デジタル・トランスフォーメーションをめぐって

デジタル?トランスフォーメーション?

一昨日(2019年2月11日),たまたまボストン・コンサルティング・グループの「BCGが読む 経営の論点2019」(Amazonにリンク)に目を通したが,その「はじめに」の冒頭に「デジタルを中核に据え、経営を変える。バリューチェーンを再構築し、新たな成長機会を創る。デジタルによって既存事業を変革し、新規事業でイノベーションを生み出す。2019年は、そんな流れがますます加速する1年となるはずだ」とあり,「デジタル化がもたらす変化には,大きく3つの領域があると考えている。1つ目は,デジタル・トランスフォーメーション。顧客との新たな関係性を重視しながら,ものづくり,サプライチェーン,顧客接点,エコシステムなど,デジタルをテコとしてすべてを見直し,バリューチェーンを変革すること」(あとの二つは,「デジタル ベンチャー」と「組織における働き方の改革」)と続く。

私は,そのときまで「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉を見たことはあったかもしれないが,意識したことはなく,古臭い「デジタル」という言葉も「こんなふうに使われるんだ,出世したなあ」と思ったのである。

ところで,1月末の高校の同窓会でたまたま横に座った友人に「最近,ITやAIについて,何かやってみたいと思っている」と話したところ,その友人に「Project DS DXの最新状況と近未来 これからの日本の進むべき方向」というイベントに誘われたので,昨日,出席してみた。

そこでは,最初から最後まで,「デジタル・トランスフォーメーション」という言葉が乱舞した。昨日の今日だからびっくりした。確かに「ITやAI」では少しピントがずれている。「デジタル」の方が,簡単でよさそうだ。

ところで,このイベントは,出席者は20数人という小さな会合で,ある損保グループでCDOを務める人の講演と質疑応答という内容だった。そのグループでは,これまでの「損保」では将来が見えないので,長年,シリコンバレーで,スタートアップを手掛けてきたその人がCDOに抜擢され,グループ全体を引っ張っているということだった。

具体的な内容は公開すべきではないと思うので,興味深かったことだけを二つ挙げよう。

興味深いこと

ひとつ目

ひとつ目は,デジタルのビジネスを行う上で重要なツールは,ひとつは,「デザイン思考」,もう一つは「アジャイル」だという指摘である。

「デザイン思考」は,私の視野に入っていたが,抽象的で本当に使えるかどうか分かりにくいねということで,1月に若いデザイナーの友人と「デザイン思考」の本を読んでみようと約束したので,早晩,読書会兼飲み会をしようと思っている。対象は,「クリエイティブ・マインドセット-想像力・好奇心・勇気が目覚める驚異の思考法」(著者:デイヴィッド ケリー,トム ケリー)(Amazonにリンク)と,「デザイン思考が世界を変える」(著者:ティム・ブラウン)(Amazonにリンク)だ。「センスメイキング―本当に重要なものを見極める力」(著者:クリスチャン・マスビアウ)(Amazonにリンク)が「デザイン思考」を切り捨てているので,どんなもんだかと思っていた。実際に大学で試している「エンジニアのためのデザイン思考入門」(著者:東京工業大学エンジニアリングデザインプロジェクト)(Amazonにリンク)が肝になるか?

もう一つの「アジャイル」は,ソフト開発の手法だということで言葉だけ頭にあったが,「そうでない手法は?」と聞かれても「ウォーターフォール」は,言葉としては出てこなかった。

ふたつ目

興味深いことのふたつ目は,その損保グループでは,新しいデジタルのビジネスを行うために,数人ずつ,エンジニアとデザイナーを自前で雇用し,Googleの無償のAIを利用し,スピーディーな試行錯誤を繰り返して,短期間に欲しい「機能」を実装しているというのである。なるほど。

ただ,後ででてきた話であるが,経営陣のすべてがこのような試みを理解してくれるわけではないそうである(これは内緒)。

私は三つのことを考えた

余計なことだが,私が考えた三つのことを書いておこう。

ひとつ目

一つは,このようなデジタル・トランスフォーメーションの集いだとイケイケどんどんということになるのだが,ユーザーの立場からして,本当にそのようなものが必要なのだろうかと考えてしまう。知的好奇心は無限に膨れ上がるが,例えば健康についてどこまでデジタルが必要なのかは疑問である。これについては,上記書の「6 健康・予防領域で「稼ぐ」ために-成長領域なのに黒字化できない本当の理由」での指摘が参考になる。

ふたつ目

ふたつ目は,生活の「便利さ」なんてこれ以上どうでもいいのではないだろうかということである。特にIoTはサーバー攻撃の対象となって当面「便利」どころではないという気がするし,新しいAIの個々の様々な機能は目新しくて「便利」だとしても,総体として複雑なユーザーインターフェイスをもたらし,結局,ユーザーにストレスを与えるだけではないのか。

少し話はずれるが「ウォーターフォール」における「システム開発」が,発注者にも開発者にもトラブルをもたらすことが多かったが,「アジャイル」もその解消策にはならないようだ(上記書の「5 アジャイルの可能性と罠-組織のスピード、適応力、生産性向上にどう活用するか」参照)。

みっつ目

みっつ目は,上記したように,確かに私もデジタル・トランスフォーメーションについての「知的好奇心は無限に膨れ上がる」が,それは人の理性・推論が機能している部分である。人は,まちがいなく動物としての進化の過程にある「目的手段推論というちょっとした拡張機能つきのオシツオサレツ動物」であるから(「「こころ」と行動の基礎」参照),そのような動物としてデジタルをどう取り入れ利用するのかという観点がないと,複雑性の中で迷走しますよというのが私の「余計な」意見である。

デジタル・トランスフォーメーションの道遠く

ところで,「「BCGが読む 経営の論点2019」(Amazonにリンク)から上記の2点を指摘したが,この本はそのほかの内容も優れてる。コンサルというのは,うっとおしいと思っていたが,「デジタル・トランスフォーメーション」は,彼らの思考法とピントが合っているようだ。

ついでに「BCG デジタル経営改革 Digital Transformation」(Amazonにリンク)というムック仕様のkindle本も買ってみたが,これはどうだろうか。

むしろ今後勉強しなければならないのは,「デジタル・ビジネスモデル-次世代企業になるための6つの問い」(著者:ピーター・ウェイル)(Amazonにリンク)だろうか。

ところで,デジタル・トランスフォーメーションは,DXと略されることが多いようだが,DSとは何だろうか?略語も訳が分かりませんなあ。最後の疑問である。

 

 

老いに向かう日々

自分はまだ先だと思っていたが

先日,中高の同窓会があり,隣に座ったY君が,少し指の曲げ伸ばしに支障があるといって,お医者さんのM君に相談したところ「老化だ」と一蹴されたことに衝撃を受けていた。

私はこれまであまり老いということを意識していなかったが,もうしばらくすると65歳になるとなれば,「あまり若くはないわな」ぐらいは考えざるを得ない。いろいろな身体の機能が加齢とともにだんだんと衰えていく(あるいは急速に衰えていく)のは間違いないことだから,そろそろ老いや死に向き合う方が良さそうだ。

老・死とは何か

「生物学上では,死は単純明快です。人間の身体は,大部分が自己再生を繰り返しながら,長期間存続します。しかし,種の進化においては比較的短い一部分しか担っていません。種という生物学的視点で考えると,個体に求められる生存期間は,生殖期とその後の子育てに必要な期間を併せてせいぜい数年間だけです」(「初めて老人になるあなたへ」(著者:B・F・スキナー )(Amazonにリンク))。

「遺伝によって決まる将来に手を加える自然選択の力は,個体が年を取るにつれて弱まり,老化をもたらす突然変異が世代を経るにつれて蓄積するのを許容する」(「なぜ老いるのか,なぜ死ぬのか,進化論でわかる」(著者:ジョナサン・シルバータウン)(Amazonにリンク))。

そういえば,一昨年の年賀状に次のフレーズを引用した。

「「進化は,人間が日焼けしようと,皮膚がんになろうと,おかまいなしだ。なぜなら,日焼けも皮膚がんも,生殖能力に影響しないからだ…がんになるのが,たいてい子どもを持つ年齢を過ぎてからなのは,偶然ではない。進化は,子どもを持つ可能性が低い40歳代,50歳代の人間を守ることには,あまり関心がないのだ。」,「自然は善良かもしれないが,愚かでもなければ,情け深くもない。年寄りにエネルギーを注ぐような無駄はしないのである。したがって,体が新しい生命を世の中に送り出せなくなった後は,私たちは自分で自分を守るしかない」(「ジエンド・オブ・イルネス」(著者:デイビッド・B・エイガス)(Amazonにリンク))。

自分で自分を守る方法は,適切な「食動考休」の実行であることは誰でもわかる。このうち,もっとも重要なのは,動(運動)である。

まず運動によって肥満状態を解消し「一流の頭脳」を身につけよう

すこし古くなったが「健康・老化・寿命-人といのちの文化誌」(著者:黒木登志夫)(Amazonにリンク)という中公新書は,読みやすく分かりやすい好著だが,その構成は,寿命,老化の後に,肥満,糖尿病-恐るべき合併症,循環器疾患-血管が詰まる,破れる,がん-敵も身の内,感染症-終わりなき戦い,生活習慣-タバコ,食事,運動,健康診断(個人が責任をもつ生活習慣病/まずタバコをやめる/ほしいままに食事をすれば,諸病を生じ,命を失う/運動で脂肪を燃やす/健診を受けよう)と続く。

老いを迎えて,一番病・死に結び付くのは「肥満」であるということ,したがって,まだ可能であるのなら,とにかく肥満から脱することを最優先すべきである。運動では痩せないことを強調する人もいるが,食事制限だけで一時的に痩せても,それはかえって体を壊すだけだ。しかも,運動は,ストレスを取り払い,集中力,やる気,記憶力,創造力,学力を増強し,脳の老化に歯止めをかけて健康寿命を長くするというのだ(「一流の頭脳」(著者:アンダース・ハンセン)(Amazonにリンク))。そのメカニズム,証拠についての同書の説明は説得力がある。同書で薦められている運動は,最低1日30分のウォーキング,またはランニングを週に3回,45分以上行うことだけだ。さあ考えどころだ。私のお薦めは,スロージョギングだ。

老いと付き合う準備のための諸本

肥満状態の解消に取り組んでいるときは,そちらに力を取られるが,それと並行して,老いに入ったときに老いとの付き合う準備をすべきであろう。特に通常,仕事を離れることは大きな岐路になるから,それまでには一応の心構えを持つべきだろう。退職していきなり「きょうよう」(今日する用),「きょういく」(今日行くところ)がなくなることはつらい。

教養,教育のある人のための心構えとしては,上でも引用した「初めて老人になるあなたへ」(著者:B・F・スキナー )(Amazonにリンク)がお薦めだ。章題を挙げておくと,「老いを考える /老いに向き合う /感覚の衰えとつきあう /記憶力を補う /頭をしっかりと働かせる /やりたいことを見つける /快適に暮らす /人づきあいのしかた /心を穏やかに保つ /死を恐れる気持ち /老人をはじめて演じる /見事に演じきる」とだが,記述がユーモアと教養に満ちていて,勧めていることも,心遣いにあふれている。スキナーという人がわが国ではあまり例にない教養のある立派な人だということがよくわかるのだが,どうして行動分析学派は,ああも孤立し戦闘的なのだろうか。

何でも書いてあり,内容もそこそこ信頼できるいわばマニュアル本として,「東大が考える100歳までの人生設計-ヘルシーエイジング」(著者:東京大学高齢社会総合研究機構)(Amazonにリンク)がある。ただ「東大が考える」という題名を見て嫌になる人も多いだろう。私もそうだ(同じ著者で「東大がつくった高齢社会の教科書: 長寿時代の人生設計と社会創造」があるが,こちらは自然に受け入れられるが。)。

あと「LIFE SHIFT(ライフ・シフト)-100年時代の人生戦略」(著者:リンダ グラットン)(Amazonにリンク)は,改めて紹介するまでもない,必読書だろう。上記の「東大がつくった高齢社会の教科書」とともに検討したいと思っている。

老いを少し突き放して検討している本として,既に「図解 老人の取扱説明書」を紹介している。

 

「情報」の最前線

この記事は,「問題解決と創造に向けて」「環境:自然・情報・人工物の続き」として「情報」全般について論述した固定記事を投稿したものです。固定記事の方は,逐次,内容を更新していますので,最新版は,そちらをご覧ください。

情報とサイバー空間

今世界は

なぜ「情報」が,「環境」の中の「自然」と「人工物」の間に入るのか,不思議な気がするかもしれないが,「自然」と「人工物」に秩序を与える存在が「情報」だと考えれば,おかしな話ではないだろう(後記「情報と秩序」)。

「情報」はこれまで,コミュニケーション論,メディア論,あるいは諜報論として,それなりに社会に大きく位置づけられてきたが,今,世界は,コンピューター技術に支えられたIT,AIによる「情報」流通の劇的増加,高速化によって,まさにハリケーンに急襲された状態だ。今後中長期的に,IT,AIが何をもたらすのか,実は誰にもわかりはしないのだ(「世界の現在と未来を知るために」)。

それはさておき,今「情報」は,私の4要素5領域の分類の中でも,人の仕事の「PC・IT,AI技法」として,企業の「経営」を支える重要なツールとして,政府の「政策」として,そして現在と未来の「世界」の動向を支配するもっとも重要な要素だ。それらを正確に理解するためには,「情報」の基礎(ここでは「情報とサイバー空間」と捉えよう。)を押さえることが不可欠だ。

「情報」の構成

導入

「情報とサイバー空間」は,「情報総論」,「情報法と判例」,「サイバー空間の病理と対応」に分けて論じよう。

全体を通じて参照すべきは,次の本である。

  • 「サイバー空間を支配する者-21世紀の国家・組織・個人の戦略」(著者:持永大, 村野正泰, 土屋大洋)(Amazonにリンク

なお「情報」全体への導入として,次の記事を作成しているので紹介しておく。

情報をめぐって

やり残したことども」の「続情報をめぐって」の部分

情報総論

<検討すべき何冊かの本>

  • 「情報と秩序-原子から経済学までを動かす根本原理を求めて」(著者:セザー ヒダルゴ)(Amazonにリンク
  • 「情報-第2版」(著者:山口 和紀)(Amazonにリンク
  • 「生命と機会をつなぐ知-基礎情報学入門」(著者:西垣通)(Amazonにリンク
  • 「インフォーメーション-情報技術の人類史」(著者:ジェイムズ グリック)(Amazonにリンク
  • 「IT全史-情報技術の250年を読む 」(著者:中野明)(Amazonにリンク

<この項目をより詳細に検討した記事>

<この項目に関連する記事>

情報法と判例

<これだけは押さえよう>

どうして複雑な世界の問題解決を試みる「問題解決に向けて」の「情報とサイバー空間」に「情報法と判例」という法律マターが入っているのかという疑問がありうるだろう。それは,「サイバー空間」は,いわばいい意味でも悪い意味でも「無法地帯」なので,これに関わるときに,一体,何がルールとされているのか,そのルールから逸脱するとどうなるかについて,法と実際例(判例)を見極めておくことが,「サイバー空間」で適切に行動するために重要だと考えるからである。そのためにお薦めするのは,次の2冊である。

  • 「情報法入門【第4版】-デジタルネットワークの法律 」(著者:小向 太郎)(Amazonにリンク
  • 「新・判例ハンドブック 情報法」(編者:宍戸 常寿)(Amazonにリンク

これらについては行動規範として,おおまかな目次が頭に入っていた方がいいので,掲記しておこう。

「情報法入門」

1 デジタル情報と法律(デジタル・ネットワークの衝撃/デジタル・ネットワークと法律/情報化関連政策) 2 ネットワーク関連事業者(通信と放送/ネットワーク上の媒介者/プラットフォーム事業者) 3 情報の取扱いと法的責任(取得・保有・提供/サイバー犯罪と青少年保護/知的財産の保護/個人情報保護)

「新・判例ハンドブック 情報法」

第1章 情報流通の自由(知る権利 /意見の表明 /報道取材の自由 /選挙過程)第2章 内容に着目した情報の規律(わいせつ /児童ポルノ /青少年保護 /名誉棄損-社会的評価の低下等 /名誉毀損-公益性・公共性 /名誉毀損-真実性・相当性 /名誉毀損-公正な論評 /名誉毀損-救済 /その他)第3章 プライバシー・個人情報(肖像権 /表現の自由とプライバシー /個人情報の保護 /労働関係 /インターネット)第4章 知的財産法による情報の規律(著作権-著作物・著作者 /著作権-著作者人格権 /著作権-著作権の内容 /著作権-権利制限規定 /著作権-侵害と救済 /著作権-著作権による保護を受けない情報 /著作権の保護対象 /パブリシティ権)第5章 情報流通の担い手(放送 /通信 /プロバイダ /情報流通の場)第6章 情報と経済活動(広告 /独占禁止法 /商標・不正競争 /電子商取引 /情報と金融)第7章 情報と行政過程(行政調査 /行政機関と個人情報 /情報公開 /行政による情報提供)第8章 情報と刑事法(情報(システム)の保護 /捜査と情報)第9章 情報と裁判過程(裁判の公開 /取材源の秘匿 /文書提出命令)

<検討すべき何冊かの本>

  • 「情報法入門【第4版】-デジタルネットワークの法律 」(著者:小向 太郎)(Amazonにリンク
  • 「新・判例ハンドブック 情報法」(編者:宍戸 常寿)(Amazonにリンク
  • 「データ戦略と法律-攻めのビジネスQ&A」(著者:中崎隆)(Amazonにリンク
  • 「インターネット訴訟」(著者:上村哲史 他)(Amazonにリンク

<この項目をより詳細に検討した記事>

<この項目に関連する記事>

サイバー空間の病理と対応

「サイバー攻撃」,「サイバー煽動・戦争」,「サイバーセキュリティ―」に分けて考察する。当面,ここが極めて重要な部分である。全体を通じて参考になるのはやはり次の本である。

  • 「サイバー空間を支配する者-21世紀の国家・組織・個人の戦略」(著者:持永大, 村野正泰, 土屋大洋)(Amazonにリンク

<検討すべき何冊かの本>

(サイバー攻撃)

  • 「サイバー攻撃-ネット世界の裏側で起きていること」(著者:中島明日香)(Amazonにリンク
  • 「炎上と口コミの経済学」(著者:山口真一)(Amazonにリンク
  • 「初心者のためのハッキング2019」(著者:Shekhar mishra)(Amazonにリンク
  • 「ハッキング・ラボのつくりかた-仮想環境におけるハッカー体験学習」(Amazonにリンク

(サイバー煽動・戦争)

  • 「フェイクニュース-新しい戦略的戦争兵器」(著者:一田和樹)(Amazonにリンク
  • 「情報戦争を生き抜く―武器としてのメディアリテラシー」(著者: 津田大介) (Amazonにリンク
  • 「情報参謀」(著者:小口 日出彦)(Amazonにリンク
  • 「情報隠蔽国家」(著者:青木理)(Amazonにリンク
  • 「誰もが嘘をついている-ビッグデータ分析が暴く人間のヤバい本性」(著者:セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ)(Amazonにリンク

(サイバーセキュリティ)

  • 「サイバーセキュリティ」(著者:谷脇 康彦)(Amazonにリンク
  • 「サイバーセキュリティ読本【完全版】-ネットで破滅しないためのサバイバルガイド」(著者:一田 和樹)(Amazonにリンク
  • 「決定版 サイバーセキュリティー新たな脅威と防衛策」(著者:ブループラネットワークス)(Amazonにリンク

 

PC・IT・AI技法

  この記事は,これまでに作成した記事を利用した部分が多く含まれています。「人:健康と行動」,「行動各論」,「仕事」の,<この項目をより詳細に検討した記事>です。

PC・IT・AI技法をめぐる現状

この項目では,PC・IT・AI技法を,実践的な「仕事に役立つPC・IT・AI技法」と,これを支える「PC・IT・AIの理論と技術」にわけて検討する。

ただこの分野は,10数年前から「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーが加わり,すべてがますます複雑化し,その変化は劇的に加速されつつある。われわれは,この「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーによる「ハリケーン」に見舞われ,この分野は,制御する対象どころか,その現況・将来を把握・予測するのさえ,困難になりつつある。このような現実がどう動くのか,内外の新しい本を「世界と現在の未来を知るために」において検討してみた。

その中で,一方で,再現ない開発と発展の夢物語を語って自分の利益につなげようとする輩,一方で,サイバー空間でこれを悪用しやはり自分の利益につなげようとする輩が多発し,普通の市民としてこれらに立ち向かうのはなかなか骨が折れる。

仕事に役立つPC・IT・AI技法

今の時代は誰でも,自分の生活や仕事に,PC(スマホを含む)・IT・AIの技法を活かすことは大切なことだ。しかし現実は上記したとおりでなかなか大変だ。特にAIは,われわれの仕事を奪うとさえいわれている。以下,私の仕事の限りで,役に立つPC・IT・AI技法を簡単に検討する。

AIする前に

AIが,コンピュータやインターネットの技術的進展とデータ量の増加を背景に,従前の機械学習(プログラミング)にディープラーニングの手法を組み込んだ情報処理技術の最前線だとすれば,AIに心をとらわれる前に,今あるコンピュータ,インターネット,プログラミングに基づくIT技法を使いこなすことが,弁護士がAIにつき進むための前提である。「AIする」(あいする)はギャグです。

重要な法律関連情報の収集

弁護士が業務でする情報処理のうち,当面,もっとも重要なのは,法律関係情報の収集分析である。これについては,何種類かの,判例,法令,法律雑誌の検索システムが提供されている。私は,「判例秘書」を使っている。

通常,判例検索システムには掲載している雑誌に含まれる以外の論文等は掲載されていないので,補足のため「法律判例文献情報」を使っている。ただ,これは単に文献の名称や所在が分かるだけで,文献がオンラインで見れるわけではない。法律のきちんとしたコンメンタールが,ネットで検索等で利用できれば便利だろうが,今のところ限られたものしかないようである。私は,パソコン版の「注釈民法」は利用しているが,民法改正でどうなることやら。

ところでアメリカのレクシスネクシスが開発中の「Legal Advance Reserch」のデモを見たことがあるが,州によって法律が違うこともあって,法令,裁判例,陪審例,論文,関連事実等,膨大になる事実を収集し,一気に検索,分析,可視化できるデータベースとのことである。これまでアメリカの弁護士が膨大な時間を費やしていたリサーチの作業時間が一気に減り,弁護士のタイムチャージの減少(いや,弁護士の仕事の生産性の向上,効率化)とクライアントの経費削減が実現しつつあるようである。ついでにいうと,同じくアメリカの弁護士が膨大な時間を費やしてすることで依頼者の大きな負担になっているe-ディスカバリーも,AI導入で,これもタイムチャージの大幅な減少がはかられつつあるとのことである。我が国において「リーガルテック」とか「レガテック」とかをいう人がいるが,やがて多くの工夫に支えられてその方向に行くとは思うが,現状では単なる「商売」以上とは思えない。

判例,法令,文献検索以外の技法

そこで前項の重要な法律関連情報(判例,法令,文献等)の収集以外で,今行われている弁護士業務を支えるIT技法を集めている本「法律家のためのITマニュアル【新訂版】」,「法律家のためのスマートフォン活用術」を紹介する。いずれも私が昔所属していた「日本弁護士会連合会 弁護士業務改革委員会」の編著だ。

そのほかに,税理士さんがIT技法を駆使している「ひとり税理士のIT仕事術」(著者:税理士 井ノ上 陽一)も役立ちそうなので紹介しておく。

それともともと裁判所がワープロ「一太郎」を使っていたことから,私もワープロというより清書ソフトとして「一太郎」を使っていた。Wordには不慣れなので,いろいろと勝手なことをされて「頭に血が上る」ことが多い。そこで「今すぐ使えるかんたんmini Wordで困ったときの解決&便利技」(Amazonにリンク)と,「Wordのムカムカ!が一瞬でなくなる使い方 ~文章・資料作成のストレスを最小限に!」(著者:四禮静子)(Amazonにリンク)を紹介しておく。「頭に血が上る」のは,私だけではない。

ここで紹介した5冊については「仕事に役立つIT実務書」として「詳細目次」を作成したので,それを見て必要な項目を参照すればいいだろう・

PC・IT・AIの理論と技術を学ぶ

私は学んだことがない

PC・IT・AIについてきちんと理解し,これを当面の事務処理だけでなく,今後の生活や仕事全般に生かしていくためには,その理論と現在の技術をきちんと押さえる必要がある(私で言えば平成30年6月にゲーム制作受託会社の社外監査役に就任したので,ゲーム関係の技法もフォローしたい。)。もちろん,上記のとおり現在のサイバー空間は大変な問題を抱えているが,それに的確に向かい合うためにも,理論と技術をマスターすることは大切だ。そうでないと単なる「怖がり」か「物好き」に終わってしまう。こういう問題は「情報科学」として学ぶのだろうが,これは私の若いころには(多分)なかったか,少なくても一般的ではなかった分野なので,私には,丸々,穴が空いている。普段からそういうプレッシャーがあるからか,折に触れ,この分野の主としてkindle本を購入してきた。今の時点でこれをまとめ,今後必要となる論理と技術を,適宜取り出せるようにしておきたい。

理論と技術への架橋

ただ「理論と技術」へ行く前に「情報総論」と,情報をめぐるルールである「情報法と判例」は別途検討しておいた方がいいし,サイバー空間における「サイバー攻撃とサイバー煽動」も急いで検討すべきであるが,これらは「環境:自然・情報・人工物]の「情報とサイバー空間」に位置付けることとし,ここでは,「コンピュータ」,「論理・アルゴリズム・プログラミング」,「インターネット・Web」,「AI」に分けて紹介するが,暫定的なものである。取り上げた本も積読のものが多いので,その帰属も不適当だったり,重複も多いように思う。

なお「IT・AI本がたまっていく」という記事を作成したことがある。

ただこの項目を設けることによって,「PC・IT・AI」の全体像が浮かび上がってきて,意味あることだと思う。今後,重要な本から,追々,「…を読む」にしていこう。

なお「法と弁護士業務」に関連する項目として「AIと法」「IT.AI法務」が掲載されている。

コンピュータ

論理・アルゴリズム・プログラミング

インターネット・Web

 AI

社会問題を解決する方法序説

社会問題とは

社会問題とは,個人,企業,政府が,相互に関係,依存している複雑なシステム上の問題といえるだろう(複数の政府が関係すれば,国際(的な社会)問題である。)。

私たちは,社会問題や国際問題として,貧困,エネルギー資源の浪費と生態系の破壊,地球温暖化,戦争等々というような問題を挙げるが,このような問題を解決するには,問題を解きほぐし,十分な準備と関係する組織の強力な協調行動が必要であり,簡単ではない(これらについては,当面,「地球のなおし方-限界を超えた環境を危機から引き戻す知恵」(著者:デニス・L・メドウズ,ドネラ・H・メドウズ)(Amazonにリンク)や, 「2052」(著者:ヨルゲン・ランダース)(Amazonにリンク)等を参照されたい)。

それはそれとして,もっと身の周りに,自分が一歩踏み出すことで解決すべき社会問題はないのであろうか。もちろんたくさんある。

その際,重要なのは,「政治が変われば社会はよくなる」などと考えないことだろう。もちろん,国内の中央政府,地方政府は,ルールを強制できる権力を有し,人と財を消費,分配する政策実行主体だから,多くの公共的な社会問題について,関与する領域や役割も多いが,しかしシステムの一つの要素にすぎず,その行動,ルールのどこをどのように変え,他の要素のどこをどのように変えるかという「システム思考」によって,政府の政策全体を検証,変革しなければ問題解決にはつながらず,「政治」が変わっただけでどうこうなるわけではない。だから私たちが社会問題に関わるとしたら,政府があまり関係しない問題か,政府が「謙虚に」問題解決にトライしている社会問題がよいだろう(後者が存在するかどうか?)。

そこで自分が一歩踏み出すきっかけとなるような3冊の本を紹介しておく。

3冊の本

①「社会が変わるマーケティング-民間企業の知恵を公共サービスに活かす」(著者: フィリップ・コトラー,ナンシー・リー)(Amazonにリンク

②「社会変革のためのシステム思考実践ガイド-共に解決策を見出し、コレクティブ・インパクトを創造する」(著者:デイヴィッド・ピーター・ストロー)(Amazonにリンク

③「社会的インパクトとは何か-社会変革のための投資・評価・事業戦略ガイド」(著者:マーク・J・エプスタイン,クリスティ・ユーザス)(Amazonにリンク

いきなり「社会問題」といってもとっつきにくいので,①のコトラーが「民間企業の知恵(マーケティング)を公共サービスに活かす」という観点から,様々な事例を紹介している。入口として優れている。

②は「システム思考」を基に,本格的に「社会問題」を解決する手法を論じたものであり,一番の基本書であろう。

③は,社会問題の解決を「社会変革のための投資・評価・事業戦略ガイド」という観点からきっちりと捉えようとしたもので,この分野の専門書といえよう。

詳細目次等が作成できていないので,追って掲載することとし,ここでは書名のみを紹介した。

 

 

「こころ」と行動の基礎

「こころ」と行動

この世界の様々な複雑なシステムは,おおよそ,人の行動(言語行動を含む)とモノの動き,及びその相互作用から成り立っていると捉えることができよう。

世界の様々な複雑なシステムを理解するためには,人の行動について全体像を把握し,人の行動と「こころ」との関係についてもあまり的外れでない理解をする必要がある。そして「こころ」と行動及びモノの動き及びその相互作用を捉えることによって,様々なシステムのどこをどのように動かせば問題解決につながるかという道筋も見えてくるだろう。

そこで「「こころ」と行動の基礎」という項目を設けたが,この問題に深入りすると,それこそ一生出てこれなくなるので,ここでは,「基礎」としてさほど的外れでないであろう概観ということで済ますことにする。

そのために4冊の本を紹介しよう。

最初はこれまでにも紹介し,私も折に触れて目を通しているがいまだに頭に入らない「哲学入門」(著者:戸田山和久)だ(本の森での紹介1本の森での紹介2)。これで,「「こころ」と行動の基礎」についての端的な理解を紹介しよう。

次に,「こころ」の問題を,最新科学を踏まえて説明している「「こころ」はいかにして生まれるのか」(著者:櫻井 武)をみよう。この本は,行動理解につなげる意識がないと,いささか散漫に思える内容だが,行動理解を念頭に置くとなかなか素晴らしい。

更にこれまで一貫して行動をだけを人間理解の焦点にしてきた行動分析学から,「行動の基礎」(著者:小野 浩一)を取り上げ,前2書に照らして,現時点で行動分析学の理解を検証したいと思っている。

そして最後に,「〔エッセンシャル版〕行動経済学」(著者:ミシェル バデリ)を取り上げる。「行動経済学」の本は,ともすると,エピソード集になりがちで,いいささか使いにくい。この本は,入門書であろうが,人間の行動とのからみが,要領よくまとめられていてお薦めだ。

「哲学入門」による「「こころ」と行動の基礎」

人間の行動は,まず第一にオシツオサレツ動物と同じ仕方で決定される。いくつかの傾向性があり,それがニーズと知覚情報によってアフォードされるという仕方だ。これがベースになる。

ところが,人間はこうした傾向性を調整する別の仕方を獲得した。その結果,目的手段推論の結果によって,ベースにある傾向性をリセットできるようになった。だとするなら,目的手段推論を入力(知覚・欲求)と出力(行動)をつねに媒介しているものと捉えるのはよろしくない。いつでも立ち止まって,いまやろうとしていることがベストなのかを考えていたら行動の時機を逸してしまう。ときどき問題が重要なとき,たっぷり時間があるとき,行為を止めて,私たちは目的手段推論を作動させる。で,その結果に応じていまの傾向性をリセットして,新しい傾向性にあとをゆだねる。

人間はオシツオサレツ動物とは質の異なったまったく別次元の存在なのではない。目的手段推論というちょっとした拡張機能つきのオシツオサレツ動物なのである。ただ,この拡張機能はバカにできない。「人間らしさ」のルーツがこの拡張機能にあるからだ

「「こころ」はいかにして生まれるのか」

「「こころ」はいかにして生まれるのか-最新脳科学で解き明かす「情動」」(著者:櫻井 武)(Amazonにリンク)

まとめの紹介

この本はたまたま,原著に「まとめ」があるので,取り急ぎ,それだけ紹介しておこう。末尾に詳細目次も掲載した。

第1章「脳の情報処理システム」のまとめ

1 脳において大脳皮質は情報量の大きな情報を速く処理するために,「後づけ」で増築された演算装置である。

2 大脳皮質は感覚情報を要素ごとに分解してデジタル的に処理し,それを脳内で再構成している。

3 人の脳は前頭前野がとくに発達しており,感覚情報の統合的理解,認知,未来予測などに関与している。

4 ヒトに備わった,他者の立場に立って考え「共感」することができるという能力は,「こころ」を考えるうえで欠かせない機能である。

第2章「「こころ」と情動」のまとめ

1 情動とは感情の客観的・科学的な評価である。

2 情動は「情動体験」(≒感情)と「情動表出」(身体反応)に分けられ,後者を観察することにより客観的に記載できる。

3 情動は脳がつくりだすが,その結果,引き起こされた情動表出は脳にフィードバック情報を送り,情動を修飾する。

第3章「情動をあやつり,表現する脳」のまとめ

1 情動は大脳辺縁系でつくられる。

2 大脳辺縁系は記憶にも深く関わっており,海馬は陳述記憶の生成に,扁桃体は情動記憶の生成に重要である。

3 感覚は大脳皮質と大脳辺縁系で並列処理され,前者は感覚情報の物理的側面を,後者は情動的側面を受けもつ。

第4章「情動を見る・測る」のまとめ

1 情動の高まりは表情をふくむ行動,交感神経の興奮,副腎皮質ホルモンの上昇に表れる。

2 情動は行動,自律神経系,内分泌系の測定によって観察できる。

3 脳機能画像解析により扁桃体の興奮を測定することも情動を測定する一手段である。

4 動物を用いて扁桃体や視床下部室傍核の活動を調べることにより,情動を推し量ることができる。

第5章「海馬と扁桃体」のまとめ

1 海馬は新たな陳述記憶の生成に不可欠である。

2 陳述記憶は時間がたつにつれて大脳皮質,とくに側頭葉皮質に移行する。

3 扁桃体は情動記憶を受けもつ。

4 ストレスホルモンは陳述記憶を弱め,情動記憶を強くする。

第6章「おそるべき報酬系」のまとめ

1 ドーパミンが側坐核に放出されると,その原因になった行動をやめられなくなる。

2 ドーパミンは腹側被蓋野に存在するドーパミン作動性ニューロンから供給される。

3 前頭前野は不確実な報酬を大きな報酬ととらえ,ドーパミンの放出を促す。

4 予測した報酬の大きさと,実際に得られた報酬の差(報酬予測誤差)が,前頭前野が感じる報酬の大きさとなる。

第7章「「こころ」を動かす物質とホルモン」のまとめ

1 脳内には「こころ」の機能に強く影響をおよぼすたくさんの種類の脳内物質が存在する。

2 血液中をめぐる多くのホルモンも,脳機能を強く変容させる。

終 章 「こころ」とは何か

ここの「まとめ」は原著にはない。

・私たちは前頭前野の機能により,自らがおかれている環境を理解し,自分の身体の状態を認知しながら生活している。前頭前野は意識や認知,論理的思考,内省,倫理的判断,未来の予測などに深くかかわっており,また,思考に用いる作業記憶もこの部分に存在する機能である。作業記憶の内容は,現時点で私たちが認知していることである。私たちの「自我」や「意識」はこの部分に存在すると言っても間違いではない。しかしながら,私たち自身の行動の選択に,前頭前野がおよぼしている影響は,実は限定的なものでしかない。もっと強く行動をドライブしているのは,根源的には脳の深部の構造であり,無意識の過程なのである。私たちは自分の行動をすべて自らの意志でコントロールしていると錯覚しがちであるが,私たちの行動を意識がコントロールしている部分は,ごく一部である。

・ヒトや動物は外界の状況を,感覚系を介してキャッチしている。その情報は,視床を介して扁桃体にやってくる。その人が恐怖を感じる対象や状況を認知したときに,扁桃体は強く興奮する。扁桃体が中心核を介して視床下部や脳幹に情報を送ると,自律神経や内分泌系が変動するとともに,脳内でもモノアミン系ニューロン群が大きく活動を変える。とくに青斑核ノルアドレナリンニューロンの活動が増え,扁桃体に作用することにより,恐怖行動は強化される…一方で,喜びを感じているときには,報酬系の活動が起こっている。報酬をゲットできる,あるいはゲットできるかもしれないと前頭前野が認知することにより,腹側被蓋核のドーパミン作動性ニューロンが活動することが,喜びの「こころ」をつくる。ドーパミンは側坐核に働き,喜びを生むに至った行動を強化するとともに,扁桃体にも情報を送り,筋肉の緊張を緩める方向に働く。黒質のドーパミン作動性ニューロンも働いて筋肉はよりスムーズに動くようになり,身体全体の動きは大きくなる。

「行動の基礎」

「行動の基礎-豊かな人間理解のために」(著者:小野 浩一)(Amazonにリンク)

これは当面,末尾に詳細目次だけを掲載しておく。

「〔エッセンシャル版〕行動経済学」

「〔エッセンシャル版〕行動経済学」(著者:ミシェル バデリ)(Amazonにリンク)

これは当面,末尾に詳細目次だけを掲載しておく。

詳細目次に続く

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世界の現在と未来を知るために

世界は今どうなっているのか

人の行動と,自然と,人工物が,相互に働き掛け反応して織りなす「世界」は,もともと巨大・複雑なシステムであり,最近になってシステム思考や,ビッグヒストリーという試みが何とかこれを解明しようとしていたと言えるだろう。従前の「経済学」,「社会学」,「歴史学」等の諸学は,隔靴掻痒の感を免れなかった。

ところが,10数年前から「世界」の要素として「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーが加わり,「世界」はますます複雑化し,その変化は劇的に加速されつつある。

私たちの生活や仕事,企業や政府の国内や国際的な活動,環境変動等は,いずれも今,このような複雑化・加速する「世界」の一場面として。相互に密接に関係しつつ,「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーによる「ハリケーン」に見舞われており,「世界」は,制御する対象どころか,その現況・将来を把握・予測するのさえ,困難になりつつある。

さらに言えば,そのような「世界」に古くからの「世界」が混在し,問題の解決はますます困難になりつつある。

しかしこのような中で,なんとか「サイバー空間」とテクノロジーを視野に入れつつ,「世界」を解析し問題解決につなげようとする試みもなされている。

ここではそのような試みから最近刊行されたKindle本6書を紹介しておく。紹介する6書は,①「巨大システム 失敗の本質」,②「サイバー空間を支配する者」,③「拡張の世紀」,④「NEW POWER」,⑤「遅刻してくれて,ありがとう(上) (下)」,⑥「デジタル・エイプ」であり,①は導入,②③は,サイバー空間の闇と光り,④はサイバー空間を元にしたビジネス展望,⑤⑥は,一歩退いた知性的な分析といえるだろう。視点の置き方によって記述内容・分析に違いはあるが,いずれもその内容は信用でき,熟読するに足りる本だと思う。詳細は今後必要に応じて紹介することとし,ここでは書名と私のごく簡単なコメントと出版社等による紹介を載せておく。

「世界」などという大風呂敷は?と敬遠する向きもあるかもしれないが,だれでも多かれ少なかれ「世界」の一部に向き合っているわけであり,今後の個人の仕事,企業経営等の方向性を見定めるのに大いに役立つだろう。

紹介する6書

「巨大システム 失敗の本質」

「巨大システム 失敗の本質~「組織の壊滅的失敗」を防ぐたった一つの方法」(著者: クリス・クリアフィールド,アンドラーシュ・ティルシック)(Amazonにリンク

私のコメント

複雑で密なシステムは統御困難であるということを,実例を挙げてわかりやすく説明している。我が国の失敗学の「最新版」というところだろうか。世界が複雑であるということを理解する入門に良い。

出版社等による紹介

・21世紀を生きるためには,電力網から浄水場,交通システム,通信ネットワーク,医療制度,法律まで,私たちの暮らしに重大な影響をおよぼす無数のシステムに頼るしかない。だがときにシステムは期待を裏切ることがある。これらの失敗や,メキシコ湾原油流出事故,福島の原子力災害,世界金融危機などの大規模なメルトダウン(組織の壊滅的失敗)でさえ,まったく違う問題に端を発したように見えて,じつはその根本原因は驚くほどよく似ている。

・複雑で結合されたシステムを運営するには,直感や自信を称え,よい知らせを聞きたがり,自分と見た目や考え方の似た人たちと過ごすことを好むといった「人間の本能や直感」に“逆らう”ことが,有効な対策を導き,問題解決のアイデアをもたらすことを示す。

 

「サイバー空間を支配する者」

「サイバー空間を支配する者~21世紀の国家・組織・個人の戦略」(著者:持永大, 村野正泰, 土屋大洋)(Amazonにリンク

私のコメント

下記の出版社等による紹介にもあるように「実態が不透明なサイバー空間を定量・定性的に包括的にとらえ,サイバー空間の行方を決める支配的な要素」を考察した本として,今の時点では,出色の出来だと思う。3人の著者によるからだろうか,多少重複もあるが,かえってわかりやすいか。「国家」(政府)の果たすべき役割も考えようとしているのだろうが,そもそも「国家」(政府)とは何か,この問題においてどのような役割を果たすことができるのかは,一筋縄ではいかない。

出版社等による紹介

・サイバー攻撃,スパイ活動,情報操作,国家による機密・個人情報奪取,フェイクニュース,そしてグーグルを筆頭とするGAFAに象徴される巨大IT企業の台頭――。われわれの日常生活や世界の出来事はほとんどがサイバー空間がらみになっています。サイバー空間はいまや国家戦略,国家運営から産業・企業活動,個人の生活にまで,従来では考えられなかったレベルで大きな影響を及ぼしつつあります。

・サイバー空間では,国家も企業も,集団も,個人もプレイヤーとなる。その影響力はそれぞれの地理的位置,物理的な規模とは一致しない。そして,経済やビジネスでもデータがパワーをもつ領域が広がっていますが,その規模はGDPでは測れません。

・本書は,これほど重要になっているのに,実態が不透明なサイバー空間を定量・定性的に初めて包括的にとらえ,サイバー空間の行方を決める支配的な要素を突き止めるものです。果たして,そこから見えてくるものは何か? 日本はサイバー空間で存在感を発揮できるのか?

 

「拡張の世紀」

「拡張の世紀~テクノロジーによる破壊と創造」(著者:ブレット・キング)(Amazonにリンク

私のコメント

今後,「サイバー空間」とテクノロジーがどのような,モノ,機能をもたらし,「世界」を「拡張」するのか。網羅的に検討している。著者」は,「金融テクノロジー分野におけるイノベーション,顧客チャネル戦略の専門家と紹介されており,内容も消して軽薄ではなく,手堅い。ただこれが「サイバー空間を支配する者」が描く現実の中で,どうなるかが問題である。また私は望まない「拡張」も多い。

出版社等による紹介

ヒト型ロボット,寿命延長,ゲノム編集,ブロックチェーン,空飛ぶクルマ,3Dプリント,AR・VR,etc。こうしたテクノロジーは世の中をどう変えていくのか。ヒトはどう変わるのか? 働き方,医療,交通,金融,教育,都市は?Tech界のグルが描き出す衝撃の未来予測!10年後の世界がここにある!

 

「NEW  POWER」

「NEW POWER~これからの世界の「新しい力」を手に入れろ」(著者: ジェレミー・ハイマンズ,ヘンリー・ティムズ)(Amazonにリンク

私のコメント

「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーが開くビジネス(NEW POWER)とこれまでのビジネス(OLD POWER)の差異と対立を,その価値観,モデルにより4領域に分け,詳細に,かつ分かりやすく検討していく姿勢に好感が持てる。ビジネスのヒントが満載である。

出版社等による紹介

いまや1,2年前とくらべただけでも世界が激変し,「個人でできること」の幅が大きく広がっている。そんないま「身につけるべきスキル」「意味のなくなったスキル」とは?いつでも誰とでも「つながれる」環境の中,いま何が起こっていて,あなたは一体何をすべきなのか?

 

「遅刻してくれて,ありがとう(上) (下)」

「遅刻してくれて,ありがとう~常識が通じない時代の生き方(上) (下)」(著者:トーマス・フリードマン)(Amazonにリンク

私のコメント

著者は,ピュリツァー賞を3度受賞した世界的ジャーナリストであり,これまでの4書がある方向を「煮詰める」傾向があるのに対し,一時停止して,「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーが,世界の政治,企業,生活にもたらすものを考えようという知性に満ちた本である。当たり前のことだが,「NEW  POWER」や「拡張の世紀」の「ハリケーン」の中でも,人類が延々と行ってきた「生活と行動」がある。著者は,「ハリケーンの目」に入ろう,自分史を振りかえって生活の場のコミュニティがその支えだとする。

そええは分かるがわが国ではどうか。わが国では,少なくても都市では地域のコミュニティは成立しがたいので,「ハリケーン」の「学びの場」でも作ってみようかという気になっている。

出版社等による紹介

・「何かとてつもないこと」が起きている――社会のめまぐるしい変化を前に,多くの人がそう実感している。だが,飛躍的な変化が不連続に高速で起きると,理解が追いつかず,現実に打ちのめされた気分にもなる。何より私たちは,スマホ登場以来,ツイートしたり写真を撮ったりに忙しく,「考える」時間すら失っている。

そう,いまこそ「思考のための一時停止」が必要だ。

・「平均的で普通な」人生を送ることが難しくなった「今」という時代を,どう解釈したらいいのか?変化によるダメージを最小限に抑え,革新的技術に対応するにはどうしたらいいのか?

 

「デジタル・エイプ」

「デジタル・エイプ~テクノロジーは人間をこう変えていく」(著者:ナイジェル シャドボルト,ロジャー ハンプソン)(Amazonにリンク

私のコメント

著者の一人,ナイジェル シャドボルトは,ティム・バーナーズ=リーと共同で「www」の仕組みを開発。英国を代表するコンピューター科学者で、最先端の人工知能・Webサイエンス研究者の一人と紹介されている。「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーを,進化,人類の知的発展の中に,科学的・学問的に位置付けており,熟読するに足りる。しかし,イギリスの本には,ウイットに富んだ知性のある面白いものが多いなあ。

出版社等による紹介

「私たちが新たな道具をつくったのではない。新たな道具が私たちをつくり出したのだ」

・デジタル機器によって,人間はどう変わっていくのか? AI,ロボット,スマホ,ウェブ,生物学,哲学,歴史,経済学……オックスフォード大学教授を務める英国トップクラスの人工知能研究者らが,膨大な知見から描き出す!

生まれたときから検索ツールに囲まれている世代にとって必要なスキルは,それ以前の世代とはまったく違う。

・これまで最重要だとされてきた「記憶力」の意味は以前より薄くなり,IT機器が「外部の脳」のような役割を果たす。人類の重要なサバイバルスキルのひとつだった「方向感覚」も備わっていない人間が増えていく。そのような「デジタルなサル(デジタル・エイプ)」が多数派となり,テクノロジーがいっそう進化した時代。

そこには一体,どんな「問題」があり,どんな「可能性」が存在するのか?

「最高峰の知性」が予測する,人類の未来。

「こころ」と行動

上記したように,今,「サイバー空間」とこれを支えるテクノロジーの新しい「世界」に古くからの「世界」が混在し,問題をますます複雑化している。新しい世界を見極めるのと同時並行的に,古くからの「世界」を支える人の「こころ」と行動を理解することが改めて重要だと思う(「「こころ」と行動の基礎」を参照)。

 

健康に生きるためのお薦め3書プラスα

健康本はいろいろあるけれど

健康本は,ダイエット本を中心に山ほどある。どれも似たりよったりで,とにかくその「教え」を実行しさえすれば,何かの役に立つだろうともいえるが,ただ下手に非科学的なカルト本にはまると,かえって健康を害することもあるだろう。またあれこれ読み漁り,どれも中途半端だが,全体では過剰というのも困りものだ(特に「食」はそうだ。)。

私も人のことはいえず,次々と健康本を買い漁った結果,だんだん収拾がつかなくなってきた。

ここらで中心になる本を見定めて,そこで足りない分は補充するというスタンスを取りたいと思う。

私は科学的な素養は不十分だが,読んだ限りで十分に科学的で,かつ健康に生きるための核心をついていると思う本を3書紹介したい。

ダイエット,運動,病気への対応という順番になった。ただいずれの書の内容もそれに限られているわけではない。

健康に生きるための3書

果糖中毒

1書目は,「果糖中毒-19億人が太り過ぎの世界はどのように生まれたのか? 」(著者:ロバート・H・ラスティグ)だ。この本は,簡単に紹介したが,肥満の原因を果糖と見定め,その「解毒剤」として,「食物繊維」と「一日15分の運動」を挙げる。こう書くと何の変哲もないようだが,その論述は肥満をめぐって対象を広く検討し,科学的で鋭い。今一押しである。

一流の頭脳

2書目は「一流の頭脳 」(著者;アンダース・ハンセン)だ。この本が面白いのは,「身体を動かすことほど、脳に影響をおよぼすものはない。 これが本書のテーマであり、とりわけ効果の高い身体の動かし方とそのメカニズムをお伝えする」,「運動をすると気分が爽快になるだけでなく、集中力や記憶力、創造性、ストレスに対する抵抗力も高まる。そして情報をすばやく処理できるように-つまり思考の速度が上がり、記憶のなかから必要な知識を効率的に引き出せるようになる。また特別な「脳内ギア」を入れることで、混乱した状況下で意識を集中させ、心が乱れていても平常心を取り戻すことができる。運動によってIQ(知能指数)が高くなるという説さえあるのだ」と,「運動」が脳をよくするということで貫かれている。つまり,「一日15分の運動」は対肥満,能力向上の決め手というわけだ。これで運動の十分なモチベーションになると思う。

老婆心ながら,私が運動でいいと思うのは,スロージョギングと,「ずぼらヨガ」(著者:崎田ミナ)または自重トレーニング(著者:比嘉一雄)によるストレッチや筋トレかなあ。運動を継続する(習慣化する)には,行動分析学の本に目を通してみることをお薦めするが,行動分析学は概して「言葉遣い」が創始者のスキナーに捕らわれていて,論争的で難解すぎることはいっておこう(一番整理されているのは「「結果が出る習慣術―行動科学で人生がみるみる変わる」(著者:石田淳)だろうか。)。まあこれらはプラスアルファだ。

最強の健康法

3書目は,「最強の健康法【ベスト・パフォーマンス編】/【病気にならない最先端科学編】」の2冊だ。これも簡単に紹介したことがあるが,要は,運動して痩せて脳が活性化しても,癌をはじめとする病気にはなるのだから,それにも注意しようねということだ(スロージョギングを引っ張っていた田中さんは,確か膵臓癌で亡くなられたようだ。)。癌検診は欠かせない。

というようなことを考え,少しずつ実行しているうちに,どんどん年老いていくだろうが,最後まで元気に生活していたいものだ。

目標達成の技術

これらとは毛色が違うが,もう少し元気な人には,「ペンタゴン式 目標達成の技術 一生へこたれない自分をつくる」(著者:カイゾン・コーテ)をお薦めしたい。

 

138億年!!

138億年とは

138億年とは,138億年前に宇宙が誕生したといわれるその年数である。もっともテレビでも放映されたクリストファー・ロイドの「137億年の物語―宇宙が始まってから今日までの全歴史」もあるし,140億年前ともいわれるが,1,2億年くらい大した問題ではない(のかなあ?)。

惑星科学者である松井孝典さんの「138億年の人生論」(Amazonへリンク)というKindle本を見つけたので,読めばきっと雄大な気持ちになるだろうと思って早速購入したのだが,その結果は!

「138億年の人生論」の中で松井さんは,宇宙,地球,生命,文明について何十年も考え続けてきたとするので,それがまとまっているであろう「宇宙誌」を購入しようと思ったのだが,「138億年の人生論」にも出てくる恐竜絶滅の原因を隕石の衝突だと特定した地質学者のウォルター・アルヴァレズが「宇宙,地球,生命,人間」を「ビッグヒストリー(ストーリー)」という観点から書いた「ありえない138億年史~宇宙誕生と私たちを結ぶビッグヒストリー~」(Amazonへリンク)(「A Most Improbable Journey: A Big History of Our Planet and Ourselves by Walter Alvarez)がKindle本にあることを見つけ,こちらの方が大分内容が新しそうなので急遽乗り換えて目を通してみた。

私は常々,人間や社会の問題を考えるときは,進化論をふまえなければだめだと思ってはいたが,それを更に生命,地球,宇宙(物質とエネルギー)にまで広げて考えようとする「ビッグヒストリー」の試みがあることはこれまで知らなかったが,今回,「ありえない138億年史」を読んで,いたく感銘を受けた。「ビッグヒストリー」は決して「大風呂敷」を広げようとする試みではなく,物事の核心にある物質的な問題の連続(方向性と周期性)と偶然から「人間」をあぶりだそうとするもので,今までの「史観」がいかに狭苦しいものであったかがよくわかる。

取り急ぎこの2冊を紹介しよう。

 

 「138億年の人生論」を読む(Amazonへリンク

著者:松井孝典

出版社等による紹介

“宇宙スケール”で考えると,人生はほんとうにスッキリするのです-。人生の目的とは?教養とは?仕事とは?人間関係とは?宇宙の誕生から文明のゆくえまで,138億年の時空スケールで追究しつくす世界的惑星学者がはじめて綴る,「知的興奮に満ちた100年人生」を送るための25講

私のコメント

松井さんが自分の一貫した努力,現在の立ち位置が誇らしいのは分かるが,若い人をターゲットにした「人生論」だとしても,いささか汎用性に欠けると思う。

人生とは,頭のなかに内部モデルをつくりあげることだという全体を貫く立論は興味深いし,記述のうち,「4 「正しい問い」を立てる」,「10 「ひらめき」は普段から考えている人にのみ訪れる」,「18 過去をふりかえる暇があれば新しいチャレンジを」,「23 英語以前に「日本語で伝えるべき内容」をもつ」,「24 インターネットは歴史に逆行している」等は大いに参考になる。

その他は,お弟子さん,後輩に対する指導,意見,愚痴というところではないか。少なくても私は,雄大な気持ちにはならなかった。

 

「ありえない138億年史」を読む(Amazonへリンク)

~宇宙誕生と私たちを結ぶビッグヒストリー~ 
著者:ウォルター・アルバレス
A Most Improbable Journey: A Big History of Our Planet and Ourselves by Walter Alvareb (Amazonへリンク

出版社等による紹介

われわれ人間は、なぜここにいるのか? それは人類の歴史だけを見てもわからない。宇宙誕生から現在までの通史-「ビッグヒストリー」の考え方が必要だ。自然科学と人文・社会科学を横断する驚きに満ちた歴史を、恐竜絶滅の謎(隕石衝突)を解明した地球科学者が明らかにする。

歴史は必然ではない。偶然が重大な役割を担っている。宇宙、地球、生命、人間の各領域において、この世界が実際にたどった道とは異なる道をたどる可能性は無数にあった。その結果、今日のものとは異なる人間世界が生まれる可能性もあれば、人間世界がまったく生まれない可能性もあったのだ。そのため、今あるこの世界を理解するには、物理学や化学を超えて、地質学や古生物学、生物学、考古学、天文学、宇宙学などの歴史科学の領域から人間の歴史へと目を向けるべきだろう。これらの歴史科学や歴史学が、今あるこの世界の歴史について学びつつあることを知る必要があるのだ。

私のコメント

これはとても優れた本だ。京大の火山学の先生の鎌田さんが長々と「本書に寄せて」を書いているのも頷ける(なんとなく,松井さんと張り合っている気がする。)。本の内容は網羅的ではなくて,ポイントを点描するという手法だが,それが核心をついている。著者は,「138億年の人生論」でも紹介されているように,親子で恐竜絶滅の原因が隕石衝突であることを解明した子の方だ。

翻訳本の目次だとわかりにくいが,PROLOGUEがIntroduction と1章,COSMOSが2章,EARTHが3~6章, LIFEが7章 ,HUMANITYが8,9章,EPILOGUEが10章という構成だ。

第1章に,隕石衝突の証拠発見のことと著者がビッグヒストリーに取り組んだことが書かれ,第2章に宇宙の誕生から地球の誕生までがまとめられる。

著者は地質学者ということで,地球がどのように人間が利用できる資源(特に砂)生んだのか,(第3章),そして人間の活動を踏まえ,地球の大陸+海(第4章),山(第5章),川(第6章)が語られる。ここで重要なのは,プレート・テクニクスだ。

そして第7章に,人間の体に生命の歴史が刻まれているという観点から,生命の誕生から歴史が語られる。

第8章では人類の移動が語られ,第9章では,言語,火,道具の使用のうち,火の利用と青銅器の製造について詳細に語られる。

そしてエピローグで,歴史の展開について,連続(方向性と周期性)と偶然による2分法を提案する。そして偶然とは,「まれ」であること,「予測不能」であること,「重大」な意味を持つことだとする。

この本は一流の科学者が,哲学をもって,宇宙,地球,生命のみならず人類の歴史にも挑んだもので,その記述には本当に感心させられる。本来,真正面から問題にぶつかるべきであるが,私は「ビッグヒストリー」というのは今回初めて出会った手法であるので,今回は,「ありえない138億年史」のほんの上っ面だけを紹介し,現在ぞくぞくと購入して読解に努めつつある「ビッグヒストリー」関係の本によってその大要をつかみ,改めて全体像について検討したい。

私は,「ビッグヒストリー」によって,偶然と激動の自然の中に,人間をシステムの要素として位置づけることができ,システム思考と突合せできそうだそうだという予感がある。最もそんなことはとっくにやられているかも知れないが。

著者が展開している「ビッグヒストリー」のWebとして,ChronoZoomがある。

なおビッグヒストリーのうち,人間の歴史は,デヴィッド・クリスチャンという人が,ビル・ゲイツさんの協力を得て展開しつつあるようだ。ビッグヒストリーの本の多くに,デヴィッドさんが絡んでいる。

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「最強の健康法」を読む

~世界レベルの名医の「本音」を全部まとめてみた~

著者:ムーギー・キム

ベスト・パフォーマンス編 (Amazonにリンク) 

病気にならない最先端科学編 (Amazonにリンク
 

レイアウトに難あり

「最強の健康法」は,「ベスト・パフォーマンス編」と「病気にならない最先端科学編」の2冊の単行本で構成されている。しかしそのこともすぐには分からないし,本の表紙にも,表紙から目次の間までにも,ごちゃごちゃといろいろなことが書いてあり,しかも,目次も色付きで,ごちゃごちゃといろいろなことがいろいろなレイアウトで書いてあり,率直にいってそれで嫌になる。こんなことで投げ出したくなる本も珍しい。作成サイドは工夫を凝らしたつもりだろうが,度が過ぎている。目次の医師や「専門家」の,氏名のみならず所属の紹介も煩わしい。

後記の詳細目次は,余計な記述を除いて分かりやすくしてみた。項目だけをあげると,「ベスト・パフォーマンス編」が,「消化,食事,食べ方,歯磨き,禁煙,目,歩行,生産性向上,マインドフルネス,うつ病(心理療法),うつ病(食事療法),疲労,疲労回復,水虫,睡眠,不眠」,「病気にならない最先端科学編」「①健康を護る最先端科学」が,「健康診断,糖尿病・高血圧,心臓病,がん,ウイルス」,「 ②若さを保つ最強の健康習慣」が,「アンチエイジング,男性ホルモン(意欲減退、頻尿、ED),薄毛,不妊治療,骨粗しょう症,認知症,人生の終わり方」である。これだけだと,覗いてみたくなるだろう。

内容は悪くない

本書は著者が,医者や健康についての「専門家」約50名から取材した最新の科学的な健康・医療情報を,更に2人の医者・研究者がダブルチェックして上記の項目にまとめたというのが「売り」である。内容もかなり網羅的であるし,個々の記述も平易で参考になるものが多く,「内容は悪くはない」。しかしレイアウトが…。

中でも,誰でも「健康診断,糖尿病・高血圧,心臓病,がん」は気になるところであり,基本的な知識を持つのはいいことだ。

実践的な項目は,特に目新しいことはなく,基本は,減量,運動,食事である。運動として本書の項目にはないが,私はスロージョギングを勧める。

「生産性向上」の「1時間に一度は立ち上がって、体を動かそう─「座りっぱなし」で寿命が縮む」という指摘は,身に染みる。「薄毛」はもうだめなようだ。高齢男性なら「頻尿」はチェックしたい。

ただ,本書以外にも,良書はあるので,追って紹介しよう。

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