行政書士がする仕事の分野のお勧め本

行政書士の仕事

行政書士の業務は,行政書士法第1条の2,3に規定されているが,私は運転免許も持っていないので,これまで接触したことはなかった。ただ,業法の免許について細かい処理をしているのだろうということは想像していた。

行政書士のための法律実務書2冊を読む

最近,「要件事実」について若干調べていると,Kindle本に日本行政書士会連合会中央研修所編の「行政書士のための要件事実の基礎」という本があることを見つけた。「民事訴訟編」と「行政訴訟編」に分かれていて,「行政訴訟」についての要件事実を検討しているという内容なので購入してみた。目を通すと「民事訴訟編」はやけに分かりやすい。「行政訴訟編」はこれで要件事実の検討として充分なのかは今後検討したい。

さらに同じ編者の「行政書士のための行政法」というKindle本もあり,「総論」で行政法総論,行政手続,行政不服審査,行政事件訴訟等を取り上げているほか,「各論」で「道路運送法」,「道路運送車両法」,「土地利用関係法」,「廃棄物処理法」,「建設業法」,「出入国管理及び難民認定法」,「農地関係法」,「風営法」を取り上げている。各論は,司法書士が現に行っている許認可手続の分野の法令について,その概要,判例等で問題となった紛争事例を取り上げて説明しており,その分野の全体像の把握に最適だ。

両書ともお勧めしたい。

「行政書士のための要件事実の基礎」(日本行政書士会連合会中央研修所) (Amazon・本の森)

「行政書士のための行政法 第2版」(日本行政書士会連合会中央研修所) (Amazon・本の森)

 

 

「裁判と事実認定を考える」を作成しました

裁判と事実認定を考える

「裁判と事実認定を考える」の固定頁の第1稿を作りました。大項目の「裁判」の「裁判制度について」(以下に,引用します。)に続いて「日本の民事裁判制度」,「弁護士業務から見た民事裁判制度」を検討し,大項目で「事実認定」を取り上げています。「法を問題解決と創造に活かす」ために,立法のあり方(「立法と法解釈を考える」)と並び,私が最も力を入れて考察したいところです。固定頁の「裁判と事実認定を考える」は適宜改定されますので,そちらをご覧下さい。

立法と法解釈を考える」「法制史・外国法」にも手を入れました。

裁判を考える

裁判制度について

裁判は,古来からかなり普遍的に見られる制度であるが,その具体的な内容は,地域,時代によって相当に異なる。これらは法制史として検討されている,ただし,現在,その差異は,相当程度,縮まっていることは間違いないが,それでも他国の裁判制度を,そこで適用される法令も含めて理解することはそう簡単ではない。

ただ裁判制度のように,関係者に対して具体的な影響があることを理解しつつ,その方法を意識して事実を認定し,判断する機会(制度)は多くはないから,それなりに優れた制度として検討の対象となることが多いのは,理解できる。ただ裁判制度を論じる人はどうしても「焦点効果」にとらわれ,たかだか政府の1部門である司法機関が,持ち込まれた案件についての対応の問題であることを見失い,過大評価することが多い。確かにしっかりした法制度,裁判制度が機能していることが秩序維持や経済発展のために重要であることが指摘されているが,裁判所が世の中をよくしたり,経済発展させたりするわけではない。

裁判制度を考察する視点で重要なのは,その論理性と科学性である。参考本として次の2冊を挙げておこう。

「法廷に立つ科学 「法と科学」入門」(著者:シーラ・ジャサノフ) (Amazon・本の森)

「武器化する嘘 情報に仕掛けられた罠」(著者:ダニエル・J・レヴィティン) (Amazon本の森

一般に刑事裁判の方がなじみがあるが,これには複雑な要素・考慮が含まれるので,まず民事裁判を取り上げよう。

(以下,省略)

 

 

 

注目

ようこそ−このサイトの紹介

法と弁護士業務について紹介するWebサイト「弁護士村本道夫の山ある日々」のTOP PAGEへようこそ。

Ⅰ 弁護士に相談・依頼した方がよさそうなことがあるが,まず自分で少し調べてからどうするか決めたいという市民,中小企業の方は「弁護士業務の基本」(こちらでリンク)をご覧ください。

Ⅱ 個人や会社・組織が直面しているビジネスや社会,政治的な問題に,法律や行政処分・裁判等が絡んでいるが,それらをうまく処理したい,活用したいと考える市民,企業や組織のマネジメントをされている方は「弁護士業務の展開」(こちらでリンク)をご覧ください。

私に相談,依頼しようと思う方は,私が所属する「カクイ法律事務所」に電話(03-5298-2031)やFAX(03-5298-2032),または下記の「お問い合わせ」フォームを利用して,ご連絡・ご相談ください(事務所の所在と地図はこちらです。)。

「お問い合わせ」フォーム(クリックしてください。)

Ⅲ 更に現在,将来の社会が抱える様々な問題を解決し,価値を創造するにはどうすべきなのか,その中で法やルールはどうあるべきなのか等について「問題解決と創造を学ぶ」で考察し,情報提供します(こちらでリンク)。

これらを構成,補完する記事や私の日常を綴った記事を投稿する「ブログ山ある日々」(こちらでリンク)は,「 投稿 SITE MAP」(こちらでリンク),あるいは「最近の投稿」から順次「過去の投稿」に遡るか,アーカイブ,メニュー等を利用してご覧ください。なお最新の投稿は,この記事の次(下)の記事からになります。

これらのもう少し詳しい内容は,固定ページの「ようこそ」(こちらでリンク)をご覧ください。

 

 

新しい法令の成立を調べる

この投稿は,固定ページ「新しい法令の成立を調べる」の記事の一部を投稿したものです。固定ページの方はその内容を,適宜,改定していきますので,この投稿に対応する最新の内容は,固定ページ新しい法令の成立を調べる」をご覧ください。

最新の法令の成立状況を知る方法

新しい法律問題を検討する場合,それに関連する最新の法令の成立状況を検討することが必須である。今は,ネットで,ほぼ最新の状況を知ることができて本当に便利だ。その方法の概要をまとめておく(成立後は,「e-Gov法令検索」で検索可能である。)。

重要な法律は内閣提出法案が多いから,「内閣法制局の資料(Web)」を検討するのが,成立の有無の記載(少しずれるが)や主管官庁の作成資料へのリンクもあり,便利だ。下記に最近の4会期の資料を掲載する(第193~196回国会。投稿では省略)。

これでカバーできない情報は,衆議院のWeb,及び参議院のWebを検討してみる。衆議院議員提出法案(衆法),参議院議員提出法案(参法)の状況や,内閣法制局資料で成立になっていなくても,その後の成立の有無や,審議状況が確認できる。以下,衆議院の「立法情報」,参議院の「議会情報」を掲記しておく。

衆議院の立法情報

参議院の議会情報

内閣法制局資料

第196回国会

内閣法制局の各国会会期の法令情報の冒頭は,次のようなものだ。

第196回国会での内閣提出法律案(件名)(平成30年6月22日現在)

法律案名をクリックすると、提出理由が表示されます。

内閣提出法律案の具体的内容をお知りになりたい場合は、主管省庁のホームページに掲載されているものがありますので当該主管省庁のホームページをご覧ください。

  • 【成立】欄に★印が記載された法律案は、第196回国会で成立したもの
  • 【主管省庁】欄からのリンクは各主管省庁のホームページにリンクされています。

以下省略。

 

秘密情報をめぐる法律問題の検討

はじめに

最近,通訳,翻訳を業とする会社から,業務上取り扱う秘密情報に関する法律問題について相談を受け,その前提となる「秘密情報をめぐる律問題」を概観するペーパーを作成した。簡単なものではあるが,他の業種,業態の会社にとっても参考になると思われるので,掲載する。

なお,参考までに,通常,用いることのできる「秘密保持契約書」のモデル案を,顧客企業にとって受け入れやすいと思われる経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック ~企業価値向上にむけて」に掲載されている「参考資料2 各種契約書等の参考例」「第6 業務委託契約書(抄)」を基に作成し,後記した

1 前提

近時,NDA(秘密保持契約書)の締結は普通に行われ,秘密とされるべき情報についての法律関係も複雑化している。本書では「秘密情報」を次項のⅠないしⅤの5つのレベルに整理して考察する。一般の通訳,翻訳については,法律上,守秘義務の定めはないが,通訳,翻訳は文字どおり他人の秘密を取り扱うことも多く,職業倫理上,秘密保持が強く要請される。そのようなケースは他にもあると思われる。守秘義務が及ばない社は,そこは省いて理解されたい。なお業務従事者は外注を想定しているが,自社従業員の場合は,御社に含めて考えればよいであろう。。

2 秘密情報をめぐる法律問題

 Ⅰ 守秘義務の対象となる「秘密」

特定の職業,職務につき,刑法,その他の法律によって,「業務上取り扱った(職務上知り得た)人(企業も含む)の秘密を漏らしてはならない」とされていることがある。「守秘義務」である。これに違反したときは刑罰が科されることがあるし,不法行為として損害賠償の対象にもなる。

「守秘義務」は,当該職業や職務の遂行に公的な資格(弁護士)や立場(公務員等)を必要とする場合に規定されているが,御社もその職務の内容からすれば「守秘義務」の対象となってもおかしくないものの,業務遂行に特段の資格を要せず,また職務も様々な形態で行われるので,その対象にはなっていないと解される。ただし法的義務はなくても,後述するように「職業倫理」が問題になると考えられる。

Ⅱ 不正競争防止法により保護される「営業秘密」

不正競争防止法により「窃取,詐欺,強迫その他の不正の手段により取得した,あるいは営業秘密を保有する事業者からその営業秘密を示された場合において不正の利益を得る目的で又はその保有者に損害を加える目的で,当該営業秘密を使用し,若しくは開示する行為」等(法2条)が禁止され,処罰,あるいは損害賠償の対象となる。このような仕組みで保護されているのが,「営業秘密」である。「営業秘密」は,「①秘密として管理されている,②生産方法,販売方法その他事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって,③公然と知られていないもの」をいうが,このように「営業秘密」について法律上の絞りがある上,対象となる行為が通常人でも違法性があることが分かりやすいものなので,御社においてはこれが問題になることは考えにくいであろう。ただし,業種,業態によっては,「営業秘密」を厳密に管理することが必要なのに,それを怠っている場合も多い。

 Ⅲ 個人情報ないし秘密情報

個人情報保護法は,「個人情報」の取得や「個人データ」の第三者提供を規律しているが,御社や業務従事者は,業務遂行の過程で顧客企業から提供された「個人情報」を取得するので,原則として取得について法律上の問題は生ぜず,また,その「個人情報」を「個人データ」として保管し第三者提供する場合もほとんどないであろう(仮にあれば,同意が必要である。)。なお個人情報保護法の基本については,本webの「基本から考える個人情報保護法(その1)」を参照されたい。

また企業は,上記の「営業秘密」,それ以外の営業情報や技術情報,個人情報も含めて「秘密情報(機密情報)」と定義して,その漏洩,流出を防止しようとし,これをNDAの対象にすることが一般的に行われている。御社が,顧客企業からNDAによって定義された「秘密情報」(機密情報)の漏えい,流出をしないように求められることも多いであろう。

 Ⅳ インサイダー取引

金融商品取引法166条1項は,「会社関係者」であって,上場会社に係る業務等に関する「重要事実」を知った者は,その事実が公表された後でなければその会社の有価証券等の売買等をしてはならない旨を規定し,秘密である「重要事実」が濫りに利用されないように規制している。御社もこれに該当することがあり得る(なお相談を受けたケースは,これを含む相談であったので,より詳しい内容を後記する。)。

 Ⅴ 契約による規制

ⅠないしⅣの法律関係について,法律上の要件を加重,減少し,あるいは新しい規定を設ける契約(特にNDA)が締結されることが多い。

通常,顧客企業との間で「業務契約」及び「機密保持契約」を締結し,業務従事者との間で「業務委託契約」及び「秘密保持契約」を締結する。

 3 基本的な考え方

(1)業務従事者が順守すべき秘密保持についての基本

上記のⅠないしⅤに関し,本件で重要なのは,御社の業務従事者は,法律上はⅠの「守秘義務」は課せられていないもの,「職業倫理」に基づきこれと同等の「業務上取り扱ったことについて知り得た人や企業の秘密を漏らしてはならない」という秘密保持義務を負って行動するのが妥当と考えられるということである。

この場合,保持すべき秘密の中には,Ⅱの「営業秘密」やⅢの「個人情報等ないし秘密情報」も含まれるし,それに止まらず,刑法の秘密漏示罪(134条)の解釈に準じ,本人の秘密にする意思が想定される情報であれば,すべて秘密に含まれるといえよう。

実際,例えば,業務に従事したその内容のみならず,その日時,その当事者,業務に従事したこと自体についても秘密とさるべきことが妥当なことが十分に考えられる。

そしてこの秘密保持義務は,顧客企業に対してのみならず,業務に関連,登場する全関係者に及ぶと解すべき場合もある(法律上の「守秘義務」も依頼者に対してのみ,負うものではない。)。

このように考えると,顧客企業やその他の関係者(以下「顧客等」という。)の利益を守るために,業務従事者は,その関与した業務に関する一切の情報について,公知となった場合,あるいは,正当な事由がある場合以外は,これを何人に対しても開示せず,利用しないという原則に従って行動することが望ましいと思われる。

(2)顧客企業,御社,業務従事者の間の契約関係の検討

ア 概説

ところで,御社の秘密情報に関する契約関係は,通常,顧客企業と御社,御社と業務従事者の間に存在している。顧客企業が,業務従事者に,直接NDAの締結を求めることはまれであると思われる。

この場合,業務従事者は,御社に対して負った契約上の義務を,顧客等に対して直接負うわけではない。御社が顧客企業に対して負う義務の一内容として業務従事者が御社に対して負う義務が組み込まれるだけである。

ただし,業務従事者の行為が,直接第2項に挙げた法令等に該当,違反することがあるし,そうでなくても,「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した」ときの故意・過失の内容として,業務従事者が御社に対して負った契約上の義務が考慮されることはあり得る。

イ 顧客企業と御社間の契約関係

顧客企業が御社(例外的に業務従事者)に締結を求めるNDAの対象は,Ⅱの「営業秘密」か,これを拡大したⅢの「個人情報等ないし秘密情報(機密情報)」であることが普通で,「守秘義務」や「職業倫理」の「秘密」より範囲が狭い。また契約当時者双方が,相手方に対してほぼ同等の義務を負うとされることが通常である。

これについて,顧客企業がその企業固有のルールに基づいて用意したNDAを使用することが,顧客企業にとって安心・安全であり顧客企業と御社の円滑な業務関係の形成に役立つこと,顧客企業と御社との間で万が一紛争になったときは,秘密が「営業秘密」か「個人情報等ないし秘密情報(機密情報)」に限られていた方が御社としても対応しやすいことから,顧客企業と御社の間のNDAについては原則として顧客企業が用意したものを使用すべきであり,またこれが不適切な場合は,後記の「秘密保持契約書」を使用すればよい(顧客企業が用意するNDAの中には,損害賠償義務等について非常識な規定を設けているものもあるので,契約締結にあたって御社として精査する必要がある。)。顧客企業の要求がない限りわざわざ業務従事者の「守秘義務」を盛り込むことは適当ではないであろう(顧客企業の要求がある場合も,「一切の情報」とすることは適切ではない。)。

ウ 御社と業務従事者間の契約関係-「秘密保持条項」

業務従事者の秘密保持については,次の条項を規定するのが,適切である。

「①受託者は,本契約及び個別契約履行上知り得た,または受領した弊社の顧客等に関する一切の情報(以下この項において「本件情報」という。)について,本契約及び個別契約履行以外の目的に使用,利用してはならず,また第三者へ提供,漏洩等してはならない。②ただし,弊社の書面による承諾を得た場合,本件情報が公知となった場合,又は正当な理由がある場合はこの限りではない。

③本件情報の不測の漏洩を防ぐため,受託者は善良な管理者の注意義務をもってこれを保持,保管,管理する責任を負う。本契約及び個別契約終了後,弊社から要求があれば,受託者は本件情報すべてを弊社に返還し,又はこれを廃棄しなければならない。

④受託者がこれらの約定に違反したことによって顧客等に損害が生じ,弊社が顧客等に損害賠償義務を負うときは,受託者は弊社に対し,当該賠償額を補填する義務を負う。

⑤本条の定めは本契約及び個別契約終了後も効力を失わない。」

①は,情報の目的外使用,利用,及び第三者へ提供,漏洩等の禁止を規定した。②顧客等の情報を利用,開示していい場合として,御社の書面による承諾がある場合,公知となった場合,又は正当な理由がある場合とした。

③業務従事者が善良な管理者の注意義務をもって情報を保持,保管,管理する責任を負うを明示した。また御社の要求がある場合の,返還,廃棄義務を規定した。

④そして,故意や,③の過失による漏洩の場合で,弊社が顧客に損害賠償義務を負うときの補填義務を規定した。

なお,①について顧客等の承諾がある場合について検討したが,これについては御社と業務従事者の関係として御社がコントロールできた方が望ましいと考えた。

(3)業務従事者と顧客企業の秘密情報の使用,利用についての検討

業務従事者は顧客企業に対し,「業務上取り扱ったことについて知り得た人や企業の秘密を漏らしてはならない」義務を負うことに加え,当該顧客企業の秘密情報の使用,利用についても,差し控えるべき義務があると解すべきであろう。

これについて上述した条項は,秘密情報について,目的外の使用,利用を禁止している。

その内容については,顧客企業の製品・サービスや株式の購入や,顧客企業に対する雇用等の働き掛けが考えられよう(ただし,雇用等については,「直接交渉の禁止」の延長とも考えられ,ここでは検討しない。)。

製品・サービスの購入については,通常の消費者としての購入には特段の問題はないであろうが,製品・サービスに希少性がある場合や,利益を得ることを目的とする大量売買等は,秘密情報の使用,利用した場合はもちろん,そうでなくても,当該企業からそのように解される可能性がある場合は,差し控えるのが適当である。

これは株式の売買も同様である。上述したように,インサイダー取引は,「重要事実」を知った上での売買であるが,業務従事者は,定型的ではない「重要事実」に関わる機会が多いから,「重要事実」を知っているか否かに関わらず,当該企業の翻訳・通訳業務が開始してからこれが完全に終了して1年後までは(「重要事実」を知った者は,その事実が公表された後まで),株式売買は差し控えるべきであろう。

以上

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「ビジネスツールとしての知的財産」を読む

~ストーリー漫画でわかる 作者:大樹七海,監修:杉光一成

知的財産についての入門の入門として

理系の大学を経て,国立研究機関に在籍したあと弁理士資格を得て人生で初めて漫画を描いたという,非常に勉強家であることがうかがわれる作者の作品である。

ストーリー漫画で描かれた「ビジネスツールとしての知的財産」という触れ込みであり,碁のソフトをめぐる様々な紛争,日米対決等が描かれている。漫画は中の中程度の面白さか。

知的財産について入門の入門として読む分にはいいだろうが,今後も知的財産分野を漫画で描くのであれば,もう少し突っ込んだ内容が望まれるだろう。漫画を描く苦労は分かるが,このような作品を読む読者はそこをあまり評価しない。

重要な用語

各章の漫画の後に,簡単な知的財産についての説明記事が載っている。その中で重要と思われる用語だけピックアップして掲載しておく。

パテントロール

「コストセンター」「プロヒフィットセンター」から「ビジネスツール」へ

SWOT分析(プラス/マイナス,内部/外部環境),ファイブフォース分析

特許権…技術的アイデア,意匠法…工業的に量産できる物品のデザイン,商品名やサービス名称等…商標法,(実用新案権…物品の形状,構造の考案),著作権法…アイデアや感情の表現,不正競争防止法

国際特許…PCT

ブランド…商標の中でも品質保障機能を持ち,」顧客吸引力を化体資産としての価値を得たもの

特許出願しないという選択肢

弁理士と知的財産管理技能士

IT企業のスタートアップに必要な人材

経営 ハスラー,開発 ハッカー,デザイン ヒップスター
製品の「外観」という意味での製品デザインは,意匠法

デザインドリブンイノベーション(手段)とブルーオーシャン戦略(目的)

知的財産法でデザインはどこまで保護されるか

ビジネスモデル/操作性/素材/外観/アイコン/音/店舗

特許法,商標法,意匠法,不正競争防止法

IPランドスケ-プ

市場参入抑制機能,市場排除機能

オープン&クローズ戦略

詳細目次

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一般廃棄物処理業の許可,許可の取消要件のまとめ

廃棄物処理法について

廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)は,ご多分に漏れず,増改築を繰り返した結果,きわめて理解しづらい法律となっている。御者に対する許可が取り消されるのはどのような場合か,まとめてみたので,参考になると思い,掲載する。なお基本は,一般廃棄物処理業のうちの,収集,運搬業の申請の許可である。取消し,あるいはその他の態様の廃棄物処理業は,その応用とし,読み解くのはさほど困難ではない。

要点

 
一般廃棄物処理業のうち,収集,運搬業の申請の許可は,廃棄物処理法7条5項(該当すると許可されない場合は4号),処分業の許可は,法7条10項(該当すると許可されない場合は4号。収集,運搬業の法7条5項の規定を準用),許可の取消は,法7条の4に定められている。
  法7条の4の許可の取消も,法7条5項4号を中心に規定されているので,法7条5項4号をしっかり読み込むことが重要である。

◇収集・運搬(法7条5項4号(イ~ヌ)),処分(法7条10項4号)の許可要件

イ.成年被後見人若しくは被保佐人または破産者で復権を得ない者
ロ.禁錮以上の刑に処せられ,その執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
ハ.次の法律の違反により罰金に処せられ,その執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
 <廃棄物処理法,浄化槽法,大気汚染防止法,騒音規制法,海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律,水質汚濁防止法,悪臭防止法,振動規制法,特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律,ダイオキシン類対策特別措置法,ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法,暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律,暴力行為等処罰ニ関スル法律,刑法第204条(傷害),第206条(傷害助勢),第208条(暴行),第208条の3(凶器準備集合),第222条(脅迫),第247条(背任)>
ニ.廃棄物処理法第7条の4第1項,第2項,若しくは第14条の3の2第1項,第2項(これらの規定を第14条の6において読み替えて準用する場合を含む。),又は浄化槽法第41条第2項の規定により許可を取り消され,その取消しの日から5年を経過しない者
  許可を取り消された者が法人である場合においては,当該取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があつた日前60日以内に当該法人の役員(業務を執行する社員,取締役,執行役又はこれらに準ずる者をいい,相談役,顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず,法人に対し業務を執行する社員,取締役,執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。)をいう。
ホ.許可の取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があつた日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に,一般廃棄物若しくは産業廃棄物の収集若しくは運搬若しくは処分の事業のいずれかの事業の全部の廃止の届出又は浄化槽法の規定による届出をした者で,届出の日から5年を経過しないもの
ヘ.ホに規定する期間内に一般廃棄物若しくは産業廃棄物の収集若しくは運搬若しくは処分の事業のいずれかの事業の全部の廃止の届出又は浄化槽法の規定による届出があつた場合において,ホの通知の日前60日以内に当該届出に係る法人の役員若しく重要使用人であつた者又は個人の重要使用人であつた者で,届出の日から5年を経過しないもの
ト.その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
チ.営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人がイからトまでのいずれかに該当するもの
リ 法人でその役員又は重要な使用人のうちにイからトまでのいずれかに該当する者のあるもの
ヌ 個人で重要な使用人のうちにイからトまでのいずれかに該当する者のあるもの
※ 重要な使用人とは,次の代表者である。
一 本店又は支店
二 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で,廃棄物の収集若しくは運搬又は処分若しくは再生の業に係る契約を締結する権限を有する者を置くもの

◇ 許可の取消要件(法7条の4)

 市町村長は,一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者が次の各号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消さなければならない。
一 第七条第五項第四号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条まで若しくは第三十二条第一項(第二十五条から第二十七条までの規定に係る部分に限る。)の規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに該当するに至つたとき。
二 第七条第五項第四号チからヌまで(同号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条までの規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)のいずれかに該当するに至つたとき。
三 第七条第五項第四号チからヌまで(同号ニに係るものに限る。)のいずれかに該当するに至つたとき。
四 第七条第五項第四号イからヘまで又はチからヌまでのいずれかに該当するに至つたとき(前三号に該当する場合を除く。)。
五 前条第一号(注:この法律若しくはこの法律に基づく処分に違反する行為(以下「違反行為」という。)をしたとき、又は他人に対して違反行為をすることを要求し、依頼し、若しくは唆し、若しくは他人が違反行為をすることを助けたとき)に該当し情状が特に重いとき,又は同条の規定による処分に違反したとき。
六 不正の手段により第七条第一項若しくは第六項の許可(同条第二項又は第七項の許可の更新を含む。)又は第七条の二第一項の変更の許可を受けたとき。
2 市町村長は,一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者が前条第二号(注:その者の事業の用に供する施設又はその者の能力が第七条第五項第三号又は第十項第三号に規定する基準に適合しなくなつたとき)又は第三号(注:第七条第十一項の規定により当該許可に付した条件に違反したとき)のいずれかに該当するときは,その許可を取り消すことができる。

◇産業廃棄物処理業

 <第七条の四 市町村長は,一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者が次の各号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消さなければならない。
 一 第七条第五項第四号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条まで若しくは第三十二条第一項(第二十五条から第二十七条までの規定に係る部分に限る。)の規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに該当するに至つたとき。
 二 第七条第五項第四号チからヌまで(同号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条までの規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)のいずれかに該当するに至つたとき。
 三 第七条第五項第四号チからヌまで(同号ニに係るものに限る。)のいずれかに該当するに至つたとき。
 四 第七条第五項第四号イからヘまで又はチからヌまでのいずれかに該当するに至つたとき(前三号に該当する場合を除く。)。
 五 前条第一号に該当し情状が特に重いとき,又は同条の規定による処分に違反したとき。
 六 不正の手段により第七条第一項若しくは第六項の許可(同条第二項又は第七項の許可の更新を含む。)又は第七条の二第一項の変更の許可を受けたとき。
 2 市町村長は,一般廃棄物収集運搬業者又は一般廃棄物処分業者が前条第二号又は第三号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消すことができる。>
 <第十四条の三の二 都道府県知事は,産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者が次の各号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消さなければならない。
 一 第十四条第五項第二号イ(第七条第五項第四号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条まで若しくは第三十二条第一項(第二十五条から第二十七条までの規定に係る部分に限る。)の規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)又は第十四条第五項第二号ロ若しくはヘに該当するに至つたとき。
 二 第十四条第五項第二号ハからホまで(同号イ(第七条第五項第四号ロ若しくはハ(第二十五条から第二十七条までの規定により,又は暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し,刑に処せられたことによる場合に限る。)又は同号トに係るものに限る。)又は第十四条第五項第二号ロに係るものに限る。)に該当するに至つたとき。
 三 第十四条第五項第二号ハからホまで(同号イ(第七条第五項第四号ニに係るものに限る。)に係るものに限る。)に該当するに至つたとき。
 四 第十四条第五項第二号イ又はハからホまでのいずれかに該当するに至つたとき(前三号に該当する場合を除く。)。
 五 前条第一号に該当し情状が特に重いとき,又は同条の規定による処分に違反したとき。
 六 不正の手段により第十四条第一項若しくは第六項の許可(同条第二項又は第七項の許可の更新を含む。)又は第十四条の二第一項の変更の許可を受けたとき。
 2 都道府県知事は,産業廃棄物収集運搬業者又は産業廃棄物処分業者が前条第二号又は第三号のいずれかに該当するときは,その許可を取り消すことができる。>

問題解決と創造の頁を少し充実させました

問題解決と創造の頁

このWebはかなり盛りだくさんなので,乏しい時間をやりくりしてあちらをいじればこちらが倒れ,こちらをいじれば,あちらと矛盾するというようなことになってしまうが,私としては,最終的には,法というルールが,硬直性,複雑・難解性,権威性を離れ,個人,企業の生活を利する,柔軟,平明,合理的なものになるよう,努力していきたいということが,目標だ。

その目標のための基礎作業,準備作業となる,「問題解決と創造の頁」に手を入れ,その下位項目である「仕事:アイデアをカタチに」の題名を改めて「問題解決と創造の方法と技術」にして最初に持ってきて,「生活:食動考休」の題名を「生活と仕事:食動考休」にして,2番目にした。さらにその中に,「人体」,「人類史」の検討を入れることにした。これでだいぶすっきりとした(はずだ)。

問題解決と創造のために,どのように頭と心を働かせるべきなのか,その基本として,問題解決については「新版[図解]問題解決入門~問題の見つけ方と手の打ち方」(著者:佐藤 允一)を,創造については,「創造はシステムである~「失敗学」から「創造学」へ」(著者:中尾政之)を紹介し,今後,これを基準として,検討を進めていくことにする。

法とルールの基礎理論

少し前になるが,「法を問題解決と創造に活かす」とその中心になる「法とルールの基礎理論」にも,少し手を入れた。

ここでの問題意識は,「規範とゲーム」(著者:中山康雄)や,「法と社会科学をつなぐ」(著者:飯田高)を読み込み,言語ゲーム,ゲーム理論等を踏まえた,新しい法の機能論,立法論に近づきたいということだ。

私は別に高踏的なことを言っているのではなく,このまま政府官僚と諮問機関による複雑・難解な独りよがりの立法を許せば,唯識論が複雑怪奇な解釈,細分化によって結局仏教が見えなくなったのと同じ現象が,今後起こる,あるいは現に起こりつつあるということだ。あるいは将棋の妙手がAIにしかわからないように,新規立法も,政府官僚と諮問機関にしかわからなくなるだろうということだ。コピペ立法と,括弧書き立法によって,法令はいくらでも複雑にできる。それは正確でも分かりやすくもない。世界中で引き返す時期だ。

法とルールの基礎理論

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法とルールの基礎理論に取り組む

「法を問題解決と創造に活かす」ためには,「法とル-ルの基礎理論」から考える必要がある。

これまで法律をめぐる「学問」は,実定法についての「解釈学」と,さすがにこれだけで「学問」と称するのは恥ずかしいので,その周辺に「法哲学」,「法思想史」,「法制史」,「法社会学」,「法と経済学」等々を配置することで,何とか「学問」という体裁を整えてきた。ただ問題は,この周辺の「学問」は,実定法「解釈学」にほとんど影響を与えていないし,法律学徒には大な影響力のある実定法「解釈学」も,裁判所は法解釈にあたって参照する程度である。更には,実定法「解釈学」も裁判所の法解釈も,少なくても日本においては,「科学」ではない。私の関心は,「法とル-ルの基礎理論」についての,新しい周辺の「学問」(上記に加えて,進化論,言語ゲーム,ゲームの理論,行動経済学,複雑系ネットワーク科学,ベイズ推定,統計学等を加えよう。)が,政府の立法実務と裁判所の法実務(法解釈+事実認定)を「科学」にすることにある,

しかし我が国の上記の実定法学者の「解釈学」と裁判所の法解釈の隔たりは,いま,崩れつつあるといっていいかもしれない。法令は実定法学者を巻き込んだ審議会で迅速に制定,改廃されるし,ロースクールを通じて実定法学者と裁判所実務の距離は縮まりつつあるだろう。世界中で,社会が急速に変化,流動化し,人の行動を支えるルールも激変しつつあるという現実が,それを支えていることは間違いない。

ただ我が国の法をめぐる現状は,このような現実に適格に対応するという動きの中から生じたというより,その場しのぎの対応を繰り返しているだけという方が近そうだ。

今後なすべきこと

新しい周辺の「学問」については,以前「「法とルールの基礎理論の本」まとめ読み」をまとめたが,今見るとこれらの検討だけでは不十分だ。これを補充する総論的な本として「法と社会科学をつなぐ」「エコノリーガル・スタディーズのすすめ」「法哲学」「数理法務のすすめ」「法律」を挙げておく。これ以外についても,現在,充電中である。

ルールについて,「複雑系ネットワーク」(社会)の中で「限定合理性」を有する人が営む「ゲーム」(行為)についてのルールはどうあるべきなのか,どうすれば紛争,権利侵害を除去し,生産性をあげることができるのかというのが,立法と,法解釈学の根本問題である。中心となるツールが,行動ゲーム理論であろう。

もうひとつの問題は,事実認定が「科学」的であるためには,どうすればいいかということである。

この両者について,IT・AIの利用を進めることも必要だ。「法とAI」,「仕事の役立つIT技法」もこのような観点からのを目指している(現状は全く不十分だが。)。

これらに加え,法が言語によるルールであることや,法がどのように機能してきたかという歴史的な観点も必要だ。

法が言語によるルールであること

法が言語によるルールであることについては,ウィトゲンシュタインの言語ゲームとの関係が気になっていた。というのは,ハートの「第一次ルール」,「第二次ルール」の考え方は,ウィトゲンシュタインの影響を受けているのではないかという指摘を 橋爪大三郎さんが「人間にとって法とは何か」,「はじめての言語ゲーム」でしているが,どうもその根拠があいまいで,ウィトゲンシュタインの言語ゲームを考察の基本にしていいかわからなかったからだ。しかし,「二十世紀の法思想」(著者:中山竜一)の第2章,3章に,ウィトゲンシュタインのハートへの影響が明記されていたので,安心した?人類学者の中川敏さんが書いた「言語ゲームが世界を創る」を読み始めていたが,これも入れ込めそうだ。

言語ゲームと,ゲーム理論は,関係ないが,期せずして,法とルールを「ゲーム」を基盤として考察することになりそうだ。

その後(平成30年6月23日),「規範とゲーム」(著者:中山康雄)を入手,一読した。この本は,橋爪さんの上記「はじめての言語ゲーム」をあげて,示唆的ではあるものの,精緻化されることはなかったとし(私も同感だ。),自身は上記著作で「社会的規範や(社会的)ゲームを基盤として人々の活動原理を明らかにすること」を目的とするとする。そして実際,規範体系,ゲーム体系を提示し,後者の「中に,言語ゲーム,ゲーム理論を位置づけ,全体の構造を明らかにしようとしている。更に,生活,組織,法体系,経済活動等を,規範。ゲームの観点から分析しており,現時点での私の関心を十二分に満たしてくれる内容になっている。加えて,法体系では,法文の分類,法律の分類,法的推論,法実践(裁判)の分析にも及んでおり,このような関心を持つ哲学者がいたことにいささかびっくりしている。

これで,法,ルール,ゲーム等が見えやすくなったので,立法や,事実認定の問題に,検討を進めることができるだろう。

実は上記した「法と社会科学をつなぐ」も優れた本で,ここから全体の見通しをつけようとも思っていたのだが,この本は個々の問題のとらえ方は秀抜であるが,全体の構造が見えにくく,どうしようかと思っていた。上記「規範とゲーム」によって,この本も生きてくる。

各論

追ってきちんとした,参考本の目録を作成し,各論を展開していきたい。

 

 

法を問題解決と創造に活かす

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法を問題解決と創造に活かす

記事の内容の紹介

「法を問題解決と創造に活かす」には,「問題解決と創造の頁」の一般的な議論を踏まえつつ,法を問題解決と創造に活かすという観点から,その原理や方法を考察,紹介する記事を,掲載していきたい。下位メニューには,「法とルールの基礎理論」,「仕事に役立つIT技法」,「立法と法解釈を考える」,「裁判と事実認定を考える」(作成中),「法制史・外国法」(作成中)等を掲載するが(これらについては,適宜,その内容を見直す。),「ブログ山ある日々」に投稿するこれらに収まらない記事も「法と問題解決・創造(投稿)」に新しい順に掲載される。

法を問題解決と創造に活かすとはどういうことか

このWebサイト「弁護士村本道夫の山ある日々」の「副題」(キャッチフレーズ)は,「法を問題解決と創造に活かす」だが,いったいこれは何だろうと不審に思われた閲覧者の方も多いであろう。「法を問題解決に活かす」だけであれば,法律問題が生じた人や企業が依頼する弁護士の主要な役割は,正しく法を適用して足下の紛争や法律問題を解決することであるから,これは当然のことである。加えて法律問題の解決によってそれまでの状況が一掃されて新たな地平が開ける場合も多いから,この場合は「創造」といっても,まあいいかなぐらいにはなるであろうか。ただ私は,もう少し違うことも考えていた。

弁護士は法律実務家であるから,具体的な依頼事項について,現行の法令がこうなっており,それに法令を適応した結果,こうなるとか,裁判になった場合は,証拠や裁判所の実務を踏まえると,こうなりそうだという「見通し」を持つことは重要ではあるが,法令を起案した官僚や判決をする裁判所の「見解」や「実務」を鵜呑みにするだけでは,単なる「慣行の奴隷」,「権力の下僕」になってしまう。①正義,平等,あるいは憲法の「理念」や,そこから流出する原理・原則に遡ったり,②社会が急速に変化,流動化し,人の行動を支えるルールも激変しつつあるという現実の中で,この問題についての法解釈や裁判はこうあるべきだという「見直し」を促したりする活動も重要だ。前者について弁護士はこれまでそこそこ頑張ってきたが,後者はこれからだ。いずれにせよ「見通し」は思ったほど確実ではない。更には,③更に主に②を踏まえ,今後,立法や裁判実務はこうあるべきだという提言や改革していく活動も重要だ。①は,「立法と法解釈を考える」,「裁判と事実認定を考える」で触れるが,この「法を問題解決と創造に活かす」では,主に②③を検討することになろう(これを「法システムの変革」という。)。

法をこれから始める(見直す)ビジネスの問題解決と創造に活かす

ところで「法を問題解決と創造に活かす」べき主要な場面は,上述した①②の既に法律問題が生じているケースよりも,④企業や個人が,これから解決すべき「問題」として,ビジネスや生活・仕事を始める(見直す)場合であろう。この場合は,いかに法・ルールの全体を把握し,距離を取るかが重要だ。

すなわち,当該ビジネスや行動に係わる法・ルールという枠組みが,どのように機能,規制,支援,関係しているのかを,中央政府,地方政府,外国政府,国際機関等の法令,規則,業界の自主規制,慣行等々を可能な限り明確化し(法・ルールに係わるフレームワーク(「法フレーム」という。)の言語化・明確化),現在及び将来的に,法フレームがビジネスや行動の支障とならないように,行動範囲を定め,調整することが必要である(かならずしも,法フレームに触れないようにするということではない。)。もちろん許認可,知財,補助金等の関係で,法フレームを利用する局面もあるが,さほど多くはないであろう。

これだけでは,法フレームに戦々恐々として内に籠ることを薦めているようにも思えるが,そうではない。どこに「爆弾」があるかの予想もせずに,大きなビジネスや行動に乗り出すのでは,かえって不安定で,気が付いたときには収拾がつかなくなる。しかし,法フレームの言語化・明確化をした上で,これを適宜反芻し,これからの逸脱があったり,これに関して問題が生じた場合は,随時,まず現場で当該ビジネスや行動に支障を与えないような方法を考え出し,可能な変更・対応をするという経験を積み重ね,組織的に共有化していけば,破滅的な事態を避けられる可能性が大きい(これは内容的には,下述の「まず頭に入れること」と同じことである。)その場合,大切なのは,法フレームはあくまで外枠であって,ビジネスや行動を主体にして考えることである。法フレームとビジネスや行動が両立せず,あるいは致命的なエラーが生じる場合は多くはないであろう(そのようなビジネスや行動は通常選択しないだろう。仮に選択したのであれば,撤退あるのみである。)。

このような意味で,「法をこれから始める(見直す)ビジネスの問題解決と創造に活かす」ためには,弁護士に「法律顧問」や「分野別法務支援」を依頼することが有益である。その他「新しい法律問題(投稿)」」にもこのような観点から書かれた記事が掲載されている。

法システムの変革について

問題の把握と対応策

私たちが,解決すべき「問題」の所在を把握し,これに対する対応策を「設計-決定-実施-評価」するという過程は,社会を構成する3主体(政府,企業,個人)や対象とする問題について共通している(「公共政策」という「窓」を通して社会の構造を理解する)。法システムについての問題の解決(法システムの変革)も同様であるが,ここで重要なのは,次の点である。

まず頭に入れたいこと

経済は「予想外のつながり」で動く」(著者:ポール・オームロッド)は,「公共政策」についてであるが,「21世紀のネットワーク化された現実における特効薬は単純である。特効薬なんてないと認識することだ。意思決定を分散化し,実験を繰り返し,実験の大部分は失敗に終わるのを認識しても,直接にお金が転がり込んできたりはしない。しかし,本当にうまくいくやり方を見つけ,どのやり方ならインセンティブ単独よりもはるかに大きな変化をもたらすネットワーク効果が引き出せ,ポジティブ・リンキングを起こせるのかは,実験してみないとわからない」と記述しているが,この捉え方が重要だ。

公共政策のみならず,法システムを形作り変革することは,このようなもの(同書はネットワーク効果全般についてだが「頑健だが脆弱」としている)であるという事実を頭に入れて,適切な対応を繰り返していくことだ。

法システムをとらえなおす

ところで法フレームという枠組みは,どのような性質,性格を有しているのであろうか。現在の我が国では,膨張化・強大化する政府(行政)が,長文,複雑,難解な法令を作成し,それに基づいて企業と個人を規制しようとする姿勢が顕著である。このような事態については,政治と行政の係わりという観点から,自由を抑圧する,民主的でないと批判されてきた。それはそれでもっともであるが,「本当に必要不可欠であるのなら,仕方ないんじゃない」という批判には弱い。さらに法律家は,憲法を頂点とする法秩序というフィクションに弱く,仕事柄,視野に入るのは法令だけであるから,法秩序とそれを持ち上げ遵守させようとする官僚制という枠組みから離れて思考することはむつかしい。

しかしこのような,公共政策の実態や帰趨を離れて,法システムを固定してその縛りのもとに公共政策を運用し続けようとする,トップダウンというか,権威主義的というか,そういうやり方は,必ず挫折するというのが,上記の「「経済は「予想外のつながり」で動く」の見方であり,私も賛同する。「意思決定を分散化し,実験を繰り返す」こと,したがって法システムがフレキシブルに作成・運用されることが重要だ。法システムには,そのような相対的に有効な公共政策を実行する手段という意味しかない。

法システムについての追加的な4点の指摘

法システムについて,4点指摘しておく。

1点目は,上述したように,法律家の「法秩序」という幻想を離れてみれば,公共政策を実行するための言語的ルールである法は,手段,形式でしかなく実態は別のところにあるということである。しかもそのような「法」を作成するのは,企業と個人に係わる大部分の政策立案においても立法においても,「素人」である官僚であり(このような言い方には抵抗があるかもしれないが,実態はそうである。「入門 公共政策学」,「行政学講義」等々),しかも立法の監督役である内閣法制局は,論理性を欠く,言語技術の提供者にすぎないことが分かってしまった。我が国におけるトップダウンの,権威主義的な法は,このような人々が右往左往して「失敗作」を作り続けているのである。法システムがずっと身近になる。

2点目は,トップダウンの法システムは現場での試行錯誤を経ていないから,きわめて脆弱であることである。「進化は万能である」(著者:マット リドレー)が指摘するように「アングロスフィアの人々が,政府をまったく起源としない法に基づいて生きていることは,ほとんどの人が忘れているが,これは驚くべき事実だ。イギリスとアメリカの法は,けっきょくはコモンロー(慣習法・判例法) に由来する。コモンローとは,誰が定めたわけでもなく人々のあいだで自然に定まった倫理規範を指す。したがって,十戒やほとんどの制定法と違い,コモンローは先例や当事者の申し立てを通して現れ出てきて進化する。法学者アラン・ハッチンソンの言葉を借りると,コモンローは「徐々に進化するのであって,発作的に飛躍したり,漫然と停滞したりはしない」。それは「永遠に進行中の作業であり,移ろいやすく,ダイナミックで,混乱しており,建設的で,興味をそそり,ボトムアップだ」。著述家のケヴィン・ウィリアムソンは,次の事実を挙げて私たちをあらためて驚愕させる。「世界で最も成功し,最も実用的で,最も大切にされている法体系には,制定者がいない。それを立案した人もいなければ,考案した崇高な法の天才もいない。言語が現れ出てきたのとちょうど同じように,反復的,進化的なかたちで現れ出てきたのだ」。合理的に立案した法をもってコモンローに替えようとするのは,現存するものよりも優れたサイを研究室でデザインしようとするようなものだろうと,彼は冷やかし半分に言う。」。もちろん我が国はコモンローの国ではないから,ここで重要なのは,トップダウンの法システムが,そもそも論として,脆弱であるということである。

3点目は,だから私たちも,立法活動に参加し,遠慮なく失敗すべきであろうということである。これまでは,立法という権威的な匂いの近寄りがたさと,法令執務の面倒臭さが,アクセスを退けていたが,前者は枯れ尾花であり(これからも再生産され続けるであろうが),後者も核心部はわずかだ。

日本のヤフーの企業内弁護士(執行役員)が書いた「ビジネスパーソンのための法律を変える教科書」という本があるが,要するに,企業の利害に係わる法令について,政治家,官僚の間を飛び回って法を変えたという「技術的」な話で,我が国の法令実務の実態の参考にはなるが,少なくても求めるべき方向ではない。ではどうするかが,今後の私の課題だ(一時期やっていた「民間法制局」もいいのだけれど。)。

最後に,今わが国で作成されつつある法令は,やがて破たんするであろうことを考えたい。我が国の法令数は,憲法1,法律約1800,政令約1800,府省令等約3200,その他90といわれているそうである(「立法学」(著者:大島稔彦)の記述による。これの法令の原本は,手書きの紙だという話をどこかで読んだ記憶がある。)。

これ自体はさほど多くはないようだが,問題は,「溶け込み方式」の立法を取る中で,様々な他法令の,引用,準用をするという仕組みを作った結果,あるハブとなる法令を改正しようとするとそれに関係する膨大な法令に影響があるということである。要するにこのような仕組みを始めた人は,「順列・組み合わせ」。「大数」の知識がなかったのである。今後,権威主義的な政府が,ますます法令を長大化,複雑化すれば,その点検は,人知では不可能となり,AIに依拠するしかない。そのような法令順守(コンプライアンス)はAIにしかできないことは容易にわかる。

この点,例えば,誰もが使用することを予定された会社という組織について,単に利害関係者との調整を図る法令に過ぎない会社法について,1000条近い条文を用意し,さらには膨大な会社法施行規則,会社法会計規則を上乗せし,会社のガバナンスが云々といっている「立法者」たちは,日本経済を窒息させかねないかなりの原因を自分たちが負っていると自覚した方がいいのではないかというのが私の従来からの私見である。それでも当面は,これを前提にして見通しを立てるしかない。企業の管理部門が膨れ上がるのは当然だ。

どこまでできるかわからないが,「法とルールの基礎理論」等を踏まえ,法システムの変革に取り組んでいきたい。