石・土・木/山・川・海

自然に近づく…石・土・木

「身近な自然」を求めて箱根に行き,孫娘の勧めに従い,小田原の早川の河原のケーキこと石を持って帰ったが,うちに帰って孫娘は情熱を込めて絵の具でこれに彩色したから,どこから見ても「ケーキ」だ。

私は昔から,道ばたの石を見て蘊蓄を傾けることのできる人間になりたいと思っていたが(雑草,樹木,昆虫,鳥,雲等々も),石の違いといってもなかなか頭に入るものではない。そんなとき,「三つの石で地球がわかる 岩石がひもとくこの星のなりたち」(藤岡換太郎著)を見つけKindle本で一読したが,地球を形作る中で,重要な三つの石(+α)と,それを形成する少数の鉱物を取り上げて,何とか分かってねと情熱をもって語り続ける若い著者の姿勢に頭が下がった(生命の星・地球博物館の館長さんにもこの本の原稿を一読してもらったそうだ。)。

考えてみれば地球を構成する大きな要素である石(マントルも含む。)を理解するためには,原子,分子の構造,化学反応,物理現象万般を理解できなければならない。その意味で,この本は,動かない石の話ではなく,躍動する地球の歴史の話である。機会があれば詳しい紹介をしよう。

さて石の次はなんでしょう。そう土です。土についての本もいろいろあるだろうが(農業,園芸には欠かせない),私のKindle本で出番を待つのは,「大地の五億年 せめぎあう土と生き物たち」(藤井 一至著)。そうか,土は昔からあるわけではなく,せいぜい,5億年か!

土の次は,木だ。出番を待つKindle本は「木を知る・木に学ぶ 」(石井誠治著)。著者は「樹木医」として知られている。

そこから先は,森,山だろう。

山・川・海

ところで「三つの石で地球がわかる」の著者の,藤岡換太郎さんには,「どうしてできるのか」シリーズの,(ただし海は,「海はどうしてできたのか」である。)がある。私は山だけは持っているが,石・土・木の次は,山・川・海の3冊を通読してみるのがが面白そうだ。

こういう本は,私たちが,ビジネスだ,競争だ(ついでにITだ,AIだ)と,毎日あくせしてと力み,縮こまった視野を大きく広げてくれる。それはそうだ。相手は,数百万年から数億年のレンジだから。そういう中で今の瞬間を見た方が,はるかに生産的だ(と私は思う。)。

土に寝る

ところで,皆さんは(テントを通してでも),土の上で寝たことがあるだろうか。私は数は多くないが,テント山行もしたことがあるので経験がある。テント場があるところは山小屋に毛の生えたような経験だが,一度私は,伊豆で,本当に適当な場所を選んでテント泊をしたことがある。そのときは,(山)犬の遠吠えに震え上がった記憶がある。しかし,そのときの土の感触は忘れられない。野宿がつらいこともよくわかる。

さて,石に彩色した孫娘は,「はじめてのキャンプ」という本がいたくお気に入りで,庭にテントを張ってキャンプをしたいと熱望している。もう待ったなしなので,近いうちに実行したいと思っている。「はじめてのキャンプ」のなほちゃんは,ひとりで(外で)おしっこをすることができたのだが,孫娘はこの対策を熟考し,可愛いザックの中に,「おしめ」を詰めたとさ。

 

「身近な自然の観察図鑑」(盛口満著)を読む

普段は遠い身近な自然

私が育った広島県大竹市は,林立した化学工場による大気汚染・水質汚濁・悪臭等々,ひどい公害の街であったが,工場地区を離れると全くの田舎で,私が子供のころ住んでいた社宅の横の棚田には,夏になると蛍が乱れ飛ぶ幻想的な光景が広がった。裏の畑の先は山であり,自然に満ち溢れていたが,さて私はその自然の何を知っていただろう。いくら自然があっても,見ない限り見えない。この本「身近な自然の観察図鑑」も同じことを繰り返す。

こんなことが書かれている

雑草(には,キク科とイネ科が多い。),ミノムシ(昨日,孫娘と絵本で見た。),イモムシ(毛虫との関係は?),カラスとスズメ,セミ,テントウムシ(食べたら苦い。ナミ(並)テントウは,きわめて攻撃的!),マメ科の草,サクラの葉,ムシクサ,窓辺の虫の死骸,アリ(の入れ替わり),ゴキブリ(屋内は虫にとって特殊環境である),シミ,シバンムシ,カタツムリ(陸上に住むようになった貝。庭でカタツムリの「潮干狩り」),ナメクジ(殻を退化させた貝),ダンゴムシ(ワラジムシ),果物(果実とは?カキ,リンゴ,バナナ,パイナップル(それぞれどこを食べているのか?)),野菜(防御物質…野菜は本来食べられたくないと思っている。キュウリ(ウリ科は苦い),キャベツ(牛には毒。アブラナ科は辛い),ニンジン(ネズミには毒。セリ科は臭い),ネギ科は臭い,辛い,キク科は苦い,ナス科は危ない),それぞれこれらを食べるスペシャリストの虫がいる,キャベツとレタスは全然違う,日本原産の野菜(とても少ない…ミツバ,ワサビ,アシタバ等々。森が発達する自然環境で,1年草が少ないから)),里山,カブトムシ,クワガタ,カイコ(野生に戻れなくなるほど改良された昆虫),繭,ドングリ(コナラ属,マテバシイ属の木の実という定義),リスはタンニンが含まれるのでドングリは嫌い,散布はネズミ類,),ドングリを食べる,野ネズミ,ムササビ,キノコ,冬虫夏草等々。

次のステップ

著者が展開する普段気にも留めない「身近な自然」は面白い。でもこんなの好きではない,山こそ自然だという人には,取り急ぎ,小泉武栄さんの本(例えば「「山の不思議」発見」)をお勧めしよう。森や海もいいだろう。どちらも困るという人は,本とか樹木の図鑑を眺めるのも楽しい。話はそれるが,私は昔,「週刊日本の樹木」というなんともマニアックなシリーズ雑誌を購読していたが,樹木の名前はなかなか覚えられない。でどうしてこんなにたくさん,樹木があるのだろう。といっても,虫から比べれば,全く少ないか。

この本は,孫娘と「自然」を楽しむネタ本にいい。最近彼女は,昔は嫌がったダンゴ虫に興味があり,「じいじ。虫を捕まえよう。」と誘いに来る。蝶と蛾にも興味があるし,「小麦ってなあに。」とも聞いてくる。ウイークエンドは,テントウムシ,はたまた,ナメクジ?

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「動物になって生きてみた」(チャールズ・フォスター著)を読む

熟読するのは辛いがこの本の世界を這い回るのは楽しい

著者がこの本の中で「生きてみた」動物は,アナグマ,カワウソ,キツネ,アカシカ,アマツバメ!!

著者の文章はペダンチックだがウイットに富んでいて,エッセイとして面白いところも多いが,いかんせん長すぎる。というのは,一体著者が「動物になって生きてみる」ために,具体的に何をしているのかが,この文章,文体では把握しづらく,絶えず長大な哲学的な詩を浴びせかけられている感じだ。

アナグマ,キツネ,アカシカ

著者はアナグマについて,イギリスの荒涼たる原野を,子どもと一緒になって穴を掘り,アナグマ目線で這い回り,食べ物も少しアナグマを真似たようだ。

キツネは,ぼろをまとって透明になり,街中を彷徨する。

アカシカでは,猟犬に追いかけられる体験をしている。

いずれも,殺伐たる生きるための世界だ。ネズミ,モグラが氾濫する世界だ。でも,それ以上に思いが広がらない。

カワウソ,アマツバメ

文句なしに面白いのが,カワウソ。「カワウソの安静時の代謝は、同じくらいの大きさの動物より40パーセント高い。泳いでいるあいだには、なかでも冷たい水で泳げば、それが大幅に上昇する」。その結果,起きている6時間の間に,体重95キロの著者に換算すると,ビッグマック88個分の殺戮をして食物を食べなければならないそうだ。そのため広大な地域を放浪し,侵入者が魚を奪うのを防ぐ。その結果,死んだカワウソを解剖するとほぽ半数以上で直前の争いの跡が見付かる。「傷は非常に不快なものだ。水中で戦うカワウソは相手の下腹部と性器を狙う。腹は裂かれて内臓が飛び出し、睾丸は引きちぎられ、ペニスはへし折られる。それでもまだましなほうで、最悪の傷は私たちの目に入らない」。なんてことだ。

一方,アマツバメは,21歳ぐらいまで生きるが,人間との違いは,「1年に注ぎ込んでいる生きることの量にある。数字にはある種の真実が含まれているから、少し計算をしてみよう。アマツバメは毎年、春と秋に、オックスフォードとコンゴのあいだの約9000キロメートルを移動する。1年あたりでは1万8000キロメートルになる」。これにふだんの暮らしで飛ぶ距離は数えると,1年の合計が,4万8375キロメートル,合計で101万5875キロメートル。これは地球と太陽のあいだの距離のおよそ150分の1、地球と月の間の距離の2.6倍にあたる。」。

日本の自然

この本に描かれているイギリスの自然は,荒涼たるものだ。一方,これに見合う日本の自然に思いいたらない。

服部文祥さんという登山家がいて「サバイバル登山」,「狩猟サバイバル」,「ツンドラ・サバイバル」という一連のサバイバル登山ものの他に,「百年前の山を旅する」という装備を100年前に戻して登山してみるという企ての本もあって,登山好きには憧れのスーパースターである(本を探してみたのだが,事務所移転時に数千冊を寄付した中に入っていたようだ。)。自分でよたよたと登山する人間にとっては,そのすごさがとてもよく分かるのだが,冒険家としてのパフォーマンスが不十分とする「観客」や,その振る舞いが自然を害するいう「文明批評家」もいて,なかなか大変のようだ。

服部さんの営みは,あくまで人間から自然に接近するアプローチだったと思うが,この著者は「動物になって生きてみた」(Being a Beast)というのだから,発想が真逆だ。しかし,率直にいって,服部さんの本の方がはるかに面白い。

なお著者には,Very Short Introductionsシリーズの「Medical Law」という著書もあり,弁護士でもあるようだ。一体どういう人なのだろう。

目次

第1章 野生の生きものになるということ
第2章 土その1―アナグマ
第3章 水―カワウソ
第4章 火―キツネ
第5章 土その2―アカシカ
第6章 風―アマツバメ

「進化論の基礎の本」まとめ読み

一口コメント

進化論(進化理論)ということを知らない,あるいは否定する人は,少なくてもわが国にはほとんどいないが,その具体的な内容はほとんど浸透していないと,進化科学者は異口同音にいう。もっともイメージと内容の食い違いは,どの知的分野でもいえることかもしれないが,進化論(進化理論)は,すべての諸学の基礎となるから,その誤解は深刻だといえる。

自戒を込めて,「進化論の基礎の本」をまとめてみた。

ここでは,進化論からみた人の行動は取り上げなかった。これは,別途まとめる。

1は,もっとも客観的に,かつ全体を過不足なく論じていて,しかも面白い。翻訳者が,原著の内容をフォローしているので,いっそう安心できる(それだけでなく,「中立進化論」の「売り込み」や,「日本では地質学の特殊な政治的事情のために,プレート・テクニクスそのものの受容が大きく遅れた」(P177)という「感想」もあって面白い。)。

2は,わかりやすい本だが,人間の行動を分析した部分が,唐突な感じがする。

3は,ドーキンスの最近出た本で,「世界にさきがけて編集・翻訳」というものの,講演自体は,相当古く,多く掲載された写真も見にくいが,その内容は,安心して読める。4は,いうまでもなく,大きな影響を与えた名著である。5はこれを踏まえた本だが,やはり2と同じく,人間の行動部分について?という感じがする。

6は,進化論をめぐる言説の「現在」を把握するのによい。

「種の起源」も読んでみたいが,遺伝について誤った情報しかなかったなかでの記述なので,「進化論の基礎の本」を十分に理解した上で,挑戦したいが,その前振りとして7がいいだろう。

8は,「DNAが明かす生物の歴史」というサブタイトルの新しい本である。

9~11は,進化論から見た,人の医学,健康に関する本である。今後この分野はますます重要になるだろう。

紹介

1

カラー図解 アメリカ版 大学生物学の教科書 第4巻 進化生物学 (ブルーバックス)
デイヴィッド・サダヴァ デイヴィッド・ヒリス クレイグ・ヘラー メアリー・プライス
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2

進化とはなんだろうか (岩波ジュニア新書 (323))
長谷川 眞理子
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3

進化とは何か:ドーキンス博士の特別講義 (ハヤカワ・ポピュラー・サイエンス)
リチャード ドーキンス
早川書房
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4

利己的な遺伝子 <増補新装版>
リチャード・ドーキンス
紀伊國屋書店
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5

6

理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ
吉川 浩満
朝日出版社
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7

ダーウィン『種の起源』を読む
北村 雄一
化学同人
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8

分子からみた生物進化 DNAが明かす生物の歴史 (ブルーバックス)
宮田 隆
講談社
売り上げランキング: 29,176

9

進化から見た病気―「ダーウィン医学」のすすめ (ブルーバックス)
栃内 新
講談社
売り上げランキング: 81,833

10

進化医学からわかる肥満・糖尿病・寿命
井村 裕夫
岩波書店
売り上げランキング: 472,085

11

GO WILD 野生の体を取り戻せ! ―科学が教えるトレイルラン、低炭水化物食、マインドフルネス
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