問題解決と創造の方法

問題の所在-問題解決と創造の方法を考える

問題解決の方法は(下述するように,創造は,問題解決の一場面と位置づけることができる。),以下のとおり,「「問題」の基本的な構造-考察1」,「問題解決の領域(対象)とその方法-考察2 4要素5領域と行動分析学・システム思考」,「問題解決を生み出す思考法とアイデア-考察3」に分けて考察することが適切であると考えている。

まず,「「問題」の基本的な構造-考察1」で,全体の基本となる3書を紹介する。

「問題」の基本的な構造-考察1 基本3書

「図解 問題解決入門」 基本書1

まず解決すべき「問題の基本的な構造」(問題構造図式と呼ばれることがある。)については,「「新版[図解]問題解決入門~問題の見つけ方と手の打ち方」(著者:佐藤 允一)(Amazonにリンク・本の森の紹介)の分析が,簡便でわかりやすい。

同書は「問題」を「目標と現状のギャップ」ととらえ(後記「問題解決大全」によると,これは,ハーバート・A. サイモンが,言い出したらしい。),原因となる「入力」,「制約条件」や「外乱(不可抗力)」が影響する「プロセス」を経て,結果となる「出力(現状)」が生じるという「問題構造図式」を提示する。この図式をふまえ,「入力」や「制約条件」をコントロールすることで,「出力(現状)」を変え,問題解決を考えようというのである(「佐藤問題構造図式」という。)。これだけでは単なる枠組みの整理に過ぎないが,それだけに様々な問題解決の手法を整理して位置づけるのに便利である。

次に同書は,「問題」を,発生型(既に起きている問題),探索型(今より良くしたい問題),設定型(この先どうするか)に分類しており(この分類は「時間型分類」といえよう。),これも有用である。

さらにこれは私見ではあるが,「問題」を,個人型,人工物型,システム型に大別することも有用である(この分類は「対象型分類」といえよう。)。「世界」の大部分の問題は,「システム思考」が対象とすべき複雑な「システム型」の問題であるが,個人の問題の多くは,個人型として個人の意思決定と行動改善の方法として捉えることが適切であるし,人工物(多くは商品であろう。)の問題は,人より物の振る舞いが前面に出る設定型,探索型の問題であるから,別に検討したほうが良さそうだ。ただし,それぞれの方法を他に応用することは有益である。なお企業に関わる「問題」は,個人型,人工物型,システム型のいずれの要素も含んでおり,併せて経営分析,経営戦略等として検討されているから,別途,検討すべきである。

「創造はシステムである」 基本書2

「創造」は,佐藤問題構造図式の時間型分類の,設定型(この先どうする)ないし探索型(今より良くしたい問題)として,問題解決の一場面と位置づけることができる。

「創造はシステムである~「失敗学」から「創造学」へ」(著者:中尾政之)(Amazonにリンク本の森の紹介)は,「創造」(自分で目的を設定して,自分にとって新しい作品や作業を,新たに造ることと定義する。)の過程を,「思い」(願望)→「言葉」(目的)→「形」(手段)→「モノ」(アクションプラン)ととらえ,まず「目的」を言葉として設定することが重要だとする(これが「出力」となる「結果」である。)。そしてその「原因」となる「入力」「制約条件」等を<「形」(手段)+「モノ」(アクションプラン)>と捉え,その具体的な内容に「思考演算子」(これは,TRIZ(トゥリーズ)のことである。)を適用して,検討,選択し,「目的」を実現していく。システムである人工物の設計,創作を念頭に置いた問題構造図式の変化型であるが,システムについての問題解決は複雑,難解なものが多いので,まず人工物の創造でこれに習熟することには意味がある(ただし同書には,「システム思考」の話は出てこない。)。

「問題解決大全」 基本書3

なおこの2つの方法に止まらず,「問題解決と創造」を実現する観点から考え出された様々な技法がある。それらの主要なものが「問題解決大全」(Amazonにリンク・本の森の紹介)で,丁寧に検討されている。「問題解決大全」では,問題解決の手法をリニア(直線的) な問題解決とサーキュラー(円環的) な問題解決の2つに大別して取り上げた上,問題解決の過程を,大きくは4段階,詳細には14段階に整理し,それぞれに該当する技法を紹介している。①問題の認知(目標設定,問題察知,問題定義,問題理解),②解決策の探求(情報収集,解の探求,解決策の改良,解決策の選択),③解決策の実行(結果予測,実行計画,進行管理),④結果の吟味(結果の検証,反省分析,学習・知識化)である。基本書1,2を十二分に補完する内容となっている。

基本書1,2にこれを加えた3書を基本となる方法となる「基本3書」としたい。そのためまず3書の詳細目次(「問題解決と創造の方法」基本3書の詳細目次)を作成した。これを見ているだけでも頭の整理になる。

問題解決の領域(対象)とその方法-考察2 4要素5領域と行動分析学・システム思考

世界を4要素5領域(個人・企業・政府・環境の4要素と4領域+世界:社会・経済・歴史の5領域)に区分することを,「問題解決と創造を学ぶ」で提唱した。そして,それぞれの要素・領域の問題を,その相互の関係や時間を視野に入れて解決する方法として,個人は主として「行動分析学」,企業・政府・環境・世界の複雑な問題には「システム思考」が有用であると考えている。特に,企業・政府・環境・世界の複雑な問題の多くも,人の行動が関与しているから,個人の行動の問題の解決方法は重要である。

「行動分析学」と「システム思考」については,「「行動分析学」と「システム思考」で世界を見る」を作成しているので当面この記事で紹介に変えたい。

自分の行動改革は?

個人の問題解決の方法については,当然,様々な提案がなされ,流行り廃りがある。私は当面「行動分析学」をメインにしたが,これは「こころ」を前提としないので,「こころ」を把握できない他人の行動を改めるための介入を考えるのには適切であるが,自分の問題行動の改善,新しい行動の定着方法としては,使いにくい(「使える行動分析学: じぶん実験のすすめ」(著者:島宗理,)もあるが,迂路を通っているという気がする。)。

自分の行動改革を論じた本は,自己啓発本も含め山のようにあり,それぞれ優れた面もあるのだろうが,どうしても基本的な部分の根拠が曖昧で非科学的な気がするので,それぞれについて,二重過程理論や行動分析学に照らし合わせて理解するとスッキリするようだが,手間がかかる。

なお,自分のことはあれこれ理屈を言われなくても,実行しますよという人には,「ペンタゴン式目標達成の技術 一生へこたれない自分をつくる」(著者:カイゾン・コーテ) (Amazonにリンク・本の森の紹介)をお勧めしておく。呼吸,瞑想,認知,知識,健康,自律,時間についの,無理でない実践法が紹介されている。

「行動分析学」以外の自分の行動改革の方法については,改めて「個人:生活・仕事・文化」の「自分の行動改革」で取り上げたい。

問題解決策を生み出す思考法とアイデア-考察3

上記の考察1,2による問題解決策(入力)が適切(論理的,科学的)であるためには,これを支える適切な「思考法とアイデア」が必要である。

ここでは,「問題解決策を支える思考法とアイデア」を獲得するために,「思考の基礎」,「危機的な現代の思考」,「アイデア」に分けて何冊かの本を紹介しておく。

思考の基礎

人の思考の基礎である早い思考,遅い思考(「二重過程理論)について,「意思決定の心理学 脳とこころの傾向と対策」(著者:阿部 修士 )(Amazonにリンク・本の森の紹介)を挙げておこう。もちろん,「ファスト&スロー」を読み込めばいいのだが,批判的に検討しやすい本としてあげておく(カーネマンについて,アレコレ言うのは,多少しんどい。)。

これを踏まえ,早い思考について,1992年時点で検討している「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)と,主として遅い思考の内容を緻密に検討している「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)を紹介しておく。この2冊については内容を簡単に紹介しよう。

「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)

「不合理~誰もがまぬがれない思考の罠100」(著者:スチュアート・ サザーランド)(Amazonにリンク・本の森の紹介)は, ヒトと組織(の中のヒト)の思考の特質(不合理性)について,丁寧にきちんと整理して論じている。著者は,サセックス大学の心理学教授であったが1998年に亡くなっており,本書の刊行は1992年で30年近い前である(しかしKindle本の刊行,翻訳等は最近行われているようだ。)。しかし内容は非常にしっかりしており,かつ著者の表現は機知に満ちていて,読んでいて楽しい。本書刊行後,ネットの普及等でヒトと組織(の中のヒト)の思考の不合理性は強まっているが,ネット普及前の「原型」はどうだったのかという観点から捉え,現状をその「変容」と見ればいいだろう。本書は近々「本の森」で紹介したいが,著者が「序章」で本書の構成について述べている部分だけも紹介しておきたい。

「こうした本では,序章の締め括りで,各章の要約を述べるのが約束事になっている。読者が本書を読まないでもすむように,ここで内容を要約するほど私は親切ではないが,全体の構成だけ簡単に説明しておこう。2章(誤った印象)では,人が判断ミスをおかす最もありふれた原因を述べる。その後に詳しく見ていく不合理な思考の多くにこの原因が絡んでいる。続く七つの章(服従,同調,内集団と外集団,組織の不合理性,間違った首尾一貫性,効果のない「アメとムチ」,衝動と情動)では,不合理な判断や行動をもたらす社会的要因と感情的要因を見ていく。10章から19章まで(証拠の無視,証拠の歪曲,相関関係の誤り,医療における錯誤相関,因果関係の誤り,証拠の誤った解釈,一貫性のない決断・勝ち目のない賭け,過信,リスク,誤った推理)は,事実をねじ曲げてしまうために陥る誤りを扱い,それに続く二つの章(直感の誤り,効用)では,手元にある情報の範囲内で,少なくとも理論上は最善の結論を出せるような方法を述べ,そうした方法で出した結論と直感的な選択とを比較して,直感がいかに当てにならないかを示す。22章(超常現象)では,それまでに述べてきた誤りのいくつかを振り返り,超常現象やオカルト,迷信がなぜ広く信じられているかを考える。最終章(合理的な思考は必要か)では,ヒトの進化の歴史と脳の特徴から,不合理な思考をもたらす根源的な素地を考え,併せて合理的な判断や行動を促すことが果たして可能かどうかを考える。そして最後(合理的な思考は必要か)に,「合理性は本当に必要なのか,さらには,合理性は望ましいのか」を考えてみたい。」。

なお著者は合理性について次のように言っている。

「合理性は、合理的な思考と合理的な選択という二つの形をとる。手持ちの情報が間違っていないかぎり、正しい結論を導き出すのが、合理的な思考だと言えるだろう。合理的な選択のほうはもう少し複雑だ。目的がわからなければ、合理的な選択かどうか評価できない。手持ちの情報をもとにして、目的を達成できる確率が最も高い選択が合理的な選択と言えるだろう。」。

「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)

「思考と推論: 理性・判断・意思決定の心理学」(著者:ケン マンクテロウ)(Amazonにリンク・本の森の紹介) は,人間の実際の思考を踏まえて,合理的な推論と意思決定について検討した本である。著者は,イギリスの心理学者である。少し前に入手していたが,古典的三段論法,「ならば」,因果推論,確率的説明,メンタルモデル理論,二重過程理論,帰納と検証,プロスペクト理論等,感情,合理性,個人差や文化の影響がもたらす複雑さ等,幅広く検討していて,「思考と推論」を考える上では必須の本であると思っていた。ただ問題はここに入り込むと,出てこられなくなることである。ほどほどが大事だ。

危機的な現代の思考

前項の本がいわば原則を論じているのに対し,現代の思考の危機について論じた本は多いが,ここでは「人の知能・思考がとらえる世界とは何か-方法論の基礎」として紹介した,「知ってるつもり 無知の科学」(著者:スティーブン スローマン, フィリップ ファーンバック)(Amazonにリンク・本の森の紹介)と,「武器化する嘘 情報に仕掛けられた罠」(著者:ダニエル・J・レヴィティン)(Amazonにリンク・本の森の紹介)を挙げておく。

以上の5冊に目を通せば,「思考」の重要事項については,ほぼ把握できよう。

アイデア

早い思考に親近性があるが,思考以前とも言える,アイデアや発想を生み出す方法は,なかなか楽しい。

まず「問題解決大全」(著者:読書猿)に著者による「アイデア大全」(Amazonにリンク・本の森の紹介)は,多くのアイデアや発想を生み出す豊富を取り上げており,必読書だろう。ただともすると,いろいろ知っておしまいということになりかねない。そこで,アイデア書として名のしれた何冊かを紹介しておく。

「IDEA FACTORY 頭をアイデア工場にする20のステップ」(著者:アンドリー・セドニエフ)(Amazonにリンク・本の森の紹介)

「アイデアのつくり方」(著者:ジェームス W.ヤング)(Amazonにリンク・本の森の紹介)

「アイデア・バイブル」(著者:マイケル・マハルコ)(Amazonにリンク・本の森の紹介)

「アイデアのちから」(著者:チップ・ハース、ダン・ハース)(Amazonにリンク・本の森の紹介)

方法論の基礎

ところでこれまで紹介した本は,どちらかといえば,経験の集積という本が多く,(「行動分析学」と「システム思考」は科学的方法であるが,これも含めて)「方法論の基礎」を踏まえて,論理的,科学的に捉え返す必要がある。

具体的には,問題解決基礎論,思考とアイデア,行動分析学,システム思考,哲学,言語・論証,論理学・数学(確率・統計),CS・IT・AI,進化論・脳科学・認知科学・心理学,ゲーム理論・経済学,複雑系科学,その他(失敗学,選択の科学等)を検討する。ここで重要なのは,「問題解決と創造」につながる事件の経過による変動を踏まえた事象の記述とモデル化である。

問題解決と創造の対象となる「人:生活・仕事・文化」「企業」「政府」「環境」「世界:社会・経済・歴史」の4要素,5領域では,それぞれ少しずつ異なった科学的な方法(あるいは経験論に科学的手法を組み込んだもの)が活用されている。「環境」では自然科学的な方法が,「世界:社会・経済・歴史」や「政府」(公共政策)では,社会科学的な方法が用いられてきたが(当面,「創造の方法学」,「原因を推論する」,「原因と結果の経済学」,「計量経済学の第一歩」,「社会科学の考え方」,「ゲーム理論による社会科学の統合」等の書名だけを挙げておく。),進化論,行動経済学,ゲーム理論,複雑系科学,複雑系ネットワーク等が新しい分析を試みている。

投稿記事の紹介

下位メニューの「問題解決と創造(投稿)」には,「問題解決と創造の方法」に関連する投稿が時系列順に掲載される。大切なのは,森羅万象について次々に起こりつつある自然科学,社会科学の知見を,美的感覚を研ぎすましてアイデアや「問題解決と創造」に結びつけることであろう。以上を踏まえて考察を深化させていきたいが,ここではこれまで作成した「問題解決と創造の方法」に関係する投稿記事を紹介しておこう。

参考 書庫

ところで,思考,アイデアの湧出を活性化するツールちなるを集めた本を整理した「書庫」を作成している(内容によって「アイデア・デザイン編」,「IT・AI編」,「経営編」,「心身の向上技法編」,「世界の構造と論理編」,及び「冷水編」に分けている。)。分類は古いものだが,当面,このままにしておく。