情報をめぐって

勉強法から情報へ

最近私は,お酒を飲むと翌日の体調が悪くなるので,できるだけお酒をひかえるようにしている。「お酒をひかえる」という道は何度も来て引き返した道ではあるが,今回は朝のスロージョギングとペアで実行しており,劇的なリバウンドもなく,なかなか快調だ。問題はこの時期,朝,外は寒く暗いということだが,朝風呂に入ってから走り出すので,なんとか乗り切れるだろう。ジョギングはスローなので,辛くはない。

そうするとある程度まとまった時間ができる。これまでは,時間ができても,その場限りの思い付きの読書をすることがほとんどだったが,今回は,少し系統的に勉強してみようと思い立った。そこでまずいろいろな「勉強法」の本に目を通してみた。結果,「勉強法」は大きく「目標・やる気」,「計画とプロセス」,「具体的方法」に大別できるだろうか。その中で,アメリカのAmazon 2017年ベスト・サイエンス書に選ばれた「Learn Better」(著者:アーリック・ボーザー )(Amazonへリンク)あたりは読みやすいのだが,各章(章題は,Value,Target,Develop,Extend,Relate,Rethink)に書かれていることが必ずしも体系的でないのと,内容も高低精粗ばらばらという面もあって,??という感想も持つのだが,とにかくこの本が取材を積み重ねていることには好感が持てるので,導入にはよいだろう。ちなみに,この本が推奨する「具体的方法」は様々な観点,方法の自問自答を繰り返すことであって,私にいわせれば中高年にぴったりの「ぶつぶつ勉強法」である。

「勉強法」はおって紹介することとするが,「勉強法」の本の中で私が気になったのは,「リファクタリング・ウェットウェア ―達人プログラマーの思考法と学習法」(著者:Andy Hunt)(Amazonへリンク)や,「エンジニアの知的生産術」(著者:西尾泰和)(Amazonへリンク)という,デジタル社会における真偽をかっちりさせなければならない領域の「勉強法」である。そこからにわかに興味が「情報」に移り,何点かの「情報」の本に目を通してみた。この記事はその最初の導入である。デジタル情報を流通させるためには,論理的で正確な手続が必要だが,一方,今現在流通している大量の情報には内容がでたらめなものが多いということが出発点である。

情報をめぐる問題①…情報の基礎

そもそも情報とは何で,どうして上記のようなことが起きるのかを原理的に説明できるのか。

それについて真正面から説明しようとする試みに,西垣通さんの「基礎情報学」がある(例えば「生命と機械をつなぐ知-基礎情報学入門」(Amazonへリンク))。基礎情報学は,情報を,生命情報,社会情報,機械情報に分類して考察する。そして各情報を,システム,メディア,コミュニケーションとプロパゲーションに位置付け,関係付けて考察しており,情報の基礎と問題点を学ぶには十分の本だ(ただ「情報科学」の本とは違い,哲学的な考察を導入して議論の広がりがあり,全体を把握するのは大変だ。)。因みに,生命情報の最初はアフォーダンスのようなことから説明されているので,どうして物的世界の情報の流れが生命情報になるのかというところは,「哲学入門」(著者:戸田山和久)(Amazonへリンク・本の森へリンク)が参考になる。

その他,「情報と秩序-原子から経済までを動かす根本原理を求めて」(セザー・ヒダルゴ)(Amazonへリンク)(冒頭は,「宇宙はエネルギー,物質,情報からできている。だが,宇宙を興味深いものにしているのは情報だ」から始まる。)や,「インフォーメーション-情報技術の人類史」(ジェイムズ・グリック)(Amazonへリンク)も,情報の基礎を別の観点から明らかにするものとして参考になるだろう。

冒頭に述べた,現在流通する多くの情報の内容がでたらめなものであるという事態はどこから生じるのか,どう対応すべきかは,すぐに答えの出る問題ではないが,カッカせずに,情報の基礎に立ち返って考察を重ねるべきであろう。

情報をめぐる問題②…CS(IT・AI)

情報をめぐる次の問題として,Computer Scienceを利用した情報の創造,流通,処理等(ITやAI)が,今どこに到達し,今後何を成し遂げるかという問題から目を離すわけにはいかない。これについて私は「ウキウキ派」ではあるが,一方,西垣さんがいう生命情報と機械情報の差異,またIT・AIが生み出す機械情報は,数学ができることしかできないという「コンピュータが仕事を奪う」(Amazonへリンク)等における新井紀子さんの指摘は,肝に銘じる必要がある。IT・AIについては,このWebでは「AIと法」,「IT・AI法務」,「IT・AI」等に分散して記載しているが,いずれ再整理する必要があるだろう。いずれにせよIT・AIは,情報の基礎に立ち返って考察することが大切である。

これとは別に,今現在,IT・AI環境の利用について多くの人が多大なストレスを感じておりそれをどう解消できるのかというのが目の前の大問題であり(「ウェルビーイングの設計論-人がよりよく生きるための情報技術」(著者:ラファエル A. カルヴォ & ドリアン・ピーターズ )(Amazonへリンク)),それをAIで成し遂げようというのは,やりたくはなるが,おそらく問題を複雑にするだけだろう。

情報をめぐる問題③…規制とGDPR

政府による規制

次に企業や政府が取得,利用等する情報の問題であるが,これはもっぱら政府が法によって企業の情報利用を規制するという局面が問題となる。通常の「情報法務」である。実務書はたくさんあるが,「データ戦略と法律 攻めのビジネスQ&A」(Amazonへリンク)あたりが利用しやすい。

これとは別に,政府は,みずから情報をどう扱っているか,企業の情報利用を規制する能力があるかということが,最近,深刻である。

前者についていえば,世界でも,わが国でも,政府(政治家+官僚)が行政情報を隠匿しようという動きが顕著である(例えば,「武器としての情報公開」(著者:春日部聡),(Amazonへリンク),「公文書問題 日本の「闇」の核心」(著者:瀬畑源)(Amazonへリンク))。その時いくらうまく立ち回り,もてはやされても,情報を隠匿すれば,後代から激しく弾劾されるというのが政治の常なのだが,ジャンク情報の氾濫の中でそれが見えなくなっているようだ。

後者の規制する能力があるかということは,要は政府が,多面的な情報の性格を的確にとらえて,必要不可欠情報規制に係る政策を立案,実行しているかということである。まず無理だろう。おかしければ批判し改善を促していかなければならない。その一番手は弁護士のはずだが,弁護士はどうも立法論,裁判所に弱く(これは個別事件の処理にあたっては,当たり前かもしれないが。),心もとない。自戒しなければならない。

GDPR

政府の規制する能力とも関係するが,2018年5月からGDPRが施行されたことを踏まえ,「黒船来る」みたいな議論がされているが,GDPRの目的は何であろうか,本当にプライバシー保護の徹底だろうか。もちろんそういう体裁はとっているが,実際の問題は,ヨーロッパにおけるビズネス権益だろう。

Googleにせよ,Face bookにせよ,始まりはまさに「電脳」の理念だったろうが,それを維持拡大するために頭を絞って始めた広告に個人のデータが結びつき,いまやその手法がビジネスの主流になってしまった。それはヨーロッパでは許さないよというのがGDPRではないか。「さよならインターネット-GDPRはネットとデータをどう変えるのか」(著者:武邑 光裕)(Amazonへリンク)を読んでそんなことを感じた。

情報をめぐる問題④…知財

最後の問題として,インターネットで流通する情報を,知財(特に著作権)との関係で検討すべき局面がある。知財とは何か,知財はどう保護されるか(あるいは利用が促進されるか)は,相当程度,流動的であり,インターネットで流通する大量の情報について,いちいちその権利侵害性を問題にしてもあまり意味はないと思うが,許容できない侵害行為もあるだろう。一方,インターネットで流通している情報に対して,いったい何権なのかよくわからない「権利」(あるいは複合体)が主張され,これをめぐって紛争になることも多い。流通する情報量に比べれば,多いというより僅少というほうが正しいか。ただしっかりした見識を持って対応しないと,つまらない「炎上」騒動に巻き込まれる可能性がある。これはある表現に対して,根拠もないでたらめな情報をぶつける(流通させる)という冒頭に指摘した問題と同じ構造である。

これらについて知財の概要を把握するために,「楽しく学べる「知財」入門」(著者: 稲穂 健市)(Amazonへリンク),「こうして知財は炎上する ビジネスに役立つ13の基礎知識 」(著者: 稲穂 健市)(Amazonへリンク)等が参考になる。あと「著作権」の概説書に目を通すのがよいだろう。

以上は一応の整理である。私の主たる関心は,情報そのものというより,情報の一機能であるルールにある。そこまでうまくつながるだろうか,朝のスロージョギングを継続しよう。

 

「ルールを守る心」を読む

ルールを守る心~ 逸脱と迷惑の社会心理学 ~(Amazonにリンク

著者:北折充隆

出版社等による内容の紹介の要約

私たちは,生まれてから死ぬまで,ずっとルールに従って生きています。しかしながら,ルールを守る,破るとはどういうことなのか,社会規範から逸脱するとはどういうことなのか,迷惑行為を抑止するためにはどうしたらよいのか……といったことについては突き詰めるとよく分かっていないのが実情ではないでしょうか。本書では,そのような問題について社会心理学の立場から長年研究を重ねてきた著者が,概念の混乱を整理しながら,これまでに行われてきた研究を分かりやすく紹介します。さらに,それらの知見を踏まえて,「考える」ことの大切さも強調しています。

私のコメント

社会心理学の立場から,「ルール」について概念の混乱を整理しながら検討するということで期待して読んだのだが,私の期待とは違う本であった。

「私たちは,生まれてから死ぬまで,ずっとルールに従って生きています」という記述は,人の行動が,特に言語の獲得以降,すぐには気が付かないものも含め多くの「ルール」に従っており,そこが人工知能のアポリアになっているという意味で,きわめて重要な指摘であるが,著者はそういう見方はしないようだ。

その上で,ルール,規則,法,社会規範,道徳,マナー等を適切に概念整理し,それぞれの機能と異同,及びそれらに従う人の行動の特質,遵守させる方法等を,実験に基づいて記述することができれば,ルールについて,心理学,哲学・倫理学,法学の架橋ができる素晴らしい本になったでだろう。

実は私が高く評価する「啓蒙思想2.0―政治・経済・生活を正気に戻すために」の著者であるジョセフ・ヒース には,「ルールに従う―社会科学の規範理論序説」という浩瀚な著書があり,「社会科学においてもっとも基礎的な問題である規範問題について、哲学、社会心理学的実験、進化理論、社会学や経済学の知見を用いて基礎理論を構築する。社会科学を統合するまったく新しい試み」と紹介されるのだが,訳者による「概要」の記述さえ膨大で頭に入りにくく,読み始めるのを躊躇している。その「先払い」にでもなればと思ったのだが,そうはいかなかった。

副題の「 逸脱と迷惑の」という意味もよくわからないし,社会的迷惑行為に「こころ」を対置するのでは,単なる道徳おじさんになってしまう。社会心理学は,哲学・倫理学,法学にはない,科学的手法でルールの解明に挑めるのだから,ぜひそちらを伸ばしてもらいたい。

なお,命令的規範と記述的規範,6つの道徳発達段階,視点が変われば正しいも変わる,返報性(互恵性),社会的公正の4分類,BIS(行動抑制システム)とBAS(行動接近システム)等々,個々の記述には参考になる記述も多い。

再読する機会があれば,このあたりを補足したい。

詳細目次

1 社会的迷惑とは何か
  社会的迷惑とは  言い訳の類型  社会考慮について  バカッター騒動
  迷惑とは考えないこと

2 逸脱行為とは何か
  社会規範とは  社会規範の所在について  すべての規範は集団規範
  当為について  社会心理学の切り口から見た二つの社会規範  社会規範の周辺概念  道徳性と社会規範  同調行動と社会規範  本章のまとめ

3 正しいを考える
  正しいを疑ってみる  時が経てば正しいも変わる  視点が変われば正しいも変わる  返報性について(時代や国境を越えたルール) 社会的公正と迷惑行為  正しいの概念整理

4 迷惑行為・ルール違反の抑止策
  抑止策の理論的背景  危ないからルールが必要なのか、ルールで決められたから危ないことなのか?  自制のメカニズム  BISに基づく迷惑行為の抑止
  恥の喚起とルール違反の抑止  BASに基づく迷惑行為の抑止
  相手が見えるとルールを守る?  親切に応えてルールを守る?
  教育側面からのアプローチについて  共感性の涵養に基づくルール違反・社会的迷惑の抑止  囚人のジレンマゲームに基づくルール違反・社会的迷惑の抑止
  考えることの大切さ  厳罰化の懸念

5 ルール研究の今後
  調査手法の課題と可能性  調査の信頼性と妥当性  社会的望ましさのハードル  倫理的な問題  フィールドに飛びだそう  バーチャル・リアリティの可能性  社会に関心を持ちましょう

6 ルールを突き詰める
  行き着くところは“考える”こと  “正しくない”を再考する  “自由は正しい”を疑う  ルールも迷惑も繰り返す  どう立ち回るべきか  まとめ

おわりに
引用文献

「スロージョギングで人生が変わる」を読む

スロージョギングで人生が変わる(Amazonにリンク)

著者:田中宏暁

出版社等による内容の紹介の要約

ランニングブームの今、歩くペースで走るスロージョギングなら、中高年や高齢者でも楽しめる。ウォーキングの3倍の効果があり、内蔵機能・筋力はもちろんのこと、脳の機能も向上することが実証されている。歩くスピードなら70歳、80歳からでも走れる。本書は、スロージョギングのメソッドをわかりやすく解説し、すぐにも実践できるよう具体的なアドバイスも充実。

著者は,1947年生まれで,福岡大学スポーツ科学部教授等を歴任。専門は運動生理学で、特に肥満・動脈硬化性疾患などの生活習慣病の治療と予防、健康増進・競技力向上に有効な運動処方に関する研究が主なテーマ。2018年4月に,膵臓がんで亡くなられたとの由,ご冥福をお祈り申し上げます。

なお本書は,2011年発行だが,著者による最新の本に「ランニングする前に読む本 最短で結果を出す科学的トレーニング 」(Amazonにリンク)がある。

私のコメント

朝のジョギングを始める

今日現在(2018年10月31日),私は3週間ほど,朝のジョギング(歩くより少し速いくらいのスローペースです。)をしている。この夏は暑かったせいか,運動がまるでできず,今までにないほど太って体調も悪くなったので(実は,原因を夏の暑さのせいにするのは「間違い」。食べ過ぎ,飲み過ぎ,何よりも代謝が年齢相応に落ちていることが原因だ。),3週間前から朝のスローなジョギングを始めた。去年も,10月に朝のジョギングをしたが,早く起きて走るのは寒いし辛いし,時間の確保も難しいので,1ヶ月でやめたが,それなりの成果は出た。今年は,朝多少ゆっくり事務所に行ってもあまり問題がないことが分かったので,朝起きてまずお風呂に行って体調を整え,それから50分ほどジョギングすることにした。そうするとあまり無理なくジョギングできることが分かった。

そこで1ヶ月でやめずにもう少し続ける気になって「スロージョギング」について調べるため「本書」を購入した。

ポイント

著者は,運動生理学者なので,運動,肥満を巡る議論はとてもしっかりしているが,それは別の機会に「勉強」すればよい(「詳細目次を参照されたい。)。私が知りたかったのは,次のことだ。

①走り方は,かかと着地ではなくて,フォアフット着地(土踏まずより前部分)にし,地面は蹴らずに,重力を利用して前に進む。

②背筋はまっすぐし,顎はやや出して前の方を見る。

③走るスピードは7キロ(歩くより少し速いくらいのスローペース)で十分,前後の体操も気にせず,筋トレにもこだわらない。少しで汗をかかなければ,普通の服装でも大丈夫。

こんなところだろうか。

①は,私も大好きな「BORN TO RUN」(著者:クリストファー・マクドゥーガル)にも紹介されていることだが,これは追って紹介することとし,ここでは触れないことにする。フォアフット着地は,昨日の帰宅時のウオーキング,今日の朝のジョギングでも試してみたが,とてもお腹に効く気がする。ただなれるまで少し筋肉痛になりそうだ。

どうやって継続するのか

今のやり方だとあまり負担を感じないので,多少は継続できるような気がする。あとは,「自分の行動改革」の問題だ。

詳細目次

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「やり抜く人の9つの習慣 」を読む

「やり抜く人の9つの習慣  コロンビア大学の成功の科学」(Amazonにリンク

著者:ハイディ・グラント・ハルバーソン

9 THINGS SUCCESSFUL PEOPLE DO DIFFERENYLY by Heidi Grant Halvorson

出版社等による内容の紹介の要約

◎話題沸騰! Harvard Business Reviewで最多閲覧数を記録

◎モチベーション科学の第一人者が教える「心理学的に正しい目標達成の方法」とは?

コロンビア大学でモチベーション理論を教える社会心理学者の著者が,多くの心理学者たちの数々の実験と,著者自身の研究成果によって証明ずみの「心理学的に正しい目標達成の方法」によって,「成功とは生まれつきの才能で決まるものではありません」,「「成功する人には共通の思考や行動のパターンがあります」として,「心理学的に正しい目標達成の方法」を展開する。

◎本書で紹介する「目標達成に最も寄与する習慣」

  • 目標に具体性を与える・目標達成への行動計画をつくる
  • 目標までの距離を意識する
  • 現実的楽観主義者になる
  • 「成長すること」に集中する……etc.

◎本書で手に入る「目標達成ツール」

  • 目標達成の切り札「if-thenプランニング」
  • 目標までの距離に目を向ける「これから思考」
  • ネガティブな側面にも目を向ける「現実的楽観主義」
  • 失敗を味方にする「成長ゴール」
  • 〝やり抜く力〟を支える「拡張的知能観」……etc.

「今日からすぐ実行できる考え方がコンパクトなページ数(120ページ)の中で豊富に紹介されています。」,「仕事からダイエットまで「達成したい目標」があるなら,ぜひ本書を参照してみてください」,「これまでより,もっと早く,もっと上手に,目標を達成できるようになるはずです。」。

私のコメント

全体の感想

読んでいて余り異論のない目標達成のための行動論と言える。内容もシンプルに纏まっていてよいが(元がブログ記事だという紹介がある。),抽象的で説明不足とか,物足りないという感想もありうるだろう。ただ,ある程度「習慣」を巡る本を読んでいれば,著者が,何を問題にしているのかだいたいピンとくるし,参考文献も掲載されているので(ただし,翻訳されていないものが多そうだ。),十分だと思う。第6章で「グリット」や「マインドセット」にも触れられている。私としては,頭がこの方面に向いている人にはおすすめだ。そうでない人の興味は惹かないだろう。

表題にある「9つの習慣」とは?

「9つの習慣」が,9章にわたって展開され,各章には,その内容を端的に表す表題が付されているほか,各章の最後に,何個かのポイントから構成された「まとめ」が付されている。

さらに最後に,著者によって,「9つの習慣」次の様のまとめられている。ここでは,その著者の最後のまとめと,それに対応していると思われる各章の表題(翻訳と英語)を紹介しておく。各章の最後にある何個かのポイントから構成された「まとめ」は,追って紹介しよう。

  • 1.明確な目標を持っている。●目標に具体性を与える Get Specific 
  • 2.if-thenプランの形で「いついつになったらやる」と計画している。●目標達成への行動計画をつくる Seize the Moment to Act on Your Goals
  • 3.現状と目標までの距離に目を向けて「目標に近づくために何をすべきか」に焦点を当て,モチベーションを維持している。●目標までの距離を意識する Know Exactly How Far You Have Left to Go
  • 4.成功できると信じている。同時に,成功は簡単には手に入らないと考えて,努力をおこたらない。●現実的楽観主義者になる Be a Realistic Optimist
  • 5.最初から完璧を目指さない。失敗を恐れることなく,少しずつでも進歩することを考えている。●「成長すること」に集中する Focus on Getting Better, Rather than Being Good
  • 6.どんな能力でも努力で身につけられると信じている。どんな困難でも「やり抜く力」を持って当たることができる。●「やり抜く力」を持つ Have Grit
  • 7.意志力も鍛えれば強くなることを知っていて,習慣的に鍛えている。筋力と同じように,意志力も使いすぎれば消耗することを知っている。●筋肉を鍛えるように意志力を鍛える Build Your Willpower Muscle
  • 8.誘惑をできるだけ近づけないようにしている。意志力で誘惑に打ち勝とうとはしない。●自分を追い込まない Don’t Tempt Fate
  • 9.「やらないこと」でなく「やること」に焦点を置く。●「やめるべきこと」より「やるべきこと」に集中する Focus on What You Will Do, Not What You Won’t Do 

「9つの習慣」を簡単に検討する

1,2は,目標と計画の重要性である。計画をif-thenプランという形にすることを推奨している。

3,4,5は,行動によって目標に到達するまでには,時間と距離の隔たりがある。そこでの「行動論」である。

6は「マインドセット」を,「固定的知能観」と「格納的知能観」にわけ,後者の「能力は経験や努力を重ねることによって高めることができる」を正しいとするが,そのためには「グリット(やり抜く力)」が不可欠だとする。

7,8は意志力を問題にしているが,意志力は消耗することもあり,要は,あまり意志力に頼らない「行動」とすべきだとする。

9は,行動分析学が指摘するように「~をしない」は問題にせず,「~をする」ことにどのような行動随伴性を設定するかが重要だとする。

本書をどう活用するか

私は今,「個人:生活・仕事・文化」の「前提の2」として「自分の行動改革」を,「習慣」という観点から検討している。

そこでは「良い習慣、悪い習慣―世界No.1の心理学ブロガーが明かすあなたの行動を変えるための方法」(著者:ジェレミー・ディーン),「習慣の力」(著者:チャールズ・デュヒッグ)「ぼくたちは習慣で,できている。」(著者:佐々木 典士)等を参考にしているが,本書も加えて検討することになろう。

その他に,「自分を変える1つの習慣」(著者:ロリー・バーデン)という「階段マインンドセット ちょっときついが正しい行動をとる思考」を推奨するビジネス本があるが,なかなかノウハウに満ちていて,これをうまく活用したいと思っている。

いずれにせよ,①前状況-②行動-③状況の変化という枠組みの中で,①,②,③の中に何を入れ込んで,目標の達成論を考えるべきか,できるだけ速やかに試論を作りたい。

なお,本書には,詳細な目次はないので,詳細目次は掲載しない。

 

問題解決と創造の方法を改稿しました

この投稿は,固定ページ「問題解決と創造の方法」の内容を整理し,投稿したものです。固定ページの方はその内容を,適宜,改定していきますので,この投稿に対応する最新の内容は,固定ページ「問題解決と創造の方法」(固定ページにリンク)をご覧ください。

問題の所在-問題解決と創造の方法を考える

問題解決(下述するように,創造は,問題解決の一場面と位置づけることができる。)の方法は,以下のとおり,「解決すべき問題の基本的な構造-考察1」,「問題解決の領域(対象)とその方法-考察2 4要素5領域と行動分析学・システム思考」,「問題解決を支える思考法とアイデア-考察3」に分けて考察することが適切であると考えている。

まず,「解決すべき問題の基本的な構造-考察1」で,基本となる3書を紹介する。

解決すべき問題の基本的な構造(考察1) 基本3書

「図解 問題解決入門」 基本書1

まず「解決すべき問題の基本的な構造」(問題構造図式と呼ばれることがある。)については,「「新版[図解]問題解決入門~問題の見つけ方と手の打ち方」(著者:佐藤 允一)(Amazonにリンク・本の森の紹介)の分析が,簡便でわかりやすい。

同書は「問題」を「目標と現状のギャップ」ととらえ(後記「問題解決大全」によると,これは,ハーバート・A. サイモンが,言い出したらしい。),原因となる「入力」,「制約条件」や「外乱(不可抗力)」が影響する「プロセス」を経て,結果となる「出力(現状)」が生じるという「問題構造図式」を提示する。この図式をふまえ,「入力」や「制約条件」をコントロールすることで,「出力(現状)」を変え,問題解決を考えようというのである(「佐藤問題構造図式」という。)。これだけでは単なる枠組みの整理に過ぎないが,それだけに様々な問題解決の手法を整理して位置づけるのに便利である。

次に同書は,「問題」を,発生型(既に起きている問題),探索型(今より良くしたい問題),設定型(この先どうするか)に分類しており(この分類は「時間型分類」といえよう。),これも有用である。

さらにこれは私見ではあるが,「問題」を,個人型,人工物型,システム型に大別することも有用である(この分類は「対象型分類」といえよう。)。「世界」の大部分の問題は,「システム思考」が対象とすべき複雑な「システム型」の問題であるが,個人の問題の多くは,個人型として個人の意思決定と行動改善の方法として捉えることが適切であるし,人工物(多くは商品であろう。)の問題は,人より物の振る舞いが前面に出る設定型,探索型の問題であるから,別に検討したほうが良さそうだ。ただし,それぞれの方法を他に応用することは有益である。なお企業に関わる「問題」は,個人型,人工物型,システム型のいずれの要素も含んでおり,併せて経営分析,経営戦略等として検討されているから,別途,検討すべきである。

「創造はシステムである」 基本書2

「創造」は,佐藤問題構造図式の時間型分類の,設定型(この先どうする)ないし探索型(今より良くしたい問題)として,問題解決の一場面と位置づけることができる。

「創造はシステムである~「失敗学」から「創造学」へ」(著者:中尾政之)(Amazonにリンク本の森の紹介)は,「創造」(自分で目的を設定して,自分にとって新しい作品や作業を,新たに造ることと定義する。)の過程を,「思い」(願望)→「言葉」(目的)→「形」(手段)→「モノ」(アクションプラン)ととらえ,まず「目的」を言葉として設定することが重要だとする(これが「出力」となる「結果」である。)。そしてその「原因」となる「入力」「制約条件」等を<「形」(手段)+「モノ」(アクションプラン)>と捉え,その具体的な内容に「思考演算子」(これは,TRIZ(トゥリーズ)のことである。)を適用して,検討,選択し,「目的」を実現していく。システムである人工物の設計,創作を念頭に置いた問題構造図式の変化型であるが,システムについての問題解決は複雑,難解なものが多いので,まず人工物の創造でこれに習熟することには意味がある(ただし同書には,「システム思考」の話は出てこない。)。

「問題解決大全」 基本書3

なおこの2つの方法に止まらず,「問題解決と創造」を実現する観点から考え出された様々な技法がある。それらの主要なものが「問題解決大全」(Amazonにリンク・本の森の紹介)で,丁寧に検討されている。「問題解決大全」では,問題解決の手法をリニア(直線的) な問題解決とサーキュラー(円環的) な問題解決の2つに大別して取り上げた上,問題解決の過程を,大きくは4段階,詳細には14段階に整理し,それぞれに該当する技法を紹介している。①問題の認知(目標設定,問題察知,問題定義,問題理解),②解決策の探求(情報収集,解の探求,解決策の改良,解決策の選択),③解決策の実行(結果予測,実行計画,進行管理),④結果の吟味(結果の検証,反省分析,学習・知識化)である。基本書1,2を十二分に補完する内容となっている。

基本書1,2にこれを加えた3書を基本となる方法となる「基本3書」としたい。そのためまず3書の詳細目次(「問題解決と創造の方法」基本3書の詳細目次)を作成した。これを見ているだけでも頭の整理になる。

問題解決の領域(対象)とその方法-考察2 4要素5領域と行動分析学・システム思考

世界を4要素5領域(個人・企業・政府・環境の4要素+世界:社会・経済・歴史の5領域)に区分することを,「問題解決と創造を学ぶ」で提唱した。そして,それぞれの要素・領域の問題をその相互の関係や時間を視野に入れて解決する方法として,個人は主として「行動分析学」,企業・政府・環境・世界の複雑な問題には「システム思考」が有用である。

「行動分析学」と「システム思考」については,「「行動分析学」と「システム思考」で世界を見る」を作成しているので当面この記事で紹介に変えたい。

個人の問題解決 補足

個人の問題解決の方法については,当然,様々な提案がなされ,流行り廃りがある。私は「行動分析学」をメインにしたが,違った捉え方を基本とする考えもありうる。以下紹介する本はそれぞれ優れた面もあるが,どうしても基本的な部分が曖昧な気がして,そのままでは私の好みにはぴったりこない。それぞれについて,二重過程理論や行動分析学に位置づけて理解するとスッキリする。なお,あれこれ面倒くさいことを言われなくても実行しますよと言える人には,「ペンタゴン式目標達成の技術 一生へこたれない自分をつくる」(著者:カイゾン・コーテ) (Amazonにリンク・本の森の紹介)を既にお勧めした。呼吸,瞑想,認知,知識,健康,自律,時間についの,無理でない実践法が紹介されている。

  • 「スマート・シンキング 記憶の質を高め、必要なときにとり出す思考の技術」(著者:アート・マークマン)(Amazonにリンク・本の森の紹介)
  • 「幸せな選択,不幸な選択~行動科学で最高の人生をデザインする」(著者:ポール・ドーラン)(Amazonにリンク・本の森の紹介)
  • 「習慣の力」(The Power of Habit)(著者:チャールズ・デュヒッグ)(Amazonにリンク・本の森の紹介)
  • 「あなたの生産性を上げる8つのアイディア」(SMARTER FASTER BETTER)(著者:チャールズ・デュヒッグ)(Amazonにリンク本の森の紹介
  • 「スマート・チェンジ 悪い習慣を良い習慣に作り変える5つの戦略」(著者:アート・マークマン)(Amazonにリンク・本の森の紹介)
  • 「仕事・お金・依存症・ダイエット・人間関係 自分を見違えるほど変える技術 チェンジ・エニシング」(著者:ケリー・パターソン外)(Amazonにリンク・本の森の紹介)
  • 「マインドセット:「やればできる!」の研究」(著者:キャロル・S・ドゥエック)(Amazonにリンク・本の森の紹介)
  • 「クリエイティブ・マインドセット 想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法」(著者:デイヴィッド ケリー, トム ケリー)(Amazonにリンク・本の森の紹介)

問題解決策を支える思考法とアイデア-考察3

上記の考察1,2による問題解決策(入力)が適切(論理的,科学的)であるためには,これを支える適切な「思考法とアイデア」が必要である。

ここでは,「問題解決策を支える思考法とアイデア」を獲得するために,「思考の基礎」,「危機的な現代の思考」,「アイデア」に分けて何冊かの本を紹介しておく。

思考の基礎

人の思考の基礎である早い思考,遅い思考(「二重過程理論)について,「意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策」(著者:阿部 修士 )(Amazonにリンク・本の森の紹介)を挙げておこう。もちろん,「ファスト&スロー」を読み込めばいいのだが,批判的に検討しやすい本としてあげておく(カーネマンについて,アレコレ言うのは,多少しんどい。)。

これを踏まえ,早い思考について,1992年時点で検討している「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)と,主として遅い思考の内容を緻密に検討している「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)を紹介しておく。この2冊については内容を簡単に紹介しよう。

「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)

「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)(Amazonにリンク・本の森の紹介)は, ヒトと組織(の中のヒト)の思考の特質(不合理性)について,丁寧にきちんと整理して論じている。著者は,サセックス大学の心理学教授であったが1998年に亡くなっており,本書の刊行は1992年で30年近い前である(しかしKindle本の刊行,翻訳等は最近行われているようだ。)。しかし内容は非常にしっかりしており,かつ著者の表現は機知に満ちていて,読んでいて楽しい。本書刊行後,ネットの普及等でヒトと組織(の中のヒト)の思考の不合理性は強まっているが,ネット普及前の「原型」はどうだったのかという観点から捉え,現状をその「変容」と見ればいいだろう。本書は近々「本の森」で紹介したいが,著者が「序章」で本書の構成について述べている部分だけも紹介しておきたい。

「こうした本では,序章の締め括りで,各章の要約を述べるのが約束事になっている。読者が本書を読まないでもすむように,ここで内容を要約するほど私は親切ではないが,全体の構成だけ簡単に説明しておこう。2章(誤った印象)では,人が判断ミスをおかす最もありふれた原因を述べる。その後に詳しく見ていく不合理な思考の多くにこの原因が絡んでいる。続く七つの章(服従,同調,内集団と外集団,組織の不合理性,間違った首尾一貫性,効果のない「アメとムチ」,衝動と情動)では,不合理な判断や行動をもたらす社会的要因と感情的要因を見ていく。10章から19章まで(証拠の無視,証拠の歪曲,相関関係の誤り,医療における錯誤相関,因果関係の誤り,証拠の誤った解釈,一貫性のない決断・勝ち目のない賭け,過信,リスク,誤った推理)は,事実をねじ曲げてしまうために陥る誤りを扱い,それに続く二つの章(直感の誤り,効用)では,手元にある情報の範囲内で,少なくとも理論上は最善の結論を出せるような方法を述べ,そうした方法で出した結論と直感的な選択とを比較して,直感がいかに当てにならないかを示す。22章(超常現象)では,それまでに述べてきた誤りのいくつかを振り返り,超常現象やオカルト,迷信がなぜ広く信じられているかを考える。最終章(合理的な思考は必要か)では,ヒトの進化の歴史と脳の特徴から,不合理な思考をもたらす根源的な素地を考え,併せて合理的な判断や行動を促すことが果たして可能かどうかを考える。そして最後(合理的な思考は必要か)に,「合理性は本当に必要なのか,さらには,合理性は望ましいのか」を考えてみたい。」。

なお著者は合理性について次のように言っている。

「合理性は、合理的な思考と合理的な選択という二つの形をとる。手持ちの情報が間違っていないかぎり、正しい結論を導き出すのが、合理的な思考だと言えるだろう。合理的な選択のほうはもう少し複雑だ。目的がわからなければ、合理的な選択かどうか評価できない。手持ちの情報をもとにして、目的を達成できる確率が最も高い選択が合理的な選択と言えるだろう。」。

「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)

「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)(Amazonにリンク・本の森の紹介) は,人間の実際の思考を踏まえて,合理的な推論と意思決定について検討した本である。著者は,イギリスの心理学者である。少し前に入手していたが,古典的三段論法,「ならば」,因果推論,確率的説明,メンタルモデル理論,二重過程理論,帰納と検証,プロスペクト理論等,感情,合理性,個人差や文化の影響がもたらす複雑さ等,幅広く検討していて,「思考と推論」を考える上では必須の本であると思っていた。ただ問題はここに入り込むと,出てこられなくなることである。ほどほどが大事だ。

危機的な現代の思考

前項の本がいわば原則を論じているのに対し,現代の思考の危機について論じた本は多いが,ここでは「人の知能・思考がとらえる世界とは何か-方法論の基礎」として紹介した,「知ってるつもり 無知の科学」(著者:スティーブン スローマン, フィリップ ファーンバック)(Amazonにリンク・本の森の紹介)と,「武器化する嘘 情報に仕掛けられた罠」(著者:ダニエル・J・レヴィティン)(Amazonにリンク・本の森の紹介)を挙げておく。

以上の5冊に目を通せば,「思考」の重要事項については,ほぼ把握できよう。

アイデア

早い思考に親近性があるが,思考以前とも言える,アイデアや発想を生み出す方法は,なかなか楽しい。

まず「問題解決大全」(著者:読書猿)に著者による「アイデア大全」(Amazonにリンク・本の森の紹介)は,多くのアイデアや発想を生み出す豊富を取り上げており,必読書だろう。ただともすると,いろいろ知っておしまいということになりかねない。そこで,アイデア書として名のしれた何冊かを紹介しておく。

「IDEA FACTORY 頭をアイデア工場にする20のステップ」(著者:アンドリー・セドニエフ)(Amazonにリンク・本の森の紹介)

「アイデアのつくり方」(著者:ジェームス W.ヤング)(Amazonにリンク・本の森の紹介)

「アイデア・バイブル」(著者:マイケル・マハルコ)(Amazonにリンク・本の森の紹介)

「アイデアのちから」(著者:チップ・ハース、ダン・ハース)(Amazonにリンク・本の森の紹介)

方法論の基礎

ところでこれまで紹介した本は,どちらかといえば,経験の集積という本が多く,(「行動分析学」と「システム思考」は科学的方法であるが,これも含めて)「方法論の基礎」を踏まえて,論理的,科学的に捉え返す必要がある。

具体的には,問題解決基礎論,思考とアイデア,行動分析学,システム思考,哲学,言語・論証,論理学・数学(確率・統計),CS・IT・AI,進化論・脳科学・認知科学・心理学,ゲーム理論・経済学,複雑系科学,その他(失敗学,選択の科学等)を検討する。ここで重要なのは,「問題解決と創造」につながる事件の経過による変動を踏まえた事象の記述とモデル化である。

問題解決と創造の対象となる「人:生活・仕事・文化」「企業」「政府」「環境」「世界:社会・経済・歴史」の4要素,5領域では,それぞれ少しずつ異なった科学的な方法(あるいは経験論に科学的手法を組み込んだもの)が活用されている。「環境」では自然科学的な方法が,「世界:社会・経済・歴史」や「政府」(公共政策)では,社会科学的な方法が用いられてきたが(当面,「創造の方法学」,「原因を推論する」,「原因と結果の経済学」,「計量経済学の第一歩」,「社会科学の考え方」,「ゲーム理論による社会科学の統合」等の書名だけを挙げておく。),進化論,行動経済学,ゲーム理論,複雑系科学,複雑系ネットワーク等が新しい分析を試みている。

投稿記事の紹介

下位メニューの「問題解決と創造(投稿)」には,「問題解決と創造の方法」に関連する投稿が時系列順に掲載される。大切なのは,森羅万象について次々に起こりつつある自然科学,社会科学の知見を,美的感覚を研ぎすましてアイデアや「問題解決と創造」に結びつけることであろう。以上を踏まえて考察を深化させていきたいが,ここではこれまで作成した「問題解決と創造の方法」に関係する投稿記事を紹介しておこう。

参考 書庫

ところで,思考,アイデアの湧出を活性化するツールちなるを集めた本を整理した「書庫」を作成している(内容によって「アイデア・デザイン編」,「IT・AI編」,「経営編」,「心身の向上技法編」,「世界の構造と論理編」,及び「冷水編」に分けている。)。分類は古いものだが,当面,このままにしておく。

 

 

 

 

「行動分析学」と「システム思考」で世界を見る

問題解決と創造の「入力」について考える

問題解決と創造(創造は問題解決の一場面と考えられるので,以下「問題解決」とする。)について考えていく場合,その全体の構造については,佐藤の問題構造図式(入力→プロセス→出力,及び制約条件と外乱)で整理するとして,「プロセス」に「入力する」(働きかける)具体的な内容は,どのように考え,実行すればいいのか。

まず解決すべき問題領域は,大きくは,個人の問題と,組織,環境,世界の社会・経済等の複雑なシステムの問題に分けて考えることが出来るから,問題解決のための「入力」の内容,及びそれを立案,実行する方法は,両者で大きく異なっているだろう(もちろん共通する部分もある。)。

個人の問題解決 行動分析学

行動分析学へのアクセス

個人には他者も含むとして,個人が問題解決すべき対象は,専らその「行動の改善」である。これについては,自己啓発書,ビジネス書が,洋書,和書を問わず,世に溢れており,私が保有するKindle本,R本も,汗牛充棟であるが,なかなか出発点とする最初の一冊として適当なものが見当たらなかった。それでも洋書(翻訳本)には,概してアイデアに満ちたものも多いのだが,立論の基本や全体の構成がよくわからないか,翻訳の問題もあるのだろうが,個々の記述の趣旨が汲み取れないものが多い。

そういう中で,「行動」,「行動」と呟いているうちに,ふと昔,「行動分析学」の新書を何冊か読んで興味を引かれたことを思い出し,Kindle本を探してみた(R本は事務所移転時に,とっくに処分していた。)。前読んだことがあってすぐに手に入ったのが,「行動分析学入門-ヒトの行動の思いがけない理由」(著者:杉山尚子)(Amazonにリンク・本の森の紹介),「メリットの法則 行動分析学・実践編」(著者: 奥田健次)(Amazonにリンク・本の森の紹介)である。更に杉山尚子さんが監修をしているという「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(著者:舞田竜宣)(Amazonにリンク・本の森の紹介)には,ビジネスについての具体例が記述されていると思い購入した。

「行動分析学」は(その内容については追ってその概要を説明するが),上記の新書等を読む限りでは,人間の行動について核心をついている部分がある一方,上記の新書等の説明では全体の体系や個々の概念が,曖昧かつ穴だらけと思えて,これでは「使えない」という印象であった。しかし念のため有斐閣アルマとしてでている「行動分析学 行動の科学的理解を目指して」(著者:坂上貴之, 井上雅彦)(Amazonにリンク・本の森の紹介)に目を通してみたところ,上記の不満は一気に解消した。行動分析学は,心理学の中では異端の一派というイメージがある(?)一方,知的障害者らの療法において自らの実用性を証明し続ける責務を課されているからだろうか,著者たちは,学問における行動分析学の位置づけと自分らの記述の意味合いについて厳密,緻密に対処しようとしており,本書は,私の好みにも合う。その分,もともと行動分析学は相当概念を特殊な意味合いで使用し造語も多い上,本書はそれに屋上屋を架す部分があり,読み通すのに苦労する。

そうではあっても行動分析学は,個人の問題解決に向けての「仮説」としては,充分な科学的内容を備えている。ただ,専ら動物や,知的障害者らにおける,実験,実践を通じて発展してきた「学問」だから,個人の行動改善に,直接,本書を当てはめようとすると,戸惑ってしまう。そこで,厳密性には欠けるが実用的な場面を想定している「使える行動分析学: じぶん実験のすすめ (ちくま新書)」(著者:島宗 理)(Amazonにリンク・本の森の紹介)や,上記した「行動分析学で社員のやる気を引き出す技術」(著者:舞田竜宣)(Amazonにリンク・本の森の紹介)等で具体的な問題を想定し,その解決策を立案,実行し,疑問があれば本書に戻って基本から考えるという作業が有用だろう。

文化随伴性から政策行動科学へ

本書の最後の部分に,個人の問題を超える社会の問題解決について本書の意気込みが表れているので,長くなるが紹介しよう(文化随伴性という用語も追って紹介する。)。いきなりこの「行動分析学」の世界に入るのはなかなか大変だが。

 動物個体のオペラントに代表される,環境に直接働きかける行動において,その環境とは,もっぱら物理的化学的生物的な性質を有する自然や人工の環境を指していた。しかし,同じオペラントである言語行動の働きかける環境は聞き手であり,この聞き手の行動を通して従来の環境の変化を生み出す点に,この言語行動の特徴があった。文化随伴性は,これをさらに系統立って拡張していく仕組みを用意したといえる。たとえば,さまざまな教育機関は,国や政府,特定の集団のルールに対して,特定の反応を自発することを推奨し,そのルールに従う行動を強化する。こうした教育機関が組織的に強化する教育行動は文化を効率的に伝承する機能を持っている。
 しかし,文化随伴性の最も重要な部分は,それがHN性(注:「今ここ性」 [to be here now]) を超えることを可能にする仕組みを持っている点にあると思われる。さまざまな制度,機関,規範などの文化的装置を作り出すことで,多数の個体に対して,過去から未来にわたる時間と地球規模の空間に接近をすることを可能にさせるとともに,これらの文化的装置を通じてHN性を大きく改善させることが可能になったと考えられる。たとえばネットワーク環境に検索を通じてアクセスすることで,私たちはこれまでに考えられなかった「記憶」の拡がりを体験することができるようになった。
 しかし,HN性から自由になって時空の拡張が可能となる一方で,私たちはその見返りに,未来の予期,過去への悔悟,そこには存在しないが空間的な距離を隔てたものからの脅威といった,HN性のみの世界であれば,存在しえなかった新たな行動の創出を余儀なくされており,そうした新しい行動はヒトに「ストレス」や「不安」と呼ばれるような新しい問題行動を生み出すに至っているようにも思われる。仕事の効率化や交通の高密度化が次々と生み出す苛立ち,うつ,不安の症状に,現代の私たちは苛まれている)。
 いわゆる「文化」というものが,特定の共同体の行動傾向や,それを規定する強化子や弁別刺激からなる随伴性として捉えられるのであるなら,その変容も可能なはずである。ただし,これまでに述べてきた学習性行動に関わる随伴性と異なり,文化随伴性は長い年月をかけて幾重にもある種の安全装置が掛けられており,慣行のシステムのなかには,変化させやすいものとさせにくいものがある。会社組織の改革と比較して,宗教の戒律や法律のなかの憲法や教育制度は変革させにくいし,変革に対しては多くの不安や抵抗を伴う。しかも私たちはこれらの変革に伴う結果について,たしかな科学的根拠を持たずに議論している。
 会社組織のなかの行動システムの変更は,売上や利益という明確な価値の基準が適用可能であり,組織や制度改革の影響としての効果が測定しやすい。しかし,教育や憲法の場合は,その効果指標が複雑であったり,測定に時間がかかりすぎたりしてしまう。ましてや宗教の戒律となると,それに従うことによる「価値」が形成されているために,変更には強い抵抗が生じるであろう。何より私たちは,「自然に」変わることは受け入れても,政治や教育によって意図的に変容させられることを好まない。
 しかし現在,私たちは少子高齢化や環境問題といった長期的な取組みのもとで意図的に変わることを求められている問題に直面している。文化随伴性に関わる行動分析学は,ある政策やルール変更が人々の行動にどのような変容をもたらし,引き続いて長期的な変容を維持しうるかを科学的に分析する政策行動科学という領域を発展させることで,今後もその存在価値を見出すに違いない。

個人の問題解決 番外編…行動分析学が面倒な人へ

私は個人の問題解決には「行動分析学」に添って解決策を実行することが適切だと思うが,要はダイエットして,勉強すればいいんでしょう,あれこれ面倒くさいことを言われなくても実行しますよと言える人には,「ペンタゴン式目標達成の技術 一生へこたれない自分をつくる」(著者:カイゾン・コーテ) (Amazonにリンク・本の森の紹介)をお勧めする。呼吸,瞑想,認知,知識,健康,自律,時間についの,無理でない実践法が紹介されている。

複雑な問題の解決 システム思考

システム思考へのアクセス

システム思考は,恐らく「行動分析学」よりよく知られてだろう。特にシステム思考の応用形である「学習する組織」や「U理論」は,最近,割とよく目にする。システム思考そのものの紹介も追ってすることにして,ここでは,システム思考へのアクセス方法を紹介しよう。

システム思考の前史となる一般システム理論,サイバネティックスは置き,システム思考は,MITのジェイ・フォレスターさんが,経営や社会システムにフィードバック制御の原理を適用してはじめた「システム ダイナミクス」(システム内でつながり合う要素同士の関係を、ストック・フロー・変数・それらをつなぐ矢印の4種類で表し微積分やコンピュータソフトによって定量分析する)について,これは専門的でわかりにくいので,「因果ループ図」を用いて,変数のつながりやフィードバック関係を直感的にわかりやすく説明し,複雑な事象の振舞いについてその特徴を把握し定性的な分析を行う「システム思考」が提唱された。システム思考は,「学習する組織-システム思考で未来を創造する」(「The Fifth Discipline」。初版は「最強組織の法則」)(著者:ピーター・センゲ)(Amazonにリンク・本の森の紹介)で,ポピュラーになった。

MITの「システムダイナミクス」の研究グループや連携する研究者には,ピーター・センゲさんの外,ジョン・スターマンさん,デニズ・メドウズさん,ドネラ・メドウズさん,ヨルゲン・ランダースさんらがいる。彼らの業績や日本での紹介等をふまえ,「システム思考」を3つに分けることができるだろう。

システムダイナミクスに基づいた「成長の限界」の考察

上記のグループには,システムダイナミクスを踏まえ地球の持続可能性を真正面から検討したローマクラブの「成長の限界」(1772),これに続く「限界を超えて 」(1992),「人類の選択」(2005),さらにヨルゲン・ランダースさんの「2052」(2012)(Amazonにリンク・本の森の紹介)がある。

既に亡くなられたドネラ・メドウズさんの「地球のなおし方 限界を超えた環境を危機から引き戻す知恵」(2005)(Amazonにリンク・本の森の紹介)もある。

世界の社会,経済や地球の自然,生態系の今後を検討するうえで,必読の文献だ。

システム思考を社会,経営に適用する

システム思考は広く複雑なシステムの問題に適用できるが,その基本として「世界はシステムで動く- いま起きていることの本質をつかむ考え方」(著者:ドネラ・H・メドウズ)(Amazonにリンク・本の森の紹介)や,「システム思考―複雑な問題の解決技法」(ジョン・D・スターマン)(Amazonにリンク・本の森の紹介),更には,「学習する組織 システム思考で未来を創造する」(著者:ピーター・センゲ)(Amazonにリンク・本の森の紹介)は,重要だ。

なお上記したように「システム思考」には,「因果ループ図」を用いるが,その作画ができるソフト(Vensim)が無料で提供されている。

システム思考の日本での展開

日本では,前項の本を翻訳している 小田理一郎さん,枝廣淳子(チェンジ・エージェント社を作り,わかりやすい記事を提供している。)が書いた「なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?―小さな力で大きく動かす!システム思考の上手な使い方」(Amazonにリンク・本の森の紹介)や「もっと使いこなす!「システム思考」教本」(Amazonにリンク・本の森の紹介)がある。たしかにわかりやすいが,前項で紹介した本も十分にわかりやすい。

その他にも日本で書かれた本はいろいろあるが,ここまでの紹介で十分だろう。

なお,システム思考を紹介する活動として,日本未来研究センターシステムダイナミックス日本支部システム思考・デザイン思考で夢をかなえる/(株)Salt,,慶應義塾大学大学院ステムデザイン・マネジメント研究科,,慶応丸の内シティキャンパス(慶応では思考デザイン×システム思考が追求されている。このシステム思考は,広義のシステム思考だという説明をどこかで見た。)等があり,参考になる。日本未来研究センターは,上記の「Vensim」のマニュアルの翻訳,紹介をしている他,代表者が英文で長大な「貨幣とマクロ経済ダイナミックス−会計システムダイナミックスによる分析」を表しているが,読みきれない。

とにかくシステム思考が,今と将来の世界を考えるために重要な方法(技法)であることは間違いない。ビジネス書にあれこれ目を通す暇があったらこれに習熟したほうが良さそうだ。ただ日本での普及は今ひとつのようだ,欧米でもあまり歓迎はされていないか?

 

 

「問題解決と創造」を見直しています

「問題解決と創造の頁」を「問題解決と創造を学ぶ」として内容を見直しました。できるだけ,幅広い観点から,「問題解決と創造」について考えようと,あれこれ本を物色してきましたので,それをそろそろ反映したいと思っています。

これまで「システム思考」について全く取り上げていなかったので,これを複雑な問題についての「問題解決と創造の方法」の柱の一つとして取り上げること,個人の「問題解決と創造」については,行動改善として捉えること,「方法論の基礎」を整理すること等について取り組んでいきますが,今日の時点では全く反映されていません。

なお以下の投稿は,固定ページ「問題解決と創造の頁」を「問題解決と創造を学ぶ」として書き直して投稿したものです。固定ページの方はその内容を,適宜,改定していきますので,この投稿に対応する最新の内容は,固定ページ「問題解決と創造を学ぶ」(固定ページにリンク)をご覧ください。なお10月19日に更に内容を見直しました。

問題の所在-問題解決と創造の全体像

なぜ「問題解決と創造」なのか

私たちは,日々,個人や自分が所属する組織に関わる様々な問題の解決を迫られ,また思いついては新たな価値の創造を試みているが,なかなかうまくいかない。もう少し視野を広げると,世界中に解決困難な問題や新しい問題が集積しているが,世界中その政治過程の愚かさには辟易するだけで,当面問題解決のために組織されているはずの政府がこれらの問題を解決することは当てにしない方がよさそうだ。

そこで私たちは自ら解決に乗り出すべく,「問題解決学」とか「創造学」といわれる分野をのぞいてみたくなるが,百花繚乱で,何を頼ればいいのか,迷うばかり,さてどうしよう。それにビジネス分野から発信される「問題解決と創造」は,いかにも軽率なものが多く,どうなんだか。一方,学問分野からの発信は,重くもたもたと構造の記述にとどまるものが多く,なかなか「問題解決と創造」の実行に届かない。

要は,私たちが「問題」だと捉えることを「世界」の中に位置づけ,それを解決するために何をどうすればよいのかの道標が得られればいいわけだから,「世界」に関する知識と「問題解決と創造の方法」を結びつけることが必要となる。

「世界」と「問題」と「問題解決と創造」

では,「世界」はどのような要素から構成されているのか。経済学等では,個人(家計),企業,政府の3主体を想定するのでこれを借用し,これに自然・生態系・人工物からなる環境を加えて4要素とする。そうすると,これらの4要素の活動と相互作用(普通,これは「システム」と呼称される。)によって,各要素及びこれらの複合体の「社会・経済・歴史」等の現実の「世界」が作られるということになる。

次に,「問題解決」の場合の「問題」は,普通,私たちが存在する現実の世界における「目標と現状のギャップ」と定義されることが多い(これは,ハーバート・A. サイモンが,言い出しっぺらしい。)。なお「創造」は後記するように「問題解決」の一場面として位置づけられるので,逐一区別せず,用いる。

このような前提の元に,「問題解決と創造を学ぶ」わけだ。

「問題解決と創造を学ぶ」には,このような観点から,私自身が「問題解決と創造」を実行するために(皆様にもその手助けになるように),本を読み,Webを探索し,自分の頭で考察した内容の記事を蓄積していきたい。目的は「問題解決と創造」の実行だから,「問題解決と創造の方法」はできるだけプラグマティックな内容になるように心がける一方,「世界」はますます拡大していくから,「世界」に関する知識はできるだけ範囲を広くとり,わかりやすく整理していきたい。

なお,プラグマティックというと,役に立たないものは排除するという印象だが,論理的,科学的な学問がいつどこで役に立つかは予測できないし(特に数学ではよく言われることだ。),物語や哲学等々の人文畑も,人のイメージを沸き立たせ,新たな思考を導く役に立つ。役に立たないと断言できるのは,古い発想に固執する「知的営み」だけだ。

なお私は概念分析がしたいわけではなく,「問題解決と創造」のためには,対象となる「世界」や「問題」をこのような観点から考えるのが「実用的」だろうという「仮定」を設けただけである。

「問題解決と創造を学ぶ」の内容の紹介

全体の概要

まず「問題解決と創造を学ぶ」の最初に,問題解決と創造のための基本的な方法を検討する「問題解決と創造の方法」を設ける。問題解決の基本的な仕組み及び問題の把握と解決の主要な方法である行動分析学とシステム思考,さらにこれらを支える「アイデアと思考法」の基本を紹介する。

これに続いて問題解決と創造の対象となる「世界」の4つの要素並びにその主たる問題領域(「個人:生活・仕事・文化」,「企業:経営と統治」,「政府:権力と政策」,「環境:自然・生態系・人工物」とこれらの要素の繋がり,複合体の問題領域である「世界:社会・経済・歴史」の5つの領域について,紹介,検討する。

個人,企業,政府,環境には,それぞれ固有の問題があり,「世界:社会・経済・歴史」の問題を,個人,企業,政府,環境をすっ飛ばして考察しても,思い付きに止まるだけだというのが,ポイントになるであろうか(行動分析学の対象となる個人を除くと,すべてそれぞれがシステム思考の対象となる複雑な「システム」と考えられよう。)。

最後に,「問題解決と創造の方法」及びその対象となる「世界」を考察するための「方法論の基礎」をまとめて検討する。

ここでは,問題解決基礎論,アイデアと思考法,行動分析学,システム思考,哲学,言語・論証,論理学・数学(確率・統計),CS・IT・AI,進化論・脳科学・認知科学・心理学,ゲーム理論・経済学,複雑系科学,その他(失敗学,選択の科学等)を検討する。ここで重要なのは,「問題解決と創造」につながる事象の記述とモデル化である。

末尾に資料を集積する場として,本,Web等を集める「書庫」を設ける。

これらの考察を,「法を問題解決と創造に活かす」に盛り込みたいと考えている。

全体の構成

まとめれば,次のようになる。

  • 問題解決と創造の方法
  • 個人:生活・仕事・文化
  • 企業:経営と統治
  • 政府:権力と政策
  • 環境:自然・生態系・人工物
  • 世界:社会・経済・歴史
  • 方法論の基礎
  • 書庫

「問題解決と創造を学ぶ」-4要素5領域の世界-についての補足

私は,「問題解決と創造」の対象となる「世界」について,その内容の特質によって複数の領域を設定し,領域ごとにその特質を踏まえながら「問題解決と創造」を考えていくのが適切であろうと考えている。その領域として,個人と組織(企業,政府)の3主体及び自然・生態系・人工物からなる環境を加えて4要素とし,これらの4要素の活動と相互作用(普通,これは「システム」と呼称される。)によって,各要素及びこれらの相互作用,複合体として「社会・経済・歴史」等の現実の「世界」が作られるとりいう仮説は上記した。それぞれについて,より具体的に検討してみよう。

個人の生活・仕事・文化の問題

私たちは,ふと,「いったい私は何をしているのか,何をしたいのか」という思いにかられることがあるが,私たちがしたいことは,端的にいえば,生活を充実し,仕事と文化において幾ばくか創造をなすことであろう。

私たちの生活と仕事・文化は,走ることによって人類に進化した(これは仮説である。)後の,道具,火,言語の使用等々に支えられた長い長い狩猟採集生活を経て,わずか1万年の間の農業革命,科学革命,産業革命,情報革命等々によって劇的な変動を経験しつつある。

生活は,「食動考休」にまとめることができる。現代の食動考休は,狩猟採集生活時代のそれから大きく変容している。その充実を考える場合は,その変容を視野に入れることが必須である。

仕事は,生活及び文化の基盤に立つ分業による価値創造である。「苦役」というイメージでとらえるべきではない。

人が生活の中で展開してきた文化(芸術,芸能)は,「人のつながりの表現」である。

ところで人の生活・仕事・文化は,進化論(繁殖,生存に有利な形質が自然選択される)を踏まえて考えるべきである。ただ繁殖,生存の根底に性的な衝動や自然選択(競争)があるとしても,人はいつもそれに振り回されているわけではない。他者と接するソフィストケートされたレベルでは,人の生活は,日々の充実した,健康な活動を支える「食動考休」であり,仕事・文化は,生活の応用としての他者との分業による価値創造とつながりの表現であるとまとめることができる。

なお文化(芸術・芸能・文化)については,一連の考察とは別に独立させて検討する。アイデアを活性化させ,結露したものといえる。

個人の行動については,行動分析学が有用である。

政府と企業の問題

農業革命以前,人の生活と仕事は,ほとんど分化していなかったと考えていいだろう。人は,家族,あるいはもう少し規模の大きい共同体に属し,その中で仕事をし,共同体同士で抗争し,死んでいった。

しかし農業革命により人の生活と仕事が分化し,その余剰生産物を収奪する「権力集団」(政府)が生じた(もっとも現代のほぼすべての政府は,民主制(支配者と被支配者が同一)に基づくと主張しているが。)。そして,分業の進展により,更に「産業革命」によって決定的に,人の仕事の領域から分化した「企業」が大きな勢力となり,現在に至っているとまとめることができよう。政府と企業は,個人とは別の次元に存在する「組織」である。

なお成立は政府が先行するが,考察する順番としては,個人,企業,政府という方が分かりやすいであろう。

組織のうち企業の問題は,利潤追求を目標とする企業の活動により,たとえ「見えざる手」によって資源の最適配分が図られるとしても,様々な立場の人々(消費者,取引先,株主,経営者,従業員,政府等々)に,様々な利害得失を与えるから,その活動が適切に制御されなければならない。「経営と統治」を考察する必要がある。

組織のうち政府の問題は,民主制のもとでは個人の政治参加(投票)により選出された代表者(政治家)が組織する集団による権力行使(法・実力)と政策の実行及びその制御の問題である。ただし,政府を主導する政治家,官僚は,政策に失敗することがあるのみならず(悲惨な被害が生じる政策の失敗は戦争であろう。),その権力を冒用し私的利益を図ろうとする強いインセンティブがある。それが問題を複雑にしている。そこで主たる問題を,「権力と政策」としてとらえることとする。

なお組織には,地域共同体,宗教団体,学校,NPO等々も含まれるが,企業,政府に準じて考えればいいであろう。いずれにせよ,個人から独立した存在として迷走する組織の行動について理解するためには,複雑系ネットワークの観点が欠かせない。家族は,人の生活・仕事・文化の領域の問題として考えればよいであろう。

環境:自然・生態系・人工物の問題

個人の生活・仕事・文化及び企業や政府の活動は,環境の中で(自然及びテクノロジーを利用して)展開される。個人の生活と仕事,企業や政府の問題解決のためには,自然とテクノロジーの機能,動きを理解し,これを利用,制御することが必須である。

世界:社会・経済・歴史の問題

人はともすると,共時的及び通時的な社会や経済の問題に素手で入り込み,全体の構造を離れてその問題の一部を撫ぜ,あれこれ論じてきた。しかし,それでは決定的にうまくいかない。社会は,人の生活・仕事・文化,企業,政府,環境の複雑な振る舞いをする複合体であり,社会,経済はその一側面である。ここでは,「システム思考」なしでは「問題解決」は不可能であろう。

方法論の基礎

ところで「問題解決rと創造の方法」で紹介する多くの方法は,経験の集積という方が正しく,問題解決と創造にあたっては,KKD(勘,経験,度胸)が大事だなどともいわれるので,それだけでは心もとない。これを論理的,科学的に捉え返す必要がある。

そのため「問題解決と創造の方法」及びその対象となる「世界」を考察するための「方法論の基礎」では,,問題解決基礎論,アイデアと思考法,行動分析学,システム思考,哲学,言語・論証,論理学・数学(確率・統計),CS・IT・AI,進化論・脳科学・認知科学・心理学,ゲーム理論・経済学,複雑系科学,その他(失敗学,選択の科学等)を網羅的に検討する。ただしあまり深入りはできないので,関係するホンの紹介がメインになろう。

まとめ

このように現在,私あるいは現代の「世界」社会が直面している多くの問題について,個人,企業,政府,環境の4要素(更には,その複合する「社会・経済・歴史」も含めての5領域)から,分析,考察を巡らせ,私たちにとって最も重要で切実な問題である日々のあり方(生活と仕事)を充実,活性化させること,人から独立した存在として迷走する組織(企業と政府)を適切に制御,運営する企てに参加すること,更にはこれらの活動の環境,場となる自然とテクノロジーを理解し,制御し,利用することによって,自然・生態系,社会・経済の問題を順次解決していくことができれば,結果的に「新しい社会と経済を創る」という価値創造に結実するであろう。

最後に

私が今,最も取り組みたいことは,弁護士として「法を問題解決と創造に活かす」活動であり,「問題解決と創造を学ぶ」は,そのための,事実と論理を踏まえた準備作業,基礎作業となることを志している。このWebサイトも,やっとそういう情報発信ができるような準備が整いつつある気がする。ただまだ各メニューの内容はバラバラだ。それにITやAI,科学についての新しい知見・動向を知るには,英語文献の読解が必須である。その意味で内容が整うまでには今しばらく時間がかかりそうだ。

 

 

「図解 老人の取扱説明書」を読む

著者:平松 類

どこから「老人」を見るか

「老人」というと,「頭がぼけ(認知症),体を支えられなくなり,心もゆがむ」(いわば「全滅論」といえよう。)という固定イメージがある。誰だって,自分がそんな「老人」になるなんて思いもよらないはずだが,街中には,少なくてもそういうふうに見える「老人」があふれている。私もそろそろ60台半ばを迎えて,「老人」と見られる場面も出てくるはずだが,あまり「老人」の自覚はない。でもこれから一体,どうなるんだろう。そういう中でたまたま本書を手に取った。

本書(図解 老人の取扱説明書)は,老人の困った行動を16取り上げている。ここでは最初の8個をあげてみよう。

①都合の悪いことは聞こえないふりをする。②突然,「うるさい!」と怒鳴る,でも,本人たちは大声で話す。③同じ話を何度もする。過去を美化して話すことも多い。④「私なんて,いても邪魔でしょ?」など,ネガティブな発言ばかりする。⑤せっかく作ってあげた料理に醤油やソースをドボドボとかける。⑥無口で不愛想。こちらが真剣に話を聞こうとすると,かえって口を閉ざす。⑦「あれ」「これ」「それ」が異様に多くて,説明がわかりにくい。⑧赤信号でも平気で渡る。

すべて「頭がぼけ(認知症),体を支えられなくなり,心もゆがむ」全滅論に起因するように思えてくる。

しかし,著者は,その前に,年を取ると五感がどうなるかを問題にし,五感の変化について次のように説明する。

五感の変化

Ⅰ視覚 老眼が40代中盤からはじまり,60代になると老眼鏡を使わないと辛くなります。また,白内障が50代から半数以上の人に発症し,80代を超えると99%が白内障になります。白内障になると,暗い所と明るい所が見にくくなります。

Ⅱ聴覚 難聴は50代後半からはじまり,60代後半で急速に進み出し,80代以上では7~8割を占めます。まずは高い音が聞き取りにくくなり,電子音などを聞き逃します。次第に,複数の音声の聞き分けができなくなります。後ろから迫っている車の音にも気づかなくて,轢かれそうになります。

Ⅲ嗅覚 50~60代までは年齢とともに機能が高くなりますが,それ以降はやがて低下します。70代からの機能低下が大きいです。嗅覚と味覚は関連しているので,味も感じにくくなります。普段の生活では自分の体臭・口臭に気づかず,相手を不快にさせます。

Ⅳ味覚 60代から衰えてきます。味覚障害により,醬油やソースをたくさんかけたくなります。味がわかりにくくなることで食べる楽しみが減るため,食欲もなくなります。

Ⅴ触覚(温痛覚) 50代から衰えはじめ,70代から顕著になります。手に持っているものの感覚が弱まるため,物を落としやすくなります。温度感覚も鈍るので,やけどをしやすくなります。若い人と同じ空間にいても空調の設定が違うため,嫌な顔をされます。

困った行動のかなりの部分は五感の変化が原因だ

上記した8つの困った行動のうち,①②⑤⑥は,五感の変化が原因の可能性が大きく,③⑦は記憶の問題,⑧は歩く速度の問題であり,五感以外の心身機能の一部が衰えてくるということだ。④は,役割の問題である。残りの8個の困った行動の多くも,五感の変化と心身機能の一部の衰退が原因だ。

五感の変化や心身機能の一部の衰退については,それぞれ「老人」自身で,それ相応の対応ができるし,家族や第三者もそのことが理解できると対応の仕方が大きく変わるだろう。「老人」の行動を「全滅論」で理解し,対応することはお互いにとって不幸だということだ。

全滅論につながる機能の衰退は阻止できる

五感の変化はそれを理解し,適切に対応すれば,さほど問題ではない。一方,心身機能の一部の衰退が,徐々に大きな衰退につながると,その影響は甚大である。これを防ぐのは,食動考休,特に動考である。本書でも簡単に触れられているが,見過ごしてしまいそうだ。間に合ううちに始めなければ…

本書について

「老人の取扱説明書」という題名には,多くの人が顔をしかめそうだが,本書は,老人を「取扱う」主体として,施設,病院等の第三者だけではなく,家族,そして自分自身を想定している。しかも著者は,多くの「老人」と接している「眼科医」ということのようだから,上記のとおり,問題とされる困った行動事例も,あまり深刻でない事例だ。そうなると,「取扱説明書」という機能的な観点がかえって好ましい。

なお,本書には,図解でない,新書版があるが,図解版をおすすめしたい。新書の方は記述が煩わしい。図解版はタブレットがなくてもパソコンにkindleソフトをインストールすれば読むことが出来る。

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問題解決と創造の<現場と思考>を考える

この投稿は,固定ページ「問題解決と創造の方法」に新しく追加した部分を投稿したものです。固定ページの方はその内容を,適宜,改定していきますので,この投稿に対応する最新の内容は,固定ページ「問題解決と創造の方法」(固定ページにリンク)をご覧ください。ただしその後,「問題解決と創造の方法」の内容を改め,前半部分は,別項目に,移動しました。

問題解決と創造の<現場と思考>

問題解決と創造の方法と技術を身につけ実践する前に,実践する現場(環境:自然とテクノロジー)について大まかに理解し,かつ創造の方法と技術を操作する主体である個人と組織の思考の特質(非合理性と合理的な推論と意思決定)について理解しておくことは意味あることだろう。もっともここに深入りすると,現場での問題解決と創造に至る前にそこをぐるぐる回りするけで終わってしまうということは,「知識人」,「教員」だけでなく「科学者」にもありがちなことだ。

現場(環境:自然とテクノロジー)を知る

現場(環境:自然とテクノロジー)を知るには,まず中学,高校レベルの「教科書」に目を通すのもよいが(ブルーバックスに「新しい高校の…教科書」シリーズ(Amazon)や,「発展コラム式中学の理科の教科書」シリーズ(Amazon)がある。),理科が苦手な大人向けに雑多な知識を集めたより読みやすい「入門書」に目を通すのがよいだろう。

そのような本はたくさんあるだろうが,たまたま私が最近購入したというだけだが「もう一度学びたい科学」(Amazon)からはじめてみよう。PART.1の「科学の大原理・大法則」は何とか分かるかな。PART.2の「ニュースがわかる科学の基本」の「生命の科学」,「気象の科学」,「エネルギーと環境の科学」,「宇宙の科学」だけでは全く物足りない。

まず1点目に「化学」分野はまったく抜けているので,ここは私の本棚にあった「ぼくらは「化学」のおかげで生きている」(著者:齋藤勝裕)(Amazon)でカバーすることにしよう。実際私たちの生活では「物理」はテクノロジーとして商品に封じ込められているので商品の使用法さえ分かればよいことが多いが,私のような「化学音痴」は,身の回りの物質のこと,食品のこと,生物の体のこと等々,なかなか理解するのが困難だ。炭素と水素が分かればまあいいか。

2点目に生命の歴史もない。そこで「系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史 僕たちの祖先を探す15億年の旅」」(著者:長谷川政美 )(Amazon)の写真と曼陀羅図を楽しもう。ホモサピエンス代表は,著者のお孫さんだ。もっとも,本書には,真正細菌,古細菌ドメインには触れられておらず,最初の分岐は「シャクナゲとヒトの共通祖先」からだ。それについては,「たたかう植物 仁義なき生存戦略 」(著者:稲垣栄洋)(Amazon)の「植物vs.病原菌」に「トコンドリアと共生した生物の一部が,次にシアノバクテリアと共生して葉緑体を手に入れた。こうして,ミトコンドリアのみを持つ動物と,ミトコンドリアに加えて葉緑体を持つ植物が誕生したのである」とあり,イメージしやすい。もっともこの本の内容は豊富であり,植物,いや生命を理解するためにぜひとも一読すべきであるので追って紹介しよう(ただ類書は多い。)。

3点目に「地球の歴史,自然」もまったく不十分だ。これについては「地球とは何か 人類の未来を切り開く地球科学」(著者:鎌田 浩毅)(Amazon)が,まだ速読しただけだが,網羅的でよさそうだ。ただ過去の地震歴から,」2020年から2030年にかけて「関東中央圏での直下型地震」,「南海トラフ巨大大地震」が起こる可能性があるとしていて衝撃的だが,どうなんだろう。もう少し読み込んでみよう。

さて,以上に加えて「眠れなくなるほど面白い図解物理の話」(著者:長澤 光晴)(Amazon) ,「眠れなくなるほど面白い図解科学の大理論」(著者:大宮 信光 )(Amazon) には,もう少し突っ込んだ内容が記述されており,これらに親しみ,科学全体を通観できれば,しろうと科学者の端くれになれよう(なおこのシリーズには,化学,生物,宇宙等もあるが,内容,レベルはまちまちのようだ。)。

科学分野にはこれに引き続いて読むべき興味深い本は多い。「環境:自然とテクノロジー」(固定記事にリンク)に,少し紹介している。

個人と組織の思考の特質(非合理性と合理的な推論と意思決定)について知る

「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)

ここでは問題解決と創造の方法と技術を検討する前に,ヒトと組織(の中のヒト)の思考の特質(不合理性)について,丁寧にきちんと整理して論じている「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)(Amazon) をあげておきたい。著者は,サセックス大学の心理学教授であったが1998年に亡くなっており,本書の刊行は1992年で30年近い前である(しかしKindle本の刊行,翻訳等は最近行われているようだ。)。しかし内容は非常にしっかりしており,かつ著者の表現は機知に満ちていて,読んでいて楽しい。本書刊行後,ネットの普及等でヒトと組織(の中のヒト)の思考の不合理性は強まっているが,ネット普及前の「原型」はどうだったのかという観点から捉え,現状をその「変容」と見ればいいだろう。本書は近々「本の森」で紹介したいが,著者が「序章」で本書の構成について述べている部分だけも紹介しておきたい。

「こうした本では,序章の締め括りで,各章の要約を述べるのが約束事になっている。読者が本書を読まないでもすむように,ここで内容を要約するほど私は親切ではないが,全体の構成だけ簡単に説明しておこう。2章(誤った印象)では,人が判断ミスをおかす最もありふれた原因を述べる。その後に詳しく見ていく不合理な思考の多くにこの原因が絡んでいる。続く七つの章(服従,同調,内集団と外集団,組織の不合理性,間違った首尾一貫性,効果のない「アメとムチ」,衝動と情動)では,不合理な判断や行動をもたらす社会的要因と感情的要因を見ていく。10章から19章まで(証拠の無視,証拠の歪曲,相関関係の誤り,医療における錯誤相関,因果関係の誤り,証拠の誤った解釈,一貫性のない決断・勝ち目のない賭け,過信,リスク,誤った推理)は,事実をねじ曲げてしまうために陥る誤りを扱い,それに続く二つの章(直感の誤り,効用)では,手元にある情報の範囲内で,少なくとも理論上は最善の結論を出せるような方法を述べ,そうした方法で出した結論と直感的な選択とを比較して,直感がいかに当てにならないかを示す。22章(超常現象)では,それまでに述べてきた誤りのいくつかを振り返り,超常現象やオカルト,迷信がなぜ広く信じられているかを考える。最終章(合理的な思考は必要か)では,ヒトの進化の歴史と脳の特徴から,不合理な思考をもたらす根源的な素地を考え,併せて合理的な判断や行動を促すことが果たして可能かどうかを考える。そして最後(合理的な思考は必要か)に,「合理性は本当に必要なのか,さらには,合理性は望ましいのか」を考えてみたい。」。

なお著者は合理性について次のように言っている。

「合理性は、合理的な思考と合理的な選択という二つの形をとる。手持ちの情報が間違っていないかぎり、正しい結論を導き出すのが、合理的な思考だと言えるだろう。合理的な選択のほうはもう少し複雑だ。目的がわからなければ、合理的な選択かどうか評価できない。手持ちの情報をもとにして、目的を達成できる確率が最も高い選択が合理的な選択と言えるだろう。」。

「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)

「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)(Amazon) は,人間の実際の思考を踏まえて,合理的な推論と意思決定について検討した本である。著者は,イギリスの心理学者である。少し前に入手していたが,古典的三段論法,「ならば」,因果推論,確率的説明,メンタルモデル理論,二重過程理論,帰納と検証,プロスペクト理論等,感情,合理性,個人差や文化の影響がもたらす複雑さ等,幅広く検討していて,「思考と推論」を考える上では必須の本であると思っていた。ただ問題はここに入り込むと,出てこられなくなることである。ほどほどが大事だ。

問題解決と創造への出発

以上を踏まえた上で,問題解決と創造のために,どのように頭と心を働かせるべきなのか。

以下,「問題解決と創造の方法と技術」の「固定ページ」に続く。

 

 

「読解力」から見えるAIと人を分かつもの

読解力ブーム?

「読解力」がブームである。 といっても,それはもっぱら私の読書範囲に限られるのかもしれないが,私は,最近,「国語ゼミ―AI時代を生き抜く集中講義」(著者:佐藤 優)(Amazon),「大人のための国語ゼミ」(著者:野矢 茂樹)(Amazon),そして「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」(著者:新井 紀子)(Amazon)に目を通した。

前二書は,文字どおり,国語(要約力や読解力)の重要性を説き,新井さんの本は,柱となる主張の一つとして,中高生は各学科の学力以前に,教科書の説明や問題を問う文が理解できていないのではないかということを指摘している。

大体,学者や知識人は,年をとると,国語や国が大切だと言い始めるので,その意味では珍しくないともいえるし,私の中で「読解力」とは,できの悪い日本語の文章を何とか理解するためのやむを得ない技術という思いもあって,「読解力」を持ち上げることには抵抗もあったのだが,新井さんの本が参戦したことにより,ずいぶんと違った景色が見えてきた。

新井さんは,人工知能(人の知能と同等の機能を有するもの)と,それを実現するためのAI技術を区別し,AI技術がそこそこ進展しても,人工知能はできない,なぜなら,AI技術を支えるものは,加算と乗法の数学だから,それでできることは限られる,人間の脳,自然言語の機能を,数学がカバーすることはおおよそありえないと,明快に断言する。

一方,新井さんは,AIによる東大入試合格を目標とする「東ロボ」プロジェクトをプロデュースしたことでAI讃美派と見られているかもしれないが,実はこれは最初から「東ロボ」は東大に合格できないということを明らかにするためのプロジェクトであった,ただ多くの人の知恵と協力によってAI技術を駆使してMARCH入試の合格のレベルに達したが,これ以上は無理ということのようだ。

そして人間の知能は,数学に支えられたAI技術ではとてもカバーできないが,MARCH入試の合格レベルの仕事であればAI技術が到達したから,「コンピュータが仕事を奪う」(Amazon)。これは新井さんが最初に言い出したことだとしている。そしてそれにつけても,中高生は(したがって多くの大人も),教科書の説明や問われている問題文が理解できていないので,暗記で表面を繕っても,AI技術に代替されることになる,だから「読解力」…という議論の運びになる。

AIと自然言語による論証

私はこれまで,そこそこAI論に目を通してきたが,新井さんの本は今回はじめて読んだ。最初からこういう見取り図が得られていれば,全体の動きや今後の方向性に関する理解がずっとはやかったなと思った。AI技術を支えるプログラミングが,数学による計算によっている以上,それがAI技術にできる限界であることに疑問の余地はない。ただ数学が適用可能な分野では,今のAI技術が,圧倒的なスピードで量を処理できることには日々驚かされる。ここらあたりは「数学の言葉」(Amazon)を含めた新井さんの3册の本と,もう少し技術的な本でフォローすればよいだろう(例えば「新人工知能の基礎知識」(著者:太原 育夫)(Amazon)。

一方,自然言語で主力となるのは,帰納的論証だ。これまで読んだ「論理学」の本は,演繹的論証(記号論理学)について書いているだけで,帰納的論証は飛躍があって,あまり使えないよねという記述しか目に入ってこなかったが,今回,自然言語による論証は,そのほとんどが帰納的論証であることに気がついてみると,これが「読解力」,そして「表現力」の本丸だということがわかる。

論証というと,相当以前から,上記の野矢さんの「新版 論理トレーニング」(Amazon)という本があり,私も購入していたが,接続詞を入れさせようとするところで嫌になった。接続関係と,接続詞は違う。野矢さんにはどうもその感覚がないようだ。接続詞の機能は複雑である(「文章は接続詞で決まる」(著者:石黒圭))(Amazon)。

そこであれこれ探していると,「論理的思考の最高の教科書」(著者:福澤一吉)(Amazon)という本が紹介されていることを見つけたが,なんと私はこれを既に購入していた。そのときは一瞥してあまり感心しなかったが,今回読み直してみると,論証の全体を網羅しているわけではないが,部分的にはとても優れた考察がなされていることが分かった。同著者のKindle本には他に,「文章を論理で読み解くための クリティカル・リーディング 」(Amazon),「新版 議論のレッスン」(Amazon)がある。これらはそれぞれに優れているが,著者の欠点は,それぞれに小出しして全体を網羅しないこと,あるいは体系性への情熱が欠けていることだ。

ところで福澤さんの論証論を一言でいえば,根拠(Data)→論拠(Warrant)→主張(Claim)ということだが,ほぼ同じことを英文読解の場面で横山横山雅彦さんがいっている(「ロジカル・リーディング」(Amazon),「「超」入門! 論理トレーニング 」(Amazon))。これらは,ディベートでも強調されていることだ。

そしてこれらのバックになるのが「議論の技法」(スティーヴン・トゥールミン)(「The Uses of Argument by Stephen E. Toulmin)(Amazon)だ。ただ翻訳書は絶版でずいぶん高い値段がついている。

論理的な論証を心がけるには,これらの議論のポインを押さえる必要がある。追って要約して紹介したい。

論理的に論証してどうなるのか

ところで論理的な論証はそれ自体はいいことであることに間違いはないが,問題はそのような論証による結論が,どう「問題解決と創造」の役立つかだ。でたらめな論証による結論が役立つことだってありうる。役立つためには,論証過程だけではなく,その前提となる根拠(Data),論拠(Warrant)が重要だ。これらは,適切な手続きによって導かれた「世界」に関する科学的な知識といっておくが,それがどのようなものであるかについては,どうも分析哲学を一瞥する必要があるかもしれないと思っている(「現代存在論講義ⅠⅡ」(著者:倉田剛)(Amazon)。

こんなことをしていると,いつまでたっても「問題解決と創造」にたどり着かない。いやほぼ「問題解決と創造の方法と技術」にたどり着きつつあると言っていいだろうか。ここからが長いか?