今後このWebをどのように展開していくのか

ここ両日の本の紹介の目的は?

自分の行動改革

昨日,今日と3冊の本を紹介しているが,これは特に重要な本というわけではない。ここしばらくの間,「問題解決と創造を学ぶ」と,その下位メニューである「問題解決と創造の方法」,「個人:生活・仕事・文化」に手を入れており,今後どのような本を読み,どのような記事を作成していくのかが,おおよそ,固まってきたので,その方向に沿っている,手軽な本を紹介したまでだ。

今一番読み込んでいるのは,まず自分の行動改革を果たすべく,「習慣」に関わる何冊かの本だ。これらは,本や,その考え方の紹介と言うよりも,まず,私自身が悪い習慣を止め,良い習慣を身につけるという実践の問題である。ただあまり自分を前面に出すと,相当格好悪い事態も予想されるので,ほどほどにしよう。「「やり抜く人の9つの習慣 」を読む」は,分かりやすいその手掛かりというところだ。

「スロージョギングで人生が変わる」を読む」は,自分の行動改革の運動面の手引書だ,もちろん,継続が問題だ。

「ルールを守る心」を読む

「ルールを守る心」を読む」は,しばらく手をつけていない「法とルールの基礎理論」に落とし込む気で購入し,気になっていたのでざっと目を通してみたが,このままでは使えないなと思い,備忘のために紹介だけしておいた。

今後の展開

今後,自分の行動改革論がまとまれば,次は,複雑な問題の「問題解決」の手法であるシステム思考を押さえ,何より40年後の世界を予測,記述する「2052」(著者:ヨルゲン ランダース)と,「学習する組織」(著者:ピーター・センゲ)をマスターしたい。前者は,最も私が興味を引かれる分野の本であるのに,これまで気にもとめなかったのが「不思議」だ。

そして自分の行動改革の問題,複雑な世界の問題,企業の問題から目を転じ,法の基礎理論や,実務的な法律問題に取り組んで行くことにする。

なお1週間ほど仕事の書面の起案に追われるので,記事作成はその後になろう。

 

「ルールを守る心」を読む

ルールを守る心~ 逸脱と迷惑の社会心理学 ~(Amazonにリンク

著者:北折充隆

出版社等による内容の紹介の要約

私たちは,生まれてから死ぬまで,ずっとルールに従って生きています。しかしながら,ルールを守る,破るとはどういうことなのか,社会規範から逸脱するとはどういうことなのか,迷惑行為を抑止するためにはどうしたらよいのか……といったことについては突き詰めるとよく分かっていないのが実情ではないでしょうか。本書では,そのような問題について社会心理学の立場から長年研究を重ねてきた著者が,概念の混乱を整理しながら,これまでに行われてきた研究を分かりやすく紹介します。さらに,それらの知見を踏まえて,「考える」ことの大切さも強調しています。

私のコメント

社会心理学の立場から,「ルール」について概念の混乱を整理しながら検討するということで期待して読んだのだが,私の期待とは違う本であった。

「私たちは,生まれてから死ぬまで,ずっとルールに従って生きています」という記述は,人の行動が,特に言語の獲得以降,すぐには気が付かないものも含め多くの「ルール」に従っており,そこが人工知能のアポリアになっているという意味で,きわめて重要な指摘であるが,著者はそういう見方はしないようだ。

その上で,ルール,規則,法,社会規範,道徳,マナー等を適切に概念整理し,それぞれの機能と異同,及びそれらに従う人の行動の特質,遵守させる方法等を,実験に基づいて記述することができれば,ルールについて,心理学,哲学・倫理学,法学の架橋ができる素晴らしい本になったでだろう。

実は私が高く評価する「啓蒙思想2.0―政治・経済・生活を正気に戻すために」の著者であるジョセフ・ヒース には,「ルールに従う―社会科学の規範理論序説」という浩瀚な著書があり,「社会科学においてもっとも基礎的な問題である規範問題について、哲学、社会心理学的実験、進化理論、社会学や経済学の知見を用いて基礎理論を構築する。社会科学を統合するまったく新しい試み」と紹介されるのだが,訳者による「概要」の記述さえ膨大で頭に入りにくく,読み始めるのを躊躇している。その「先払い」にでもなればと思ったのだが,そうはいかなかった。

副題の「 逸脱と迷惑の」という意味もよくわからないし,社会的迷惑行為に「こころ」を対置するのでは,単なる道徳おじさんになってしまう。社会心理学は,哲学・倫理学,法学にはない,科学的手法でルールの解明に挑めるのだから,ぜひそちらを伸ばしてもらいたい。

なお,命令的規範と記述的規範,6つの道徳発達段階,視点が変われば正しいも変わる,返報性(互恵性),社会的公正の4分類,BIS(行動抑制システム)とBAS(行動接近システム)等々,個々の記述には参考になる記述も多い。

再読する機会があれば,このあたりを補足したい。

詳細目次

1 社会的迷惑とは何か
  社会的迷惑とは  言い訳の類型  社会考慮について  バカッター騒動
  迷惑とは考えないこと

2 逸脱行為とは何か
  社会規範とは  社会規範の所在について  すべての規範は集団規範
  当為について  社会心理学の切り口から見た二つの社会規範  社会規範の周辺概念  道徳性と社会規範  同調行動と社会規範  本章のまとめ

3 正しいを考える
  正しいを疑ってみる  時が経てば正しいも変わる  視点が変われば正しいも変わる  返報性について(時代や国境を越えたルール) 社会的公正と迷惑行為  正しいの概念整理

4 迷惑行為・ルール違反の抑止策
  抑止策の理論的背景  危ないからルールが必要なのか、ルールで決められたから危ないことなのか?  自制のメカニズム  BISに基づく迷惑行為の抑止
  恥の喚起とルール違反の抑止  BASに基づく迷惑行為の抑止
  相手が見えるとルールを守る?  親切に応えてルールを守る?
  教育側面からのアプローチについて  共感性の涵養に基づくルール違反・社会的迷惑の抑止  囚人のジレンマゲームに基づくルール違反・社会的迷惑の抑止
  考えることの大切さ  厳罰化の懸念

5 ルール研究の今後
  調査手法の課題と可能性  調査の信頼性と妥当性  社会的望ましさのハードル  倫理的な問題  フィールドに飛びだそう  バーチャル・リアリティの可能性  社会に関心を持ちましょう

6 ルールを突き詰める
  行き着くところは“考える”こと  “正しくない”を再考する  “自由は正しい”を疑う  ルールも迷惑も繰り返す  どう立ち回るべきか  まとめ

おわりに
引用文献

「スロージョギングで人生が変わる」を読む

スロージョギングで人生が変わる(Amazonにリンク)

著者:田中宏暁

出版社等による内容の紹介の要約

ランニングブームの今、歩くペースで走るスロージョギングなら、中高年や高齢者でも楽しめる。ウォーキングの3倍の効果があり、内蔵機能・筋力はもちろんのこと、脳の機能も向上することが実証されている。歩くスピードなら70歳、80歳からでも走れる。本書は、スロージョギングのメソッドをわかりやすく解説し、すぐにも実践できるよう具体的なアドバイスも充実。

著者は,1947年生まれで,福岡大学スポーツ科学部教授等を歴任。専門は運動生理学で、特に肥満・動脈硬化性疾患などの生活習慣病の治療と予防、健康増進・競技力向上に有効な運動処方に関する研究が主なテーマ。2018年4月に,膵臓がんで亡くなられたとの由,ご冥福をお祈り申し上げます。

なお本書は,2011年発行だが,著者による最新の本に「ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング 」(Amazonにリンク)がある。

私のコメント

朝のジョギングを始める

今日現在(2018年10月31日),私は3週間ほど,朝のジョギング(歩くより少し速いくらいのスローペースです。)をしている。この夏は暑かったせいか,運動がまるでできず,今までにないほど太って体調も悪くなったので(実は,原因を夏の暑さのせいにするのは「間違い」。食べ過ぎ,飲み過ぎ,何よりも代謝が年齢相応に落ちていることが原因だ。),3週間前から朝のスローなジョギングを始めた。去年も,10月に朝のジョギングをしたが,早く起きて走るのは寒いし辛いし,時間の確保も難しいので,1ヶ月でやめたが,それなりの成果は出た。今年は,朝多少ゆっくり事務所に行ってもあまり問題がないことが分かったので,朝起きてまずお風呂に行って体調を整え,それから50分ほどジョギングすることにした。そうするとあまり無理なくジョギングできることが分かった。

そこで1ヶ月でやめずにもう少し続ける気になって「スロージョギング」について調べるため「本書」を購入した。

ポイント

著者は,運動生理学者なので,運動,肥満を巡る議論はとてもしっかりしているが,それは別の機会に「勉強」すればよい(「詳細目次を参照されたい。)。私が知りたかったのは,次のことだ。

①走り方は,かかと着地ではなくて,フォアフット着地(土踏まずより前部分)にし,地面は蹴らずに,重力を利用して前に進む。

②背筋はまっすぐし,顎はやや出して前の方を見る。

③走るスピードは7キロ(歩くより少し速いくらいのスローペース)で十分,前後の体操も気にせず,筋トレにもこだわらない。少しで汗をかかなければ,普通の服装でも大丈夫。

こんなところだろうか。

①は,私も大好きな「BORN TO RUN」(著者:クリストファー・マクドゥーガル)にも紹介されていることだが,これは追って紹介することとし,ここでは触れないことにする。フォアフット着地は,昨日の帰宅時のウオーキング,今日の朝のジョギングでも試してみたが,とてもお腹に効く気がする。ただなれるまで少し筋肉痛になりそうだ。

どうやって継続するのか

今のやり方だとあまり負担を感じないので,多少は継続できるような気がする。あとは,「自分の行動改革」の問題だ。

詳細目次

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「やり抜く人の9つの習慣 」を読む

「やり抜く人の9つの習慣  コロンビア大学の成功の科学」(Amazonにリンク

著者:ハイディ・グラント・ハルバーソン

9 THINGS SUCCESSFUL PEOPLE DO DIFFERENYLY by Heidi Grant Halvorson

出版社等による内容の紹介の要約

◎話題沸騰! Harvard Business Reviewで最多閲覧数を記録

◎モチベーション科学の第一人者が教える「心理学的に正しい目標達成の方法」とは?

コロンビア大学でモチベーション理論を教える社会心理学者の著者が,多くの心理学者たちの数々の実験と,著者自身の研究成果によって証明ずみの「心理学的に正しい目標達成の方法」によって,「成功とは生まれつきの才能で決まるものではありません」,「「成功する人には共通の思考や行動のパターンがあります」として,「心理学的に正しい目標達成の方法」を展開する。

◎本書で紹介する「目標達成に最も寄与する習慣」

  • 目標に具体性を与える・目標達成への行動計画をつくる
  • 目標までの距離を意識する
  • 現実的楽観主義者になる
  • 「成長すること」に集中する……etc.

◎本書で手に入る「目標達成ツール」

  • 目標達成の切り札「if-thenプランニング」
  • 目標までの距離に目を向ける「これから思考」
  • ネガティブな側面にも目を向ける「現実的楽観主義」
  • 失敗を味方にする「成長ゴール」
  • 〝やり抜く力〟を支える「拡張的知能観」……etc.

「今日からすぐ実行できる考え方がコンパクトなページ数(120ページ)の中で豊富に紹介されています。」,「仕事からダイエットまで「達成したい目標」があるなら,ぜひ本書を参照してみてください」,「これまでより,もっと早く,もっと上手に,目標を達成できるようになるはずです。」。

私のコメント

全体の感想

読んでいて余り異論のない目標達成のための行動論と言える。内容もシンプルに纏まっていてよいが(元がブログ記事だという紹介がある。),抽象的で説明不足とか,物足りないという感想もありうるだろう。ただ,ある程度「習慣」を巡る本を読んでいれば,著者が,何を問題にしているのかだいたいピンとくるし,参考文献も掲載されているので(ただし,翻訳されていないものが多そうだ。),十分だと思う。第6章で「グリット」や「マインドセット」にも触れられている。私としては,頭がこの方面に向いている人にはおすすめだ。そうでない人の興味は惹かないだろう。

表題にある「9つの習慣」とは?

「9つの習慣」が,9章にわたって展開され,各章には,その内容を端的に表す表題が付されているほか,各章の最後に,何個かのポイントから構成された「まとめ」が付されている。

さらに最後に,著者によって,「9つの習慣」次の様のまとめられている。ここでは,その著者の最後のまとめと,それに対応していると思われる各章の表題(翻訳と英語)を紹介しておく。各章の最後にある何個かのポイントから構成された「まとめ」は,追って紹介しよう。

  • 1.明確な目標を持っている。●目標に具体性を与える Get Specific 
  • 2.if-thenプランの形で「いついつになったらやる」と計画している。●目標達成への行動計画をつくる Seize the Moment to Act on Your Goals
  • 3.現状と目標までの距離に目を向けて「目標に近づくために何をすべきか」に焦点を当て,モチベーションを維持している。●目標までの距離を意識する Know Exactly How Far You Have Left to Go
  • 4.成功できると信じている。同時に,成功は簡単には手に入らないと考えて,努力をおこたらない。●現実的楽観主義者になる Be a Realistic Optimist
  • 5.最初から完璧を目指さない。失敗を恐れることなく,少しずつでも進歩することを考えている。●「成長すること」に集中する Focus on Getting Better, Rather than Being Good
  • 6.どんな能力でも努力で身につけられると信じている。どんな困難でも「やり抜く力」を持って当たることができる。●「やり抜く力」を持つ Have Grit
  • 7.意志力も鍛えれば強くなることを知っていて,習慣的に鍛えている。筋力と同じように,意志力も使いすぎれば消耗することを知っている。●筋肉を鍛えるように意志力を鍛える Build Your Willpower Muscle
  • 8.誘惑をできるだけ近づけないようにしている。意志力で誘惑に打ち勝とうとはしない。●自分を追い込まない Don’t Tempt Fate
  • 9.「やらないこと」でなく「やること」に焦点を置く。●「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する Focus on What You Will Do, Not What You Won’t Do 

「9つの習慣」を簡単に検討する

1,2は,目標と計画の重要性である。計画をif-thenプランという形にすることを推奨している。

3,4,5は,行動によって目標に到達するまでには,時間と距離の隔たりがある。そこでの「行動論」である。

6は「マインドセット」を,「固定的知能観」と「格納的知能観」にわけ,後者の「能力は経験や努力を重ねることによって高めることができる」を正しいとするが,そのためには「グリット(やり抜く力)」が不可欠だとする。

7,8は意志力を問題にしているが,意志力は消耗することもあり,要は,あまり意志力に頼らない「行動」とすべきだとする。

9は,行動分析学が指摘するように「~をしない」は問題にせず,「~をする」ことにどのような行動随伴性を設定するかが重要だとする。

本書をどう活用するか

私は今,「個人:生活・仕事・文化」の「前提の2」として「自分の行動改革」を,「習慣」という観点から検討している。

そこでは「良い習慣、悪い習慣―世界No.1の心理学ブロガーが明かすあなたの行動を変えるための方法」(著者:ジェレミー・ディーン),「習慣の力」(著者:チャールズ・デュヒッグ)「ぼくたちは習慣で,できている。」(著者:佐々木 典士)等を参考にしているが,本書も加えて検討することになろう。

その他に,「自分を変える1つの習慣」(著者:ロリー・バーデン)という「階段マインンドセット ちょっときついが正しい行動をとる思考」を推奨するビジネス本があるが,なかなかノウハウに満ちていて,これをうまく活用したいと思っている。

いずれにせよ,①前状況-②行動-③状況の変化という枠組みの中で,①,②,③の中に何を入れ込んで,目標の達成論を考えるべきか,できるだけ速やかに試論を作りたい。

なお,本書には,詳細な目次はないので,詳細目次は掲載しない。

 

「図解 老人の取扱説明書」を読む

著者:平松 類

どこから「老人」を見るか

「老人」というと,「頭がぼけ(認知症),体を支えられなくなり,心もゆがむ」(いわば「全滅論」といえよう。)という固定イメージがある。誰だって,自分がそんな「老人」になるなんて思いもよらないはずだが,街中には,少なくてもそういうふうに見える「老人」があふれている。私もそろそろ60台半ばを迎えて,「老人」と見られる場面も出てくるはずだが,あまり「老人」の自覚はない。でもこれから一体,どうなるんだろう。そういう中でたまたま本書を手に取った。

本書(図解 老人の取扱説明書)は,老人の困った行動を16取り上げている。ここでは最初の8個をあげてみよう。

①都合の悪いことは聞こえないふりをする。②突然,「うるさい!」と怒鳴る,でも,本人たちは大声で話す。③同じ話を何度もする。過去を美化して話すことも多い。④「私なんて,いても邪魔でしょ?」など,ネガティブな発言ばかりする。⑤せっかく作ってあげた料理に醤油やソースをドボドボとかける。⑥無口で不愛想。こちらが真剣に話を聞こうとすると,かえって口を閉ざす。⑦「あれ」「これ」「それ」が異様に多くて,説明がわかりにくい。⑧赤信号でも平気で渡る。

すべて「頭がぼけ(認知症),体を支えられなくなり,心もゆがむ」全滅論に起因するように思えてくる。

しかし,著者は,その前に,年を取ると五感がどうなるかを問題にし,五感の変化について次のように説明する。

五感の変化

Ⅰ視覚 老眼が40代中盤からはじまり,60代になると老眼鏡を使わないと辛くなります。また,白内障が50代から半数以上の人に発症し,80代を超えると99%が白内障になります。白内障になると,暗い所と明るい所が見にくくなります。

Ⅱ聴覚 難聴は50代後半からはじまり,60代後半で急速に進み出し,80代以上では7~8割を占めます。まずは高い音が聞き取りにくくなり,電子音などを聞き逃します。次第に,複数の音声の聞き分けができなくなります。後ろから迫っている車の音にも気づかなくて,轢かれそうになります。

Ⅲ嗅覚 50~60代までは年齢とともに機能が高くなりますが,それ以降はやがて低下します。70代からの機能低下が大きいです。嗅覚と味覚は関連しているので,味も感じにくくなります。普段の生活では自分の体臭・口臭に気づかず,相手を不快にさせます。

Ⅳ味覚 60代から衰えてきます。味覚障害により,醬油やソースをたくさんかけたくなります。味がわかりにくくなることで食べる楽しみが減るため,食欲もなくなります。

Ⅴ触覚(温痛覚) 50代から衰えはじめ,70代から顕著になります。手に持っているものの感覚が弱まるため,物を落としやすくなります。温度感覚も鈍るので,やけどをしやすくなります。若い人と同じ空間にいても空調の設定が違うため,嫌な顔をされます。

困った行動のかなりの部分は五感の変化が原因だ

上記した8つの困った行動のうち,①②⑤⑥は,五感の変化が原因の可能性が大きく,③⑦は記憶の問題,⑧は歩く速度の問題であり,五感以外の心身機能の一部が衰えてくるということだ。④は,役割の問題である。残りの8個の困った行動の多くも,五感の変化と心身機能の一部の衰退が原因だ。

五感の変化や心身機能の一部の衰退については,それぞれ「老人」自身で,それ相応の対応ができるし,家族や第三者もそのことが理解できると対応の仕方が大きく変わるだろう。「老人」の行動を「全滅論」で理解し,対応することはお互いにとって不幸だということだ。

全滅論につながる機能の衰退は阻止できる

五感の変化はそれを理解し,適切に対応すれば,さほど問題ではない。一方,心身機能の一部の衰退が,徐々に大きな衰退につながると,その影響は甚大である。これを防ぐのは,食動考休,特に動考である。本書でも簡単に触れられているが,見過ごしてしまいそうだ。間に合ううちに始めなければ…

本書について

「老人の取扱説明書」という題名には,多くの人が顔をしかめそうだが,本書は,老人を「取扱う」主体として,施設,病院等の第三者だけではなく,家族,そして自分自身を想定している。しかも著者は,多くの「老人」と接している「眼科医」ということのようだから,上記のとおり,問題とされる困った行動事例も,あまり深刻でない事例だ。そうなると,「取扱説明書」という機能的な観点がかえって好ましい。

なお,本書には,図解でない,新書版があるが,図解版をおすすめしたい。新書の方は記述が煩わしい。図解版はタブレットがなくてもパソコンにkindleソフトをインストールすれば読むことが出来る。

詳細目次

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問題解決と創造の<現場と思考>を考える

この投稿は,固定ページ「問題解決と創造の方法」に新しく追加した部分を投稿したものです。固定ページの方はその内容を,適宜,改定していきますので,この投稿に対応する最新の内容は,固定ページ「問題解決と創造の方法」(固定ページにリンク)をご覧ください。ただしその後,「問題解決と創造の方法」の内容を改め,前半部分は,別項目に,移動しました。

問題解決と創造の<現場と思考>

問題解決と創造の方法と技術を身につけ実践する前に,実践する現場(環境:自然とテクノロジー)について大まかに理解し,かつ創造の方法と技術を操作する主体である個人と組織の思考の特質(非合理性と合理的な推論と意思決定)について理解しておくことは意味あることだろう。もっともここに深入りすると,現場での問題解決と創造に至る前にそこをぐるぐる回りするけで終わってしまうということは,「知識人」,「教員」だけでなく「科学者」にもありがちなことだ。

現場(環境:自然とテクノロジー)を知る

現場(環境:自然とテクノロジー)を知るには,まず中学,高校レベルの「教科書」に目を通すのもよいが(ブルーバックスに「新しい高校の…教科書」シリーズ(Amazon)や,「発展コラム式中学の理科の教科書」シリーズ(Amazon)がある。),理科が苦手な大人向けに雑多な知識を集めたより読みやすい「入門書」に目を通すのがよいだろう。

そのような本はたくさんあるだろうが,たまたま私が最近購入したというだけだが「もう一度学びたい科学」(Amazon)からはじめてみよう。PART.1の「科学の大原理・大法則」は何とか分かるかな。PART.2の「ニュースがわかる科学の基本」の「生命の科学」,「気象の科学」,「エネルギーと環境の科学」,「宇宙の科学」だけでは全く物足りない。

まず1点目に「化学」分野はまったく抜けているので,ここは私の本棚にあった「ぼくらは「化学」のおかげで生きている」(著者:齋藤勝裕)(Amazon)でカバーすることにしよう。実際私たちの生活では「物理」はテクノロジーとして商品に封じ込められているので商品の使用法さえ分かればよいことが多いが,私のような「化学音痴」は,身の回りの物質のこと,食品のこと,生物の体のこと等々,なかなか理解するのが困難だ。炭素と水素が分かればまあいいか。

2点目に生命の歴史もない。そこで「系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史 僕たちの祖先を探す15億年の旅」」(著者:長谷川政美 )(Amazon)の写真と曼陀羅図を楽しもう。ホモサピエンス代表は,著者のお孫さんだ。もっとも,本書には,真正細菌,古細菌ドメインには触れられておらず,最初の分岐は「シャクナゲとヒトの共通祖先」からだ。それについては,「たたかう植物 仁義なき生存戦略 」(著者:稲垣栄洋)(Amazon)の「植物vs.病原菌」に「トコンドリアと共生した生物の一部が,次にシアノバクテリアと共生して葉緑体を手に入れた。こうして,ミトコンドリアのみを持つ動物と,ミトコンドリアに加えて葉緑体を持つ植物が誕生したのである」とあり,イメージしやすい。もっともこの本の内容は豊富であり,植物,いや生命を理解するためにぜひとも一読すべきであるので追って紹介しよう(ただ類書は多い。)。

3点目に「地球の歴史,自然」もまったく不十分だ。これについては「地球とは何か 人類の未来を切り開く地球科学」(著者:鎌田 浩毅)(Amazon)が,まだ速読しただけだが,網羅的でよさそうだ。ただ過去の地震歴から,」2020年から2030年にかけて「関東中央圏での直下型地震」,「南海トラフ巨大大地震」が起こる可能性があるとしていて衝撃的だが,どうなんだろう。もう少し読み込んでみよう。

さて,以上に加えて「眠れなくなるほど面白い図解物理の話」(著者:長澤 光晴)(Amazon) ,「眠れなくなるほど面白い図解科学の大理論」(著者:大宮 信光 )(Amazon) には,もう少し突っ込んだ内容が記述されており,これらに親しみ,科学全体を通観できれば,しろうと科学者の端くれになれよう(なおこのシリーズには,化学,生物,宇宙等もあるが,内容,レベルはまちまちのようだ。)。

科学分野にはこれに引き続いて読むべき興味深い本は多い。「環境:自然とテクノロジー」(固定記事にリンク)に,少し紹介している。

個人と組織の思考の特質(非合理性と合理的な推論と意思決定)について知る

「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)

ここでは問題解決と創造の方法と技術を検討する前に,ヒトと組織(の中のヒト)の思考の特質(不合理性)について,丁寧にきちんと整理して論じている「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)(Amazon) をあげておきたい。著者は,サセックス大学の心理学教授であったが1998年に亡くなっており,本書の刊行は1992年で30年近い前である(しかしKindle本の刊行,翻訳等は最近行われているようだ。)。しかし内容は非常にしっかりしており,かつ著者の表現は機知に満ちていて,読んでいて楽しい。本書刊行後,ネットの普及等でヒトと組織(の中のヒト)の思考の不合理性は強まっているが,ネット普及前の「原型」はどうだったのかという観点から捉え,現状をその「変容」と見ればいいだろう。本書は近々「本の森」で紹介したいが,著者が「序章」で本書の構成について述べている部分だけも紹介しておきたい。

「こうした本では,序章の締め括りで,各章の要約を述べるのが約束事になっている。読者が本書を読まないでもすむように,ここで内容を要約するほど私は親切ではないが,全体の構成だけ簡単に説明しておこう。2章(誤った印象)では,人が判断ミスをおかす最もありふれた原因を述べる。その後に詳しく見ていく不合理な思考の多くにこの原因が絡んでいる。続く七つの章(服従,同調,内集団と外集団,組織の不合理性,間違った首尾一貫性,効果のない「アメとムチ」,衝動と情動)では,不合理な判断や行動をもたらす社会的要因と感情的要因を見ていく。10章から19章まで(証拠の無視,証拠の歪曲,相関関係の誤り,医療における錯誤相関,因果関係の誤り,証拠の誤った解釈,一貫性のない決断・勝ち目のない賭け,過信,リスク,誤った推理)は,事実をねじ曲げてしまうために陥る誤りを扱い,それに続く二つの章(直感の誤り,効用)では,手元にある情報の範囲内で,少なくとも理論上は最善の結論を出せるような方法を述べ,そうした方法で出した結論と直感的な選択とを比較して,直感がいかに当てにならないかを示す。22章(超常現象)では,それまでに述べてきた誤りのいくつかを振り返り,超常現象やオカルト,迷信がなぜ広く信じられているかを考える。最終章(合理的な思考は必要か)では,ヒトの進化の歴史と脳の特徴から,不合理な思考をもたらす根源的な素地を考え,併せて合理的な判断や行動を促すことが果たして可能かどうかを考える。そして最後(合理的な思考は必要か)に,「合理性は本当に必要なのか,さらには,合理性は望ましいのか」を考えてみたい。」。

なお著者は合理性について次のように言っている。

「合理性は、合理的な思考と合理的な選択という二つの形をとる。手持ちの情報が間違っていないかぎり、正しい結論を導き出すのが、合理的な思考だと言えるだろう。合理的な選択のほうはもう少し複雑だ。目的がわからなければ、合理的な選択かどうか評価できない。手持ちの情報をもとにして、目的を達成できる確率が最も高い選択が合理的な選択と言えるだろう。」。

「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)

「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)(Amazon) は,人間の実際の思考を踏まえて,合理的な推論と意思決定について検討した本である。著者は,イギリスの心理学者である。少し前に入手していたが,古典的三段論法,「ならば」,因果推論,確率的説明,メンタルモデル理論,二重過程理論,帰納と検証,プロスペクト理論等,感情,合理性,個人差や文化の影響がもたらす複雑さ等,幅広く検討していて,「思考と推論」を考える上では必須の本であると思っていた。ただ問題はここに入り込むと,出てこられなくなることである。ほどほどが大事だ。

問題解決と創造への出発

以上を踏まえた上で,問題解決と創造のために,どのように頭と心を働かせるべきなのか。

以下,「問題解決と創造の方法と技術」の「固定ページ」に続く。

 

 

「読解力」から見えるAIと人を分かつもの

読解力ブーム?

「読解力」がブームである。 といっても,それはもっぱら私の読書範囲に限られるのかもしれないが,私は,最近,「国語ゼミ―AI時代を生き抜く集中講義」(著者:佐藤 優)(Amazon),「大人のための国語ゼミ」(著者:野矢 茂樹)(Amazon),そして「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」(著者:新井 紀子)(Amazon)に目を通した。

前二書は,文字どおり,国語(要約力や読解力)の重要性を説き,新井さんの本は,柱となる主張の一つとして,中高生は各学科の学力以前に,教科書の説明や問題を問う文が理解できていないのではないかということを指摘している。

大体,学者や知識人は,年をとると,国語や国が大切だと言い始めるので,その意味では珍しくないともいえるし,私の中で「読解力」とは,できの悪い日本語の文章を何とか理解するためのやむを得ない技術という思いもあって,「読解力」を持ち上げることには抵抗もあったのだが,新井さんの本が参戦したことにより,ずいぶんと違った景色が見えてきた。

新井さんは,人工知能(人の知能と同等の機能を有するもの)と,それを実現するためのAI技術を区別し,AI技術がそこそこ進展しても,人工知能はできない,なぜなら,AI技術を支えるものは,加算と乗法の数学だから,それでできることは限られる,人間の脳,自然言語の機能を,数学がカバーすることはおおよそありえないと,明快に断言する。

一方,新井さんは,AIによる東大入試合格を目標とする「東ロボ」プロジェクトをプロデュースしたことでAI讃美派と見られているかもしれないが,実はこれは最初から「東ロボ」は東大に合格できないということを明らかにするためのプロジェクトであった,ただ多くの人の知恵と協力によってAI技術を駆使してMARCH入試の合格のレベルに達したが,これ以上は無理ということのようだ。

そして人間の知能は,数学に支えられたAI技術ではとてもカバーできないが,MARCH入試の合格レベルの仕事であればAI技術が到達したから,「コンピュータが仕事を奪う」(Amazon)。これは新井さんが最初に言い出したことだとしている。そしてそれにつけても,中高生は(したがって多くの大人も),教科書の説明や問われている問題文が理解できていないので,暗記で表面を繕っても,AI技術に代替されることになる,だから「読解力」…という議論の運びになる。

AIと自然言語による論証

私はこれまで,そこそこAI論に目を通してきたが,新井さんの本は今回はじめて読んだ。最初からこういう見取り図が得られていれば,全体の動きや今後の方向性に関する理解がずっとはやかったなと思った。AI技術を支えるプログラミングが,数学による計算によっている以上,それがAI技術にできる限界であることに疑問の余地はない。ただ数学が適用可能な分野では,今のAI技術が,圧倒的なスピードで量を処理できることには日々驚かされる。ここらあたりは「数学の言葉」(Amazon)を含めた新井さんの3册の本と,もう少し技術的な本でフォローすればよいだろう(例えば「新人工知能の基礎知識」(著者:太原 育夫)(Amazon)。

一方,自然言語で主力となるのは,帰納的論証だ。これまで読んだ「論理学」の本は,演繹的論証(記号論理学)について書いているだけで,帰納的論証は飛躍があって,あまり使えないよねという記述しか目に入ってこなかったが,今回,自然言語による論証は,そのほとんどが帰納的論証であることに気がついてみると,これが「読解力」,そして「表現力」の本丸だということがわかる。

論証というと,相当以前から,上記の野矢さんの「新版 論理トレーニング」(Amazon)という本があり,私も購入していたが,接続詞を入れさせようとするところで嫌になった。接続関係と,接続詞は違う。野矢さんにはどうもその感覚がないようだ。接続詞の機能は複雑である(「文章は接続詞で決まる」(著者:石黒圭))(Amazon)。

そこであれこれ探していると,「論理的思考の最高の教科書」(著者:福澤一吉)(Amazon)という本が紹介されていることを見つけたが,なんと私はこれを既に購入していた。そのときは一瞥してあまり感心しなかったが,今回読み直してみると,論証の全体を網羅しているわけではないが,部分的にはとても優れた考察がなされていることが分かった。同著者のKindle本には他に,「文章を論理で読み解くための クリティカル・リーディング 」(Amazon),「新版 議論のレッスン」(Amazon)がある。これらはそれぞれに優れているが,著者の欠点は,それぞれに小出しして全体を網羅しないこと,あるいは体系性への情熱が欠けていることだ。

ところで福澤さんの論証論を一言でいえば,根拠(Data)→論拠(Warrant)→主張(Claim)ということだが,ほぼ同じことを英文読解の場面で横山横山雅彦さんがいっている(「ロジカル・リーディング」(Amazon),「「超」入門! 論理トレーニング 」(Amazon))。これらは,ディベートでも強調されていることだ。

そしてこれらのバックになるのが「議論の技法」(スティーヴン・トゥールミン)(「The Uses of Argument by Stephen E. Toulmin)(Amazon)だ。ただ翻訳書は絶版でずいぶん高い値段がついている。

論理的な論証を心がけるには,これらの議論のポインを押さえる必要がある。追って要約して紹介したい。

論理的に論証してどうなるのか

ところで論理的な論証はそれ自体はいいことであることに間違いはないが,問題はそのような論証による結論が,どう「問題解決と創造」の役立つかだ。でたらめな論証による結論が役立つことだってありうる。役立つためには,論証過程だけではなく,その前提となる根拠(Data),論拠(Warrant)が重要だ。これらは,適切な手続きによって導かれた「世界」に関する科学的な知識といっておくが,それがどのようなものであるかについては,どうも分析哲学を一瞥する必要があるかもしれないと思っている(「現代存在論講義ⅠⅡ」(著者:倉田剛)(Amazon)。

こんなことをしていると,いつまでたっても「問題解決と創造」にたどり着かない。いやほぼ「問題解決と創造の方法と技術」にたどり着きつつあると言っていいだろうか。ここからが長いか?

 

 

ゲームとのコンタクト

私のゲーム体験

ゲームは人を映し出す。小さい子は,自分が後退しなければならないルールが許せない。おとなは,主観的な筋立てや考えるふりをするだけで,強引に手順を進めたり,そもそもゲームの世界に入り込むのを嫌って敬遠したりする。

私は小さい頃は,花札,トランプ,将棋等が好きだったし,碁も少しやったが考えるふりをして強引に進めるだけでうまくならず,いつしかゲームの世界に入り込むのを嫌い敬遠するようになった。

大学生になった頃,インベーダーゲームが流行った記憶だが,あまり好きではなかった。ルービックキューブにも手を出さなかった。その後,私の子供らはそこそこゲーム好きになってファミコン等で遊んでいたが,私はお酒を飲みながら子供らが遊ぶのを見る方が楽しかった。

ということでずいぶんと貧しいゲーム体験だ。

ゲームとのコンタクト

そういう私がなぜ「ゲーム」とコンタクトするのか。対象は,「ゲーム理論」ではなくて,間違いなく「ゲーム」だ。

それは最近,ゲームの制作を受託している会社数社の持株会社の監査役になったことから,これらの会社がどういう業務をしているのか,よく理解する必要がでてきたからだ。まず会社のスタッフから,口頭ベースで簡単な説明を受けた。最近のスマホゲームにも少し触ってみた。それでこれからは,自学自習だ。

「ゲームの今」(Amazon)という本の「はじめに」に,次のような指摘がある。

「こと「ゲームについて語る」となると,明らかにゲームの現状を把握していない発言や,一方的(ないし極めて主観的)な見地からの発言が,急激に増大する傾向がある。興味深いことに,普段は冷静で,畑違いの分野について見解を示すにあたっては下調べを怠らない専門家たちが,ことゲームについて語りだした途端,十年以上前の状況を前提とした分析をしたり,実体がどこにもないブームについてその社会的背景を推測したりと,いわば「勇み足」を連発してしまう…個人的には,これはゲームが持つ,本質的な強さを示しているように思う。ゲームには,識者をして「たかがゲーム」と感じさせる,驚異的な間口の広さがあるのだ。」。

「たかがゲーム」と感じさせることが,「驚異的な間口の広さ」を示しているというこの本の言い方は,すぐには理解できないかなり「ひねくれた」分析だ。

「たかがゲーム」という切り口は,明らかに「ゲーム」を,つまらないものとみている。ひとつはゲームが,単なる「遊び」だということ,もうひとつは,ゲームを構成する要素は大したものではないという「思い込み」からなっているのだろう。

しかし,後者は,全くの誤解である。今のゲームの制作,流通に必要なものをざっと挙げても,企画,シナリオ,ゲームデザイン,プログラミング,ゲームAI,サウンド,グラフィックス,ビジュアルデザイン,ネットワーク,法務・著作権,国際対応,マーケッティング,広告・宣伝,プロジェクトマネージメント等々,膨大な広がりがある。コンテンツ・ビジネスの中でも,最も複雑な仕組みの中で初めて成立する成果だろうが,ゲームを遊ばない世代からは,もっともつまらないものとみられている。前者は,「思想」の問題だ。このような中で「たかがゲーム」と言えることが,ゲームの「驚異的な間口の広さ」,毀誉褒貶なんでも飲み込んでしまうゲームの性格を示していることになる。

現実との架橋

これではすれ違いのまま終わるので,取り急ぎ「ゲーム」と現実を架橋しよう。

1点目は,ゲーム制作の中心に,プログラミング,ゲームAI,ネットワークがあるということだ。ゲームでの試み,習熟が,現実での「軽快な動きを切り開くだろう。

2点目は,ゲームがルールによって成立しており,ルールと世界の関係をシミュレーション出来るということだ。これによってはじめて法が科学的に検証できる土俵に乗るだろう。

3点目は,プロジェクトマネージメントである。ゲーム制作に関与する人員は次第に膨大となり,しかも仕事の集中と弛緩を管理するのは,基本的にはクリエーター自身だから,労働法規の枠組みの中で,プロジェクトマネージメントを実行するのは至難の業である。まさにあらゆる分野のプロジェクトマネージメントの試金石になるだろう。

このように指摘することで,はじめてゲームと関わりを持てなかった世代の人や,敢えて関わらなかった人にも,その意味合いが見えてくるだろう。

そしておそらく実際にゲームにのめり込む体験を経てはじめて,ゲームと現実が深くつながるのだろうが,私にはもう無理かな。

取り急ぎ調べることと今後の課題

まずゲームの歴史と現在の状況を把握する必要がある。「ゲームの今 ゲーム業界を見通す18のキーワード」(著者:徳岡 正肇)(Amazon)には,ゲームの歴史を踏まえた現状の詳細な記述がある。少し古い歴史はその前版である「デジタルゲームの教科書 知っておくべきゲーム業界最新トレンド」( デジタルゲームの教科書制作委員会 )(Amazon)にある。ただゲームの世界は変化が早いから,最新の状況は,丹念に業界情報を追う必要があるだろう。未読だが「All in One ゲーム業界」(廣瀬豪)(Amazon)は,刊行が最近で,新しい情報に基づいているようだ。

ゲーム開発を引っ張ってきた一人の「遠藤雅伸のゲームデザイン講義実況中継」(著者:株式会社モバイル&ゲームスタジオ)(Amazon)も少し古いが参考になるだろう。Kindle無料本の「ゲーム開発者の地図: 20年の個人開発から学んだこと」(著者:SmokingWOLF)(Amazon)をダウンロードしてみたが,何が書いてあるのかさっぱりわからないのでやめた。

その他,もう少し理解が進んだら,各論の本も読み進めよう。反対にゲームをコンテンツの一種として検討する「図解入門業界研究 最新コンテンツ業界の動向とカラクリがよくわかる本」(著者:中野明)(Amazon)も参考になるだろう。

上述したプログラミング,ゲームAI,ネットワークについては,「人工知能の作り方 ―「おもしろい」ゲームAIはいかにして動くのか」(著者:三宅 陽一郎)(Amazon),「人狼知能で学ぶAIプログラミング 欺瞞・推理・会話で不完全情報ゲームを戦う人工知能の作り方」(著者:狩野 芳伸他)(Amazon),「ゲームを作りながら楽しく学べるPythonプログラミング」(著者:田中 賢一郎)(Amazon),「ゲームを作りながら楽しく学べるHTML5+CSS+JavaScriptプログラミング[改訂版]」(著者:田中 賢一郎)(Amazon)等が参考になる。

ゲームとルールについては,「組み立て×分解!ゲームデザイン―ゲームが変わる「ルール」のパワー」(著者:渡辺訓章)(Amazon)を材料に,ゲーム理論と対比して検討したいと思っている。

ゲームの世界は広大だが,人生は短い。

 

 

地方活性化を考える

「地方創生大全」(著者:木下 斉)を読む

地方活性化を真正面から論じている

今,人口が減少しつつある状況の中で,地方再生,地方創生が大きな課題になっていると言われるが,多分解決すべき問題は,都市だろうと,企業だろうと,国全体の経済であろうと,同じであろう。「地方」を「特殊」なものとして上から目線で論じること自体,無意味である。

「地方創生大全」(著者:木下 斉)(Amazon)は,長年,地方活性化のために活動してきた著者が,地方活性化のために何が必要で,何が不要かあるいは障害かを,ネタの選び方,モノの使い方,ヒトのとらえ方,カネの流れの見方,組織の活かし方という観点から,真正面から論じた本である。

ただ中心となる主張は極めて単純で,経済的に回る事業を,「すぐに」「自分で」始め,撤退も頭において,試行錯誤を繰り返す。実践と失敗から「本当の知恵」を生み出そう。観光客数ではなく観光消費を重視する。役人の立てる計画や補助金は「害悪」だ。

そして,マシンガンのごとく,「ゆるキャラ,特産品,地域ブランド,プレミアム商品券,ビジネスプランコンペ,道の駅,第3セクター,禁止だらけの公園,モノを活かせない「常識的」な人, 地方消滅論,人口減少論,,新幹線,高齢者移住,補助金,タテマエ計画, ふるさと納税, コンサルタント,合意形成,好き嫌い,伝言ゲーム, 計画行政,アイデア合戦」等々を撃ちまくる。

少し視点を抽象化し事前のマクロ的分析を加えれば,素晴らしい本になる

問題解決と創造

上述したように,地方活性化をやり遂げることの出来る力は,都市や企業,国全体の経済の問題にも通用するであろう。もっと言うと,個人の生活・仕事・文化の「問題解決と創造」でも同じである。いや地方活性化こそ,すべての試金石であるといってもいいであろう。

しかし本書は,地方活性化の世界の中であれこれ格闘するあまり,地方政策に関わる行政に対する「批判」だらけとなってしまい,その世界がいささか息苦しくなっている。行政の現実について,把握できている人にはいいが,行政に期待している人を遠ざけてしまうかもしれない。少し視点を抽象化して,個人,企業,政府すべての「問題解決と創造」の方法から始め,主たる論点を「地方政策」に収斂すれば,素晴らしい実践本になると思う。

「地元経済を創りなおす」の方法を取り入れる

もう一点,著者は,ネタの選び方について,行政,コンサルタント,合意,古い発想等々を厳しく批判し,自分の頭で考えろということであるのだが,何をターゲットにするか,その下調べはしたほうがいいだろう。

これについては「地元経済を創りなおす-分析・診断・対策」(著者:枝廣 淳子)(Amazon)が,地域経済からお金の漏れをふさぐという観点から紹介する「産業連関表を用いる方法、地域経済分析システム(RESAS) を用いる方法、英国トットネスで行った「地元経済の青写真」調査、LM3という地域内乗数効果を見る方法、そして、より手軽な方法として、買い物調査や調達調査など」は下調べとして参考になる(ただし,同書の「漏れ穴をふさぐ」という方法論は一人歩きすると危険だと思うし,行政と民間を区別する視点に乏しいこと,また「成功事例」の紹介が安易であること等あって,なお検討の余地がある。)。マクロ経済の視点も,そこで自足しない限り,役に立つ。

地方創生への批判

今進められている「地方創生」には批判が多い。この問題は,中央政府と地方政府の「権力構造」,過去の地方政策の失敗等々も絡み,なかなか複雑な問題だ。

「地域再生の失敗学」(著者:飯田泰之他)(Amazon),「地方創生の正体-なぜ地域政策は失敗するのか」(著者:山下祐介,金井利之)(Amazon)等の学者本も読み応えがあるが,「地方創生大全」+「地元経済を創りなおす」の方法で問題を理解して読み進めると,これらの著者らが何をわかっており,何がわかっていないかが,浮かび上がってくるようだ。

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久しぶりの投稿

一ヶ月ぶり

ここしばらくの間,時間を取られる仕事が続き,記事を作成できなかった。今見ると前回記事を投稿してから1か月近く間が空いている。その間,涼しい夏から始まったものの,猛暑,台風,暴風雨が続き,やはり地球湯温暖化を前提として対処していかなくてはならないのかなというのが多くの人の実感だろう。

前回の投稿後も,次の記事の作成に向けてあれやこれや本を読んだり,購入をして準備はしていたから,全く手付かずだったのは,半月ちょっとだろうか(それでも購入本だけは増えていくが。)。

どんなことをやりかけていたか,取り急ぎ,思い出さないと半月もたつと忘れてしまう。

「問題解決と創造の方法と技術」の基本書の追加

まず「問題解決と創造の方法と技術」の基本4書として,「問題解決入門」,「創造はシステムである」,「アイデア大全」,「問題解決大全」をあげたが,「コンサルを超える問題解決と価値創造の全技法」(著者:名和高司)(Amazon)は題名があまりにもぴったりなので,ビジネス編としてを追加しようと思っている。

そして問題解決のためのインプット-プロセス-アウトプット(結果)という展開において,プロセスには介入できないということが前提だが,プロセスには物的なものだけではなく,人間の相互作用も含まれる。人間の相互作用を分析するのが「ゲーム理論」であるから,「問題解決と創造の方法と技術」としてTRIZだけでなく,「ゲーム理論」も組みこむべきであろう。「ゲーム理論」の本もたくさんあるが,ここでは岡田章さんの「ゲーム理論・入門 新版 人間社会の理解のために」(Amazon),「ゲーム理論ワークブック」(Amazon),「ゲーム理論 新版」(Amazon)を読み込み,基本書に追加していきたいと思っている。

社会的課題を解決する

「コンサルを超える問題解決と価値創造の全技法」には,社会的課題の解決として「ボストン コンサルティング グループ出身の社会思想家としては,アンドリュー・ウィンストン氏の活躍が注目される。かれは最新書『ビッグ・ピボット』で環境問題,資源問題,企業責任(村本注:簡単に言えば,暑い,足りない,隠せないということだ。)という三つの社会課題を解くための包括的なアプローチを提言している」と紹介されている「ビッグ・ピボット」(著者:アンドリュー・S・ウィンストン)(Amazon),あるいは,一度取り上げたことのあるマイケル.E.ポーターの「経済的価値と社会的価値を同時実現する 共通価値の戦略」(本の森)等も取りあげられている。両書とも私好みだ。今までは,企業が社会的課題の解決に取り組むと言っても嘘っぽいだけだったが,確かに,「暑い,足りない,隠せない」時代の中でそんな事は言っていられなくなったのだろう。

社会的課題としての「地方再生」

我が国における社会的課題として解決が望まれる大きな問題のひとつは「地方再生」である。そのため,国レベルで,地域再生法や,まち・ひと・しごと創生法等が立法され,多額の交付金が流れているが,その現状にも批判も多い。

「地方再生」のためのプレーヤーは,「地方政府」「中央政府」「地方企業」「住民」「中央企業」というところだろうが,「中央政府」「中央企業」が,国全体の経済について将来像を切り開けず迷走する中で,「地方政府」「地方企業」「住民」がする「地方再生」がうまくいかないと言って「監督」できるというのは,思い違いである。国全体の経済については現にうまく行っている国があるのだから,我が国の「中央企業」と「中央政府」の振る舞い方がまずいのだというこはよく分かるが(ただ,簡単なことだと言っているわけではない。),人口減少,経済の大きな変容の中で,「地方再生」をうまくいかせるのは至難の業だ。それをふまえてこれからどうすべきかが問題である。大都市の「町内会」も含めて地方だとすれば,どこにも課題がある。

ここでも初回すべき本が何冊かあるか,これは独立した問題だから別途紹介しよう。

価値創造と自立

個人が抱える生活・仕事・文化の「問題解決と創造」,さらには社会的課題の解決を行うためには,自戒を込めて言うのだが口先ばっかりではなく,「問題解決と創造の方法と技術」を身に付けてこれを駆使し,価値創造を実践し,それによって自立することが重要だとつくづく思う。

もちろん人は相互に影響作用し,相互に依存しているが,いつも何かに頼りっぱなしで自立できないのでは,少し困難な問題に直面すると,問題の解決ができなくなってしまう。中央の,政府も,企業も,立派なことを言うけれども,実態は,過去のストックや権力,権威に依存し,自立できておらず,困難な問題に直面すると,解決できないことが多い。

価値創造を行い,それによって自立するためには,昔取った杵柄は横に置き,新しいことを身に付け,発信していくことが必要不可欠であろう。そのための道筋をどうつけるか。

自立への道筋

思い返せば,私もずいぶん長い間弁護士の仕事をしてきたが,あまり仕事疲れしてなくて,仕事に限らず新しいことには興味を持つ方だ。

これについては,以下の4冊の本で流れをつけることができそうだ。

最近,「LIFE SHIFT」(著者:リンダ・グラットン, アンドリュー・スコット)(Amazon)という本があり,人生100年だから,学び直しとスキルの再習得が重要だということが強調される。そこで「マインドセット」(著者:キャロル・S・ドゥエック)(Amazon)が重要で,「硬直マインドセット」ではだめで,「しなやかマインドセット」が必要だということになる。

次に「しなやかマインドセット」に基づいてどのように学び直しとスキルの再習得をすればいいかについて「Learn Better」(著者:アーリック・ボーザー)(Amazon)が科学的に説明している。これは学習本としてなかなかの良書だ,要約箇所をあげよう。

「①価値を見いだす:学びたいと思わなければ学ぶことはできない。専門知識を習得するには,そのスキルや知識に価値があるとみなさなければならない。さらに,意味づけを行わなければならない。学習とはすなわち対象の意味を知ることである。②目標を設定する:知識を習得する初期の段階においては,集中が重要だ。何を学びたいのかを厳密に見きわめて,目的と目標を設定しなければならない。③能力を伸ばす:練習にも,他人と差がつく力をつけられるようなものがある。学習のこの段階では,スキルを磨き,パフォーマンスを向上させるためにそのことに特化した手段を講じる必要がある。④発展させる:この段階では,基本から踏み出して,知識を応用したい。スキルと知識に肉付けして,より意味のある形の理解を形成したい。⑤関係づける:すべてがどう噛み合うかがわかるフェーズである。私たちは結局,個別の事実や手順だけを知りたいのではなく,その事実や手順が他の事実や手順とどう関わり合うかを知りたいのだ。⑥再考する:学習には間違いや過信がつきものだから,自分の知識を見直し,自分の理解を振り返って,自分の学習したことから学ぶ必要がある。」。

学び直しとスキルの再習得について,アウトプットという観点から細かい技法を説明したのが「学びを結果に変えるアウトプット大全」(著者:樺沢紫苑)(Amazon)である。これは参考程度でいいだろうが,著者が本の中に書いてあるとおりの成果を上げているのだとすれば,参考にするに足る。

ここに上げた本はみんなベストセラーのようで,誰も学び直しとスキルの再習得の必要性を痛感しているということだろう。

隠せない時代

もう一つ関心事を上げておこう。

今は,戦後続いてきた理性尊重の時代から,米日の政府トップがそうであるような感情の時代だ(「経済の不都合な真実」(著者:ルディー和子)(Amazon)。それはそういうものとして捉え,対処するしかない。そういう中で,心の闇と憎悪がネット上で荒れ狂い,情報は隠せず(「炎上と口コミの経済学」(著者:山口真一)(Amazon),検索行為というビッグデータを通じて人の行動が明らかになりつつある(「誰もが嘘をついている」(著者:セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ)(Amazon)。これも同時代を知るという意味では,とても重要だし興味深い。

事程左様に新しい問題が押しかけつつあるので,もう一度態勢を整理しよう。