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原沢 伊都夫
講談社
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一口コメンント
三上章とか大野晋とかに触発され,実際問題として何の役にも立たず困ったものだと思っていた橋本文法(学校文法)とは全く違う,外国人への日本語教授から生まれた明晰,明快な日本語文法の体系が,短い新書に凝縮している。これは今後の日本語文法論,ライティングの基礎として十分に使える。
簡単なまとめ
網羅的な「教科書」だから,一応,全体をじっくり読むのがよい。ただ,私たちは既に日本語を使用できるわけだから,その使用実態,方法を自覚的にとらえ直すこと,就中,論理的な文書を書くという観点から読み込むのがよい。以下,本書の要点を挙げてみよう。
日本語文の中心となるのは述語であり,述語になるのは,動詞,形容詞(イ形容詞,ナ形容詞),名詞である。
文の成分と述語の関係を示すのが格助詞である。格助詞は,全部で9つあり,ガ格(主格(主語)),ヲ格(目的語),ニ格(場所,時,到達点),デ格(場所,手段・方法,原因・理由),ト格(相手),ヘ格(方向),カラ格(起点),ヨリ格(起点,比較),マデ格(到達点)であり,鬼までが夜からデート(ヲニマデガヨリカラデヘト)と覚える。
成分には,必須成分と随意成分があり,必要最小限の組み合わせを文型という。
日本語文は,客観的な事柄を表す部分と(コト),その事柄に対する話者の気持ちや態度(ムード)を表す部分に分かれる。「~ハ」は,ムードを表し,「主題」を提示し,述語はこれを説明する(主題-解説)。したがって,ムードには,付加部分と,「~ハ」がある。
主語は,述語との関係で,特別な存在ではない。格成分は,どの成分でも,「~ハ」によって,主題として提示される。
「自動詞」「他動詞」,「ボイス」,「アスベクト」,「テンス」,「ムード」
「は/が」の使い分け(150~157頁)
詳細目次
- 第1章 学校で教えられない「日本語文法」
- 日本語文法と学校文法
- シンプルで単純な構造の日本語文
- 主語は重要ではない
- 日本語のパーツをつなげる格助詞
- 絶対に必要なパーツの組み合わせ
- 日本語の文型
- 第2章「主題と解説」という構造
- 2つの層からなる日本語文
- コトを表す格助詞
- ムードを表す「~は」
- さまざまな主題化
- 主語廃止論
- 第3章「自動詞」と「他動詞」の文化論
- 日本語文の姿
- 自然中心と人間中心の発想
- 自動詞と他動詞の区別
- 自動詞と他動詞のペア
- 動詞の自他による分類
- 自動詞と他動詞の存在理由
- 自動詞と他動詞がないときは?
- 言語類型論から見た特徴
- 第4章 日本人の心を表す「ボイス」
- 主役の交替「ボイス」
- 出来事からの影響を表す「受身文」
- 出来事への関与を表す「使役文」
- 「ウチ」と「ソト」の発想
- 「思いやり」の表現
- まだまだある「ボイス」の表現
- ら抜き言葉
- さ入れ言葉
- 第5章 動詞の表現を豊かにするアスペクト
- 動きの段階を表すアスペクト
- 「動作の進行」と「変化の結果」を表す「~ている」
- 「動作の結果」を表す「~てある」
- 「~ている」と「~てある」
- 動作主と「~てある」
- 第6章 過去・現在・未来の意識「テンス」
- テンスの役割
- 絶対テンス
- 相対テンス
- アスペクトを表すタ形
- 特殊なタ形
- 第7章 文を完結する「ムード」の役割
- 対事的ムードと対人的ムード
- 断定と意志のムード「~φ」
- 「は/が」の使い分け
- 説明のムード「~のだ」
- 願望のムード「~たい」
- 同意と確認のムード「~ね」
- 丁寧の表現
- ムードの副詞
- 第8章 より高度な文へ、「複文」
- 複文の種類
- 名詞の内容を説明する「連体修飾節」
- 文を名詞化する「名詞節」
- さまざまな内容で主節を補足する「副詞節」
- 動詞の内容を具体的に示す「引用節」
- 2つの節が対等に並ぶ「並列節」
- あとがき
- 参考文献