会社設立と定款作成
弁護士が会社設立の手続をするときは,当然,定款も作成することになる。会社設立時の定款作成,会社設立登記,その他若干の問題についてまとめておく。
会社定款モデル案
会社定款を作成するとき,基本とするのは,日本公証人連合会のWebサイトに掲載されている「定款記載例」だ。
①「小規模会社(非公開,取締役1名,監査役・会計参与非設置)」
②「小規模会社(非公開,取締役1名以上,取締役会非設置,監査役非設置会社」
③「中規模会社(非公開,取締役3名以上,取締役会設置会社,監査役設置会社)」
④「大会社(公開会社,取締役会設置,会計監査人設置,委員会設置会社)」
の4例が出ている。最初から④を設立することは余りないだろうが,設立する会社を①~③のどのタイプにするかは,その会社がどの程度の仕事をし,どのように運営されるかを,よく考えてから決めた方がいい。③より②を選択すべき場合も多い。
会社の設立
会社の設立手続の種類
発起設立と募集設立。通常は,発起設立の方法による。
事前準備
- 定款案の作成(発起人の実印押印)+発起人の印鑑証明書+委任状(発起人の実印押印)
- 代理人が公証役場へ出頭(代理人は,「発起人本人がその記名押印を自認している旨,陳述」する。)
- 会社代表者印等の作成
- 出資金振込のための発起人の個人口座の準備
- 出資金の振り込みが先行しても,フォロー可
会社設立の際の費用について
- 公証役場の費用は9万円強(定款の認証費用…5万円,印紙…4万円,定款謄本作成費用…約2千円)
- 法務局に納付する登録免許税は,出資金の1000分の7(最低15万円以上)
- 会社代表者印等の作成費用
- 代理人の手続費用
会社設立登記の若干の問題
- 法人登記については,法務省に書集式がある。
- 登記の事由は,「発起設立の終了」,登記すべき事項は「別添CD-R」のとおりとする。
- 定款で取締役,監査役を定めたときは,就任承諾書。代表取締役を選任するときは選任決議書と就任承諾書。定款に定めがない場合は,発起人による取締役,監査役の選任決議書。
- 取締役がひとりの場合でも,登記にあたっては「取締役」,「代表取締役」両方を記載し,登記申請も代表取締役で行う(会社法349条1項)。
- 添付書類は,定款,代表取締役の印鑑証明書,払込みがあったことを証する書面+発起人決定書,就任承諾書である。
- 資本金の額が会社法及び会社法計算規則の規定にしたがって計上されたことを証する書面(資本金の額の計上に関する証明書)を作成する。
定款作成で注意すべきこと
- 英文表記は,Co.,ltd.が普通だろうが,Co.Ltd.でいいのではないか。最後のピリオドの不要節もある(Limitedの最後のdで終わっているので)。
- 会社の目的は登記官の審査の対象にならないが,営利性,明確性,適法性が必要とされる。完全子会社を有するときは子会社の目的も含まれなくてはならないとされる。
- 発行可能株式総数につき,公開会社では,設立時発行株式総数の4倍を超えてはならない。公開会社でなければOK.
- 株券は原則不発行であるが(会社法214条),しっかりしたビジネスをするのであれば,発行しておいた方がいいのではないか。
- 株主総会の招集の通知について,会社法299条参照。
- 取締役会の招集の通知について,会社法368条。短縮を考える。
- 取締役会の決議の省略については,会社法37条参照。
- 監査役会を設置するのは相当大規模な会社である。
参考文献
私が主として参照するのは,「会社法実務解説」,「商業登記書式精義
」,「会社設立の登記マニュアル (新商業登記シリーズ)
」,「新会社法の定款モデル―定款作成・変更の記載実務
」,「「会社設立」書式ハンドブック―一人でできる会社設立!
」,「ダンゼン得する 個人事業者のための会社のつくり方がよくわかる本
」である。