日本のAIビジネスはどうなるのだろうか

「AIと弁護士業務」の執筆状況報告4

 

AIビジネスに関する和書5冊

はじめに

日本のAIビジネスは今後どうなるのか,日本でAIビジネスを創造しようとする仕事に関わり,その意気込みやアドバイスを述べている和書を5冊紹介する(なお,「デジタル・トランスフォーメーションをめぐって」参照)。これらは,2019年4月15日の段階で私の目に入ったKindle本だけであり,関連する本は,R本も含めるともっと膨大であろう。

  • ①「未来IT図解 これからのITビジネス」(著者:谷田部卓)(未購入)
  • ②「いまこそ知りたいAIビジネス」(著者:石角友愛)(Amazonにリンク
  • ③「AIをビジネスに実装する方法 「ディープラーニング」が利益を創出する」(著者:岡田陽介)(Amazonにリンク
  • ④「問題解決とサービス実践のためのAIプロジェクト実践読本 第4次産業革命時代のビジネスと開発の進め方」(著者:山本大祐)(未購入)
  • ⑤「アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る」(著者:藤井 保文, 尾原 和啓)(Amazonにリンク

ここでは,すでに購入済み②③⑤の3冊について簡単に紹介しよう。いずれもシリコンバレーを経験する若い世代が書いた本であり,おじいさんはもとより,おじさんも置いてきぼりされる寂しさを抱くだろう。でもこの道はいつか来た道…概して人間そのものに関する考察が不十分なので,内容はどうしても微視的で一本調子だ。私たちが物事を俯瞰する知恵を持ち,改めて学ぼうという意識を持てば充分に対応できる。ただし⑤は大分趣きが違う。後述しよう。

「いまこそ知りたいAIビジネス」を読む

「いまこそ知りたいAIビジネス」(著者:石角友愛)Amazonにリンク

出版社等による紹介

本書は,私たちの仕事にAIがどのようにかかわってくるかを知りたい一般ビジネスパーソンや学生の皆さん,そして,実際にAI導入を考えている経営者や事業担当者の方にむけて書かれた,いわばAIビジネスの入門書です。

具体的には,「そもそもAIとは何なのか」から,「世界の最新AIビジネスではどんなことが起きているのか」「実際に自社にAI導入を考える際にはどんなステップを踏めばよいか」「今後のAIビジネスの課題とは何か」,そして,「AI時代に求められる人材とキャリア形成のあり方」といったことまで,文系ビジネスパーソンでもわかる平易な言葉で解説していきます。

平易な入門書といっても,著者はシリコンバレーを拠点に活躍する,AIビジネスデザインカンパニーの経営者。AI技術を使って企業の課題を解決するビジネスを展開しており,紹介される事例はいずれも最新,最先端のもの。実際にAIビジネスにかかわっている方や,エンジニア,データサイエンティストにも一読の価値ありの内容です。

覚書

「ハーバードでMBA取得,米グーグル本社勤務を経て,現在はシリコンバレーを拠点にAIビジネスデザイン企業を経営する著者が教える」 といわれると引いてしまうが,内容は,「AIビジネスの最新事情と「あたらしい働き方」」について,様々な問題に目配りしながら分かりやすく記述する,万人向け,一般企業向け入門書である。

第1章から第6章前半まではそのようなものとして読むとして,私が惹かれたのは,第6章の後半だ。すこし引用してみよう。

①「AI時代に生き残れる人,生き残れない人」から

アメリカで「CBO」という役職が生まれたが,CBOとは,技術コミュニティとビジネスコミュニティの架け橋となり,心理学や行動科学の知見を生かして会社のマーケティング戦略を考える役割の人を指す。2015年創業のスタートアップのニューヨークを拠点に活動しているレモネードという損害保険会社がある。この保険会社になぜ投資が集中しているかというと,人の行動を理解する意思決定論や行動経済学の研究を取り入れ,保険業界に画期的なイノベーションを起こしたからである。AIを徹底的に活用して人的コストを最小限に抑える代わりに,レモネードが投資しているのが,行動経済学に基づいた研究と,それを生かし生かしたモチベーション構築の仕組みである。レモネードは,デューク大学の心理学教授であるダン・アリエリー教授をCBOに迎え,保険会社と顧客の利害対立をなくすビジネスモデルを提唱し,『ソーシャルインシュランス(社会的な保険)』というコンセプトを生み出した。

これからのAI時代は,先ほどのレモネードの例のように,今あるものを組み合わせて,今までになかったものを生み出す力が求められる。今,アメリカで主流になりつつあるのは,AIバイリンガルを育てる教育だスタンフォード大学と並んで,コンピュータサイエンスの分野で世界1,2位を争う実績を持つカーネギーメロン大学のリベラルアーツ学部ではコンピュータサイエンス学部の学生も,リベラルアーツ学部の学生と同じクラスで哲学などの授業を取り,哲学部の生徒が解析授業を取る。たとえば,文学部では,「人文学解析」というクラスがあり,そのクラスではフランシス・ベーコン(哲学者)を中心とした近世イングランド地方の歴史上の人物がどうつながっていたかを表したデジタルソーシャルグラフを作ったりするという。これは歴史上の文学や調査などに基づいた情報を,ビジュアライゼーション技術を使ってツールにする,真のAIバイリンガルのスキルがないと作れない。

②「私たちはこれから何を学べばよいか」から

ムーク(MOOC=Massive open online course)という,インターネット上で大学の講義が受講できるシステムがある。AI時代になったときに,仕事を見つけることができるかどうかは,今後自分にどれだけ「リスキル」の投資ができるかにかかっている といえるだろう。日本でもリカレント教育の重要性が言われている。日本には終身雇用制度があるので,これまでは逃げ切りできるかもしれないといわれていた 40 代, 50 代の人たちも,これからは何らかの技術を身につけなければ100年時代を生き残れないといわれている。今後,日本でも意欲の高い層は自分で英語のムーク授業を受けどんどんキャリアアップしていくだろう。会社がフォーカスしなければいけないのは,意欲はあるが情報が足りない層,英語で学ぶことに抵抗がある層だ。ペラペラでなくてもいい。英語ができるだけで世界は何十倍,何百倍に広がるし,取得できる情報量が劇的に増える。

目次

第1章 ここがヘンだよ,日本のAIビジネス

第2章 AIビジネスの最先端を見てみよう

第3章 AIを導入したい企業がすべきこと

第4章 AIビジネスの課題とは

第5章 AI人材とこれからの日本

第6章 AI時代における私たちの働き方

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「AIをビジネスに実装する方法」を読む

「AIをビジネスに実装する方法 「ディープラーニング」が利益を創出する」(著者:岡田陽介)Amazonにリンク

出版社等による紹介

もはや「AI(人工知能)を試験的に導入してみよう」という時代は過ぎ,様々な企業が,現実のビジネスにAIやディープラーニング技術を活かした事業展開を行っている。

そうした動きは決して製造業やハイテク企業に限ったことではなく,小売・流通業や物流などなど,業界や業種を問わず急速に広がっている。

本書は,設立わずか6年で,国内企業数社でのAI導入支援の実績をもち,ディープラーニングが成果を出し始めた2012年から,いち早く同技術に注目してきたITベンチャーであるABEJA(アベジャ)の経営トップが自ら語る「AIのビジネスへの実装の具体的方法」。

AI・ディープラーニングをどう現実のビジネスに活かせばいいのか? 基本的なしくみから,実装・運用の成功要件,最新事例までを,文系ビジネスマンでも理解できるように,わかりやすく解説する。

覚書

2018年10月10日発行。この本は,非常に正直な本だと思う。「設立わずか6年で,国内企業数社でのAI導入支援の実績」という件が,そんなもん?という感想を抱かせるし,第5章で紹介されている「AIを導入した企業のビフォー& アフター」(ICI石井スポーツ,パルコ,武蔵精密工業,コマツ」の事例や,「画像,音声,テキストが新しいビジネスを生む」もびっくりしない。

第4章までのAI(機会学習)の基本的な説明と相まって,敷居の低い,手堅く正直な本といえるだろう。

目次

1章 なぜ、いまだにAI導入を躊躇するのか

2章 ネコでもわかるディープラーニングの原理

3章 AIの導入前に知っておきたいこと

4章 データ取得から学習、デプロイ、運用まで ~AI導入のプロセスを知る~

5章 AIを導入した企業のビフォー&アフター

6章 画像、音声、テキストが新しいビジネスを生む

7章 レバレッジ・ポイントにAIの力を注ぎ込む

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「アフターデジタル」を読む

「アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る」(著者:藤井 保文, 尾原 和啓)Amazonにリンク

出版社等による紹介

現在,多くの日本企業は「デジタルテクノロジー」に取り組んでいますが,そのアプローチは「オフラインを軸にしてオンラインを活用する」ではないでしょうか。

世界的なトップランナーは,そのようなアプローチを採っていません。

まず,来るべき未来を考えたとき,「すべてがオンラインになる」と捉えています。考えて見れば,モバイル決済などが主流となれば,すべての購買行動はオンライン化され,個人を特定するIDにひも付きます。IoTやカメラをはじめとする様々なセンサーが実世界に置かれると,人のあらゆる行動がオンラインデータ化します。つまり,オフラインはもう存在しなくなるとさえ言えるのです。

そう考えると,「オフラインを軸にオンラインをアドオンするというアプローチは間違っている」とさえ言えるでしょう。筆者らはオフラインがなくなる世界を「アフターデジタル」と呼んでいます。その世界を理解し,その世界で生き残る術を本書で解説しています。

デジタル担当者はもちろんのこと,未来を拓く,すべてのビジネスパーソンに読んでほしい1冊です。

覚書

この本は,上海で仕事をしている藤井保文さんと,「ITビジネスの原理」や「ザ・プラットフォーム:IT企業はなぜ世界を変えるのか?」の著者がある尾原和啓さんんが,驚異的な進歩を遂げつつある中国のIT・AIの「すべてがオンラインになる」現状を材料として,「アフターデジタル」を論じたものである。

とりあえずの対象は消費行動ではあるのだが,「アフターデジタル」においては,人の行動や社会のあり方が大幅に変わるということも議論しており,「デジタルエコノミーはいかにして道を誤る-労働力余剰と人類の富」(著者:ライアン・エイヴェント)との関係も含めて,少し時間をかけて取り組みたい。

目次

第1章 知らずには生き残れない,デジタル化する世界の本質

第2章 アフターデジタル時代のOMO型ビジネス~必要な視点転換~

第3章 アフターデジタル事例による思考訓練

第4章 アフターデジタルを見据えた日本式ビジネス変革

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詳細目次に続く

 

最近の知財法改正を一覧する

最近の知財法改正を一覧する

問題の所在

知財法は,古くからの歴史の風雨にもまれてきたわけではなく,新しい,したがって多くは人為的な法令であるから,政府が理解するその時々の社会・経済状況に応じて,次々と手が加えられやすい。我が国の知財法もその例にもれず,改正を追っかけるのが大変だ。

それでも当該法令が真正面から改正の対象となっているときは,まだ目に入りやすいが,他の法令の改正に伴って改正される場合は,本当にわかりにくい。

そこで,未施行分も含めて,最新の法令を調べるにはどうしたらいいのかを検討し,最近の知財法改正を一覧することにした。

法令検索

それにしても,政府がe-Gov(電子政府の総合窓口)で「法令検索」(外部サイトの記事にリンク)を提供していることは高く評価できる(一方,「行政文書」を隠そうとすることは,時代の流れに逆行し,そのうち破たんするだろう。)。

まず,「法令検索」の「法令名」で当該法令を検索すれば,「施行日」現在の最新の法令と「未施行」部分があることが分かる(「目次」の右隣にある)。

ただし,「データベースに未反映の改正がある場合があります。最終更新日以降の改正有無については、上記「日本法令索引」のリンクから改正履歴をご確認ください」とあるように,「施行日」が過ぎていても,条文に反映されていないことがあるが,せいぜい長くて2か月程度のタイムラグのようだ。その場合は,国立国会図書館が作成している,「日本法令索引」の改正履歴を見れば,どの法律による改正が反映されていないのかある程度の見当は付くが,複数の改正法があったり,法律の成立と施行日がずれていたりすることから,どの法律のどの部分がいつから施行されるのかは,「附則」等を確かめなければわからないので,一目瞭然とはいかないようだ。別の情報を探した方がいいかもしれない。このあたりはもう少し調べてみよう。

それと今気が付いたが,「未施行」欄には,未施行部分が施行されたときの将来の法令が出ている。上記のタイムラグがある場合も,ここに反映されていればいいのだが,どうだろうか。確認出来れば,ここの記述に反映しよう。

概説書を理解するために

ところで最新の法令を知りたいということとは別に,概説書等を読むためには,その概説書が書かれた後の法令改正も頭に入れておく必要がある。特に,頻繁に改正されることが多い知財法分野では,その必要性が大きい。

そこで試みまでに,知財5法プラス不正競争防止法について,平成26年以降の改正,及び未施行部分を網羅してみることにした。

作業は,当該法令の検索,未施行部分のピックアップ,及び当該法令について「日本法令索引」に記載された平成26年以降の部分をピックアップするということである。もっとわかりやすくまとまられている情報もあるだろうが,これも大事な作業である。ただこれに熱中すると,どうしても中味がおろそかになる。役所はどうだろうか。

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AIにつながる数学とプログラミングの基本の本

前置き

続・ゲームへのコンタクト」に掲載した「「ゲーム情報学概論」(の第Ⅱ部,Ⅲ部)と「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」を理解するために,いったん「コンピューターにできること,AIにできること」の迂回したが,さて「AIにつながる数学とプログラミングの基本の本」を勉強しよう。この記事は,単に書名を紹介するだけだ。

「急がばまわれ」?

ところで,私は前に「ツールとしての統計学」という記事を作成し,次のように記載した。

統計学は,数学的な処理を前提とするので,数学的な素養も必要だ。

そこで私は,今後,まず,「計量経済学の第一歩―実証分析のススメ」(著者:田中隆一)を頭に入れて,「改訂版 経済学で出る数学: 高校数学からきちんと攻める」(著者:尾山大輔他),「経済学で出る数学 ワークブックでじっくり攻める」(著者:白石俊輔 )を勉強しようと思っている。それに加えて「大学初年級でマスターしたい物理と工学のベーシック数学」(著者:河辺 哲次)がほぼ理解できれば,私が通常読む本の数学的な処理については,問題がなくなるだろう。急がばまわえれだ。

しかし,どうもいまだ常用するほど「大学初年級でマスターしたい物理と工学のベーシック数学」を理解したとはいいがたい。

そこでもっと「数学とプログラミングの基本の本」にさかのぼろう。

数学の基本の本

  1. 「数学大百科事典 仕事で使う公式・定理・ルール127」(蔵本 貴文 )(Amazonにリンク)
  2. 「その問題、数理モデルが解決します 」(浜田 宏)(Amazonにリンク)
  3. 「いつでも・どこでも・スマホで数学!- Maxima on Android活用マニュアル」(梅野善雄)(Amazonにリンク)

ⅰに目を通して復習しながら,ⅱに行こう。ⅲは,様々な計算ができるアプリの解説本だ。

プログラミングの基本の本

  1. 「小学校でプログラミングを教える先生のためのコンピュータサイエンスの基礎-隙間時間を使って1ヵ月でマスターする」(渡辺毅)(Amazonにリンク)
  2. 「教養としてのプログラミング的思考-今こそ必要な「問題を論理的に解く」技術」(草野 俊彦)(Amazonにリンク)
  3. 「独学で身につけるためのプログラミング学習術」(北村拓也)(Amazonにリンク)
  4. 「プリンシプル オブ プログラミング-3年目までに身につけたい 一生役立つ101の原理原則」(上田勲)(Amazonにリンク)

これは順番に目を通せばよさそうだ。ⅰを見ればわかるように,なんせ,来年から小学校でプログラミングを教えるそうで,さあ,焦ろう。

 

 

 

 

コンピューターにできること,AIにできること

AIにできること

続・ゲームとのコンタクト」で挙げた「ゲーム情報学概論」や「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」をしっかりと読み込んでAIを理解するためには,基礎的な数学とプログラミングの知識が必要なので,「AIにつながる数学とプログラミングの基本の本」を探してピックアップだけでもしておきたいと思っているが,その前に,人の知能とAIを,数学とプログラミングの観点から明解に論じている新井紀子さんの「コンピュータが仕事を奪う」を押えておいた方がいいと思い,触れておくことにする・

ところで,私が賛同する戸田山さんの,人間は「目的手段推論というちょっとした拡張機能つきのオシツオサレツ動物」であるというモデルにおいて,まず①「オシツオサレツ動物」がどのようなメカニズムによってどのように機能しているか自体まだほとんどわからないし,②ましてや「「目的手段推論というちょっとした拡張機能」はもっとわからない,ただ③「推論」(計算)そのものについては,数学・論理学で相当解明できており,数学とプログラミングはまさにその範囲の問題である。

これを極めて単純化して現状を理解すれば,コンピューター,AIによって,Ⅰ.①と②について,因果関係を解明してモデル化して「推論」(計算)するのは,今後できるともできないともわからないが,Ⅱ.今,ハードの性能向上と「推論」(計算)の工夫によって,これに帰納的に接近しつつある。ただ,「推論」(計算)における指数爆発は,いかんともしがたい壁であるが,これも分野によっては工夫できる可能性があるということになろうか。

「ゲーム理論」へ飛び火する

その中で新井さんが指摘する「どんな複雑なゲームにも,ナッシュ均衡点が必ず存在することが数学的に証明されています。そのため,少なからぬ経済理論の文献において,その不動点にプレーヤーが到達する(はず)であることを前提として話が進められています。しかし「情報科学の専門家の多くは,ナッシュ均衡の話を聞けば聞くほど,「それはおかしい」と思います。なぜなら,プレーヤーが均衡点を計算するには時間がかかるからです。それは,計算が速い人も遅い人もいる,という単純な話にとどまりません。仮に,均衡点を計算するのに指数時間かかるとしたら,地球滅亡の日まで計算し続けても,計算が終わらないかもしれないのですから。しかも,ナッシュ均衡の計算アルゴリズムはどれも指数爆発を伴うものばかりだったからです。数学的に「存在する」ということと「計算して,それを手に入れることができる」ということは,まったくの別物です。そして,実際に,ナッシュ均衡の計算困難性に関する情報科学者の直観は正しかったのです。2009年に,クリストス・パパディミトリウらは,ナッシュ均衡の計算は(2人ゲームの場合であっても)NP困難な計算問題だとみなしてよいことを証明しました。悪いことに,その近似を計算することも,同程度の計算困難さを持つため,「ナッシュ均衡に現実的な時間内にたどりつくことは,一般的には不可能」であることが示されたのです。ナッシュ均衡は存在しても、多くの場合たどりつけない」ということは,経済学の根幹を揺るがす大問題であることを考えると,もっと注目されてよい気がします。」とさらりと書いているが,これは本当なのだろうか。

新井さんの本

新井さんは,「目的手段推論というちょっとした拡張機能つきのオシツオサレツ動物」という観点は持ち出さないが,実質的に,これに近い発想をしていると思う。

「コンピュータが仕事を奪う」を読む

ところで私は新井さんの次の4冊を購入している。

  1. 「コンピュータが仕事を奪う」(Amazonにリンク
  2. 「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」(Amazonにリンク
  3. 「人口知能プロジェクト「ロボットは東大に入れるか」-第三次AIブームの到達点と限界」(Amazonにリンク
  4. 「数学は言葉」(Amazonにリンク

ⅰは,コンピューター,AIに出来る仕事には人はいらなくなるでしょう,ⅱは,人がコンピューターにできない仕事(身体的なものでなければ,意味を理解する仕事をする)といっても,どうも若い人に意味を理解する「学力」が失せつつあるようだ,Ⅲは,限界はあるが,すでにAIの「学力」は,若い人が意味を理解する普通の「学力」を上回っているようだ,さてこれからどうなるんでしょう,というようなところだろうか。ⅳは,文字通り,数学こそ「共通語」であるという観点からの数学のすすめだ。

この記事では,ⅰⅱを紹介しようと思うが,今日の時点(平成31年2月20日)の時点では,両書の詳細目次だけ掲載しておく。

 

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続・ゲームとのコンタクト

さらにゲームを知る

最近,私が関係しているゲーム制作受託会社において,著名なパブリッシャーの営業の先頭に立っていた人から,数回にわたって,ゲームに関わる話を聞く機会があった。せっかくの話を聞きっぱなしではまずいと思い,自分からこの分野の本を読んでみて,少し前に進んだ記事を作成してみようと思った。なお私は一度(2018年8月),「ゲームとのコンタクト」という入門編の記事を作成したことがある。

今回,読んでみたのは3冊の本である。

  • 「ゲームの面白さとは何だろうか」
  • 「ゲーム情報学概論」
  • 「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」

3冊の本の紹介

「ゲームの面白さとは何だろうか」を読む

「ゲームの面白さとは何だろうか」(著者:大森 貴秀,原田 隆史, 坂上 貴之 )(Amazonにリンク

出版社等による紹介 

「面白い! 」を学問してみよう。▼双六,チェス,トランプ,そしてデジタルゲームからオンラインゲームまで。古今東西,人々はゲームに魅了され続けてきた。

時にはやみつきになり,やめたくてもやめられないほどに夢中になる。なぜそんなに「面白い」のか?心理学の手法を駆使して,この難問に挑む。

私のコメントとメモランダム

コメント

第3章までは,ゲームの面白さを実験によって(しかも行動分析学の手法を前面に出して)解明しようとする試みだが,ある程度の成果は出たが,なかなかうまくいかないねというところだろうか?何となく常識で判断していることを,実験で明らかにすることはなかなかむつかしい。

第4章で,ゲームの負の部分としての「ゲーム依存」,面白さを展開する「ゲーミフィケーション」,そして将来の「雑多な展望」を論じる。

私は,「ゲーミフィケーション」(もともとはゲームプレイではない活動がなされている環境にゲーム的な要素を導入することで,あたかもゲームであるかのように人々がその活動に関わるようになるという,環境のデザインを指している用語)ということは知らなかったが,この分野にもは,なかなか面白そうな本があるし,ここで紹介されている「キリギリスの哲学-ゲームプレイと理想の人生」(著者:バーナード・スーツ)(Amazonにリンク)も是非一読してみたい。なお「ゲーミフィケーション」のついての和書は商売ネタにしようとする本が多いようだが,翻訳本は検討に値する。次の3冊を挙げておこう。ところで,引用して気が付いたのだが,ⅡとⅢは,同一著者だ。Ⅱは明るいが,Ⅲは読むのがいささかつらい内容だが。

  1. 「GAMIFY ゲーミファイ-エンゲージメントを高めるゲーミフィケーションの新しい未来」(著者:ブライアン・バーク)(Amazonにリンク
  2. 「幸せな未来は「ゲーム」が創る」(著者:ジェイン・マクゴニガル)(Amazonにリンク
  3. 「スーパーベターになろう!-ゲームの科学で作る「強く勇敢な自分」 」(著者:ジェイン マクゴニガル)(Amazonにリンク
メモランダム

ゲームの面白さには,システム,プレイ,エピソードの3つのレベルがある。

面白さの変数をどうやって図るのかの測定方法と測度には確立したものはなく,そこから研究を始めた・

ネット上の評価は圧倒的に「つまらない」とする主張が多いが,その原因の具体的指摘にはなっていない。ユーザビリティテストの結果は,ゲームの面白さを実験で測定することのむつかしさを痛感させた。プレイ中の行動観察でも成果は出ない。ゲーム選択実験は,ゲームの違いが明確過ぎても微妙でもうまくいかない。

気先行刺激-行動-後続刺激の三項随伴性の,強化反応休止に注目し,それが面白さの指標となるか実験を重ねた,

スロットゲーム(多段階抽選ゲーム)実機に手を加え,アタリハズレが反応時間に及ぼす影響に関係のない刺激は取り去り実験したが,メダルの払い出しは面白さの上で外せない要素なので惜しいハズレである「ニアミス効果」も含めて実験した。アタリ,ニアミス共に反応時間が遅くなった。

報酬量(払い出し金額)と頻度については,「高価値か珍しいものが魅力的である」という自然な結果が確認できた。

ゲームの面白さは単純なエピソードの面白さの加算ではなく,その対比や相乗効果によって生まれる複雑な心理現象である。

「ゲームの面白さとは何だろうか」の「詳細目次」は後記

 

「ゲーム情報学概論」を読む

「ゲーム情報学概論- ゲームを切り拓く人工知能」(著者:伊藤 毅志, 保木 邦仁 , 三宅 陽一郎 )(Amazonにリンク

出版社等による紹介 

ゲームは,古くから人工知能,認知科学の中心的な研究テーマとして扱われてきた。本書では,まずこの研究分野の基礎的な知識と歴史を押さえ,それを支える重要な理論について述べ,デジタルゲームの応用分野まで概観する。

★松原仁先生(公立はこだて未来大学)の書評★

ゲーム情報学というのはゲームを対象とした(広い意味での)情報処理の研究領域である。「ゲーム情報学」という名称ができたのは1999年に情報処理学会で研究会を立ち上げたときなので,まだ20年程度しか経っていない若い領域である。人工知能のスタートはチェスの研究から始まりチェスを対象として数多くの貴重な成果が得られマッカーシーは「チェスは人工知能のハエ」と言った。ハエを対象とした研究で遺伝学が格段に進歩したように人工知能もチェスを対象とした研究で各段に進歩したということである。しかし日本ではゲームは遊びと見なされてゲームを対象とした研究が疎外される時期が長く続いた。日本は人工知能の研究で世界に出遅れたのだが,その理由の一つにゲーム研究の軽視があったのである。

日本には将棋と囲碁(囲碁は中国発祥のゲームだが今のように発展したのは日本である)という貴重なゲームがあるので,それを対象とした研究をしない手はないということで遅ればせながらゲーム情報学という名称を冠した研究領域を立ち上げた(もっともらしい学問の名前をつけないと認められなかった)。それから20年でようやく体系化にこぎつけることができたのが本書である。伊藤氏が思考ゲームの認知科学的な側面を,保木氏が思考ゲームの情報科学的な側面を,そして三宅氏が最近日本でも盛んになってきたデジタルゲームへの応用を説明している。これまで日本でゲームを研究対象としたくても基本文献が存在しなかったのだが,これからは本書を推薦できる。ゲームの研究を進める上での基礎を本書でぜひ学んでほしい。たとえば意外と敷居が高いゲーム理論(たとえば「ナッシュ均衡」など)の基礎についても学ぶことができる。本書が出版されたことは今後のゲーム情報学の発展のためにとてもうれしいことである。ゲームのプログラムに興味をもったらぜひ最初にこの本を手に取ってほしい。

私のコメントとメモランダム

コメント 

非常にしっかりした構成,内容の本で,ゲームの制作,販売に関係する人,AIの最新動向に興味のある人には,次の「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」と並んで外せない本である。この本は,第1章でゲーム開発のこれまでの経緯,第2章でそのために必要なプログラミング,数学等の基礎知識,第3章で,ゲーム設計やゲームAIについて検討されている。門外漢には,第2章が読みにくいので,理解するための数学やプログラミングの基礎知識について,別途,取り上げることにしよう。

 因みに,「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」は,世界中の名人に勝ったアルファ碁に焦点を当てて解説しており,字面だけならは非常にわかりやすい。

メモランダム

作成中

「ゲーム情報学概論」の「詳細目次」は後記

 

「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」を読む

「最強囲碁AIアルファ碁解体新書(増補改訂版)-アルファ碁ゼロ対応 深層学習,モンテカルロ木探索,強化学習から見たその仕組み」(著者:大槻 知史,監修:三宅 陽一郎 )(Amazonにリンク

出版社等による紹介

【本書の概要】本書は学術論文(NatureやGoogleのサイト)などで提供されている難解なアルファ碁およびアルファ碁ゼロの仕組みについて,著者がとりまとめ,実際の囲碁の画面を見ながら,アルファ碁およびアルファ碁ゼロで利用されている深層学習や強化学習の仕組みについてわかりやすく解説した書籍です。特にデュアルネットワークはまったく新しい深層学習の手法で国内外の技術者の関心を集めています。本書を読むことで,最新AIの深層学習,強化学習の仕組みを知ることができ,

自身の研究開発の参考にできます。また著者の開発したDeltaGoを元に実際に囲碁AIを体験できます。

【増補改訂のポイント】Chapter1から5の部分は,よりわかりやすく内容を加筆修正しています。またChapter6はアルファ碁ゼロに対応しています。改訂にあたり,色数も2Cに変更。よりわかりやすいビジュアルになっています。

私のコメントとメモランダム

コメント

この本は,アルファ碁を支える技術として,ディープラーニング,強化学習,探索を3本の柱として取り上げ,それがどのようなものであり,どういう過程を経て能力を向上させて,世界中の名人に勝てるようになったかを,技術的に丁寧に説明しているようである。今の時点で,あれこれは言えないが,とにかく読みやすい本のつくりになっており,「ゲーム情報学概論」と交互に目を通しながらその内容を理解していくと,今のAIの最前線が理解できるのではという期待を持たせる本である。

メモランダム

作成中 

「最強囲碁AIアルファ碁解体新書」の「詳細目次」は後記

 

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PC・IT・AI技法

  この記事は,これまでに作成した記事を利用した部分が多く含まれています。「人:健康と行動」,「行動各論」,「仕事」の,<この項目に関連する記事>です。

PC・IT・AI技法をめぐる現状

この項目では,PC・IT・AI技法を,実践的な「仕事に役立つPC・IT・AI技法」と,これを支える「PC・IT・AIの理論と技術」にわけて検討する。

ただこの分野は,10数年前から「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーが加わり,すべてがますます複雑化し,その変化は劇的に加速されつつある。われわれは,この「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーによる「ハリケーン」に見舞われ,この分野は,制御する対象どころか,その現況・将来を把握・予測するのさえ,困難になりつつある。このような現実がどう動くのか,内外の新しい本を「世界と現在の未来を知るために」において検討してみた。

その中で,一方で,再現ない開発と発展の夢物語を語って自分の利益につなげようとする輩,一方で,サイバー空間でこれを悪用しやはり自分の利益につなげようとする輩が多発し,普通の市民としてこれらに立ち向かうのはなかなか骨が折れる。

仕事に役立つPC・IT・AI技法

今の時代は誰でも,自分の生活や仕事に,PC(スマホを含む)・IT・AIの技法を活かすことは大切なことだ。しかし現実は上記したとおりでなかなか大変だ。特にAIは,われわれの仕事を奪うとさえいわれている。以下,私の仕事の限りで,役に立つPC・IT・AI技法を簡単に検討する。

AIする前に

AIが,コンピュータやインターネットの技術的進展とデータ量の増加を背景に,従前の機械学習(プログラミング)にディープラーニングの手法を組み込んだ情報処理技術の最前線だとすれば,AIに心をとらわれる前に,今あるコンピュータ,インターネット,プログラミングに基づくIT技法を使いこなすことが,弁護士がAIにつき進むための前提である。「AIする」(あいする)はギャグです。

重要な法律関連情報の収集

弁護士が業務でする情報処理のうち,当面,もっとも重要なのは,法律関係情報の収集分析である。これについては,何種類かの,判例,法令,法律雑誌の検索システムが提供されている。私は,「判例秘書」を使っている。

通常,判例検索システムには掲載している雑誌に含まれる以外の論文等は掲載されていないので,補足のため「法律判例文献情報」を使っている。ただ,これは単に文献の名称や所在が分かるだけで,文献がオンラインで見れるわけではない。法律のきちんとしたコンメンタールが,ネットで検索等で利用できれば便利だろうが,今のところ限られたものしかないようである。私は,パソコン版の「注釈民法」は利用しているが,民法改正でどうなることやら。

ところでアメリカのレクシスネクシスが開発中の「Legal Advance Reserch」のデモを見たことがあるが,州によって法律が違うこともあって,法令,裁判例,陪審例,論文,関連事実等,膨大になる事実を収集し,一気に検索,分析,可視化できるデータベースとのことである。これまでアメリカの弁護士が膨大な時間を費やしていたリサーチの作業時間が一気に減り,弁護士のタイムチャージの減少(いや,弁護士の仕事の生産性の向上,効率化)とクライアントの経費削減が実現しつつあるようである。ついでにいうと,同じくアメリカの弁護士が膨大な時間を費やしてすることで依頼者の大きな負担になっているe-ディスカバリーも,AI導入で,これもタイムチャージの大幅な減少がはかられつつあるとのことである。我が国において「リーガルテック」とか「レガテック」とかをいう人がいるが,やがて多くの工夫に支えられてその方向に行くとは思うが,現状では単なる「商売」以上とは思えない。

判例,法令,文献検索以外の技法

そこで前項の重要な法律関連情報(判例,法令,文献等)の収集以外で,今行われている弁護士業務を支えるIT技法を集めている本「法律家のためのITマニュアル【新訂版】」,「法律家のためのスマートフォン活用術」を紹介する。いずれも私が昔所属していた「日本弁護士会連合会 弁護士業務改革委員会」の編著だ。

そのほかに,税理士さんがIT技法を駆使している「ひとり税理士のIT仕事術」(著者:税理士 井ノ上 陽一)も役立ちそうなので紹介しておく。

それともともと裁判所がワープロ「一太郎」を使っていたことから,私もワープロというより清書ソフトとして「一太郎」を使っていた。Wordには不慣れなので,いろいろと勝手なことをされて「頭に血が上る」ことが多い。そこで「今すぐ使えるかんたんmini Wordで困ったときの解決&便利技」(Amazonにリンク)と,「Wordのムカムカ!が一瞬でなくなる使い方 ~文章・資料作成のストレスを最小限に!」(著者:四禮静子)(Amazonにリンク)を紹介しておく。「頭に血が上る」のは,私だけではない。

ここで紹介した5冊については「仕事に役立つIT実務書」として「詳細目次」を作成したので,それを見て必要な項目を参照すればいいだろう・

PC・IT・AIの理論と技術を学ぶ

私は学んだことがない

PC・IT・AIについてきちんと理解し,これを当面の事務処理だけでなく,今後の生活や仕事全般に生かしていくためには,その理論と現在の技術をきちんと押さえる必要がある(私で言えば平成30年6月にゲーム制作受託会社の社外監査役に就任したので,ゲーム関係の技法もフォローしたい。)。もちろん,上記のとおり現在のサイバー空間は大変な問題を抱えているが,それに的確に向かい合うためにも,理論と技術をマスターすることは大切だ。そうでないと単なる「怖がり」か「物好き」に終わってしまう。こういう問題は「情報科学」として学ぶのだろうが,これは私の若いころには(多分)なかったか,少なくても一般的ではなかった分野なので,私には,丸々,穴が空いている。普段からそういうプレッシャーがあるからか,折に触れ,この分野の主としてkindle本を購入してきた。今の時点でこれをまとめ,今後必要となる論理と技術を,適宜取り出せるようにしておきたい。

理論と技術への架橋

ただ「理論と技術」へ行く前に「情報総論」と,情報をめぐるルールである「情報法と判例」は別途検討しておいた方がいいし,サイバー空間における「サイバー攻撃とサイバー煽動」も急いで検討すべきであるが,これらは「環境:自然・人工物・情報]の「情報とサイバー空間」に位置付けることとし,ここでは,「コンピュータ」,「論理・アルゴリズム・プログラミング」,「インターネット・Web」,「AI」に分けて紹介するが,暫定的なものである。取り上げた本も積読のものが多いので,その帰属も不適当だったり,重複も多いように思う。

なお「IT・AI本がたまっていく」という記事を作成したことがある。

ただこの項目を設けることによって,「PC・IT・AI」の全体像が浮かび上がってきて,意味あることだと思う。今後,重要な本から,追々,「…を読む」にしていこう。

なお「法と弁護士業務」に関連する項目として「AIと法」「IT.AI法務」が掲載されている。

コンピュータ

論理・アルゴリズム・プログラミング

インターネット・Web

 AI

老いに向かう日々

自分はまだ先だと思っていたが

先日,中高の同窓会があり,隣に座ったY君が,少し指の曲げ伸ばしに支障があるといって,お医者さんのM君に相談したところ「老化だ」と一蹴されたことに衝撃を受けていた。

私はこれまであまり老いということを意識していなかったが,もうしばらくすると65歳になるとなれば,「あまり若くはないわな」ぐらいは考えざるを得ない。いろいろな身体の機能が加齢とともにだんだんと衰えていく(あるいは急速に衰えていく)のは間違いないことだから,そろそろ老いや死に向き合う方が良さそうだ。

老・死とは何か

「生物学上では,死は単純明快です。人間の身体は,大部分が自己再生を繰り返しながら,長期間存続します。しかし,種の進化においては比較的短い一部分しか担っていません。種という生物学的視点で考えると,個体に求められる生存期間は,生殖期とその後の子育てに必要な期間を併せてせいぜい数年間だけです」(「初めて老人になるあなたへ」(著者:B・F・スキナー )(Amazonにリンク))。

「遺伝によって決まる将来に手を加える自然選択の力は,個体が年を取るにつれて弱まり,老化をもたらす突然変異が世代を経るにつれて蓄積するのを許容する」(「なぜ老いるのか,なぜ死ぬのか,進化論でわかる」(著者:ジョナサン・シルバータウン)(Amazonにリンク))。

そういえば,一昨年の年賀状に次のフレーズを引用した。

「「進化は,人間が日焼けしようと,皮膚がんになろうと,おかまいなしだ。なぜなら,日焼けも皮膚がんも,生殖能力に影響しないからだ…がんになるのが,たいてい子どもを持つ年齢を過ぎてからなのは,偶然ではない。進化は,子どもを持つ可能性が低い40歳代,50歳代の人間を守ることには,あまり関心がないのだ。」,「自然は善良かもしれないが,愚かでもなければ,情け深くもない。年寄りにエネルギーを注ぐような無駄はしないのである。したがって,体が新しい生命を世の中に送り出せなくなった後は,私たちは自分で自分を守るしかない」(「ジエンド・オブ・イルネス」(著者:デイビッド・B・エイガス)(Amazonにリンク))。

自分で自分を守る方法は,適切な「食動考休」の実行であることは誰でもわかる。このうち,もっとも重要なのは,動(運動)である。

まず運動によって肥満状態を解消し「一流の頭脳」を身につけよう

すこし古くなったが「健康・老化・寿命-人といのちの文化誌」(著者:黒木登志夫)(Amazonにリンク)という中公新書は,読みやすく分かりやすい好著だが,その構成は,寿命,老化の後に,肥満,糖尿病-恐るべき合併症,循環器疾患-血管が詰まる,破れる,がん-敵も身の内,感染症-終わりなき戦い,生活習慣-タバコ,食事,運動,健康診断(個人が責任をもつ生活習慣病/まずタバコをやめる/ほしいままに食事をすれば,諸病を生じ,命を失う/運動で脂肪を燃やす/健診を受けよう)と続く。

老いを迎えて,一番病・死に結び付くのは「肥満」であるということ,したがって,まだ可能であるのなら,とにかく肥満から脱することを最優先すべきである。運動では痩せないことを強調する人もいるが,食事制限だけで一時的に痩せても,それはかえって体を壊すだけだ。しかも,運動は,ストレスを取り払い,集中力,やる気,記憶力,創造力,学力を増強し,脳の老化に歯止めをかけて健康寿命を長くするというのだ(「一流の頭脳」(著者:アンダース・ハンセン)(Amazonにリンク))。そのメカニズム,証拠についての同書の説明は説得力がある。同書で薦められている運動は,最低1日30分のウォーキング,またはランニングを週に3回,45分以上行うことだけだ。さあ考えどころだ。私のお薦めは,スロージョギングだ。

老いと付き合う準備のための諸本

肥満状態の解消に取り組んでいるときは,そちらに力を取られるが,それと並行して,老いに入ったときに老いとの付き合う準備をすべきであろう。特に通常,仕事を離れることは大きな岐路になるから,それまでには一応の心構えを持つべきだろう。退職していきなり「きょうよう」(今日する用),「きょういく」(今日行くところ)がなくなることはつらい。

教養,教育のある人のための心構えとしては,上でも引用した「初めて老人になるあなたへ」(著者:B・F・スキナー )(Amazonにリンク)がお薦めだ。章題を挙げておくと,「老いを考える /老いに向き合う /感覚の衰えとつきあう /記憶力を補う /頭をしっかりと働かせる /やりたいことを見つける /快適に暮らす /人づきあいのしかた /心を穏やかに保つ /死を恐れる気持ち /老人をはじめて演じる /見事に演じきる」とだが,記述がユーモアと教養に満ちていて,勧めていることも,心遣いにあふれている。スキナーという人がわが国ではあまり例にない教養のある立派な人だということがよくわかるのだが,どうして行動分析学派は,ああも孤立し戦闘的なのだろうか。

何でも書いてあり,内容もそこそこ信頼できるいわばマニュアル本として,「東大が考える100歳までの人生設計-ヘルシーエイジング」(著者:東京大学高齢社会総合研究機構)(Amazonにリンク)がある。ただ「東大が考える」という題名を見て嫌になる人も多いだろう。私もそうだ(同じ著者で「東大がつくった高齢社会の教科書: 長寿時代の人生設計と社会創造」があるが,こちらは自然に受け入れられるが。)。

あと「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)-100年時代の人生戦略」(著者:リンダ グラットン)(Amazonにリンク)は,改めて紹介するまでもない,必読書だろう。上記の「東大がつくった高齢社会の教科書」とともに検討したいと思っている。

老いを少し突き放して検討している本として,既に「図解 老人の取扱説明書」を紹介している。

 

「こころ」と行動の基礎

2019/04/04更新

「こころ」と行動

この世界の複雑な様々なシステムは,おおよそ,人の行動(言語行動を含む)とモノ・情報の動き,及びその相互作用から成り立っていると捉えることができよう。

世界の様々な複雑なシステムを理解するためには,まず人の行動を基礎に置くべきだろうが,そのためには,進化論を踏まえ人の行動と「こころ」との関係についてもあまり的外れでない理解をする必要があるだろう

その上で人の行動とモノ・情報の動き及びその相互作用を捉えることにができれば,様々なシステムのどこをどのように動かせば問題解決につながるかという道筋も見えてくるだろう。

そこで「「こころ」と行動の基礎」という項目を設けたが,この問題に深入りすると,それこそ一生ここから出てこれなくなるので,ここでは,「基礎」としてさほど的外れでないであろう概観ということで済ませることとし,そのための7冊を検討するとにする。

7冊の本

そのために7冊の本を紹介しよう。

  1. 「入門! 進化生物学-ダーウィンからDNAが拓く新世界へ」(著者: 小原嘉明)
  2. 「「こころ」はいかにして生まれるのか」(著者:櫻井 武)
  3. 「哲学入門」(著者:戸田山和久)
  4. 「意思決定の心理学-脳とこころの傾向と対策」(著者:阿部修士)
  5. 「進化教育学入門 動物行動学から見た学習」(著者: 小林朋道)
  6. 「行動の基礎」(著者:小野 浩一)
  7. 「〔エッセンシャル版〕行動経済学」(著者:ミシェル バデリ)

1の「入門! 進化生物学」は,最新の知見に基づき,進化論・遺伝学について,幅広く検討した本,2「「こころ」はいかにして生まれるのか」は,「こころ」をどう捉え,考えるべきかについて,最新科学を踏まえ説明している。この本は,行動理解につなげる意識がないと,いささか散漫に思える内容だが,人間の行動理解を念頭に置くとなかなか素晴らしい。以上が,前提となる2冊だ。

次にこれらの前提となる知識を踏まえて,人間の「「こころ」と行動」を理解するために,私もこれまでにも紹介し,折に触れて目を通しているがいまだによく頭に入らない3「哲学入門」が必須だ(特に「第5章 機能」)(本の森での紹介1本の森での紹介2)。これを読み込めば,「こころ」と行動の基礎」についての端的な理解が得られるだろう。

3もそうだが,人間を進化論を踏まえて理解するということは,人間を動物の延長上に捉えることであり,そのためには,心理学者が書いた4「「意思決定の心理学」,「動物行動学者が「学習」について書いた5「進化教育学入門 がお薦めだ。ただし,自分の学習やAI時代にどう生かすかは,今後の問題だ。

更にこれまで一貫して行動を人間理解の焦点にしてきた行動分析学から,6の「行動の基礎」を取り上げたい。現時点の行動分析学を,進化論や,動物行動学を踏まえどう考えるかは,賄家」興味深い問題だ。

そして最後に,7「〔エッセンシャル版〕行動経済学」を取り上げる。「行動経済学」の本は,ともすると,エピソード集になりがちで,いいささか使いにくい。この本は,入門書であろうが,人間の行動とのからみが要領よくまとめられていてお薦めだ。なお,行動経済学も進化論(進化的適応)を踏まえた行動科学であるという5の指摘はそのとおりだと思う。

以下,7冊の本の内容を紹介するが,現時点(2019年4月4日)では,紹介は,一部だけになっている。

「入門! 進化生物学」

作成中

「「こころ」はいかにして生まれるのか」

「「こころ」はいかにして生まれるのか-最新脳科学で解き明かす「情動」」(著者:櫻井 武)(Amazonにリンク)

まとめの紹介

この本はたまたま,原著に「まとめ」があるので,取り急ぎ,それだけ紹介しておこう。末尾に詳細目次も掲載した。

第1章「脳の情報処理システム」のまとめ

1 脳において大脳皮質は情報量の大きな情報を速く処理するために,「後づけ」で増築された演算装置である。

2 大脳皮質は感覚情報を要素ごとに分解してデジタル的に処理し,それを脳内で再構成している。

3 人の脳は前頭前野がとくに発達しており,感覚情報の統合的理解,認知,未来予測などに関与している。

4 ヒトに備わった,他者の立場に立って考え「共感」することができるという能力は,「こころ」を考えるうえで欠かせない機能である。

第2章「「こころ」と情動」のまとめ

1 情動とは感情の客観的・科学的な評価である。

2 情動は「情動体験」(≒感情)と「情動表出」(身体反応)に分けられ,後者を観察することにより客観的に記載できる。

3 情動は脳がつくりだすが,その結果,引き起こされた情動表出は脳にフィードバック情報を送り,情動を修飾する。

第3章「情動をあやつり,表現する脳」のまとめ

1 情動は大脳辺縁系でつくられる。

2 大脳辺縁系は記憶にも深く関わっており,海馬は陳述記憶の生成に,扁桃体は情動記憶の生成に重要である。

3 感覚は大脳皮質と大脳辺縁系で並列処理され,前者は感覚情報の物理的側面を,後者は情動的側面を受けもつ。

第4章「情動を見る・測る」のまとめ

1 情動の高まりは表情をふくむ行動,交感神経の興奮,副腎皮質ホルモンの上昇に表れる。

2 情動は行動,自律神経系,内分泌系の測定によって観察できる。

3 脳機能画像解析により扁桃体の興奮を測定することも情動を測定する一手段である。

4 動物を用いて扁桃体や視床下部室傍核の活動を調べることにより,情動を推し量ることができる。

第5章「海馬と扁桃体」のまとめ

1 海馬は新たな陳述記憶の生成に不可欠である。

2 陳述記憶は時間がたつにつれて大脳皮質,とくに側頭葉皮質に移行する。

3 扁桃体は情動記憶を受けもつ。

4 ストレスホルモンは陳述記憶を弱め,情動記憶を強くする。

第6章「おそるべき報酬系」のまとめ

1 ドーパミンが側坐核に放出されると,その原因になった行動をやめられなくなる。

2 ドーパミンは腹側被蓋野に存在するドーパミン作動性ニューロンから供給される。

3 前頭前野は不確実な報酬を大きな報酬ととらえ,ドーパミンの放出を促す。

4 予測した報酬の大きさと,実際に得られた報酬の差(報酬予測誤差)が,前頭前野が感じる報酬の大きさとなる。

第7章「「こころ」を動かす物質とホルモン」のまとめ

1 脳内には「こころ」の機能に強く影響をおよぼすたくさんの種類の脳内物質が存在する。

2 血液中をめぐる多くのホルモンも,脳機能を強く変容させる。

終 章 「こころ」とは何か

ここの「まとめ」は原著にはない。

・私たちは前頭前野の機能により,自らがおかれている環境を理解し,自分の身体の状態を認知しながら生活している。前頭前野は意識や認知,論理的思考,内省,倫理的判断,未来の予測などに深くかかわっており,また,思考に用いる作業記憶もこの部分に存在する機能である。作業記憶の内容は,現時点で私たちが認知していることである。私たちの「自我」や「意識」はこの部分に存在すると言っても間違いではない。しかしながら,私たち自身の行動の選択に,前頭前野がおよぼしている影響は,実は限定的なものでしかない。もっと強く行動をドライブしているのは,根源的には脳の深部の構造であり,無意識の過程なのである。私たちは自分の行動をすべて自らの意志でコントロールしていると錯覚しがちであるが,私たちの行動を意識がコントロールしている部分は,ごく一部である。

・ヒトや動物は外界の状況を,感覚系を介してキャッチしている。その情報は,視床を介して扁桃体にやってくる。その人が恐怖を感じる対象や状況を認知したときに,扁桃体は強く興奮する。扁桃体が中心核を介して視床下部や脳幹に情報を送ると,自律神経や内分泌系が変動するとともに,脳内でもモノアミン系ニューロン群が大きく活動を変える。とくに青斑核ノルアドレナリンニューロンの活動が増え,扁桃体に作用することにより,恐怖行動は強化される…一方で,喜びを感じているときには,報酬系の活動が起こっている。報酬をゲットできる,あるいはゲットできるかもしれないと前頭前野が認知することにより,腹側被蓋核のドーパミン作動性ニューロンが活動することが,喜びの「こころ」をつくる。ドーパミンは側坐核に働き,喜びを生むに至った行動を強化するとともに,扁桃体にも情報を送り,筋肉の緊張を緩める方向に働く。黒質のドーパミン作動性ニューロンも働いて筋肉はよりスムーズに動くようになり,身体全体の動きは大きくなる。

「哲学入門」…「「こころ」と行動の基礎」

人間の行動は,まず第一にオシツオサレツ動物と同じ仕方で決定される。いくつかの傾向性があり,それがニーズと知覚情報によってアフォードされるという仕方だ。これがベースになる。

ところが,人間はこうした傾向性を調整する別の仕方を獲得した。その結果,目的手段推論の結果によって,ベースにある傾向性をリセットできるようになった。だとするなら,目的手段推論を入力(知覚・欲求)と出力(行動)をつねに媒介しているものと捉えるのはよろしくない。いつでも立ち止まって,いまやろうとしていることがベストなのかを考えていたら行動の時機を逸してしまう。ときどき問題が重要なとき,たっぷり時間があるとき,行為を止めて,私たちは目的手段推論を作動させる。で,その結果に応じていまの傾向性をリセットして,新しい傾向性にあとをゆだねる。

人間はオシツオサレツ動物とは質の異なったまったく別次元の存在なのではない。目的手段推論というちょっとした拡張機能つきのオシツオサレツ動物なのである。ただ,この拡張機能はバカにできない。「人間らしさ」のルーツがこの拡張機能にあるからだ

「意思決定の心理学」

作成中

「進化教育学入門」

作成中

「行動の基礎」

「行動の基礎-豊かな人間理解のために」(著者:小野 浩一)(Amazonにリンク)

これは当面,末尾に詳細目次だけを掲載しておく。

「〔エッセンシャル版〕行動経済学」

「〔エッセンシャル版〕行動経済学」(著者:ミシェル バデリ)(Amazonにリンク)

これは当面,末尾に詳細目次だけを掲載しておく。

詳細目次に続く

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健康に生きるためのお薦め3書プラスα

健康本はいろいろあるけれど

健康本は,ダイエット本を中心に山ほどある。どれも似たりよったりで,とにかくその「教え」を実行しさえすれば,何かの役に立つだろうともいえるが,ただ下手に非科学的なカルト本にはまると,かえって健康を害することもあるだろう。またあれこれ読み漁り,どれも中途半端だが,全体では過剰というのも困りものだ(特に「食」はそうだ。)。

私も人のことはいえず,次々と健康本を買い漁った結果,だんだん収拾がつかなくなってきた。

ここらで中心になる本を見定めて,そこで足りない分は補充するというスタンスを取りたいと思う。

私は科学的な素養は不十分だが,読んだ限りで十分に科学的で,かつ健康に生きるための核心をついていると思う本を3書紹介したい。

ダイエット,運動,病気への対応という順番になった。ただいずれの書の内容もそれに限られているわけではない。

健康に生きるための3書

果糖中毒

1書目は,「果糖中毒-19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか? 」(著者:ロバート・H・ラスティグ)だ。この本は,簡単に紹介したが,肥満の原因を果糖と見定め,その「解毒剤」として,「食物繊維」と「一日15分の運動」を挙げる。こう書くと何の変哲もないようだが,その論述は肥満をめぐって対象を広く検討し,科学的で鋭い。今一押しである。

一流の頭脳

2書目は「一流の頭脳 」(著者;アンダース・ハンセン)だ。この本が面白いのは,「身体を動かすことほど、脳に影響をおよぼすものはない。 これが本書のテーマであり、とりわけ効果の高い身体の動かし方とそのメカニズムをお伝えする」,「運動をすると気分が爽快になるだけでなく、集中力や記憶力、創造性、ストレスに対する抵抗力も高まる。そして情報をすばやく処理できるように-つまり思考の速度が上がり、記憶のなかから必要な知識を効率的に引き出せるようになる。また特別な「脳内ギア」を入れることで、混乱した状況下で意識を集中させ、心が乱れていても平常心を取り戻すことができる。運動によってIQ(知能指数)が高くなるという説さえあるのだ」と,「運動」が脳をよくするということで貫かれている。つまり,「一日15分の運動」は対肥満,能力向上の決め手というわけだ。これで運動の十分なモチベーションになると思う。

老婆心ながら,私が運動でいいと思うのは,スロージョギングと,「ずぼらヨガ」(著者:崎田ミナ)または自重トレーニング(著者:比嘉一雄)によるストレッチや筋トレかなあ。運動を継続する(習慣化する)には,行動分析学の本に目を通してみることをお薦めするが,行動分析学は概して「言葉遣い」が創始者のスキナーに捕らわれていて,論争的で難解すぎることはいっておこう(一番整理されているのは「「結果が出る習慣術―行動科学で人生がみるみる変わる」(著者:石田淳)だろうか。)。まあこれらはプラスアルファだ。

最強の健康法

3書目は,「最強の健康法【ベスト・パフォーマンス編】/【病気にならない最先端科学編】」の2冊だ。これも簡単に紹介したことがあるが,要は,運動して痩せて脳が活性化しても,癌をはじめとする病気にはなるのだから,それにも注意しようねということだ(スロージョギングを引っ張っていた田中さんは,確か膵臓癌で亡くなられたようだ。)。癌検診は欠かせない。

というようなことを考え,少しずつ実行しているうちに,どんどん年老いていくだろうが,最後まで元気に生活していたいものだ。

目標達成の技術

これらとは毛色が違うが,もう少し元気な人には,「ペンタゴン式 目標達成の技術 一生へこたれない自分をつくる」(著者:カイゾン・コーテ)をお薦めしたい。

 

「最強の健康法」を読む

~世界レベルの名医の「本音」を全部まとめてみた~

著者:ムーギー・キム

ベスト・パフォーマンス編 (Amazonにリンク) 

病気にならない最先端科学編 (Amazonにリンク
 

レイアウトに難あり

「最強の健康法」は,「ベスト・パフォーマンス編」と「病気にならない最先端科学編」の2冊の単行本で構成されている。しかしそのこともすぐには分からないし,本の表紙にも,表紙から目次の間までにも,ごちゃごちゃといろいろなことが書いてあり,しかも,目次も色付きで,ごちゃごちゃといろいろなことがいろいろなレイアウトで書いてあり,率直にいってそれで嫌になる。こんなことで投げ出したくなる本も珍しい。作成サイドは工夫を凝らしたつもりだろうが,度が過ぎている。目次の医師や「専門家」の,氏名のみならず所属の紹介も煩わしい。

後記の詳細目次は,余計な記述を除いて分かりやすくしてみた。項目だけをあげると,「ベスト・パフォーマンス編」が,「消化,食事,食べ方,歯磨き,禁煙,目,歩行,生産性向上,マインドフルネス,うつ病(心理療法),うつ病(食事療法),疲労,疲労回復,水虫,睡眠,不眠」,「病気にならない最先端科学編」「①健康を護る最先端科学」が,「健康診断,糖尿病・高血圧,心臓病,がん,ウイルス」,「 ②若さを保つ最強の健康習慣」が,「アンチエイジング,男性ホルモン(意欲減退、頻尿、ED),薄毛,不妊治療,骨粗しょう症,認知症,人生の終わり方」である。これだけだと,覗いてみたくなるだろう。

内容は悪くない

本書は著者が,医者や健康についての「専門家」約50名から取材した最新の科学的な健康・医療情報を,更に2人の医者・研究者がダブルチェックして上記の項目にまとめたというのが「売り」である。内容もかなり網羅的であるし,個々の記述も平易で参考になるものが多く,「内容は悪くはない」。しかしレイアウトが…。

中でも,誰でも「健康診断,糖尿病・高血圧,心臓病,がん」は気になるところであり,基本的な知識を持つのはいいことだ。

実践的な項目は,特に目新しいことはなく,基本は,減量,運動,食事である。運動として本書の項目にはないが,私はスロージョギングを勧める。

「生産性向上」の「1時間に一度は立ち上がって、体を動かそう─「座りっぱなし」で寿命が縮む」という指摘は,身に染みる。「薄毛」はもうだめなようだ。高齢男性なら「頻尿」はチェックしたい。

ただ,本書以外にも,良書はあるので,追って紹介しよう。

詳細目次

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