AIにつながる数学とプログラミングの基本の本

前置き

続・ゲームへのコンタクト」に掲載した「「ゲーム情報学概論」(の第Ⅱ部,Ⅲ部)と「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」を理解するために,いったん「コンピューターにできること,AIにできること」の迂回したが,さて「AIにつながる数学とプログラミングの基本の本」を勉強しよう。この記事は,単に書名を紹介するだけだ。

「急がばまわれ」?

ところで,私は前に「ツールとしての統計学」という記事を作成し,次のように記載した。

統計学は,数学的な処理を前提とするので,数学的な素養も必要だ。

そこで私は,今後,まず,「計量経済学の第一歩―実証分析のススメ」(著者:田中隆一)を頭に入れて,「改訂版 経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める」(著者:尾山大輔他),「経済学で出る数学 ワークブックでじっくり攻める」(著者:白石俊輔 )を勉強しようと思っている。それに加えて「大学初年級でマスターしたい物理と工学のベーシック数学」(著者:河辺 哲次)がほぼ理解できれば,私が通常読む本の数学的な処理については,問題がなくなるだろう。急がばまわえれだ。

しかし,どうもいまだ常用するほど「大学初年級でマスターしたい物理と工学のベーシック数学」を理解したとはいいがたい。

そこでもっと「数学とプログラミングの基本の本」にさかのぼろう。

数学の基本の本

  1. 「数学大百科事典 仕事で使う公式・定理・ルール127」(蔵本 貴文 )(Amazonにリンク)
  2. 「その問題、数理モデルが解決します 」(浜田 宏)(Amazonにリンク)
  3. 「いつでも・どこでも・スマホで数学!- Maxima on Android活用マニュアル」(梅野善雄)(Amazonにリンク)

ⅰに目を通して復習しながら,ⅱに行こう。ⅲは,様々な計算ができるアプリの解説本だ。

プログラミングの基本の本

  1. 「小学校でプログラミングを教える先生のためのコンピュータサイエンスの基礎-隙間時間を使って1ヵ月でマスターする」(渡辺毅)(Amazonにリンク)
  2. 「教養としてのプログラミング的思考-今こそ必要な「問題を論理的に解く」技術」(草野 俊彦)(Amazonにリンク)
  3. 「独学で身につけるためのプログラミング学習術」(北村拓也)(Amazonにリンク)
  4. 「プリンシプル オブ プログラミング-3年目までに身につけたい 一生役立つ101の原理原則」(上田勲)(Amazonにリンク)

これは順番に目を通せばよさそうだ。ⅰを見ればわかるように,なんせ,来年から小学校でプログラミングを教えるそうで,さあ,焦ろう。

 

 

 

 

コンピューターにできること,AIにできること

AIにできること

続・ゲームとのコンタクト」で挙げた「ゲーム情報学概論」や「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」をしっかりと読み込んでAIを理解するためには,基礎的な数学とプログラミングの知識が必要なので,「AIにつながる数学とプログラミングの基本の本」を探してピックアップだけでもしておきたいと思っているが,その前に,人の知能とAIを,数学とプログラミングの観点から明解に論じている新井紀子さんの「コンピュータが仕事を奪う」を押えておいた方がいいと思い,触れておくことにする・

ところで,私が賛同する戸田山さんの,人間は「目的手段推論というちょっとした拡張機能つきのオシツオサレツ動物」であるというモデルにおいて,まず①「オシツオサレツ動物」がどのようなメカニズムによってどのように機能しているか自体まだほとんどわからないし,②ましてや「「目的手段推論というちょっとした拡張機能」はもっとわからない,ただ③「推論」(計算)そのものについては,数学・論理学で相当解明できており,数学とプログラミングはまさにその範囲の問題である。

これを極めて単純化して現状を理解すれば,コンピューター,AIによって,Ⅰ.①と②について,因果関係を解明してモデル化して「推論」(計算)するのは,今後できるともできないともわからないが,Ⅱ.今,ハードの性能向上と「推論」(計算)の工夫によって,これに帰納的に接近しつつある。ただ,「推論」(計算)における指数爆発は,いかんともしがたい壁であるが,これも分野によっては工夫できる可能性があるということになろうか。

「ゲーム理論」へ飛び火する

その中で新井さんが指摘する「どんな複雑なゲームにも,ナッシュ均衡点が必ず存在することが数学的に証明されています。そのため,少なからぬ経済理論の文献において,その不動点にプレーヤーが到達する(はず)であることを前提として話が進められています。しかし「情報科学の専門家の多くは,ナッシュ均衡の話を聞けば聞くほど,「それはおかしい」と思います。なぜなら,プレーヤーが均衡点を計算するには時間がかかるからです。それは,計算が速い人も遅い人もいる,という単純な話にとどまりません。仮に,均衡点を計算するのに指数時間かかるとしたら,地球滅亡の日まで計算し続けても,計算が終わらないかもしれないのですから。しかも,ナッシュ均衡の計算アルゴリズムはどれも指数爆発を伴うものばかりだったからです。数学的に「存在する」ということと「計算して,それを手に入れることができる」ということは,まったくの別物です。そして,実際に,ナッシュ均衡の計算困難性に関する情報科学者の直観は正しかったのです。2009年に,クリストス・パパディミトリウらは,ナッシュ均衡の計算は(2人ゲームの場合であっても)NP困難な計算問題だとみなしてよいことを証明しました。悪いことに,その近似を計算することも,同程度の計算困難さを持つため,「ナッシュ均衡に現実的な時間内にたどりつくことは,一般的には不可能」であることが示されたのです」。

「2009年に,クリストス・パパディミトリウらは,ナッシュ均衡の計算は(2人ゲームの場合であっても)NP困難な計算問題だとみなしてよいことを証明しました(8)。悪いことに,その近似を計算することも,同程度の計算困難さを持つため,「ナッシュ均衡に現実的な時間内にたどりつくことは,一般的には不可能」であることが示されたのです。「ナッシュ均衡は存在しても、多くの場合たどりつけない」ということは,経済学の根幹を揺るがす大問題であることを考えると,もっと注目されてよい気がします。」とさらりと書いているが,これは本当なのだろうか。

新井さんの本

新井さんは,「目的手段推論というちょっとした拡張機能つきのオシツオサレツ動物」という観点は持ち出さないが,実質的に,これに近い発想をしていると思う。

「コンピュータが仕事を奪う」を読む

ところで私は新井さんの次の4冊を購入している。

  1. 「コンピュータが仕事を奪う」(Amazonにリンク
  2. 「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」(Amazonにリンク
  3. 「人口知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」-第三次AIブームの到達点と限界」(Amazonにリンク
  4. 「数学は言葉」(Amazonにリンク

ⅰは,コンピューター,AIに出来る仕事には人はいらなくなるでしょう,ⅱは,人がコンピューターにできない仕事(身体的なものでなければ,意味を理解する仕事をする)といっても,どうも若い人に意味を理解する「学力」が失せつつあるようだ,Ⅲは,限界はあるが,すでにAIの「学力」は,若い人が意味を理解する普通の「学力」を上回っているようだ,さてこれからどうなるんでしょう,というようなところだろうか。ⅳは,文字通り,数学こそ「共通語」であるという観点からの数学のすすめだ。

この記事では,ⅰⅱを紹介しようと思うが,今日の時点(平成31年2月20日)の時点では,両書の詳細目次だけ掲載しておく。

 

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続・ゲームとのコンタクト

さらにゲームを知る

最近,私が関係しているゲーム制作受託会社において,著名なパブリッシャーの営業の先頭に立っていた人から,数回にわたって,ゲームに関わる話を聞く機会があった。せっかくの話を聞きっぱなしではまずいと思い,自分からこの分野の本を読んでみて,少し前に進んだ記事を作成してみようと思った。なお私は一度(2018年8月),「ゲームとのコンタクト」という入門編の記事を作成したことがある。

今回,読んでみたのは3冊の本である。

  • 「ゲームの面白さとは何だろうか」
  • 「ゲーム情報学概論」
  • 「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」

3冊の本の紹介

「ゲームの面白さとは何だろうか」を読む

「ゲームの面白さとは何だろうか」(著者:大森 貴秀,原田 隆史, 坂上 貴之 )(Amazonにリンク

出版社等による紹介 

「面白い! 」を学問してみよう。▼双六,チェス,トランプ,そしてデジタルゲームからオンラインゲームまで。古今東西,人々はゲームに魅了され続けてきた。

時にはやみつきになり,やめたくてもやめられないほどに夢中になる。なぜそんなに「面白い」のか?心理学の手法を駆使して,この難問に挑む。

私のコメントとメモランダム

コメント

第3章までは,ゲームの面白さを実験によって(しかも行動分析学の手法を前面に出して)解明しようとする試みだが,ある程度の成果は出たが,なかなかうまくいかないねというところだろうか?何となく常識で判断していることを,実験で明らかにすることはなかなかむつかしい。

第4章で,ゲームの負の部分としての「ゲーム依存」,面白さを展開する「ゲーミフィケーション」,そして将来の「雑多な展望」を論じる。

私は,「ゲーミフィケーション」(もともとはゲームプレイではない活動がなされている環境にゲーム的な要素を導入することで,あたかもゲームであるかのように人々がその活動に関わるようになるという,環境のデザインを指している用語)ということは知らなかったが,この分野にもは,なかなか面白そうな本があるし,ここで紹介されている「キリギリスの哲学-ゲームプレイと理想の人生」(著者:バーナード・スーツ)(Amazonにリンク)も是非一読してみたい。なお「ゲーミフィケーション」のついての和書は商売ネタにしようとする本が多いようだが,翻訳本は検討に値する。次の3冊を挙げておこう。ところで,引用して気が付いたのだが,ⅡとⅢは,同一著者だ。Ⅱは明るいが,Ⅲは読むのがいささかつらい内容だが。

  1. 「GAMIFY ゲーミファイ-エンゲージメントを高めるゲーミフィケーションの新しい未来」(著者:ブライアン・バーク)(Amazonにリンク
  2. 「幸せな未来は「ゲーム」が創る」(著者:ジェイン・マクゴニガル)(Amazonにリンク
  3. 「スーパーベターになろう!-ゲームの科学で作る「強く勇敢な自分」 」(著者:ジェイン マクゴニガル)(Amazonにリンク
メモランダム

ゲームの面白さには,システム,プレイ,エピソードの3つのレベルがある。

面白さの変数をどうやって図るのかの測定方法と測度には確立したものはなく,そこから研究を始めた・

ネット上の評価は圧倒的に「つまらない」とする主張が多いが,その原因の具体的指摘にはなっていない。ユーザビリティテストの結果は,ゲームの面白さを実験で測定することのむつかしさを痛感させた。プレイ中の行動観察でも成果は出ない。ゲーム選択実験は,ゲームの違いが明確過ぎても微妙でもうまくいかない。

気先行刺激-行動-後続刺激の三項随伴性の,強化反応休止に注目し,それが面白さの指標となるか実験を重ねた,

スロットゲーム(多段階抽選ゲーム)実機に手を加え,アタリハズレが反応時間に及ぼす影響に関係のない刺激は取り去り実験したが,メダルの払い出しは面白さの上で外せない要素なので惜しいハズレである「ニアミス効果」も含めて実験した。アタリ,ニアミス共に反応時間が遅くなった。

報酬量(払い出し金額)と頻度については,「高価値か珍しいものが魅力的である」という自然な結果が確認できた。

ゲームの面白さは単純なエピソードの面白さの加算ではなく,その対比や相乗効果によって生まれる複雑な心理現象である。

「ゲームの面白さとは何だろうか」の「詳細目次」は後記

 

「ゲーム情報学概論」を読む

「ゲーム情報学概論- ゲームを切り拓く人工知能」(著者:伊藤 毅志, 保木 邦仁 , 三宅 陽一郎 )(Amazonにリンク

出版社等による紹介 

ゲームは,古くから人工知能,認知科学の中心的な研究テーマとして扱われてきた。本書では,まずこの研究分野の基礎的な知識と歴史を押さえ,それを支える重要な理論について述べ,デジタルゲームの応用分野まで概観する。

★松原仁先生(公立はこだて未来大学)の書評★

ゲーム情報学というのはゲームを対象とした(広い意味での)情報処理の研究領域である。「ゲーム情報学」という名称ができたのは1999年に情報処理学会で研究会を立ち上げたときなので,まだ20年程度しか経っていない若い領域である。人工知能のスタートはチェスの研究から始まりチェスを対象として数多くの貴重な成果が得られマッカーシーは「チェスは人工知能のハエ」と言った。ハエを対象とした研究で遺伝学が格段に進歩したように人工知能もチェスを対象とした研究で各段に進歩したということである。しかし日本ではゲームは遊びと見なされてゲームを対象とした研究が疎外される時期が長く続いた。日本は人工知能の研究で世界に出遅れたのだが,その理由の一つにゲーム研究の軽視があったのである。

日本には将棋と囲碁(囲碁は中国発祥のゲームだが今のように発展したのは日本である)という貴重なゲームがあるので,それを対象とした研究をしない手はないということで遅ればせながらゲーム情報学という名称を冠した研究領域を立ち上げた(もっともらしい学問の名前をつけないと認められなかった)。それから20年でようやく体系化にこぎつけることができたのが本書である。伊藤氏が思考ゲームの認知科学的な側面を,保木氏が思考ゲームの情報科学的な側面を,そして三宅氏が最近日本でも盛んになってきたデジタルゲームへの応用を説明している。これまで日本でゲームを研究対象としたくても基本文献が存在しなかったのだが,これからは本書を推薦できる。ゲームの研究を進める上での基礎を本書でぜひ学んでほしい。たとえば意外と敷居が高いゲーム理論(たとえば「ナッシュ均衡」など)の基礎についても学ぶことができる。本書が出版されたことは今後のゲーム情報学の発展のためにとてもうれしいことである。ゲームのプログラムに興味をもったらぜひ最初にこの本を手に取ってほしい。

私のコメントとメモランダム

コメント 

非常にしっかりした構成,内容の本で,ゲームの制作,販売に関係する人,AIの最新動向に興味のある人には,次の「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」と並んで外せない本である。この本は,第1章でゲーム開発のこれまでの経緯,第2章でそのために必要なプログラミング,数学等の基礎知識,第3章で,ゲーム設計やゲームAIについて検討されている。門外漢には,第2章が読みにくいので,理解するための数学やプログラミングの基礎知識について,別途,取り上げることにしよう。

 因みに,「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」は,世界中の名人に勝ったアルファ碁に焦点を当てて解説しており,字面だけならは非常にわかりやすい。

メモランダム

作成中

「ゲーム情報学概論」の「詳細目次」は後記

 

「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」を読む

「最強囲碁AIアルファ碁解体新書(増補改訂版)-アルファ碁ゼロ対応 深層学習,モンテカルロ木探索,強化学習から見たその仕組み」(著者:大槻 知史,監修:三宅 陽一郎 )(Amazonにリンク

出版社等による紹介

【本書の概要】本書は学術論文(NatureやGoogleのサイト)などで提供されている難解なアルファ碁およびアルファ碁ゼロの仕組みについて,著者がとりまとめ,実際の囲碁の画面を見ながら,アルファ碁およびアルファ碁ゼロで利用されている深層学習や強化学習の仕組みについてわかりやすく解説した書籍です。特にデュアルネットワークはまったく新しい深層学習の手法で国内外の技術者の関心を集めています。本書を読むことで,最新AIの深層学習,強化学習の仕組みを知ることができ,

自身の研究開発の参考にできます。また著者の開発したDeltaGoを元に実際に囲碁AIを体験できます。

【増補改訂のポイント】Chapter1から5の部分は,よりわかりやすく内容を加筆修正しています。またChapter6はアルファ碁ゼロに対応しています。改訂にあたり,色数も2Cに変更。よりわかりやすいビジュアルになっています。

私のコメントとメモランダム

コメント

この本は,アルファ碁を支える技術として,ディープラーニング,強化学習,探索を3本の柱として取り上げ,それがどのようなものであり,どういう過程を経て能力を向上させて,世界中の名人に勝てるようになったかを,技術的に丁寧に説明しているようである。今の時点で,あれこれは言えないが,とにかく読みやすい本のつくりになっており,「ゲーム情報学概論」と交互に目を通しながらその内容を理解していくと,今のAIの最前線が理解できるのではという期待を持たせる本である。

メモランダム

作成中 

「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」の「詳細目次」は後記

 

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デジタル・トランスフォーメーションをめぐって

デジタル?トランスフォーメーション?

一昨日(2019年2月11日),たまたまボストン・コンサルティング・グループの「BCGが読む 経営の論点2019」(Amazonにリンク)に目を通したが,その「はじめに」の冒頭に「デジタルを中核に据え、経営を変える。バリューチェーンを再構築し、新たな成長機会を創る。デジタルによって既存事業を変革し、新規事業でイノベーションを生み出す。2019年は、そんな流れがますます加速する1年となるはずだ」とあり,「デジタル化がもたらす変化には,大きく3つの領域があると考えている。1つ目は,デジタル・トランスフォーメーション。顧客との新たな関係性を重視しながら,ものづくり,サプライチェーン,顧客接点,エコシステムなど,デジタルをテコとしてすべてを見直し,バリューチェーンを変革すること」(あとの二つは,「デジタル ベンチャー」と「組織における働き方の改革」)と続く。

私は,そのときまで「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉を見たことはあったかもしれないが,意識したことはなく,古臭い「デジタル」という言葉も「こんなふうに使われるんだ,出世したなあ」と思ったのである。

ところで,1月末の高校の同窓会でたまたま横に座った友人に「最近,ITやAIについて,何かやってみたいと思っている」と話したところ,その友人に「Project DS DXの最新状況と近未来 これからの日本の進むべき方向」というイベントに誘われたので,昨日,出席してみた。

そこでは,最初から最後まで,「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉が乱舞した。昨日の今日だからびっくりした。確かに「ITやAI」では少しピントがずれている。「デジタル」の方が,簡単でよさそうだ。

ところで,このイベントは,出席者は20数人という小さな会合で,ある損保グループでCDOを務める人の講演と質疑応答という内容だった。そのグループでは,これまでの「損保」では将来が見えないので,長年,シリコンバレーで,スタートアップを手掛けてきたその人がCDOに抜擢され,グループ全体を引っ張っているということだった。

具体的な内容は公開すべきではないと思うので,興味深かったことだけを二つ挙げよう。

興味深いこと

ひとつ目

ひとつ目は,デジタルのビジネスを行う上で重要なツールは,ひとつは,「デザイン思考」,もう一つは「アジャイル」だという指摘である。

「デザイン思考」は,私の視野に入っていたが,抽象的で本当に使えるかどうか分かりにくいねということで,1月に若いデザイナーの友人と「デザイン思考」の本を読んでみようと約束したので,早晩,読書会兼飲み会をしようと思っている。対象は,「クリエイティブ・マインドセット-想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法」(著者:デイヴィッド ケリー,トム ケリー)(Amazonにリンク)と,「デザイン思考が世界を変える」(著者:ティム・ブラウン)(Amazonにリンク)だ。「センスメイキング―本当に重要なものを見極める力」(著者:クリスチャン・マスビアウ)(Amazonにリンク)が「デザイン思考」を切り捨てているので,どんなもんだかと思っていた。実際に大学で試している「エンジニアのためのデザイン思考入門」(著者:東京工業大学エンジニアリングデザインプロジェクト)(Amazonにリンク)が肝になるか?

もう一つの「アジャイル」は,ソフト開発の手法だということで言葉だけ頭にあったが,「そうでない手法は?」と聞かれても「ウォーターフォール」は,言葉としては出てこなかった。

ふたつ目

興味深いことのふたつ目は,その損保グループでは,新しいデジタルのビジネスを行うために,数人ずつ,エンジニアとデザイナーを自前で雇用し,Googleの無償のAIを利用し,スピーディーな試行錯誤を繰り返して,短期間に欲しい「機能」を実装しているというのである。なるほど。

ただ,後ででてきた話であるが,経営陣のすべてがこのような試みを理解してくれるわけではないそうである(これは内緒)。

私は三つのことを考えた

余計なことだが,私が考えた三つのことを書いておこう。

ひとつ目

一つは,このようなデジタル・トランスフォーメーションの集いだとイケイケどんどんということになるのだが,ユーザーの立場からして,本当にそのようなものが必要なのだろうかと考えてしまう。知的好奇心は無限に膨れ上がるが,例えば健康についてどこまでデジタルが必要なのかは疑問である。これについては,上記書の「6 健康・予防領域で「稼ぐ」ために-成長領域なのに黒字化できない本当の理由」での指摘が参考になる。

ふたつ目

ふたつ目は,生活の「便利さ」なんてこれ以上どうでもいいのではないだろうかということである。特にIoTはサーバー攻撃の対象となって当面「便利」どころではないという気がするし,新しいAIの個々の様々な機能は目新しくて「便利」だとしても,総体として複雑なユーザーインターフェイスをもたらし,結局,ユーザーにストレスを与えるだけではないのか。

少し話はずれるが「ウォーターフォール」における「システム開発」が,発注者にも開発者にもトラブルをもたらすことが多かったが,「アジャイル」もその解消策にはならないようだ(上記書の「5 アジャイルの可能性と罠-組織のスピード、適応力、生産性向上にどう活用するか」参照)。

みっつ目

みっつ目は,上記したように,確かに私もデジタル・トランスフォーメーションについての「知的好奇心は無限に膨れ上がる」が,それは人の理性・推論が機能している部分である。人は,まちがいなく動物としての進化の過程にある「目的手段推論というちょっとした拡張機能つきのオシツオサレツ動物」であるから(「「こころ」と行動の基礎」参照),そのような動物としてデジタルをどう取り入れ利用するのかという観点がないと,複雑性の中で迷走しますよというのが私の「余計な」意見である。

デジタル・トランスフォーメーションの道遠く

ところで,「「BCGが読む 経営の論点2019」(Amazonにリンク)から上記の2点を指摘したが,この本はそのほかの内容も優れてる。コンサルというのは,うっとおしいと思っていたが,「デジタル・トランスフォーメーション」は,彼らの思考法とピントが合っているようだ。

ついでに「BCG デジタル経営改革 Digital Transformation」(Amazonにリンク)というムック仕様のkindle本も買ってみたが,これはどうだろうか。

むしろ今後勉強しなければならないのは,「デジタル・ビジネスモデル-次世代企業になるための6つの問い」(著者:ピーター・ウェイル)(Amazonにリンク)だろうか。

ところで,デジタル・トランスフォーメーションは,DXと略されることが多いようだが,DSとは何だろうか?略語も訳が分かりませんなあ。最後の疑問である。

 

 

老いに向かう日々

自分はまだ先だと思っていたが

先日,中高の同窓会があり,隣に座ったY君が,少し指の曲げ伸ばしに支障があるといって,お医者さんのM君に相談したところ「老化だ」と一蹴されたことに衝撃を受けていた。

私はこれまであまり老いということを意識していなかったが,もうしばらくすると65歳になるとなれば,「あまり若くはないわな」ぐらいは考えざるを得ない。いろいろな身体の機能が加齢とともにだんだんと衰えていく(あるいは急速に衰えていく)のは間違いないことだから,そろそろ老いや死に向き合う方が良さそうだ。

老・死とは何か

「生物学上では,死は単純明快です。人間の身体は,大部分が自己再生を繰り返しながら,長期間存続します。しかし,種の進化においては比較的短い一部分しか担っていません。種という生物学的視点で考えると,個体に求められる生存期間は,生殖期とその後の子育てに必要な期間を併せてせいぜい数年間だけです」(「初めて老人になるあなたへ」(著者:B・F・スキナー )(Amazonにリンク))。

「遺伝によって決まる将来に手を加える自然選択の力は,個体が年を取るにつれて弱まり,老化をもたらす突然変異が世代を経るにつれて蓄積するのを許容する」(「なぜ老いるのか,なぜ死ぬのか,進化論でわかる」(著者:ジョナサン・シルバータウン)(Amazonにリンク))。

そういえば,一昨年の年賀状に次のフレーズを引用した。

「「進化は,人間が日焼けしようと,皮膚がんになろうと,おかまいなしだ。なぜなら,日焼けも皮膚がんも,生殖能力に影響しないからだ…がんになるのが,たいてい子どもを持つ年齢を過ぎてからなのは,偶然ではない。進化は,子どもを持つ可能性が低い40歳代,50歳代の人間を守ることには,あまり関心がないのだ。」,「自然は善良かもしれないが,愚かでもなければ,情け深くもない。年寄りにエネルギーを注ぐような無駄はしないのである。したがって,体が新しい生命を世の中に送り出せなくなった後は,私たちは自分で自分を守るしかない」(「ジエンド・オブ・イルネス」(著者:デイビッド・B・エイガス)(Amazonにリンク))。

自分で自分を守る方法は,適切な「食動考休」の実行であることは誰でもわかる。このうち,もっとも重要なのは,動(運動)である。

まず運動によって肥満状態を解消し「一流の頭脳」を身につけよう

すこし古くなったが「健康・老化・寿命-人といのちの文化誌」(著者:黒木登志夫)(Amazonにリンク)という中公新書は,読みやすく分かりやすい好著だが,その構成は,寿命,老化の後に,肥満,糖尿病-恐るべき合併症,循環器疾患-血管が詰まる,破れる,がん-敵も身の内,感染症-終わりなき戦い,生活習慣-タバコ,食事,運動,健康診断(個人が責任をもつ生活習慣病/まずタバコをやめる/ほしいままに食事をすれば,諸病を生じ,命を失う/運動で脂肪を燃やす/健診を受けよう)と続く。

老いを迎えて,一番病・死に結び付くのは「肥満」であるということ,したがって,まだ可能であるのなら,とにかく肥満から脱することを最優先すべきである。運動では痩せないことを強調する人もいるが,食事制限だけで一時的に痩せても,それはかえって体を壊すだけだ。しかも,運動は,ストレスを取り払い,集中力,やる気,記憶力,創造力,学力を増強し,脳の老化に歯止めをかけて健康寿命を長くするというのだ(「一流の頭脳」(著者:アンダース・ハンセン)(Amazonにリンク))。そのメカニズム,証拠についての同書の説明は説得力がある。同書で薦められている運動は,最低1日30分のウォーキング,またはランニングを週に3回,45分以上行うことだけだ。さあ考えどころだ。私のお薦めは,スロージョギングだ。

老いと付き合う準備のための諸本

肥満状態の解消に取り組んでいるときは,そちらに力を取られるが,それと並行して,老いに入ったときに老いとの付き合う準備をすべきであろう。特に通常,仕事を離れることは大きな岐路になるから,それまでには一応の心構えを持つべきだろう。退職していきなり「きょうよう」(今日する用),「きょういく」(今日行くところ)がなくなることはつらい。

教養,教育のある人のための心構えとしては,上でも引用した「初めて老人になるあなたへ」(著者:B・F・スキナー )(Amazonにリンク)がお薦めだ。章題を挙げておくと,「老いを考える /老いに向き合う /感覚の衰えとつきあう /記憶力を補う /頭をしっかりと働かせる /やりたいことを見つける /快適に暮らす /人づきあいのしかた /心を穏やかに保つ /死を恐れる気持ち /老人をはじめて演じる /見事に演じきる」とだが,記述がユーモアと教養に満ちていて,勧めていることも,心遣いにあふれている。スキナーという人がわが国ではあまり例にない教養のある立派な人だということがよくわかるのだが,どうして行動分析学派は,ああも孤立し戦闘的なのだろうか。

何でも書いてあり,内容もそこそこ信頼できるいわばマニュアル本として,「東大が考える100歳までの人生設計-ヘルシーエイジング」(著者:東京大学高齢社会総合研究機構)(Amazonにリンク)がある。ただ「東大が考える」という題名を見て嫌になる人も多いだろう。私もそうだ(同じ著者で「東大がつくった高齢社会の教科書: 長寿時代の人生設計と社会創造」があるが,こちらは自然に受け入れられるが。)。

あと「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)-100年時代の人生戦略」(著者:リンダ グラットン)(Amazonにリンク)は,改めて紹介するまでもない,必読書だろう。上記の「東大がつくった高齢社会の教科書」とともに検討したいと思っている。

老いを少し突き放して検討している本として,既に「図解 老人の取扱説明書」を紹介している。

 

「情報」の最前線

この記事は,「問題解決と創造に向けて」「環境:自然・情報・人工物の続き」として「情報」全般について論述した固定記事を投稿したものです。固定記事の方は,逐次,内容を更新していますので,最新版は,そちらをご覧ください。

情報とサイバー空間

今世界は

なぜ「情報」が,「環境」の中の「自然」と「人工物」の間に入るのか,不思議な気がするかもしれないが,「自然」と「人工物」に秩序を与える存在が「情報」だと考えれば,おかしな話ではないだろう(後記「情報と秩序」)。

「情報」はこれまで,コミュニケーション論,メディア論,あるいは諜報論として,それなりに社会に大きく位置づけられてきたが,今,世界は,コンピューター技術に支えられたIT,AIによる「情報」流通の劇的増加,高速化によって,まさにハリケーンに急襲された状態だ。今後中長期的に,IT,AIが何をもたらすのか,実は誰にもわかりはしないのだ(「世界の現在と未来を知るために」)。

それはさておき,今「情報」は,私の4要素5領域の分類の中でも,人の仕事の「PC・IT,AI技法」として,企業の「経営」を支える重要なツールとして,政府の「政策」として,そして現在と未来の「世界」の動向を支配するもっとも重要な要素だ。それらを正確に理解するためには,「情報」の基礎(ここでは「情報とサイバー空間」と捉えよう。)を押さえることが不可欠だ。

「情報」の構成

導入

「情報とサイバー空間」は,「情報総論」,「情報法と判例」,「サイバー空間の病理と対応」に分けて論じよう。

全体を通じて参照すべきは,次の本である。

  • 「サイバー空間を支配する者-21世紀の国家・組織・個人の戦略」(著者:持永大, 村野正泰, 土屋大洋)(Amazonにリンク

なお「情報」全体への導入として,次の記事を作成しているので紹介しておく。

情報をめぐって

やり残したことども」の「続情報をめぐって」の部分

情報総論

<検討すべき何冊かの本>

  • 「情報と秩序-原子から経済学までを動かす根本原理を求めて」(著者:セザー ヒダルゴ)(Amazonにリンク
  • 「情報-第2版」(著者:山口 和紀)(Amazonにリンク
  • 「生命と機会をつなぐ知-基礎情報学入門」(著者:西垣通)(Amazonにリンク
  • 「インフォーメーション-情報技術の人類史」(著者:ジェイムズ グリック)(Amazonにリンク
  • 「IT全史-情報技術の250年を読む 」(著者:中野明)(Amazonにリンク

<この項目をより詳細に検討した記事>

<この項目に関連する記事>

情報法と判例

<これだけは押さえよう>

どうして複雑な世界の問題解決を試みる「問題解決に向けて」の「情報とサイバー空間」に「情報法と判例」という法律マターが入っているのかという疑問がありうるだろう。それは,「サイバー空間」は,いわばいい意味でも悪い意味でも「無法地帯」なので,これに関わるときに,一体,何がルールとされているのか,そのルールから逸脱するとどうなるかについて,法と実際例(判例)を見極めておくことが,「サイバー空間」で適切に行動するために重要だと考えるからである。そのためにお薦めするのは,次の2冊である。

  • 「情報法入門【第4版】-デジタルネットワークの法律 」(著者:小向 太郎)(Amazonにリンク
  • 「新・判例ハンドブック 情報法」(編者:宍戸 常寿)(Amazonにリンク

これらについては行動規範として,おおまかな目次が頭に入っていた方がいいので,掲記しておこう。

「情報法入門」

1 デジタル情報と法律(デジタル・ネットワークの衝撃/デジタル・ネットワークと法律/情報化関連政策) 2 ネットワーク関連事業者(通信と放送/ネットワーク上の媒介者/プラットフォーム事業者) 3 情報の取扱いと法的責任(取得・保有・提供/サイバー犯罪と青少年保護/知的財産の保護/個人情報保護)

「新・判例ハンドブック 情報法」

第1章 情報流通の自由(知る権利 /意見の表明 /報道取材の自由 /選挙過程)第2章 内容に着目した情報の規律(わいせつ /児童ポルノ /青少年保護 /名誉棄損-社会的評価の低下等 /名誉毀損-公益性・公共性 /名誉毀損-真実性・相当性 /名誉毀損-公正な論評 /名誉毀損-救済 /その他)第3章 プライバシー・個人情報(肖像権 /表現の自由とプライバシー /個人情報の保護 /労働関係 /インターネット)第4章 知的財産法による情報の規律(著作権-著作物・著作者 /著作権-著作者人格権 /著作権-著作権の内容 /著作権-権利制限規定 /著作権-侵害と救済 /著作権-著作権による保護を受けない情報 /著作権の保護対象 /パブリシティ権)第5章 情報流通の担い手(放送 /通信 /プロバイダ /情報流通の場)第6章 情報と経済活動(広告 /独占禁止法 /商標・不正競争 /電子商取引 /情報と金融)第7章 情報と行政過程(行政調査 /行政機関と個人情報 /情報公開 /行政による情報提供)第8章 情報と刑事法(情報(システム)の保護 /捜査と情報)第9章 情報と裁判過程(裁判の公開 /取材源の秘匿 /文書提出命令)

<検討すべき何冊かの本>

  • 「情報法入門【第4版】-デジタルネットワークの法律 」(著者:小向 太郎)(Amazonにリンク
  • 「新・判例ハンドブック 情報法」(編者:宍戸 常寿)(Amazonにリンク
  • 「データ戦略と法律-攻めのビジネスQ&A」(著者:中崎隆)(Amazonにリンク
  • 「インターネット訴訟」(著者:上村哲史 他)(Amazonにリンク

<この項目をより詳細に検討した記事>

<この項目に関連する記事>

サイバー空間の病理と対応

「サイバー攻撃」,「サイバー煽動・戦争」,「サイバーセキュリティ―」に分けて考察する。当面,ここが極めて重要な部分である。全体を通じて参考になるのはやはり次の本である。

  • 「サイバー空間を支配する者-21世紀の国家・組織・個人の戦略」(著者:持永大, 村野正泰, 土屋大洋)(Amazonにリンク

<検討すべき何冊かの本>

(サイバー攻撃)

  • 「サイバー攻撃-ネット世界の裏側で起きていること」(著者:中島明日香)(Amazonにリンク
  • 「炎上と口コミの経済学」(著者:山口真一)(Amazonにリンク
  • 「初心者のためのハッキング2019」(著者:Shekhar mishra)(Amazonにリンク
  • 「ハッキング・ラボのつくりかた-仮想環境におけるハッカー体験学習」(Amazonにリンク

(サイバー煽動・戦争)

  • 「フェイクニュース-新しい戦略的戦争兵器」(著者:一田和樹)(Amazonにリンク
  • 「情報戦争を生き抜く―武器としてのメディアリテラシー」(著者: 津田大介) (Amazonにリンク
  • 「情報参謀」(著者:小口 日出彦)(Amazonにリンク
  • 「情報隠蔽国家」(著者:青木理)(Amazonにリンク
  • 「誰もが嘘をついている-ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性」(著者:セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ)(Amazonにリンク

(サイバーセキュリティ)

  • 「サイバーセキュリティ」(著者:谷脇 康彦)(Amazonにリンク
  • 「サイバーセキュリティ読本【完全版】-ネットで破滅しないためのサバイバルガイド」(著者:一田 和樹)(Amazonにリンク
  • 「決定版 サイバーセキュリティー新たな脅威と防衛策」(著者:ブループラネットワークス)(Amazonにリンク

 

PC・IT・AI技法

  この記事は,これまでに作成した記事を利用した部分が多く含まれています。「人:健康と行動」,「行動各論」,「仕事」の,<この項目をより詳細に検討した記事>です。

PC・IT・AI技法をめぐる現状

この項目では,PC・IT・AI技法を,実践的な「仕事に役立つPC・IT・AI技法」と,これを支える「PC・IT・AIの理論と技術」にわけて検討する。

ただこの分野は,10数年前から「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーが加わり,すべてがますます複雑化し,その変化は劇的に加速されつつある。われわれは,この「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーによる「ハリケーン」に見舞われ,この分野は,制御する対象どころか,その現況・将来を把握・予測するのさえ,困難になりつつある。このような現実がどう動くのか,内外の新しい本を「世界と現在の未来を知るために」において検討してみた。

その中で,一方で,再現ない開発と発展の夢物語を語って自分の利益につなげようとする輩,一方で,サイバー空間でこれを悪用しやはり自分の利益につなげようとする輩が多発し,普通の市民としてこれらに立ち向かうのはなかなか骨が折れる。

仕事に役立つPC・IT・AI技法

今の時代は誰でも,自分の生活や仕事に,PC(スマホを含む)・IT・AIの技法を活かすことは大切なことだ。しかし現実は上記したとおりでなかなか大変だ。特にAIは,われわれの仕事を奪うとさえいわれている。以下,私の仕事の限りで,役に立つPC・IT・AI技法を簡単に検討する。

AIする前に

AIが,コンピュータやインターネットの技術的進展とデータ量の増加を背景に,従前の機械学習(プログラミング)にディープラーニングの手法を組み込んだ情報処理技術の最前線だとすれば,AIに心をとらわれる前に,今あるコンピュータ,インターネット,プログラミングに基づくIT技法を使いこなすことが,弁護士がAIにつき進むための前提である。「AIする」(あいする)はギャグです。

重要な法律関連情報の収集

弁護士が業務でする情報処理のうち,当面,もっとも重要なのは,法律関係情報の収集分析である。これについては,何種類かの,判例,法令,法律雑誌の検索システムが提供されている。私は,「判例秘書」を使っている。

通常,判例検索システムには掲載している雑誌に含まれる以外の論文等は掲載されていないので,補足のため「法律判例文献情報」を使っている。ただ,これは単に文献の名称や所在が分かるだけで,文献がオンラインで見れるわけではない。法律のきちんとしたコンメンタールが,ネットで検索等で利用できれば便利だろうが,今のところ限られたものしかないようである。私は,パソコン版の「注釈民法」は利用しているが,民法改正でどうなることやら。

ところでアメリカのレクシスネクシスが開発中の「Legal Advance Reserch」のデモを見たことがあるが,州によって法律が違うこともあって,法令,裁判例,陪審例,論文,関連事実等,膨大になる事実を収集し,一気に検索,分析,可視化できるデータベースとのことである。これまでアメリカの弁護士が膨大な時間を費やしていたリサーチの作業時間が一気に減り,弁護士のタイムチャージの減少(いや,弁護士の仕事の生産性の向上,効率化)とクライアントの経費削減が実現しつつあるようである。ついでにいうと,同じくアメリカの弁護士が膨大な時間を費やしてすることで依頼者の大きな負担になっているe-ディスカバリーも,AI導入で,これもタイムチャージの大幅な減少がはかられつつあるとのことである。我が国において「リーガルテック」とか「レガテック」とかをいう人がいるが,やがて多くの工夫に支えられてその方向に行くとは思うが,現状では単なる「商売」以上とは思えない。

判例,法令,文献検索以外の技法

そこで前項の重要な法律関連情報(判例,法令,文献等)の収集以外で,今行われている弁護士業務を支えるIT技法を集めている本「法律家のためのITマニュアル【新訂版】」,「法律家のためのスマートフォン活用術」を紹介する。いずれも私が昔所属していた「日本弁護士会連合会 弁護士業務改革委員会」の編著だ。

そのほかに,税理士さんがIT技法を駆使している「ひとり税理士のIT仕事術」(著者:税理士 井ノ上 陽一)も役立ちそうなので紹介しておく。

それともともと裁判所がワープロ「一太郎」を使っていたことから,私もワープロというより清書ソフトとして「一太郎」を使っていた。Wordには不慣れなので,いろいろと勝手なことをされて「頭に血が上る」ことが多い。そこで「今すぐ使えるかんたんmini Wordで困ったときの解決&便利技」(Amazonにリンク)と,「Wordのムカムカ!が一瞬でなくなる使い方 ~文章・資料作成のストレスを最小限に!」(著者:四禮静子)(Amazonにリンク)を紹介しておく。「頭に血が上る」のは,私だけではない。

ここで紹介した5冊については「仕事に役立つIT実務書」として「詳細目次」を作成したので,それを見て必要な項目を参照すればいいだろう・

PC・IT・AIの理論と技術を学ぶ

私は学んだことがない

PC・IT・AIについてきちんと理解し,これを当面の事務処理だけでなく,今後の生活や仕事全般に生かしていくためには,その理論と現在の技術をきちんと押さえる必要がある(私で言えば平成30年6月にゲーム制作受託会社の社外監査役に就任したので,ゲーム関係の技法もフォローしたい。)。もちろん,上記のとおり現在のサイバー空間は大変な問題を抱えているが,それに的確に向かい合うためにも,理論と技術をマスターすることは大切だ。そうでないと単なる「怖がり」か「物好き」に終わってしまう。こういう問題は「情報科学」として学ぶのだろうが,これは私の若いころには(多分)なかったか,少なくても一般的ではなかった分野なので,私には,丸々,穴が空いている。普段からそういうプレッシャーがあるからか,折に触れ,この分野の主としてkindle本を購入してきた。今の時点でこれをまとめ,今後必要となる論理と技術を,適宜取り出せるようにしておきたい。

理論と技術への架橋

ただ「理論と技術」へ行く前に「情報総論」と,情報をめぐるルールである「情報法と判例」は別途検討しておいた方がいいし,サイバー空間における「サイバー攻撃とサイバー煽動」も急いで検討すべきであるが,これらは「環境:自然・情報・人工物]の「情報とサイバー空間」に位置付けることとし,ここでは,「コンピュータ」,「論理・アルゴリズム・プログラミング」,「インターネット・Web」,「AI」に分けて紹介するが,暫定的なものである。取り上げた本も積読のものが多いので,その帰属も不適当だったり,重複も多いように思う。

なお「IT・AI本がたまっていく」という記事を作成したことがある。

ただこの項目を設けることによって,「PC・IT・AI」の全体像が浮かび上がってきて,意味あることだと思う。今後,重要な本から,追々,「…を読む」にしていこう。

なお「法と弁護士業務」に関連する項目として「AIと法」「IT.AI法務」が掲載されている。

コンピュータ

論理・アルゴリズム・プログラミング

インターネット・Web

 AI

社会問題を解決する方法序説

社会問題とは

社会問題とは,個人,企業,政府が,相互に関係,依存している複雑なシステム上の問題といえるだろう(複数の政府が関係すれば,国際(的な社会)問題である。)。

私たちは,社会問題や国際問題として,貧困,エネルギー資源の浪費と生態系の破壊,地球温暖化,戦争等々というような問題を挙げるが,このような問題を解決するには,問題を解きほぐし,十分な準備と関係する組織の強力な協調行動が必要であり,簡単ではない(これらについては,当面,「地球のなおし方-限界を超えた環境を危機から引き戻す知恵」(著者:デニス・L・メドウズ,ドネラ・H・メドウズ)(Amazonにリンク)や, 「2052」(著者:ヨルゲン・ランダース)(Amazonにリンク)等を参照されたい)。

それはそれとして,もっと身の周りに,自分が一歩踏み出すことで解決すべき社会問題はないのであろうか。もちろんたくさんある。

その際,重要なのは,「政治が変われば社会はよくなる」などと考えないことだろう。もちろん,国内の中央政府,地方政府は,ルールを強制できる権力を有し,人と財を消費,分配する政策実行主体だから,多くの公共的な社会問題について,関与する領域や役割も多いが,しかしシステムの一つの要素にすぎず,その行動,ルールのどこをどのように変え,他の要素のどこをどのように変えるかという「システム思考」によって,政府の政策全体を検証,変革しなければ問題解決にはつながらず,「政治」が変わっただけでどうこうなるわけではない。だから私たちが社会問題に関わるとしたら,政府があまり関係しない問題か,政府が「謙虚に」問題解決にトライしている社会問題がよいだろう(後者が存在するかどうか?)。

そこで自分が一歩踏み出すきっかけとなるような3冊の本を紹介しておく。

3冊の本

①「社会が変わるマーケティング-民間企業の知恵を公共サービスに活かす」(著者: フィリップ・コトラー,ナンシー・リー)(Amazonにリンク

②「社会変革のためのシステム思考実践ガイド-共に解決策を見出し、コレクティブ・インパクトを創造する」(著者:デイヴィッド・ピーター・ストロー)(Amazonにリンク

③「社会的インパクトとは何か-社会変革のための投資・評価・事業戦略ガイド」(著者:マーク・J・エプスタイン,クリスティ・ユーザス)(Amazonにリンク

いきなり「社会問題」といってもとっつきにくいので,①のコトラーが「民間企業の知恵(マーケティング)を公共サービスに活かす」という観点から,様々な事例を紹介している。入口として優れている。

②は「システム思考」を基に,本格的に「社会問題」を解決する手法を論じたものであり,一番の基本書であろう。

③は,社会問題の解決を「社会変革のための投資・評価・事業戦略ガイド」という観点からきっちりと捉えようとしたもので,この分野の専門書といえよう。

詳細目次等が作成できていないので,追って掲載することとし,ここでは書名のみを紹介した。

 

 

「こころ」と行動の基礎

「こころ」と行動

この世界の様々な複雑なシステムは,おおよそ,人の行動(言語行動を含む)とモノの動き,及びその相互作用から成り立っていると捉えることができよう。

世界の様々な複雑なシステムを理解するためには,人の行動について全体像を把握し,人の行動と「こころ」との関係についてもあまり的外れでない理解をする必要がある。そして「こころ」と行動及びモノの動き及びその相互作用を捉えることによって,様々なシステムのどこをどのように動かせば問題解決につながるかという道筋も見えてくるだろう。

そこで「「こころ」と行動の基礎」という項目を設けたが,この問題に深入りすると,それこそ一生出てこれなくなるので,ここでは,「基礎」としてさほど的外れでないであろう概観ということで済ますことにする。

そのために4冊の本を紹介しよう。

最初はこれまでにも紹介し,私も折に触れて目を通しているがいまだに頭に入らない「哲学入門」(著者:戸田山和久)だ(本の森での紹介1本の森での紹介2)。これで,「「こころ」と行動の基礎」についての端的な理解を紹介しよう。

次に,「こころ」の問題を,最新科学を踏まえて説明している「「こころ」はいかにして生まれるのか」(著者:櫻井 武)をみよう。この本は,行動理解につなげる意識がないと,いささか散漫に思える内容だが,行動理解を念頭に置くとなかなか素晴らしい。

更にこれまで一貫して行動をだけを人間理解の焦点にしてきた行動分析学から,「行動の基礎」(著者:小野 浩一)を取り上げ,前2書に照らして,現時点で行動分析学の理解を検証したいと思っている。

そして最後に,「〔エッセンシャル版〕行動経済学」(著者:ミシェル バデリ)を取り上げる。「行動経済学」の本は,ともすると,エピソード集になりがちで,いいささか使いにくい。この本は,入門書であろうが,人間の行動とのからみが,要領よくまとめられていてお薦めだ。

「哲学入門」による「「こころ」と行動の基礎」

人間の行動は,まず第一にオシツオサレツ動物と同じ仕方で決定される。いくつかの傾向性があり,それがニーズと知覚情報によってアフォードされるという仕方だ。これがベースになる。

ところが,人間はこうした傾向性を調整する別の仕方を獲得した。その結果,目的手段推論の結果によって,ベースにある傾向性をリセットできるようになった。だとするなら,目的手段推論を入力(知覚・欲求)と出力(行動)をつねに媒介しているものと捉えるのはよろしくない。いつでも立ち止まって,いまやろうとしていることがベストなのかを考えていたら行動の時機を逸してしまう。ときどき問題が重要なとき,たっぷり時間があるとき,行為を止めて,私たちは目的手段推論を作動させる。で,その結果に応じていまの傾向性をリセットして,新しい傾向性にあとをゆだねる。

人間はオシツオサレツ動物とは質の異なったまったく別次元の存在なのではない。目的手段推論というちょっとした拡張機能つきのオシツオサレツ動物なのである。ただ,この拡張機能はバカにできない。「人間らしさ」のルーツがこの拡張機能にあるからだ

「「こころ」はいかにして生まれるのか」

「「こころ」はいかにして生まれるのか-最新脳科学で解き明かす「情動」」(著者:櫻井 武)(Amazonにリンク)

まとめの紹介

この本はたまたま,原著に「まとめ」があるので,取り急ぎ,それだけ紹介しておこう。末尾に詳細目次も掲載した。

第1章「脳の情報処理システム」のまとめ

1 脳において大脳皮質は情報量の大きな情報を速く処理するために,「後づけ」で増築された演算装置である。

2 大脳皮質は感覚情報を要素ごとに分解してデジタル的に処理し,それを脳内で再構成している。

3 人の脳は前頭前野がとくに発達しており,感覚情報の統合的理解,認知,未来予測などに関与している。

4 ヒトに備わった,他者の立場に立って考え「共感」することができるという能力は,「こころ」を考えるうえで欠かせない機能である。

第2章「「こころ」と情動」のまとめ

1 情動とは感情の客観的・科学的な評価である。

2 情動は「情動体験」(≒感情)と「情動表出」(身体反応)に分けられ,後者を観察することにより客観的に記載できる。

3 情動は脳がつくりだすが,その結果,引き起こされた情動表出は脳にフィードバック情報を送り,情動を修飾する。

第3章「情動をあやつり,表現する脳」のまとめ

1 情動は大脳辺縁系でつくられる。

2 大脳辺縁系は記憶にも深く関わっており,海馬は陳述記憶の生成に,扁桃体は情動記憶の生成に重要である。

3 感覚は大脳皮質と大脳辺縁系で並列処理され,前者は感覚情報の物理的側面を,後者は情動的側面を受けもつ。

第4章「情動を見る・測る」のまとめ

1 情動の高まりは表情をふくむ行動,交感神経の興奮,副腎皮質ホルモンの上昇に表れる。

2 情動は行動,自律神経系,内分泌系の測定によって観察できる。

3 脳機能画像解析により扁桃体の興奮を測定することも情動を測定する一手段である。

4 動物を用いて扁桃体や視床下部室傍核の活動を調べることにより,情動を推し量ることができる。

第5章「海馬と扁桃体」のまとめ

1 海馬は新たな陳述記憶の生成に不可欠である。

2 陳述記憶は時間がたつにつれて大脳皮質,とくに側頭葉皮質に移行する。

3 扁桃体は情動記憶を受けもつ。

4 ストレスホルモンは陳述記憶を弱め,情動記憶を強くする。

第6章「おそるべき報酬系」のまとめ

1 ドーパミンが側坐核に放出されると,その原因になった行動をやめられなくなる。

2 ドーパミンは腹側被蓋野に存在するドーパミン作動性ニューロンから供給される。

3 前頭前野は不確実な報酬を大きな報酬ととらえ,ドーパミンの放出を促す。

4 予測した報酬の大きさと,実際に得られた報酬の差(報酬予測誤差)が,前頭前野が感じる報酬の大きさとなる。

第7章「「こころ」を動かす物質とホルモン」のまとめ

1 脳内には「こころ」の機能に強く影響をおよぼすたくさんの種類の脳内物質が存在する。

2 血液中をめぐる多くのホルモンも,脳機能を強く変容させる。

終 章 「こころ」とは何か

ここの「まとめ」は原著にはない。

・私たちは前頭前野の機能により,自らがおかれている環境を理解し,自分の身体の状態を認知しながら生活している。前頭前野は意識や認知,論理的思考,内省,倫理的判断,未来の予測などに深くかかわっており,また,思考に用いる作業記憶もこの部分に存在する機能である。作業記憶の内容は,現時点で私たちが認知していることである。私たちの「自我」や「意識」はこの部分に存在すると言っても間違いではない。しかしながら,私たち自身の行動の選択に,前頭前野がおよぼしている影響は,実は限定的なものでしかない。もっと強く行動をドライブしているのは,根源的には脳の深部の構造であり,無意識の過程なのである。私たちは自分の行動をすべて自らの意志でコントロールしていると錯覚しがちであるが,私たちの行動を意識がコントロールしている部分は,ごく一部である。

・ヒトや動物は外界の状況を,感覚系を介してキャッチしている。その情報は,視床を介して扁桃体にやってくる。その人が恐怖を感じる対象や状況を認知したときに,扁桃体は強く興奮する。扁桃体が中心核を介して視床下部や脳幹に情報を送ると,自律神経や内分泌系が変動するとともに,脳内でもモノアミン系ニューロン群が大きく活動を変える。とくに青斑核ノルアドレナリンニューロンの活動が増え,扁桃体に作用することにより,恐怖行動は強化される…一方で,喜びを感じているときには,報酬系の活動が起こっている。報酬をゲットできる,あるいはゲットできるかもしれないと前頭前野が認知することにより,腹側被蓋核のドーパミン作動性ニューロンが活動することが,喜びの「こころ」をつくる。ドーパミンは側坐核に働き,喜びを生むに至った行動を強化するとともに,扁桃体にも情報を送り,筋肉の緊張を緩める方向に働く。黒質のドーパミン作動性ニューロンも働いて筋肉はよりスムーズに動くようになり,身体全体の動きは大きくなる。

「行動の基礎」

「行動の基礎-豊かな人間理解のために」(著者:小野 浩一)(Amazonにリンク)

これは当面,末尾に詳細目次だけを掲載しておく。

「〔エッセンシャル版〕行動経済学」

「〔エッセンシャル版〕行動経済学」(著者:ミシェル バデリ)(Amazonにリンク)

これは当面,末尾に詳細目次だけを掲載しておく。

詳細目次に続く

続きを読む “「こころ」と行動の基礎”

世界の現在と未来を知るために

世界は今どうなっているのか

人の行動と,自然と,人工物が,相互に働き掛け反応して織りなす「世界」は,もともと巨大・複雑なシステムであり,最近になってシステム思考や,ビッグヒストリーという試みが何とかこれを解明しようとしていたと言えるだろう。従前の「経済学」,「社会学」,「歴史学」等の諸学は,隔靴掻痒の感を免れなかった。

ところが,10数年前から「世界」の要素として「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーが加わり,「世界」はますます複雑化し,その変化は劇的に加速されつつある。

私たちの生活や仕事,企業や政府の国内や国際的な活動,環境変動等は,いずれも今,このような複雑化・加速する「世界」の一場面として。相互に密接に関係しつつ,「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーによる「ハリケーン」に見舞われており,「世界」は,制御する対象どころか,その現況・将来を把握・予測するのさえ,困難になりつつある。

さらに言えば,そのような「世界」に古くからの「世界」が混在し,問題の解決はますます困難になりつつある。

しかしこのような中で,なんとか「サイバー空間」とテクノロジーを視野に入れつつ,「世界」を解析し問題解決につなげようとする試みもなされている。

ここではそのような試みから最近刊行されたKindle本6書を紹介しておく。紹介する6書は,①「巨大システム 失敗の本質」,②「サイバー空間を支配する者」,③「拡張の世紀」,④「NEW POWER」,⑤「遅刻してくれて,ありがとう(上) (下)」,⑥「デジタル・エイプ」であり,①は導入,②③は,サイバー空間の闇と光り,④はサイバー空間を元にしたビジネス展望,⑤⑥は,一歩退いた知性的な分析といえるだろう。視点の置き方によって記述内容・分析に違いはあるが,いずれもその内容は信用でき,熟読するに足りる本だと思う。詳細は今後必要に応じて紹介することとし,ここでは書名と私のごく簡単なコメントと出版社等による紹介を載せておく。

「世界」などという大風呂敷は?と敬遠する向きもあるかもしれないが,だれでも多かれ少なかれ「世界」の一部に向き合っているわけであり,今後の個人の仕事,企業経営等の方向性を見定めるのに大いに役立つだろう。

紹介する6書

「巨大システム 失敗の本質」

「巨大システム 失敗の本質~「組織の壊滅的失敗」を防ぐたった一つの方法」(著者: クリス・クリアフィールド,アンドラーシュ・ティルシック)(Amazonにリンク

私のコメント

複雑で密なシステムは統御困難であるということを,実例を挙げてわかりやすく説明している。我が国の失敗学の「最新版」というところだろうか。世界が複雑であるということを理解する入門に良い。

出版社等による紹介

・21世紀を生きるためには,電力網から浄水場,交通システム,通信ネットワーク,医療制度,法律まで,私たちの暮らしに重大な影響をおよぼす無数のシステムに頼るしかない。だがときにシステムは期待を裏切ることがある。これらの失敗や,メキシコ湾原油流出事故,福島の原子力災害,世界金融危機などの大規模なメルトダウン(組織の壊滅的失敗)でさえ,まったく違う問題に端を発したように見えて,じつはその根本原因は驚くほどよく似ている。

・複雑で結合されたシステムを運営するには,直感や自信を称え,よい知らせを聞きたがり,自分と見た目や考え方の似た人たちと過ごすことを好むといった「人間の本能や直感」に“逆らう”ことが,有効な対策を導き,問題解決のアイデアをもたらすことを示す。

 

「サイバー空間を支配する者」

「サイバー空間を支配する者~21世紀の国家・組織・個人の戦略」(著者:持永大, 村野正泰, 土屋大洋)(Amazonにリンク

私のコメント

下記の出版社等による紹介にもあるように「実態が不透明なサイバー空間を定量・定性的に包括的にとらえ,サイバー空間の行方を決める支配的な要素」を考察した本として,今の時点では,出色の出来だと思う。3人の著者によるからだろうか,多少重複もあるが,かえってわかりやすいか。「国家」(政府)の果たすべき役割も考えようとしているのだろうが,そもそも「国家」(政府)とは何か,この問題においてどのような役割を果たすことができるのかは,一筋縄ではいかない。

出版社等による紹介

・サイバー攻撃,スパイ活動,情報操作,国家による機密・個人情報奪取,フェイクニュース,そしてグーグルを筆頭とするGAFAに象徴される巨大IT企業の台頭――。われわれの日常生活や世界の出来事はほとんどがサイバー空間がらみになっています。サイバー空間はいまや国家戦略,国家運営から産業・企業活動,個人の生活にまで,従来では考えられなかったレベルで大きな影響を及ぼしつつあります。

・サイバー空間では,国家も企業も,集団も,個人もプレイヤーとなる。その影響力はそれぞれの地理的位置,物理的な規模とは一致しない。そして,経済やビジネスでもデータがパワーをもつ領域が広がっていますが,その規模はGDPでは測れません。

・本書は,これほど重要になっているのに,実態が不透明なサイバー空間を定量・定性的に初めて包括的にとらえ,サイバー空間の行方を決める支配的な要素を突き止めるものです。果たして,そこから見えてくるものは何か? 日本はサイバー空間で存在感を発揮できるのか?

 

「拡張の世紀」

「拡張の世紀~テクノロジーによる破壊と創造」(著者:ブレット・キング)(Amazonにリンク

私のコメント

今後,「サイバー空間」とテクノロジーがどのような,モノ,機能をもたらし,「世界」を「拡張」するのか。網羅的に検討している。著者」は,「金融テクノロジー分野におけるイノベーション,顧客チャネル戦略の専門家と紹介されており,内容も消して軽薄ではなく,手堅い。ただこれが「サイバー空間を支配する者」が描く現実の中で,どうなるかが問題である。また私は望まない「拡張」も多い。

出版社等による紹介

ヒト型ロボット,寿命延長,ゲノム編集,ブロックチェーン,空飛ぶクルマ,3Dプリント,AR・VR,etc。こうしたテクノロジーは世の中をどう変えていくのか。ヒトはどう変わるのか? 働き方,医療,交通,金融,教育,都市は?Tech界のグルが描き出す衝撃の未来予測!10年後の世界がここにある!

 

「NEW  POWER」

「NEW POWER~これからの世界の「新しい力」を手に入れろ」(著者: ジェレミー・ハイマンズ,ヘンリー・ティムズ)(Amazonにリンク

私のコメント

「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーが開くビジネス(NEW POWER)とこれまでのビジネス(OLD POWER)の差異と対立を,その価値観,モデルにより4領域に分け,詳細に,かつ分かりやすく検討していく姿勢に好感が持てる。ビジネスのヒントが満載である。

出版社等による紹介

いまや1,2年前とくらべただけでも世界が激変し,「個人でできること」の幅が大きく広がっている。そんないま「身につけるべきスキル」「意味のなくなったスキル」とは?いつでも誰とでも「つながれる」環境の中,いま何が起こっていて,あなたは一体何をすべきなのか?

 

「遅刻してくれて,ありがとう(上) (下)」

「遅刻してくれて,ありがとう~常識が通じない時代の生き方(上) (下)」(著者:トーマス・フリードマン)(Amazonにリンク

私のコメント

著者は,ピュリツァー賞を3度受賞した世界的ジャーナリストであり,これまでの4書がある方向を「煮詰める」傾向があるのに対し,一時停止して,「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーが,世界の政治,企業,生活にもたらすものを考えようという知性に満ちた本である。当たり前のことだが,「NEW  POWER」や「拡張の世紀」の「ハリケーン」の中でも,人類が延々と行ってきた「生活と行動」がある。著者は,「ハリケーンの目」に入ろう,自分史を振りかえって生活の場のコミュニティがその支えだとする。

そええは分かるがわが国ではどうか。わが国では,少なくても都市では地域のコミュニティは成立しがたいので,「ハリケーン」の「学びの場」でも作ってみようかという気になっている。

出版社等による紹介

・「何かとてつもないこと」が起きている――社会のめまぐるしい変化を前に,多くの人がそう実感している。だが,飛躍的な変化が不連続に高速で起きると,理解が追いつかず,現実に打ちのめされた気分にもなる。何より私たちは,スマホ登場以来,ツイートしたり写真を撮ったりに忙しく,「考える」時間すら失っている。

そう,いまこそ「思考のための一時停止」が必要だ。

・「平均的で普通な」人生を送ることが難しくなった「今」という時代を,どう解釈したらいいのか?変化によるダメージを最小限に抑え,革新的技術に対応するにはどうしたらいいのか?

 

「デジタル・エイプ」

「デジタル・エイプ~テクノロジーは人間をこう変えていく」(著者:ナイジェル シャドボルト,ロジャー ハンプソン)(Amazonにリンク

私のコメント

著者の一人,ナイジェル シャドボルトは,ティム・バーナーズ=リーと共同で「www」の仕組みを開発。英国を代表するコンピューター科学者で、最先端の人工知能・Webサイエンス研究者の一人と紹介されている。「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーを,進化,人類の知的発展の中に,科学的・学問的に位置付けており,熟読するに足りる。しかし,イギリスの本には,ウイットに富んだ知性のある面白いものが多いなあ。

出版社等による紹介

「私たちが新たな道具をつくったのではない。新たな道具が私たちをつくり出したのだ」

・デジタル機器によって,人間はどう変わっていくのか? AI,ロボット,スマホ,ウェブ,生物学,哲学,歴史,経済学……オックスフォード大学教授を務める英国トップクラスの人工知能研究者らが,膨大な知見から描き出す!

生まれたときから検索ツールに囲まれている世代にとって必要なスキルは,それ以前の世代とはまったく違う。

・これまで最重要だとされてきた「記憶力」の意味は以前より薄くなり,IT機器が「外部の脳」のような役割を果たす。人類の重要なサバイバルスキルのひとつだった「方向感覚」も備わっていない人間が増えていく。そのような「デジタルなサル(デジタル・エイプ)」が多数派となり,テクノロジーがいっそう進化した時代。

そこには一体,どんな「問題」があり,どんな「可能性」が存在するのか?

「最高峰の知性」が予測する,人類の未来。

「こころ」と行動

上記したように,今,「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーの新しい「世界」に古くからの「世界」が混在し,問題をますます複雑化している。新しい世界を見極めるのと同時並行的に,古くからの「世界」を支える人の「こころ」と行動を理解することが改めて重要だと思う(「「こころ」と行動の基礎」を参照)。