契約法務

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契約書の起案,チェック(レビュー)は,弁護士の仕事のうちのかなりの部分を占める。もっともこれは人によってかなり異なり,技術や知的財産権が絡んだり民法が想定していない態様のビジネスを展開する企業を依頼者とする弁護士は,大忙しだが(よくあるのはライセンス契約,独占販売店契約,開発委託契約等々の「非典型契約」である。),そうでない場合は,ぼつぼつという感じだろう。

ところで日本で完結するビジネスについての契約書の起案,チェックをする上で一番重要なのは,日本の民事,商事の法令に典型契約(売買,賃貸借等々)が規定されていること,そしてその条項には,任意規定(当事者の合意で変えることのできる規定)と強行規定があることである。

このことから,例えば売買契約であれば,①当事者が,特段の特段の合意をしなくても(わざわざ契約書を作成しなくても) ,その権利・義務関係は,民事,商事の法令に従うことになる(もちろん,対象や値段の決定は不可欠だが。)。当事者が何らかの合意をしてそれが法令の規定と異なっている場合,②任意規定と異なっているのであればその合意が優先し,③強行規定と異なっている場合は合意は効力を有しないということになる。

しかし,典型契約だけで完結する場合はまれであり,④技術や知的財産権が絡んだり民法が想定していない態様のビジネスについては,新たな規準・合意(契約)が必要となり,⑤その他行政法規に属するビジネスが遵守すべきだとされる法フレーム(例えば,個人情報保護,反社会的勢力への対応,売買であれば,消費者保護法,製造物責任法等)も盛り込むことが必要となる。

従って,弁護士は契約書の起案,チェック(レビュー)にあたって②③⑤に留意すべきであるのは当然として,もっとも力を尽くさなければならないのは④であり,ここでどれだけ起こりうる事態を想定しそれを整理して妥当な規定,文言にし,かつ相手方を説得して,契約書に落とし込むことができるかについて,弁護士の知的能力が問われることになる。

ところで,現在世界の契約書の「主流」は英文契約書であり,多少なりとも海外が絡む取引に用いられる契約書は英文契約書がほとんどである。日本の弁護士が上記の②ないし⑤をパーフェクトに盛り込んだ契約書を作り上げたとしても,英文契約書に比べると,薄く,頼りないと感じる人も多いであろう。これは,アメリカの法律事情によるというしかない。

アメリカが基本的にコモンロー(判例法)の国であり,しかも州ごとに法体系が異なることが大きな理由であるが,最も大きいのは,アメリカが移民の国で人びとが異質な文化的背景を有しており,ある場面で概念を用いたとしても共通の理解をしているとは言えないので,そこにさかのぼって取り決めをしておく必要があるということだろうと思う。いずれにせよ,英文契約書をチェック(レビュー)するときは,十分な準備が必要である(起案は,勘弁してもらっています。)。「海外法務」も参照されたい。

契約法務実務書・体系書

一覧

①「リスク・マネージメントの道具としてのビジネス契約書の起案・検討のしかた」(著者:原 秋彦)

②「現役法務と顧問弁護士が実践しているビジネス契約書の読み方・書き方・直し方」(著者:長瀨佑志他)

③「はじめての英文契約書の読み方」(著者:寺村淳)

④「米国人弁護士が教える英文契約書作成の作法」(著者:チャールズ・M・フォックス)

⑤「英文契約書レビューに役立つ アメリカ契約実務の基礎」(著者:石原 坦)

簡単なコメント

①「ビジネス契約書の起案・検討のしかた」は契約書のレビューにあたって,どのように頭を働かせるか,基本となることが書かれている貴重な本である。私の持っている版は古く,新しい版も今は絶版のようだが,一読を勧める。②の「ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方」は新しめの本,③「はじめての英文契約書の読み方」は英文契約書を理解するための基本となる本,④「英文契約書作成の作法」は,もう少し高度であり,⑤「アメリカ契約実務の基礎」は,アメリカ法そのものを理解するのにいいだろう。

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