報を丹念に検討すればいい。日弁連の研修には,「中小企業の海外展開業務に関わる実務上の諸問題」「第4回 現地法の基礎知識-中国法・ベトナム法」「第5回 現地法の基礎知識-発展途上国との取引の注意点」,「現地法の基礎知識-タイ法」,「現地法の基礎知識-インドネシア法」がある。

注意すべき点

金銭移動が伴う海外案件で注意すべき点だが,昔は外為法がとても大きな意味を持ったが今は基本的には事務的なことと理解していいだろう(日銀Web)。それに変わって今大きな意味を持つのが,マネーロンダリングである。これについて実務家は,今,細心の注意を払う必要がある(外務省Web)。そうではあるが,マネーロンダリングは,①犯罪収益,②テロ資金,③脱税資金の監視ということであり,①はさほど大きな拡がりを持つものではないし,②はかなり限定された時期,地域の「政治的な問題」である。③は国によって考え方が違う。また仮装通貨が多用されるとこれはどうなるのかという疑問もある。

 

 

中高年のお医者さんへ-医業の承継と相続その他

前置き

私の友達に,診療所(医療法人)を経営,診療しているお医者さんがいる。彼が抱えている問題について,簡単なレポートを書いて見たので,デフォルメして紹介する。私と同年代の中高年のお医者さんの参考になるのではないかと思う。経済学徒と孫守り転じて,久しぶりの法律関連記事の投稿だ。

前提となる簡単な事実

診療所の売上は多く,報酬も少なくない。でもそうなったのは開業してからで,大学病院勤務時代は貧しかったという。

子供は,大学生だが,医者の途には進まなかった。

医療法人は持分あり法人で,余剰金が計上されている。

最近,MS法人で不動産を購入した。

税務署がやってきて,MS法人への経費支出の一部を問題にされた。

お医者さんは,MS法人で社会的に有意義なことをやりたいと考えている。

問題の所在とその考え方

(1)はじめに

上記の状況を一覧すると,良好な収入,資産状況にあり,特段の問題はないようにも思われる。

ただ医療法人の態勢,その年齢と子供の現況等を考えると,医業の承継ないし相続について,現在から十分な対応を考えておくのが望ましいといえよう(もちろん誰でも死後のことなどどうでもいいが,医療法人の剰余金は,放っておけば雲散霧消してしまう。)。

またこのような状況をもたらすために休みなく稼働しているが,そのような状況について再考し,その労力(収入)の一部を他の有意義な活動に振り向けるということも考えるべきである。

ただし,これらは今後相応の期間,現在の収入,稼働状況が継続することが前提であり,医療法人がトラブルに巻き込まれないような十分な防御態勢も考えておく必要がある(健康であることは当然である。)。

(2)医業の承継と相続

ア まず一般的に死亡時に保有する財産が相続の対象となることは当然であるが,このまま推移すると,医療法人の持分,及びMS法人の株式も,多額の相続財産となる可能性がある。

イ 現在,新規に設立される医療法人は,持分なし法人である(したがって,持分の相続ということはあり得ない。)。当局は今,強力に持分なし法人への移行を進めようとしているが,ほとんど移行は進んでいない。医療法人の理念で旗を振りながら,移行の際に医療法人に贈与税が課されることがあるなどといわれてまともに考える人はあまりいない(「持分なし医療法人」への 移行を検討しませんか?」参照。)。ただ将来,当局が強引に移行ないし持分あり法人に不利益を課すのではないかと危惧する人もいる。

医業の継続を考えると,持分権者の死亡時に,その相続人に医療法人から持分を払い戻すことがなくなるというのは魅力的である。医療法人に余剰があれば,医業に貢献した医師に「退職金」を支払えばいいのである。医業の承継も,評議員,理事の交代時に,「退職金」を支払うことで実行できる。

ただし本件では,子供による承継はなさそうなので,①第三者にどのタイミングでどのような費用を負担させて承継させるか,その時点で持分あり法人と持分なし法人のどちらがよいか,あるいは②第三者に承継させずに(相続時に)法人を解散して残余財産を分配するのか,ということを想定してみる必要がある。少なくても,現在の医療法人の余剰金が雲散霧消しない対応が必要である。

ウ 一般に,MS法人のメリットとして,事業面から,医療法人で実施できない事業を行なえる,経営負担の分散が行える,転用可能な不動産を取得できる,就業規則を分けることができる等,税務面から,役員報酬の支給を通じた所得分散。交際費の損金算入限度の増加,役員報酬の取得,軽課法人税率適用額の増加,共同利用設備の少額資産化,消費税の納税義務の判定等があるとされる(「メディカルサービス法人をめぐる法務と税務」(著者:佐々木克典))。

このように利用される場合もあるであろうが,実態としては,医療法人に課せられた業務制限,非営利性,剰余金の配当の禁止という規制を潜脱するために利用されているといわれる(特に最後)。ただこれも少しピントがずれていて,要は,剰余金について,医師に対する所得税45%が課税される報酬として持ち出すか,MS法人に経費として持ち出し,それを利用するかという問題である。しかし後者が否認されると,追徴課税等の問題が生じてしまう。

これらについて,MS法人の不適切な利用をやめさせるため,税務の前に考え直させそうとしたのが,「取引報告義務制度」と考えることができよう。

MS法人に対する経費支払の一部否認というのも,そういう問題であったと思われる。またその収入に継続性があるかも疑問である。

(3)MS法人によるビジネス

このように考えると,現時点では,労力(収入)の一部を他の有意義な活動に振り向ける方法として,MS法人に対して医療法人の余剰金をどう持ち出して,どう有効活用するかという問題の立て方はあまり適切ではないかもしれない。

それはさておき,まずどういう活動(ビジネス)が考えられるだろうか。

ありふれたアイデアであるが,医療法42条により定款にいれて…(略)…をすれば,直接あるいはMS法人外注して行うことができるのではないだろうか。これらにより医療費の増大を抑える方向性が見つかれば,社会的意義も大きい。

そしてこのような研究からMS法人が行うべきビジネスも見えてくるかもしれないが,実際は,なかなか魅力的なビジネスの開発はむつかしい。私は,Apple,Google,Amazonに絶えず心を揺すぶられてきた。小さくても,そういう揺さぶりのあるビズネスを探すのがよい。

(4)医療法人の防御

上記(2)(3)は医療業務が順調に推移することを前提としているが,思わぬ事態が発生してこれが瓦解することもあり得るから,十分な防御態勢を立てておく必要がある。

これまで,医療機関においてそのような意味で大きな問題となってきたのは,①医療事故(とその対応),②スタッフの労働問題,③診療報酬の不正請求等であるが,近時は,④行政が医療機関に求める様々な法規制についてこれを理解し適切に対応することも重要である。③はともかく,①②④は弁護士マターであるから,適宜相談されたい。

①は,仮にミスがあったとしてもどう適切に対応できるかが重要であるし,ミスがなかった場合も,放っておいていいわけではない。むしろこちらの対応の方が,こじれることが多い。②は,法令に定められたルールに従うということである。

④は,行政は「後出しじゃんけん」であれこれいってくることがあることを十分に理解すべきである。

これが,上記(2)(3)を進めるための前提となる。