弁護士費用算定の基本的な考え方
弁護士費用(弁護士の仕事に対して支払う対価,料金です。弁護士報酬ともいいます。)は,昔からあまり評判が良くありません。高いのではないか,曖昧なのではないかという批判がいつもあります。
前者(高いのではないか)については,弁護士(法律事務所)の仕事は,事務所の設置,法律書,判例検索サービス等の諸設備の確保,スタッフの利用,その他の経費を負担して始めて成り立つ「企業」活動であること,その活動を維持・運営するために必要な経費は決して少額でないこと,弁護士が依頼者のためにする仕事は,各依頼者ごとのオーダーメイドでカスタマイズされたものであり,大量生産,大量販売や効率化という発想には当てはまりにくいものであることをご理解いただく必要があります。
特に,法律事務処理の過程で作成する「法律文書」の起案には,膨大な時間がかかります。その上で,弁護士が仕事を継続するために経費プラス給与として得なければならない総額と,弁護士の総労働時間の中で当該法律事務の処理のために費やす時間を計算してもらえば,多くの場合,弁護士費用は,決して高いとはいえないのではないかと思います。これについては次項の,弁護士費用の仕組みも関係しますから,そこで補足しましょう。
後者(曖昧なのではないか)については,当該法律事務の受任後の展開が大きく影響します。弁護士が処理する「事件」は本当に「生き物」なので,受任の際には,予想もしなかったような展開が次から次に起こります。複雑になり,予想もしなかったような労力を割かなければならない場合が大部分です。本当に申し訳ないのですが,そのために,最初にお話ししていたより多い弁護士費用のお支払をお願いさせてもらうことがあります。でも,普通の取引だって,「追加契約分」はありますよね。そのような曖昧さを避けるためには,弁護士費用をタイムチャージ制にするといいのですが,これは限界なく高額になる可能性もあって依頼者のためには余り望ましくありません。これも弁護士費用の仕組みが関係します。
弁護士費用算定の仕組み
弁護士費用は,あらかじめ受任する法律事務の処理の内容を想定し,後述する「ある種の基準」によって決める場合と,実際に要した時間を基準にして決める場合があります。以下,要点を説明しますが,「弁護士との契約」の項目に,当事務所の,「委任契約書」や「弁護士報酬規定」,「弁護士報酬の特則」等を載せていますので,そちらも参考にしてください。
まず後者の「実際に要した時間を基準にして決める場合」は,タイムチャージ制(時間制)といい一見合理的な基準に見えますが,多くの場合実際に法律事務に要した時間を加算していくと,前者よりも高額になること,より根本的には無能でブラブラしているほど時間がかかり高額になること,法律事務の中でも「成功」「失敗」という結果がでる場合にインセンティブがないこと等の欠陥もあり,私は,依頼者がタイムチャージ制に慣れていて,結果というインセンティブを余り考える必要がない場合にだけ,お願いするようにしています。
前者の弁護士費用を決める「ある種の基準」が,想定される当該法律事務の処理に要するおおよその時間である場合として,法律文書の作成が考えられます。だいたいこのぐらいの時間がかかりそうだからこのぐらいにしましょうということです。例えば,内容証明郵便の起案は5万円,意見書は,簡単な場合は10万円から,複雑な場合は20万円からと決めるような場合です。依頼する側も,あらかじめ料金が定額であれば安心でしょう。
「成功」,「失敗」という結果がでる場合は,着手金ー成功報酬金制をとることが一般的です。弁護士費用を決める「ある種の基準」として受任する事件の経済的な利益を一定の方式で計算し,その経済的な利益に応じて着手金や成功報酬金を,いわば機械的に決めることになります。他では余り例のない金額の決め方や支払方法なので,戸惑われる場合もあるでしょう。
しかしこのようにすると,事件の難易や費やされた労力の有無が反映されづらく,かつ着手金が高くなることが多いので,私は着手金は,受任する事件の難易度,規模,複雑さ等々,及びその事件に関して要すると見込まれる労力,時間を基準にして比較的低額の一定額としています。普通の事件であれば,着手金は,30万円から200万円までのことが多く,より複雑,難解な事件の場合は,それ以上となることもあります。
一方,事件が解決(終了)した場合にお支払いただく報酬金は,最終的に依頼者にもたらされた当該事件の実質的な経済的利益を基準として算定する着手金と報酬金の合計額から,既にお支払いいただいた着手金を控除した金額とさせていただくことが多くなっています(「弁護士との契約」の「弁護士報酬の特則」をご覧下さい。)。どれだけ頑張っても全く成功しなかった(実質的な経済的利益がなかった)場合は,報酬金はゼロということになります。
法律顧問の弁護士費用(顧問料)は,予め合意した月当たりの定額制で,余り問題が生じることはありません。「法律顧問」を参照してください。
法務支援は,基本的には継続した法律相談プラス法律文書の作成であり,法律顧問に準じて月額で定めるか,予想される法律事務の総量を想定して,定額で定めることもできるでしょう。 ただし,その事業が持つ社会的意味合いや採算性を考慮して,減額や支払時期の調整に応じています。「分野別法務支援」を参照してください。